訪問診療で大切なのは、思いやりと気配りの精神 ‐医療法人 未来会 みらいクリニック 理事長 三宮 祐一-

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東大阪・JR鴻池新田駅前に外来診療と訪問医療のクリニック、大阪・JR京橋駅前に完全予約制のガン専門クリニックの2拠点を持つ「みらいクリニック」。

取材に伺ったのは2012年に開院した鴻池のクリニックで、別の建物内に訪問看護ステーション「みらい」も併設。6名の医師と10名の看護師が連携を取り合い、地域の訪問診療を行っています。三宮理事長と清田看護師長に、在宅医療に対する想いを語っていただきました。

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▲三宮 祐一(さんのみや・ゆういち)さん
医療法人 未来会 みらいクリニック 理事長

大阪市立大学医学部大学院卒業。大阪市立大学医学部血液内科研究医、東住吉森本病院内科医局長を経て、2009年(平成21年)11月に医療法人未来会「みらいクリニック」を開設。血液内科、ターミナルケアの専門医として勉強会や講演会も行うなど多方面で活躍。
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▲清田 智子(きよた・ともこ)さん
医療法人 未来会 みらいクリニック 看護師長

小児整形・慢性期内科の病院で看護師として約30年のキャリアを重ね、その腕を見込まれて現クリニックの看護師長として着任し約10名の看護師を束ねる。

外来診療・訪問診療の役割分担を2つのクリニックで実現

-訪問診療に取り組むようになった経緯を教えてください

三宮理事長:私は血液内科出身の医師で、30年近く病院勤務をしていました。病院は患者様を治療する場ですが、毎日のように入院・通院される患者様全員が、完治して病院を後にされるわけではありません。また、患者様の長期入院が年々難しくなってゆく現状を目の当たりにして、家庭や老人ホームなどの社会福祉施設での診療の必要性を痛感するようになり、訪問診療を始めようと思い立ちました。

清田看護師長:私は18歳の時から看護師として働いていて、そのまま病院で定年退職の日を迎えるのが当たり前だと思っていました(笑)。それが4年前、クリニックを開設された理事長から「訪問看護師のリーダーとしてうちのクリニックを助けてくれないか」と声をかけられて運命が180度転換したんです。

-開業場所に鴻池を選んだ理由は?

三宮理事長:鴻池新田の地域開発を手がけている企業とのご縁があり、「空き地を活用して地域の高齢者のための役に立つ社会貢献がしたい」との想いに感銘を受けたことが、きっかけです。既に「みらいクリニック」として京橋で訪問診療専門のクリニックを開設し、在宅医療が今後ますます必要になるという確信を持っていたので、「病院に通いたくても体力面・物理面で難しい」という地域の困っている方たちのために、今までの専門知識とノウハウを生かせるのであれば、医師冥利に尽きると思いました。

また、今までの診療経験を通じて、重い病気になる以前から食事面に気を配ったり、運動を継続するなどの意識改革の必要性を感じていました。「病気になってから」ではなく、「病気にならないために」どうすべきかという予防医学の推奨です。そうした啓蒙活動のためにも、2軒目となる鴻池のクリニックでは、午前中は整形外科など多科目の外来診療に対応し、午後から訪問診療をメインに行う医療体制を整えました。

訪問診療=「病気を診る」から「人を総合的に見る」医療

-開院にあたり、ご苦労されたことは?

三宮理事長:医療チームの体制づくりです。 開院直前に予定していた整形外科医が来られなくなるなど、トラブル続出で(苦笑)。知り合いの医師に協力してもらい、何とか整形外科・内科・皮膚科の多科目クリニックを形にできました。開院後しばらくは私自身、休日返上で飛び回っていました。次に大きな課題となったのが「この人となら終末期医療の理想を一緒に追求できる」と確信できる看護師を探すことでしたね。

-その白羽の矢が立った看護師が清田師長だったのですね。

清田看護師長:そういうことでしょうね(笑)。ただ、病院の看護師としては30年以上の経験がありましたが、訪問看護の経験はゼロ。不安の方が大きかったんですよ。病院で働いていた時は、医局とナースステーションがあって、ドクターのサポート役という立場。訪問看護はドクターから指示をもらった後は、看護師が一人で患者様が待つお家や施設へ行き、点滴や褥瘡(じょくそう)など処置をするのが仕事です。病院には一通りの医療器具が揃っているけれど、患者様のお家や施設には整っていません。その場、その場で臨機応変かつ最善のケアを求められることに最初は戸惑ってばかりでした。

-意識が変わった、きっかけはありますか?

清田看護師長:施設に入居されている高齢の患者様で、施設スタッフさんも「部屋に行くのが怖い」というほどの気難しい方なんですが、私が何の気なしに「こんにちは〜!」とお部屋を訪ねたところジャージ姿がとってもお似合いで、「スポーツマンだったんじゃないですか?」と話しかけたんです。すると、「テニスや卓球をしてた」と会話が弾むきっかけになり、訪問診療を楽しみにして下さるようになったんです。

患者様の居るお部屋を見て気づいたことをお話しする、優しく撫でるタッチセラピーを実践する。そういう一見、医療とは無関係に見える小さなきっかけが心を開き、癒やしに繋がります。また、日頃の患者様の生活を丁寧に観察していると放っておいてはいけない「微弱なサイン」に気づけるようになります。すると、自信がなかったのが嘘みたいに、私にできることがたくさんある!と、やるべき看護の答えが見えてくるようになるんです。そしたら、もう楽しくて、楽しくて。みるみる在宅医療・看護の世界にハマっていきました。

-訪問診療にかかわると医療の本質が見えてくる?

清田看護師長:「患者様の病気を診る」のではなく、「人を総合的に見る」。それが医療の本質なんだと、訪問看護に携わるようになって気づかされました。

三宮理事長:だからこそ一番大切なのは、患者様とご家族に安心感を持ってもらえる“和”のコミュニケーション、思いやり、気配りの精神です。可能な限り患者様側の視点から考え、患者様の痛み、ご家族の要望を理解する努力を惜しまない。病気そのものはもちろん、精神面も含めた総合的なケアをする労力を厭わない。本来は、病院医療・在宅医療どちらにも必要な基本姿勢であるべきだと私は思っています。

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▲「理事長は血液内科の専門医で、癌やターミナルケアにも詳しい。その強力サポートがあったから、迷わず走って来られました」と振り返る清田看護師長

医療スタッフのチームワークを大切に

-開院から4年弱、現在の医療チームの体制について教えてください。

三宮理事長:医師が私を含めて6名に増え、整形外科・リハビリ・内科・皮膚科の外来診療を日替わりで行っています。訪問診療エリアは東大阪から大阪市内の一部で、患者数は200名弱。有料老人ホーム、特別養護老人ホームなどの施設が約7割、居宅が約3割です。

清田看護師長:看護師も10名に増え、今がベストメンバーだと思っています。このクリニックを卒業して病院の看護師として働き、「やっぱり訪問看護が忘れられない!」とカムバックしてくれた人もいるんですよ。

-チームワーク向上のために気を配っていることは?

清田看護師長:「一つの釜の飯を全員で分け合う」の精神で毎日、お味噌汁、にゅうめん、だんご汁などの大鍋料理を1品手作り。ランチの時に職員全員でテーブルを囲み、分け合います。夏場は、家にあるフルーツを持ち寄ってミックスジュースもよく手作りします。そうそう、理事長が釣ってきた鯛を塩釜焼きでいただいたこともありましたっけ(笑)。

三宮理事長:実のところ、医師の次に水族館の館長になりたかったほどの魚好きで、趣味が釣りなんです。釣った魚をさばいて振る舞うのは、職員たちの喜ぶ笑顔が見たいから。日頃忙しく、プレッシャーのかかる現場で働いてくれている労いの気持ちです。

清田看護師長:そうやって全員でテーブルを囲み、和気あいあいと食事を楽しみながら、訪問看護の情報収集や報告・相談・連絡の場を兼ねているんです。レセプト提出日には月間の「お疲れさま会」と称して美味しいケーキを全員で食べながらディスカッションも行います。

-楽しそう!お互いの現場は違っても連帯感が生まれますね。

清田看護師長:それだけじゃないんです。職員の誕生日には、理事長から自宅に花束が届くんですよ。毎年、全員に。疲れて家に帰って、誕生日だったことも忘れていたら、綺麗な花束とメッセージカードが届いているんです。「職場で大事にされている」という幸せな気持ちに包まれ、家族にもそれが伝わり、明日からまた頑張ろう!って思えるんです。

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▲新年会、花見、クリスマス会など、季節毎に交流行事を開催。三宮理事長が「老後の楽しみであり、クリニックの宝物」と語る、職員の笑顔が詰まったアルバムは10冊を超えた

看護・介護にかかわる全員が幸せになれる在宅医療を目指して

-施設や患者様側からのファーストコールはどう対応されていますか?

清田看護師長:24時間365日体制で事務長が最初に対応し、コール当番の看護師へ連絡が入ります。そして、看護師から患者様のご家族や施設へ詳しい病態を電話で確認して、必要に応じて各ドクターに緊急連絡を入れて指示を仰ぐ流れです。常に複数のドクターと連絡が取れる体制が整っていますし、最終的には理事長が24時間いつでも対応してくださるから、心強くて。ちなみに、当番の看護師が持つコール専用のPHS電話はピンク色で、着信メロディも楽しいディズニーのマーチソング。慌てず、前向きに対応できるように、との思いからです。

三宮理事長:厚生労働省の指導もあり、往診予定は月2回程度しか組めないのが現状。だからこそ、看護師のこまめな訪問と大事に至る前のフォローが在宅医療では重要な役割を占めています。医療チームの献身的な努力に、心から感謝しています。

-在宅医療に対する課題感や取り組みはありますか?

三宮理事長:在宅医療がもっと社会に浸透するためには、患者様のご家族と周囲の人々、介護ヘルパー、ケアマネージャーなどの医療に対する知識の向上が必要だと考えています。在宅時の栄養指導、水分補給、重篤な状態に至る前の対応などに繋がってゆくからです。医師、看護師、介護スタッフとの連携を密にしながら、在宅医療と介護のレベルアップを進めたいですね。

清田看護師長:例えば、看取り医療・介護の同意書を交わしても「ターミナルケア(終末期医療)」について、ご家族や施設の理解が十分とは言えないケースがほとんど。看取りまでの過程や状況変化、問題点などについて一つ一つ具体例をあげながら理解を深める勉強会を施設スタッフと共に行ったりしています。また、200名弱を訪問診療する=200床の病院と同規模だと考えているので、看護師ができるだけ患者様の顔を見に行って声をかけ、介護ヘルパーさんとも連携を取り、お風呂での身体の変化、食事摂取・排便・排尿の変化について、報告書などを通じて意識的に情報共有をするように心がけています。

-最後に、在宅医療にこれから取り組む読者へメッセージを。

三宮理事長:医師というものは、病気に対する取り組みにおいては努力を惜しみませんが、患者様を一人の人間として尊重し、気配りをする配慮が、私を含めて欠けている側面があるように思います。患者様の病気だけを診るのではなく、一個人としてリスペクトする姿勢を忘れないでください。

清田看護師長:特に高齢者看護においては、その人のことを知ろうとする姿勢が大切。老化にともない、感覚機能や認知機能が低下し、コミュニケーションがどうしても取りにくくなります。高齢者の微弱な意思表示を敏感にキャッチするアンテナ感度が、看護者・介護者には求められていると思います。五感を研ぎ澄ませ、患者様と向き合い続けましょう。
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▲とても仲の良い看護師チーム。「何よりコミュニケーションを取りやすい雰囲気を作ることがチームには大事なんです」と清田看護師長。

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▲チームの輪を大切に「隔たりのない伝言」ができる職場環境を実現。清田看護師長をはじめ、スタッフ全員が訪問看護・医療の仕事に誇りを感じているのが、笑顔から伝わる

取材後記

「みらいクリニック」のロゴマークは、駆け上がってゆく“3頭の馬”がモチーフ。それは、医師・看護師・事務の三位一体のチームワークの大切さの象徴でもあるそうです。開院から4年弱とは思えない職員の皆さんの結束力と明るい雰囲気が印象的でした。思いやりと気配りの精神で、在宅医療の未来を照らしてください!

◎取材先紹介

医療法人 未来会
「みらいクリニック鴻池」
大阪府東大阪市鴻池本町2−28 メディカル・コート
TEL:06−6748−3113 FAX:06−6748−7778
http://mirai-clinic.lomo.jp

「みらいクリニック京橋」
大阪府大阪市城東区新喜多1−2−7 リバーカントリーガーデン京橋903
TEL:06−6936−1003(完全予約制)

構成・野村ゆき、撮影・井原 完祐

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