やられた!!看護師を悩ます華麗なる「自己抜去」のスペシャリストたち

帰宅願望を訴えることの多い高齢者や認知症の方。

彼らが鮮やかに行う縄抜け(チューブ類の自己抜去)が頻発する療養病棟で、びっくりするようなものを抜いてしまった“自己抜去のスペシャリスト”たちのエピソードを、看護師ライターがご紹介します!

『どうもお世話になりました。』

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血液透析をするために必要なシャント(動脈と静脈を繋いだもの)をつくる手術をしにこられた80代の紳士。入院時すでに緊急で透析を必要としたため、シャントの代わりに首の大きな血管にカテーテルをいれていました。

お年相応の軽い物忘れはあれど、軍隊仕込みの礼儀正しいキリっとした姿勢とお言葉は、こちらが自然に背筋を正すほど。
そんな紳士が、シャント手術を無事終えたまさにその夜、悲劇が起きました。

夜、いつも通り布団をしっかりかぶり、ぐっすり眠っておられた紳士。

しかし翌朝、採血にきた夜勤の看護師が発見したのは、きれいに整理されたベッド横のテーブルに、ちょこんと置かれたトリプルルーメン(血液浄化用)の太いカテーテル。

発見した看護師は思わず
(「あ”あ”ーーーーーーー!やられたっ!!!!」)
と、声にならない悲鳴をあげたくなったと。

幸い、キレイに抜いてくれたおかげで自然に止血しており、大事には至りませんでした。シャントさえ使えれば早々に抜く予定だったのですが、誤って血管を傷つければ大出血を起こしかねなかった自己抜去に、病棟中が改めてせん妄の怖さに戦慄した出来事でした。

ちなみに当のご本人は、その朝荷物をカバンに詰め、無事に手術もおわったということで身支度を整えただけのおつもりのようで、

「どうも、みなさんにはお世話になりましたな。」と。

その表情は清々しいほど晴れやかでした。

『痛いのー…。』

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80代の小柄で笑顔が可愛らしいおばあちゃん。
認知症があり、食べる元気がだんだんなくなってきて栄養不良で入院されてきました。

ご家族の希望もあり、できるだけ口から食事を楽しみつつ、足りない栄養は胃瘻から取ろう!と、入院中に胃瘻を造ることになりました。
入院時から点滴もしていましたが、服の袖に隠しても、足からズボンの下に回しても、どうやっても一晩ももたず上手に抜いてしまうこのおばあちゃん…。
そのため、胃瘻を作ることになった際もまさに厳戒態勢で臨みました。

夜になると「助けてー助けてーーーー!!!」と叫び徘徊されるため、個室に移動してベッドを布団に、床は畳に近いマットに変えて離床センサーをon!
胃瘻はこの方にとってまさに「命綱」。これを抜かれたら、もう家に帰ることはできないかもしれない…そんな思いで病棟中が見守るなか、またもや悲劇が…。

眠剤を飲まれ、すやすや眠っていたおばあちゃん。
「今日は落ち着いてるなー」と思った矢先に離床センサーが。

駆けつけると、
「お腹痛いー、痛いのー」と涙をポロポロこぼすおばあちゃん。

まさか…と思って確認し、すぐに納得しました。
そりゃあ痛いよ、おばあちゃん。入れたての胃瘻のチューブ、抜いてしまったんですもの。

傷自体は小さいので出血も少量ですみ、こちらも大事には至りませんでした。
しかし結局、胃瘻は再度作ることはせず、これ以上入院していても良いことはない…という医師の判断で退院が決まりました。

ですが不思議なことに、退院が決まった途端食欲が戻り、何事もなかったかのように元気に帰っていかれました。

まとめ

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こんな風に、医療者側がよかれと思ってすることが、むしろ患者さんには不快で不要なものであったりするのかもしれませんね。

「自己抜去を防ぐ=危険を防ぐ」ではなく、そもそも挿入する前に本当に必要なのか考える、不要になったらすぐに抜く、という当たり前のことが一番の危険予防になるのでは…と改めて学んだ事例でした。

みなさんの病院ではいかがでしょうか?

writer
chocola

現在看護師8年目。大学病院の内科病棟に配属され、うち2年間は夜勤専従看護師として勤務。結婚と同時に退職し、現在は訪問看護師として勤務。

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