在宅の感染予防、意識していますか?感染予防のプロが語る地域・家庭内感染対策とは ‐株式会社モレーンコーポレーション 代表取締役 草場 恒樹‐

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抗菌薬が効かない耐性菌が世界で蔓延しており、厚生労働省でも耐性菌の感染による死者が2013年時点で世界で少なく見積もって70万人、2050年には1,000万人を超える(現在のガンによる死亡者を超える)と警鐘を鳴らしています。この重大な課題に対して、国内で唯一、感染対策を専門に総合的に取り組んでいるのが、今回取材を行った株式会社モレーンコーポレーションです。

同社は20年以上に渡って医療関連感染に関する医療商品・機器の輸入製造販売や、病院向けに感染対策のコンサルティングやセミナーを行う他、ここ最近は医療現場の変化にあわせ、在宅医療や介護老人保健施設といった病院外での感染対策についてもコンサルティングを強化しています。今回は、在宅医療の現場で気を付けるべき感染対策や、今後の在宅医療における対策の重要性についてお話を伺いました。


▲草場 恒樹(くさば・つねき)さん
株式会社モレーンコーポレーション 代表取締役社長

東京農業大学農学部入学。在学中にカナダ・アルバータ州へ留学。卒業後は商社で7年間海外製品のマーケティングを担当。1993年独立、同社を設立。

自宅・施設…。病院外でも広がる感染の可能性

-病院以外でも感染症の危険が増えていると伺いました。

今までは病院での院内感染対策について、私たちも病院向けにコンサルティングやセミナーを開催することがほとんどでした。しかし今は、医療の地域連携が進んでいることもあり、病院だけではなく介護施設や、在宅医療を行う一般家庭も感染源になりうる状況になっています。実際に、入院中に病院でどれだけ感染予防を行っていても、施設や在宅で従事者を介して感染し、病院に持ち込んでしまうケースも少なくありません。こういった状況を踏まえ、病院内だけではなく、在宅医療に関わる医療従事者や施設の従事者がより意識的に感染対策を行う必要が出てきています。

-病院外での医療感染に特徴はありますか?

病院外の場合は、介護施設などでの「地域内感染」、そして家庭での「家庭内感染」という新たな領域内での感染が想定されています。
施設における「地域内感染」の場合、耐性菌の代表格でもあるMRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)はすでに市中に広く定着してしまっています。もともと黄色ブドウ球菌は皮膚や消化管の常在菌なのですが、高齢者など免疫力が低下している場合や、在宅では稀ですが、カテーテルを留置しているような患者さんは、重症化することがあるので特に注意が必要です。介護施設や在宅には、病院のように特に免疫力が低下している重症患者さんは通常いないので、病院と同じレベルの感染対策は不要ですが、最近では腸内細菌に見られるESBL産生菌やメタロ-β-ラクタマーゼ産生菌という耐性菌が病院外の市中でも増えており、抵抗力の低い高齢者には呼吸器感染や尿路感染を引き起こすので、従事者には手指衛生や使い捨ての手袋・ガウンの装着等、厳格な感染対策が求められます。

-「家庭内感染」ついても教えてください。

在宅における高齢者の感染ももちろんですが、子どもが学校や幼稚園等で感染し、自宅で親に感染するといったケースも当たり前のようになっていますが、問題です。親は当然、献身的に子どもを介護するため、結果的に密に接触し、高い確率で感染します。インフルエンザやノロなど場合によっては重症化するケースもあるため、感染した親は子どもの面倒を見れなくなるだけでなく、長期間仕事を休む必要があるなど、仕事や社会にも大きな影響が出ている可能性があります。本来防ぐことができる感染が家庭内には多く存在すると思われるので、親が感染に対する知識をもっと深める必要があります。感染した子どもに密接に接触する場合や、吐物・排泄物に接触する場合は、マスクをし、接触後は必ず手洗いをするようにしましょう。

-病院だけでなく我々も感染に対する知識が必要ですね。

そうです。そのために私どもも啓発セミナーを行ったり、感染対策についてゲーム感覚で学ぶことができるボードゲームやアプリツールの開発等も行っています。
在宅医療という観点では、例えば、自宅療養中の高齢患者さんがインフルエンザに感染したりしたら大変ですよね。家庭内こそ、高い意識で感染予防に取り組まないといけないのです。医療関係者だけでなく、ご家族も一緒に意識していくことが大切です。


▲「手洗いやマスク、手袋の付け外し方など、日々の何気ない動作を見直すだけで感染を予防できる確率がぐっと高まります」と話す草場社長。

感染予防には、一人ひとりの意識改革が不可欠

-在宅医療における感染対策は進んでいるのでしょうか?

先日もある介護施設向けに感染予防セミナーを実施し、必要に応じて着用するアイウェアやマスク、手袋、使い捨てエプロンの重要性について話をしました。参加されたヘルパーさんたちは重要性を理解し対策にも前向きだったのですが、実際の訪問現場では、医師や看護師がマスクや手袋、使い捨てエプロンをしていないことが多く、ヘルパーの自分たちだけが着用することができず、やはり今まで通りの対応を行ってしまっているのだと聞きました。在宅医療では多職種の様々なスタッフが関わっているため、地域のスタッフが共通の意識付けで取り組めるようにすることがとても重要だと感じています。

-介護施設での感染対策も進んでいるのでしょうか。

病院では、感染防止対策加算が診療報酬に加算されたことで以前よりも劇的に感染対策が進んでいます。加算連携する施設の中には、介護施設を併設している場合もあり、感染対策は徐々にではありますが、介護施設にも浸透し始めています。しかし介護施設においてはまだまだ感染対策に関する情報が少なく、費用もかかるという観点から、まずは経営層も含めた意識改革が必要だと考えています。
施設内で感染が起きた場合、感染された方のケアやフォローはもちろんですが、その後の対策強化へ向けた取り組みや補償対応等、金銭的にも大きな負担が発生します。その中でも忘れてはならないのが風評被害で、一度院内感染を起こしてしまうとその後の施設運営に大きな支障を与えることもあり得ます。施設経営者は、院内感染対策は費用ではなく、経営上の投資であるという認識も必要だと感じています。

何気ない日々の行動を、意識的にするだけでも感染予防できる

-セミナーではどんなことをお話しされているのでしょうか。

セミナーでは、感染予防の観点から感染経路を理解していただき、その上でなぜ、手指衛生や個人防護具(手袋、マスク、エプロン、アイウェア等)が必要なのかその本質について理解していただけるように心がけています。その後は実際に個人防護具の着脱の実習をしていただきます。特に外す際に脱ぎ方を間違うと、自分が汚染してしまうことになるので、多くの方が「順番が大事だとは知らなかった」「自分が危険なだけでなく、まわりに感染を広めるリスクがあることにビックリした」等と気づいていただけます。
また、簡単な手洗い評価キットを使って手洗いがきちんとできているか自身で理解してもらうための実習も行っています。綺麗に洗えていない部位がブラックライトで光るのですが、特定の一部だけが光ることが多く、自身の手洗いの癖を客観的に知ることができます。
いずれも日々の診療や介護現場で何気なく行っていることですが、セミナーを通して感染予防への意識を高めることができるような内容になっています。


▲手洗いによる感染対策は、基本中の基本。「手洗いキットでよく洗い残しが出る部位が、親指の付け根です。この部位は洗い忘れが多いので気を付けてくださいね」

医療従事者が感染経路になる可能性を忘れない

-具体的に、在宅医療の現場で必要な個人防護具を教えてください

まず、忘れがちなのがアイウェアです。現場で処置する上で唯一粘膜が露出している部位は眼球で、皮膚と違って粘膜経由での感染は、即座に体内に吸収されます。仮に手術の際に医師の目から患者の血液や体液が入ってしまうと、B型肝炎やC型肝炎になる可能性もあります。だから手術室ではアイウェアの着用が当たり前になっているのです。
しかし、特に在宅医療の現場に目を移すとほとんど着用している方はいないのではないでしょうか。通常の処置においてアイウェアは不要ですが、吸引等のエアロゾルが発生する処置を行う時は、マスクだけでなく、必ずアイウェアやフェイスシールド等の眼の防護具を着用してください。

また、マスクについては、感染対策の観点から見ると間違った着用が散見されます。
よくマスクを一日中つけている方がいますが、マスクは湿ってしまうと効果が下がるため必要な時にのみつけるほうがよいでしょう。また時々マスクから鼻を出している人がいますが、あれでは意味がありません。また、マスクは自分を守るだけでなく、もし自分が感染していたら利用者さんにうつさないという目的もありますから、特にインフルエンザのシーズン等は利用者さんごとに交換して着用するようにして下さい。マスク自体も汚染している可能性があるので、マスクを外したら必ず手指衛生をすることも心掛けてください。

また患者さんのおむつ交換等、体液や排せつ物に接触する可能性がある場合は、手袋やエプロンをするようにします。訪問医療や訪問介護の場合、一日に数件の患者さん宅に伺うことがありますが、この場合使い切りが基本です。ディスポーザブルタイプのものを使用して処置ごとに交換してください。この際も、外した後は必ず手指衛生をして下さい。

▲某ドラマで女医役の女優さんが使用したアイウェアも。デザイン性に富んだ商品が沢山並んでいます。

▲手袋が一度に何枚も出てきて箱に戻すといった経験は医療従事者ならあるはず。同社では一枚一枚確実に取り出せる医療用検査用手袋を取り扱っている。

-改めてお話を伺うと、分かっているようで気づいてなかったことも多いですね。

在宅医療や介護施設は、病院よりも患者さんとの距離が近いため「マスクや手袋で防御するのは失礼だ」と考えている方もいるようですが、実際は全く逆です。自分を守らないと患者さんを守ることはできません。万が一自分が感染した場合、知らないうちに他の患者さんへ移してしまうこともあるということを忘れないでください。

-在宅医療の感染対策について最後に一言お願いします。

在宅医療では、それぞれの家庭環境が異なるので、病院と同じように一つの感染対策マニュアルで感染を防ぐことは難しいと考えています。それぞれの訪問先で自分を守り、利用者さんを感染の危険から守るためには、病院以上に感染対策の基本原則、本質を理解する必要があるかもしれません。当社としてもこれまでの病院での感染対策の実績を踏まえ、新たな切り口で在宅医療における最適な感染対策をご提案していきたいと考えています。

取材後記

取材に行くまで、感染予防の商品というとシンプルなものばかりを想像していましたが、モレーンコーポレーションが販売する商品はデザイン性にとても優れている点に驚きました。アイウェア等は医療系ドラマなどでも採用されているとのことで、機能面へのこだわりだけではなくビジュアルにおいても妥協しないという会社の姿勢を垣間見ることができました。

◎取材先紹介

株式会社モレーンコーポレーション
〒164-0003
東京都中野区東中野5-1-1 ユニゾンモール3F
TEL:03-5338-3911

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<取材・文 ココメディカマガジン編集部 /撮影 菅沢健治>

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