訪問看護の“質”とステーションの“ 経営力”を高めるIT活用とは(SAKURA訪問看護リハビリステーション昭島の成功事例)

2016年現在、訪問看護ステーションの経営課題として、いくつかの大きなキーワードが存在しています。「看護師不足の解消」「IT化の必要性」「2018年の診療報酬・介護報酬のW改定」などです。

これらの課題に対して、2012年の会社設立当初から先手を打った取り組みを行い、解決策を提示しているのが、株式会社さくらの杜が運営する“SAKURA訪問看護リハビリステーション昭島”。

今後、訪問看護ステーションが取り組むべき課題とその解決策について事務長の郷田さんにお話を伺いました。

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▲郷田 篤司(ごうだ・あつし)さん
株式会社さくらの杜 SAKURA訪問看護リハビリステーション昭島 事務長

京都府出身。資格取得の予備校勤務、医療機関の事務経験を経て2012年6月、会社創業メンバーとして入社、現在に至る。訪問看護ステーションの事務業務を通じ、制度や運営ノウハウを得、開業当初から社内ITインフラ整備も手がけてきた。

訪問看護の質が問われる時代が到来!

—早速ですが、郷田さんは訪問看護業界の目下の課題は何とお考えですか?

それは「質の確保」でしょうね。
2018年の診療報酬・介護報酬のダブル改定においても「医療の質」をいかに高めるか、それをどう評価するか、という点が大きな論点になっています。2012年、2015年の改定でもそういう方向性が明確に出てきていますので、まず間違いないでしょう。

過去の改定でも基礎点数が下がっていっているため、医療の質に関わる部分で加算が取れない訪問看護ステーションは経営自体がどんどん厳しくなるという流れは間違いなく来ると思います。

でも、これは逆に言うと、きちんと評価されるサービスを提供しさえすれば、プラスの改定になるとも考えられます。訪問看護ステーションが質にどう向き合うべきか、という点は今後、業界全体で考えていく必要がありますね。

—SAKURA訪問看護リハビリステーション昭島さんでは、業界の動きの中でどのような取り組みをされているのでしょうか?

それはまさに「ITの活用」です。ITを活用することで、医療の質の確保が確実に行いやすくなりますし、加算を得るための提供サービスの情報管理も容易になります。
我々が2012年のステーション開設当時から取り組んできた「訪問看護ステーションのIT化」についてご説明したいと思います。
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▲SAKURA訪問看護リハビリステーション昭島ではタブレット端末を一人一台導入。いつでも利用者情報にアクセスできる環境をつくることで、看護師間、他職種間での情報共有に役立てている。「今ではタブレットがないなんて信じられない」とスタッフさん。

訪問看護ステーションの多くの課題は“IT活用”で解決

—IT活用で、医療の質が上がる、というのはどういうことでしょうか?

私たちが言うIT活用というのは、PCやタブレット端末を活用することにより訪問看護ステーション自体のペーパーレス化を推し進めたことを指しています。
ペーパーレス化というと、単純に印刷関係の経費削減と考えられる人もいるのですが、この取り組みの最終的な目標は、看護師の業務の透明化と、患者データ管理の徹底にあります。

—具体的にペーパーレスを実現すると運営にどんな効果が生まれるのでしょうか?

副次的な効果も含めれば非常に多くのプラス効果があります。思いつくこととしては…

訪問看護ステーションのIT活用によるペーパーレス化のメリット

1.看護師の荷物の軽量化
タブレット端末に情報を集約することで、スタッフが重い紙書類を持ち歩かなくてよくなる。

2.書類作成の時間短縮
計画書・報告書作成時に、過去資料の検索、引用が容易に可能なので、手書きに比べて圧倒的に計画書作成時間を短縮できる。

3.訪問に集中できる
看護師の勤務時間に占める事務作業の負担を減らすことで、結果的に訪問件数を増やすことできる。

4.個人の記憶に頼る必要がない
夜間や年末年始などのオンコール当番の際に、タブレット端末さえあれば、患者情報をすぐに参照でき、個人の記憶に頼る必要がなくなる。

5.情報共有が簡単・スムーズになる
写真の共有が可能なため、看護師間・他職種間で症状や居宅環境を共有しやすく、看護の質を一定に保つことができる。例えば褥瘡の進行具合や、お薬カレンダーを撮影して関係職種に共有をしている。

6.業務内容の透明化・残業時間の削減
看護師の業務における、訪問時間・事務処理時間を把握できるため、残業の多いスタッフの業務改善などにも取り組みやすい。業務のブラックボックス化を防げる。

7.加算の請求漏れを防げる
患者情報・訪問時の提供サービス内容をデータ管理できるため、加算算定時にデータの取得が容易。漏れのない加算請求が可能になる。

8.看護師の採用力が高まる
看護師の負担・ストレスが少なくなるため職員定着率が上がり、採用成功率が高まる。

9.医療の質が高まる可能性が高い
看護師が定着すれば経験の長いスタッフが増え、また、人数を確保できることで負担が減り、提供する医療サービスの質も高めやすい。

 

−いいことづくめですね!!これは実際にSAKURA訪問看護リハビリステーション昭島では実現できているのでしょうか?

はい。その点には自信があります。
看護師にとっては理想的な働きやすい環境になっていると思いますよ。またタブレット端末の導入後、残業時間が1人あたり最大40%削減し、売上・人員換算数は右肩上がりとなっています。
スタッフの定着率についても2012年の開設以来、止むを得ない事情以外での看護師の退職者はゼロ。採用希望者も増えてきたので、良い循環が生まれていると言えます。

行政やケアマネージャーさんからの評価も高くいただけており、利用者さんの紹介件数も順調に伸びています。医療の質、という面でも着実に成果が出始めている証拠かなと思っています。

実際に勤務する看護師へのアンケート結果

「持ち運びが簡単で、情報共有がスムーズ!緊急コールがあってもタブレットがあれば、疾患・服薬・住所などの情報をすぐに確認して落ち着いて対応できます。年末年始のオンコール当番は、毎年気が重かったのですが、(タブレット導入後は)最高でした!」

「写真がきれいで大きく見れるので情報共有に役立ちます。すぐに離れた場所のスタッフにも共有でき、第三者の意見も求めやすいです。担当医師への報告も正確にでき、大変重宝しています。」

「計画書や報告書作成時、入力転記が楽になりました。他のスタッフのスケジュールもすぐに確認できるので、代行や振替の提案もしやすいです。」

—ペーパーレス化の成功には経営から現場への歩み寄りが不可欠—まさに順風満帆な成果ですが、IT化にあたって苦労はありませんでしたか?

当ステーションでは、2012年の開設当初からノートPCを一人一台ずつ貸与し徹底してIT活用を進めてきました。当初から問題は起きませんでしたね。
その後、時間をかけてスタッフがIT機器に馴染んできたということもあると思いますが、昨年、モバイルPCからタブレットに切り替えた際にも、実は大きな苦労はありませんでした。

—他のステーションではなかなかうまくITの導入が進まなかったり、導入後すぐに形骸化してしまったりする、という話を聞きますが、なぜそんなにスムーズにIT化が実現できたのでしょうか?

ちょうど私たちがステーションを開設した2012年というのが、携帯電話からスマートフォンへの変化が起きていた頃だったので、スタッフにとっても受け入れやすかったのだと思います。
しかし、あと2年早く導入していたら、もしかしたら難しかったかもしれませんね。そういう意味では時代の流れにも助けられたと思います。

また、IT機器の導入を推進する事務側が、看護師の業務を把握し、手間がかかって面倒な部分、つまり、いわゆる“看護師の不満”をしっかり理解していたということがあると思います。

タブレット端末の導入時には看護師に対して勉強会を開き「具体的にどんな不満が解決するのか」をできるだけ丁寧に説明しました。「事務処理が楽になる」「残業が減る」「情報共有がしやすくなる」など機器を使いこなせば、看護師にとっても理想的な状態が作れるという理解が得られたので、みんなでそのために頑張って取り組んだという形ですね。

—「看護師の不満」の解決策としてIT機器導入を位置付けたわけですね!

そうですね。どうしても最初は多少の抵抗があります。紙の方が慣れてるからすぐに探せる、など。しかし、「その紙の情報を家でも全部覚えておけますか?」「写真はどうやって集めると効率いいでしょうか?」のように、IT化すればもっと便利に簡単になる、という具体的なメリットを提示し続ければ、必ず理解は得られるものです。

あとは20代の若手のように比較的デジタル機器の扱いに慣れているスタッフが、ベテランのスタッフに使い方を教えるような雰囲気を作れたこともうまくいったポイントですね。

—IT化を進める際の最大のポイントは何だと思いますか?

先にも触れましたが、結局は、導入を進める経営者や事務側が、使い手である看護師等の訪問スタッフの希望をどれだけ理解して、どれだけ、メリットとして提示できるかどうかだと思います。

経営者がトップダウンで「タブレット端末を導入します!」とだけ決めて機器を看護師に渡しただけでは失敗しやすいのかな、と。渡されただけでは、ゴールのイメージができませんからね。IT化は現場とのコミュニケーションがポイントだと思います。
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▲訪問看護リハビリステーション昭島では活発に社内勉強会を開き、専門職種の枠を超えた知識・ノウハウの共有を行っている。

2018年のダブル改定に向け必要な取り組みとは

—訪問看護ステーションの経営者に向けたメッセージをお願いします。

冒頭でも申し上げた通り、2018年度の診療報酬・介護報酬のダブル改定で、医療の質が求められる改定が行われることは間違いありません。
その際に必要になるのは、サービス提供内容や利用者さんの病状に関する詳細なデータです。「自宅で転倒した回数」や「緊急入院をした理由が何だったか」などの情報が請求に必要になる可能性もあります。

加算を取らなければいけない!と考えても、その時、これらの利用者情報が全て紙の資料にしかなかったらどうでしょうか。一枚一枚の書類から情報を拾い集めて計算するという膨大な負担が生まれてしまう可能性があるのです。

●月間延べ訪問回数 1709回
●月間総訪問時間数 1457時間

例えば、これは8月期の当ステーションの正確な実績値ですが、これもシステムで簡単に集計できます。エクセル管理や紙管理では、この作業は以外と煩雑で大変なはずですが、情報を全てデータ化している私たちはすぐに対応することができます。

今後、「医療の質」を軸に評価される時代は必ずきます。その際に焦らないため、なにより、働く看護師が負担少なく、訪問看護に集中できる環境作りが結果として経営力に直結することになると思っています。
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▲「今後は保険外サービスの企画開発にも力を入れます。事業規模の拡大と、スケールメリットを生かしてより質の高いサービス提供ができる体制を作りたいですね。」と郷田事務長。

 

◎取材先紹介

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SAKURA訪問看護リハビリステーション昭島
東京都昭島市中神町1228-20ミリューヴィラージュ1F
TEL:042-500-2070 FAX:042-500-2071
http://www.sakurastation.com/

【会社設立】
2012年5月14日

【主な事業内容】
訪問看護ステーション運営
通所介護事業所運営
介護事業経営コンサルタント
各種講師・講演 等

【従業員 33名】
看護師9名、理学療法士10名(代表含む)、作業療法士5名
言語聴覚士2名、介護職5名、事務職3名

【サービス提供地域】
昭島市全域、立川市全域、日野市と八王子市の一部地域

(取材・文/ココメディカ マガジン 編集部、撮影/菅沢健治)

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