自宅のガレージから始めた看護師の在宅ケア。手探りで取り組んできた訪問介護・看護の18年間。 ―株式会社ケア・アカデミー 葉っぱのフレディ 代表取締役 片山蘭子―

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介護保険制度の制定直前である1999年に開業した「株式会社ケア・アカデミー 葉っぱのフレディ」。現在は40名ほどのスタッフが在籍しており、居宅介護支援、訪問介護、訪問看護などを行っています。
代表の片山蘭子さんは看護師として、聖路加国際病院名誉院長・聖路加国際大学名誉理事長の日野原重明先生のもとで健康教育・訪問介護の講座の企画運営を務めた後、訪問介護センターをスタートしました。

様々な苦労を乗り越えた現在も「ご利用される方が自分らしく主体的な生活を送れるように」と言う理念のもと、沢山のスタッフさんと共によりよい在宅ケアのためにまい進されています。
今回は片山さんに訪問看護・訪問介護における大切な心構えについて伺いました。

▲片山 蘭子 (かたやま・らんこ)さん
株式会社ケア・アカデミー 葉っぱのフレディ 代表取締役

看護師。理学博士。聖母大学(現:上智大学)看護学科卒業後、東京医科大学病院などで臨床・看護教育に携わる。一般財団法人ライフ・プランニング・センター理事長日野原重明氏のもとで健康教育・訪問介護に携わる。その後、株式会社ケア・アカデミー 葉っぱのフレディを設立、現在に至る。主な著書に「ベーシック看護技術ポケットブック」(総研出版)、「看護士に教わる在宅介護」(講談社)、「在宅介護 これならもっとラクになる」(青春出版社)等。

ガレージからスタートした訪問介護ステーション

-看護師を目指されたきっかけを教えてください。

父が内科医として自宅で診療を行っていたため、医療は子どもの頃から身近なものでした。そのため自然に看護の道を目指すようになったと思います。

在宅ケアを始めたきっかけは、私の最高の師である日野原重明先生の存在が大きいです。日野原先生が設立した一般財団法人ライフ・プランニング・センターで看護師研修・健康教育・ボランティア研修の企画・運営や講師を20年余りやってきました。特にヘルパー研修は人気の研修で、1クラス70名のクラスを3年間受け持ち、3年で200名以上のヘルパーが卒業しました。

当時は彼女たちが働く場が少なく、日野原先生と何回か相談し私の家で訪問介護センターを開設することにしたのです。この時、多くの卒業生が私と一緒に働きたいと申し出てくれたことが本当にうれしかったです。とにかくまずは、自宅のガレージを改装して小さな事務所を作り約13名ほどのヘルパー達とでスタートしました。

-自宅のガレージからスタートされたのですか!

はい。介護保険制定前の1999年10月にスタートしたのですが、自費扱いの期間は利用される方の負担をできるだけ少なくしたいという思いから、利用料は低く抑えました。この時は資金不足で、ガレージの軒先で近所の方々にも協力いただきバザーを開き備品や図書の購入にしました。余談ですがその1回のバザーではなんと12万円ほどの売上になりました。

その頃から介護保険制度が利用者にも浸透し始め、介護保険を使いたいという要望が出始め事業所の整備を進め、2000年7月から東京都指定訪問介護ステーションとして本格的にスタートしました。勉強熱心で仕事への意欲の高いスタッフばかりでしたので、とにかく早く仕事を軌道に乗せたく毎日が必死でした。

開設18年という年月を振り返ると会社の運営など全く無知な一人の看護師が暗中模索しながら運営できたのも日野原先生をはじめスタッフの協力があったからこそだと思います。

▲スタッフに恵まれていると話す片山先生。「電車では座ると寝てしまうからと言って、立ちながら最寄り駅まで資格の勉強をしていた方もいました。」とのこと!

「患者さん中心」の質の高い在宅ケアを目指す

-スタート後のお仕事はいかがでしたか。

開設当初は、日野原先生に講演などで葉っぱのフレディのPRをして頂き、お陰様で、口コミや紹介などで少しずつ利用される方が増えていきました。当時はヘルパーという呼び名に馴染めない高齢者は「お手伝いさーん」と呼ぶ方が多くいらっしゃいました。ヘルパーは学歴の高い50代が中心でした。私は質の高いケアができるヘルパーが必要と考えていましたので、スタッフ教育に力を入れてきました。

さらにそれにはキャリアアップが必要です。例えば開設以来欠かしたことがない月1回の学習会は必須で今でも続いています。全員出席で第4土曜日は皆手弁当で集まります。学習会は介護、看護の知識と技術、さらに皆が発言するワークショップ方式を取り入れ毎回熱気に溢れた4時間はあっという間に過ぎます。

その甲斐あってか、スタッフのうち15名が介護福祉士の資格をそのうち4名がケアマネージャーの資格を、さらに1名は社会福祉士の資格を取得し次々キャリアアップしています。
彼らのお陰で私が理想としていた介護・看護の在宅ケアをトータルで提供すること、つまり訪問介護、訪問看護、居宅介護支援事業の協働作業で在宅ケアをスタートすることが出来ました。(現在スタッフ40名:ヘルパー・介護福祉士・ケアマネージャ併せて30名/看護師7名/事務員2名・・・30代から70代)

-介護支援、訪問介護、訪問看護の3本柱ですね。

そうです!同一事業所で、理念を一つにケアマネージャー・ヘルパー・看護師が連携すれば患者さんは安心してケアを受け、満足していただけます。

経験上、1人の利用者のケアに関わるスタッフが多ければ多いほど、さらに介護・看護の方針がバラバラで、しかもそれぞれが違う方向を向いてケアすれば、患者さんは「このヘルパーさんはやってくれたのに・・・」など不満が出ます。
学習会で理念や介護技術の方法を統一しておけば、誰が訪問しても上手、下手は経験等で差はあっても、例えば身体の清拭や洗髪などの方法が同じで、同じ心で接すれば患者さんは安心します。一人の利用者ごとにケアマニュアルを作成しています。

利用者中心に考えれば、日々のサポートはもちろん、ケアプランも含めて同じ事業所内で3者がコミュニケーションをより良く互いに連携することは在宅ケアのレベルアップにもなるのです。
そしてそれは利用者のケアやプランに活かされます。3つの事業が理念・心ひとつに協働すれば、在宅ケアのレベルアップになり当センターの在宅ケアの目的でもあります。

-まさに介護の理想に近い形ですね!

どうでしょうか(笑)。看護・介護への思いとは別に介護保険制度遵守することは避けられない現実があります。例えば介護報酬の規定では、ケアマネージャーが複数の事業者と提携することが推奨されています。ですが今まで述べてきたように、私は利用者へのケアの方針を統一するため同一事業所内で介護・看護・ケアマネージャが理念一つに連携、協働し、一貫したサービスを提供することをケアの目標にしてきました。それが一部の利用者に適応できない事態が発生しています。

当センターでは利用者のほとんどが他社のケアマネージャー、ヘルパーに変更することを拒否されます。利用者中心にと思うほどに他事業所への変更はそう簡単ではありません。現在3~4人オーバーしていますので介護報酬は2割減算されています。新利用の申し込みを頂いても現状では他の事業所のヘルパーさんを依頼するほかありません。介護保険制度の縛りをもどかしく感じることがあります。この議論を仕方がないこととするのには問題を感じております。

スタッフの意識改革やメンタルケアも徹底

-「ケア・アカデミー 葉っぱのフレディ」のコンセプトはありますか。

ケア・アカデミーには「フレディの3K」というモットーがあります。介護・看護業界というとマイナスイメージが持たれがちですが、看護・介護の世界では3Kは危険、汚い、きついなどと言われますが、当社では「感動」「感激」「感謝」の頭文字の「3K」としました。
ケアを通して患者さんとの心の触れ合いを感じ、利用者から「ありがとう」の一言であってもそれにヘルパーやナースが感動すれば『ああ看護してきて良かった』と利用者への感謝の気持ちになります。それを私は大切にしています。

常に患者さんの気持ち、立場に立つことを忘れずに「感動」、「感激」、「感謝」という気持ちを大事にしたサービスを提供していきたいと考えております。

-職員のメンタルヘルスにも力を入れているそうですね。

看護や介護は、利用者さんとヘルパー・ナース、さらにスタッフ同士、他事業所との関わり、全てが人間関係です。互いに信頼し合う関係を作り保つことが大切です。

私は経営者サイドとしてスタッフ教育の一貫として、彼らの健康面・心理面に気配りしています。彼らが安心して長く働き続けられる環境を提供する必要があります。
そこで仕事や人間関係の悩みや葛藤で体調を壊すヘルパーもいたことから、スタッフ全員に、最低、年に1回のメンタルカウンセリングを行うようにしました。さらに代表の私が一人一人のスタッフの気持ちに耳を傾ける努力をし、必要時面談し、FAXや携帯のショートメールを活用し、励ましや、声掛けをすることを心がけています。

カウンセリングは、看護師であり臨床心理士である一般社団法人ライフ・プランニング・センター健康教育サービス副所長・兼 臨床心理ファミリー相談室室長の福井みどり先生にお願いしており、悩みがあってもなくても全員が福井先生とお話をする時間を設けることで、日々の業務や人間関係に関する悩みの解決はもちろん、悩みがないスタッフについては「看護の精神」へ対する理解を促進するなど幅広くメンタルフォローを行っています。

▲「患者さんへ誠心誠意をもって毎日接していると、心が通じ合う瞬間というのが本当に分かるんですよ。年に数回ですが、これこそが看護冥利です」と話す片山さん。

目標とする患者さん主体のケアを実現するために

-在宅ケアの軸となっているPOSについて教えてください。

日野原先生が提唱したPOS(problem oriented system)は、患者さんの問題に焦点を当ててチームが全体でケアを行うというシステムで、私どももこのスタンスで日々業務にあたっています。
在宅ケアは病院とは少し異なり、患者さんのご自宅で行うサービスですので、ご家族も一緒にケアの対象にします。利用者の痛みや症状の身体面だけではなく、心理面、社会面の問題にも目を向けます。利用者が主体的に在宅で安楽に自立した生活ができるよう、一人の人間である利用者を全人的に観察しその方の問題の解決を皆で一緒に行い、記録はスタッフ全員が共有することがポイントです。

ある時、高齢の利用者の方が、急に血圧が何時もより10ミリ以上上昇していました。そこには前日に娘さんが来る予定だったのが、急に来られなくなったというヘルパーの記録がありました。不安や動揺といった心理的な要因でも血圧は変化します。高齢のお母さんは、カレンダーに印をつけて1か月も前から遠方の娘さんが来るのを心待ちしていました。ところが娘さんがその日に来れなかったことは、どれだけショックだったことか・・・このことが翌朝の血圧に影響したと考えられます。
ヘルパーの記録を見た訪問看護師は、その母親の気持ちに沿ってフォローしました。介護と看護のより良い連携だと思います。

-今後の在宅ケアに一言お願いいたします。

一言でいうなら、『在宅医療チームが心を一つに、一人の人間である利用者のケアを協働すること』です。その先には質の高い在宅ケアがあり、利用者の安心と安楽、幸せがあります。

これからはさらに在宅療養者は増えることが予測されます。在宅では訪問介護・訪問看護・訪問医、病院の医師、ナース、さらに薬剤師、理学療法士など様々な医療従事者がケアに関わります。「在宅医療チーム」としてまとまる必要を感じます。
一人の人間である利用者の命を大切に思い、チームが心ひとつに同じ方向を向いて、協働することが大切です

次に、それぞれが事業所個々としてレベルアップを目指すことです。医師も看護師も共に同じ方向に向かって学習し知識と人間性を磨く必要があります。
在宅ケアは今よりレベルアップしなければいけないと思います。それは在宅ケア利用者の命の尊厳を守ることでもあるのです。

▲「スタッフの皆も患者さんも、心のつながりが一番大切。どんな時も、感動、感激、感謝の気持ちを忘れてはいけません。」まさに心にしみる一言。

取材後記

講師時代に卒業生を助けたいという想いから訪問介護センターを開業された片山さん。開業から18年年以上経った今も開業当時のメンバーが在籍しており、中には70歳以上のヘルパーさんもいらっしゃるとのこと!スタッフの知識向上のために開業当時から毎月かかさず勉強会を開催したり、メンタルケアサポートを取り入れるなど、患者さまはもちろん、スタッフの皆さんのことも本当に大切にしていらっしゃると感じました。

◎取材先紹介

株式会社ケア・アカデミー 葉っぱのフレディ
〒164-0003 東京都中野区東中野5-1-1 ユニゾンモール3F
TEL:03-3361-2297
http://www.happa.co.jp/

 

<取材・文 ココメディカマガジン編集部 /撮影 菅沢健治>

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