訪問診療Dr.が語る在宅医療の魅力と課題 -和智クリニック院長 和智恵子-

訪問診療専門の診療所開設の規制緩和により訪問診療専門の医療機関の制度が2016年4月に開始されました。

今回、ココメディカ編集部は2008年から在宅療養支援診療所として訪問診療に取り組んでこられた、和智クリニック院長の和智先生に開業時の苦労や現在の訪問診療の課題についてインタビューしてきました。

 

和智先生は元々建築がご専門。大学院で建築を学んだ後に渡米し、その時に出会った医師に感動したことで医学部受験を志し、46歳にして見事合格したという稀有なご経歴の持ち主です。現在は東京都・天王洲アイルに訪問診療クリニックを開業している彼女に、医療に対する熱い想いを伺いました。

pixta_21977290_S-1-min
▲和智惠子(わち・けいこ)さん
医療法人社団けいわ会 和智クリニック院長

建築系の大学院を卒業後、ご主人の仕事の関係で渡米。その時アメリカで出会ったドクターに感銘をうけたことで医学の道を志す。30歳代後半から子育ての合間を縫って医学部受験の勉強を始め46歳の時に東邦大学医学部に入学、52歳で医師免許を取得。
病院勤務の後、2008年に当時としては珍しい、訪問診療の和智クリニックを開業。現在は訪問診療だけでなく予約外来も受け付け、地域の医療を支えている。

46歳からの医学部入学とクリニックの開業

―どうして訪問診療の開業医になろうと思ったのですか?

大学院を卒業して渡米したのですが、その時アメリカでお世話になった開業医のドクターが、とても素敵な先生だったんです。現在は異なるようですが、アメリカでは「マイドクター」という自分の担当医がいて、当時は夜中に電話をしても必ず電話に出て相談に乗ってくださいました。それがとても心強くて私もそんな医師になりたいと強く思うようになりました。

日本の総合病院の場合はいつの間にか患者さんの担当医が変わってしまうことがよくあります。私は一人の患者さんを継続して診たいと思っているので、そのためには開業医がベストだと思ったんです。
その中でも訪問診療を専門にやっていきたいと考えたのは、患者さんに対して24時間責任を持つ仕事だからです。昔アメリカで頼りにしたように24時間ずっと頼りにされたいと思ったんです。

でも、実は、開業を決めた時に協力してもらった開業コンサルタントさんと話をしていく中で「訪問診療」という選択肢があることに気づいたんです。
あの時の会話がなかったら、訪問診療ではない開業医になっていたかもしれません(笑)

―もう少し開業時の詳しいお話を聞かせてください。

私には開業に関するノウハウがなかったので、開業に詳しいコンサルタントさんにサポートをお願いしました。
ちょうど物件を探し始めた頃に「訪問診療はいかがでしょう」と声をかけてくださったコンサルタントさんがいらして。その方のおかげで「訪問診療のクリニック」を開業しようと思ったんです。

訪問診療で開業するポイントは、設備が少なくて済み、初期投資が余りかからないことでした。
その上、私の場合は幸運なことに、開業した品川区の起業支援制度の「女性」「初めての起業」「60歳を超えている」などの条件をクリアできたので、品川区の融資を利用させて頂くことができました。

これも多方面に詳しいコンサルタントと組めたおかげでしたね。おかげで資金面での不安が少ない状態で開業できたので本当に良かったと思います。
pixta_21977290_S-1-min
▲1日に診る患者数は、予定では12人前後それに1-2人の臨時コールが入ります。夕方訪問から戻ってから予約外来の診察が入ることもあります。

訪問診療は患者さんの人生に長く付き添えるから面白い

―訪問診療のやりがいはどんなことでしょうか?

一人一人の患者さんと長くおつきあいができること、様々な疾患の様々なステージに出会うことができることだと思います。

開業当初から7年くらい担当している患者さんがいますが、そうなると患者さんとも家族さんとも、かなり密なお話ができるようになります。患者さんの人生観やご家族の価値観などにも触れることができ、いつになっても勉強になります。

私が定期的に伺うことを、本当に楽しみにして下さる患者さんもたくさんおられます。患者さんやご家族さんが喜んでくれる笑顔を見られることが一番嬉しいですね。

―担当された患者さんとの、思い出に残っている出来事を教えてください。

長期間担当していたある患者さんの息子さんからの言葉が記憶に残っています。
「医療介護の専門家はシェルパ(登山の案内役)であってほしい。あくまで山を登るのは私達患者と家族です」という言葉です。

主役はあくまで患者さんとご家族。在宅医療は一人一人の人生観、家族環境によって無限のパターンがあり、在宅医療には決してスタンダードは存在しないオーダーメイドな医療です。
だからこそ、医師はその人生の医療・健康面での危機回避アドバイザーであり、主役の努力をサポートすべきなのだ、と納得しました。
医師が「どこまで何をするか」というのは、患者さんとご家族の想いの医療的な反映でもあります。

現在の在宅医療に対する課題感

―今の在宅医療にはどんな課題を感じられますか?

今はまだ大きな議論にはなっていませんが「医療の質」の問題も、これから出てくると思います。

在宅医療は第三者の目がないところで行われます。従ってより一層襟を正し、「この患者さんが自分の親だったら、子供だったら、これでいいか?」と常に問い直すことが必要だと思います。

―今後力を入れていきたいことを教えてください

最近、当クリニックの部屋を使って「勉強会」をはじめました。認知症の勉強など在宅医療の現場に必要知識や事例の共有を行っています。
来月からはケアマネージャーさんや看護師さん、ヘルパーさんにも参加していただこうと思っています。この勉強会は、お昼の12:30~13:30という時間に行いますので、夕方から始まる勉強会よりはお子さんのいらっしゃる方やご家庭のある方でも参加しやすい設定だと思います。今後も積極的に開催し、知識を深め、同じ地域で働く看護師さんやケアマネージャーさん、介護職の皆さんと交流する機会を持ちたいと思っています。
pixta_21977290_S-1-min
▲港区・品川区を走り回る和智クリニックの訪問車。和智先生を含め非常勤医師、看護助手、ドライバーさんの3名で移動している。
訪問宅での診療後には、看護助手がカルテ入力をするなど無駄のないチームプレイで日々15件近くを訪問している。

在宅医療の質を高めて世界に発信したい

—最後に読者へのメッセージをお願いいたします。

日本の保険制度は本当に素晴らしいです。誰でもいつでもどこでも同じ費用で医療を受けることができます。協力して保険制度の持続を支えていきたいと思います。

開業前にハーバード大学の医学部書店に行き「訪問診療の本はありますか?」とお店の人に聞いたら「訪問診療なんて古いんじゃない?」と答えが返ってきました。その後のアメリカはどうでしょう?

日本の在宅医療や介護サービスは素晴らしいレベルにあると思います。これから、日本の在宅医療を世界へ発信できるように、携わる人たちが誇りを持ってレベルアップしていきたいですね!

◎取材先紹介

医療法人社団けいわ会 和智クリニック
東京都品川区東品川2-2-25 サンウッド品川 天王洲タワー1803
TEL:03-5479-6232
http://www.wachiclinic.com/

【無料公開中】人気記事を資料にまとめました!

資料ダウンロード「感染予防」