医療と介護の壁を取り払うために医師にできることは -医療法人社団明世会 成城内科 野村 明-

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閑静な住宅街が広がる一角の一際目を引くオシャレな洋館風の建物、こちらが成城内科です。東京都世田谷区を中心とした地域で、訪問診療・訪問看護・訪問リハビリテーションのサービスを展開している野村明院長は、世田谷区医師会の中で、地域の在宅医療を牽引している一人。某出版社の「頼れる診療所ランキング」1位にも選ばれた野村院長が実践する在宅医療とはどのようなものなのでしょうか?地域での職種間連携に取り組んでおられる野村明先生の想いを取材させていただきました。

<プロフィール>

▲野村 明(のむら・あきら)医師

成城内科 院長・医療法人社団 明世会 理事長

1994年聖マリアンナ医科大学卒業後、東京慈恵会医科大学附属病院、国立相模原病院、東京慈恵会医科大学附属第三病院での消化器内科勤務を経て、1999年、成城内科を開設。設立してすぐに訪問リハビリテーションを導入するなど、専門性の高いスタッフの連携による在宅医療の質の向上に力を注いでいます。

 

世田谷区を中心に訪問診療から訪問リハビリまで幅広く展開

-診療所がオシャレな洋館の中にあり驚きました!歴史のある建物なのでしょうか?

ありがとうございます(笑)この建物はもともと日本舞踊の先生の自宅兼おけいこ場だったそうで、その建物をほとんどリノベーションもせず活用させていただいています。歴史のある建物なんですが、とてもモダンですよね。

 

-とても素敵です。訪問車両も多く、スタッフの人数も多いようですが現在はどのような組織構成なのでしょうか?

今は私を含めて常勤医師が5名、非常勤医師が10名、看護師4名、理学療法士5名、事務スタッフ7名、ケアマネージャー1名、アシスタント9名という組織で、420名程度の在宅患者さんを担当しています。

医師は呼吸器内科、神経内科、総合内科、循環器内科、リウマチ内科など、様々な分野の専門医師が集まってくれていますね。当院では、訪問診療だけでなく訪問看護・訪問リハビリテーションも提供できるので、総合的な医療介護サービスでサポートできるようになってきました。

 

-大きな組織ですね。開業時から現在のような組織をイメージされていたのでしょうか?

いえいえ、実は全く考えていませんでした。開業当初は私と非常勤の医師2名、看護師、事務スタッフの5名からのスタートで。幸い患者さんが少しずつ増えていったので、医療の質を保つために人が必要になり、必要に合わせて増やしてきたというのが正直なところです。その頃はここまで様々なニーズが在宅医療の中にあるとは考えていなくて。本当に患者さんが欲しいっていうもの、私たちがあったらいいと思ったサービスを少しずつ揃えてきてその積み重ねで今に至りました。

 

-訪問リハビリも早い時期から導入されていたということですが、クリニックが訪問リハビリのサービスを提供することは当時珍しかったのでは?

在宅医療の患者さんは慢性期の方とターミナルの方に大きく分かれると思いますが、慢性期の患者さんは日々あまり変化がなく、毎日の目標設定などがあまりできずに過ごされている方が多いんです。

慢性期の患者さんにも「日々の目標」は大切で、患者さんとご家族、そして私たちでその目標を共有することで、より生活に寄り添うことができるようになります。そういう「日々の目標」が作れると良い、という考えからリハビリを取り入れていくことに意味があると感じるようになり、訪問リハビリテーションを始めました。

-リハビリを取り入れることで慢性期の患者さんに目標を作り、生活にメリハリを作っていかれたと。身体的なケア以上に精神的な支えになる取り組みなんですね。

 

-開始当初からリハビリのニーズは多かったのでしょうか?

いや、当初はそれ程ではなかったです。2000年代前半はケアマネージャーも、訪問診療と看護を入れて、その上で訪問リハを入れて…というケアプランの組み立てがまだまだ手探りの状態でした。徐々に我々医療機関がリハビリをやっていることに意味があるということをわかって頂けて、ご利用が増えていきました。当時も勉強会などをよく企画していましたけど、地道な活動が繋がって少しずつ理解が広がっていった形ですね。

 

▲職種間の連携促進のために独自のアセスメントシートを導入。「看護師向け・ケアマネージャー向けなど、やり取りする職種ごとに用語の使い方を変えるなど意思疎通のための工夫が散りばめられています。」と野村先生。

 

世田谷区で始まる新しい地域包括の取り組み -サポート医-

野村先生は、自院内で訪問看護や訪問リハビリの職種連携を進めておられる一方で、地域連携にも力を入れているとお伺いしています。

そうですね。まず、地域の医療職・介護職の皆様と共に勉強会を定期的に開催しています。看護師さんやケアマネージャーさんらにどういうことを知りたいのかアンケートをとって、そこからテーマを設定するなど、現場で今本当に求められている情報をお伝えできるように、と思っています。

でも、医療って他職種の皆さんからするとまだ敷居が高いんですよね。

僕たち医師はその敷居をできるだけ低くしたいと思いながら活動して、もう20年近くやっているんですが、医療職と介護職の間で共通の言語が持てないとか、伝えたいことがあってもうまく伝わらない、ということはなかなか解決しません。そこで最近、こうした医療と介護の連携を改善するために新しい取り組みを始めました。

世田谷区には「あんしんすこやかセンター」という地域包括が27か所ありますが、そこに「サポート医」を配置しました。世田谷区医師会と玉川医師会が協力して、ドクターを1人ずつ合計27人選任して、各センターの活動をサポートするという取り組みです。去年の10月からようやくスタートしました。

 

※世田谷区 あんしんすこやかセンター(地域包括支援センター)

http://www.city.setagaya.lg.jp/kurashi/105/880/909/d00140160.html

 

-地域包括にドクターを?具体的にどのような活動をされるのでしょうか?

地域包括支援センターに一人ずつ担当医師がサポーターとして入ります。そして、困難な事案を医療・介護職のみんなで解決する際にファシリテーター役になったり、アドバイスをしたり、地域の勉強会を企画したりと、医師が地域包括側に入ることで医療職と介護職の連携が密になることを目的に試行錯誤しながら活動を始めています。

まだ始まったばかりなので、これから課題も出てくるでしょうし、どんな活動目標を設定していくのか、などもこれからなのですが、いい取り組みが生まれそうだと期待しています。

▲多くの職種のメンバーが所属する成城内科では、毎日朝と夕方の2回のミーティングを実施。朝は全員で集まってから訪問へ出発し、夕方戻ってから医師・看護師・リハビリ・アシスタント・医事の5セクションの代表者で情報共有のミーティングをします。その時にも独自のアセスメントシートが役立っているそうです。

 

-野村先生もサポート医として活動されているのですか?

はい、もちろん。私は世田谷区医師会の在宅医療委員会の一員ですので。今後はいろんな先生にサポート医を経験していただいて、医療と介護を繋いでいく役割を医師が担えるようになって欲しいと考えています。

特にケアマネージャーをはじめとする介護職の方には、医療職との壁を感じずに連携できるようになってもらいたいという思いがあります。多職種連携といっても基本は人と人のコミュニケーションですから、まずは地域の中に「顔見知り」を増やして意志疎通を始めることが大事。先ほどお話した、意思疎通をするためには共通言語を作らないといけないとか、そういう課題はその後で出てくるんじゃないかなと思います。

 

医師は在宅医療の主役ではない。

-野村先生は、地域医療の中で医師はどうあるべきとお考えでしょう?

介護職も医療職も最終的な目標は「患者様・ご利用者様のため」で、みんな一緒です。でも、やっている方法やアプローチが違うので、そこの方法だけに視点がいくとお互いを理解ができなかったり、ぶつかってしまったりと何かしらストレスや文句が出てしまいます。

だから僕は、医師は主役ではなく、多職種がコミュニケーションを円滑にできるように意見を調整し、医療的に間違った方向に行かないようにサポートをすればいいと思っています。医師よりも長い時間を患者さんと接している看護師や介護職の皆さんがあくまで主役。私たち医師は彼らを後ろから支える「サポート役」であるべきだと思います。

在宅医療は病状と家庭環境の掛け合わせで千差万別な状況があるので、決して正解はひとつではありません。だからこそ、たくさんの選択肢の中から多職種の皆さんやご家族が納得できる答えを選べるように医師がエンパワーメントしてあげられたらと思います。そんな体制を作っていきたいですね。

 

▲「医師が地域を引っ張るのではなく、多職種の皆さんの活躍を私はバックアップしていきたいと思っています。チームで頑張れるのが在宅医療の醍醐味ですし、一番重要なところですね。」と在宅医療への思いを語っていただきました。

 

-貴院では「ALL FOR PATIENTS -すべてのスタッフは患者さまのために-」という言葉を掲げておられますが、開業当初から患者さんのために連携を大切にしたいと考えていたのですね?

はい、当院ではずっとそれを目標にしています。とにかくいろんな職種の人間が在宅医療に関わることは予想していたので、それぞれの職種の専門家がそれぞれの考え方で患者さんの生活を支えていく。そういうところはできるだけ一つの型にはめずに自由にやってほしいという思いから掲げた言葉です。

 

-専門職種の考えを後押しする役割を医師が担うべきだと。

そうですね。そもそも、こういう病気になった時には、この医療サービス、というように型に縛られたくないなと思っていて。病院だと入院した患者さんの病状に対して治療して退院させるっていう大きな流れがありますが、在宅医療は本当に多様化したニーズに対して、どうやって医療と介護と生活を組み立てていくかっていうところが醍醐味だと思うんです。それを関係する職種のみんなが応用力を高めながら、協力してやっていければいい。なので、逆に「こうでないといけない」ということは、あまり僕は言いたくないんです。

さっき言ったことと重なりますが、医者が全部こうやりなさいっていうのではなくて、あくまでもサポート役に徹することができれば一番いいんです。医師が大きな力を持ちすぎず、「地域の力」を信じて全ての職種がお互いに多様な考え方を吸収・勉強し合いながらやっていきたいなと思っています。

逆に、そういう意見が出しやすい環境をこれから作っていきたいと思っています。

 

取材後記

医師は地域医療のサポート役に、というお話が印象的な野村先生。職種間の連携のために日々工夫を凝らしておられる話を伺うことができ、野村先生の近くで働いている医療・介護職の皆さんはきっとやりがいがあるだろうと想像できました。世田谷区で取り組まれている「サポート医」の仕組みも大いに成功し、全国に広がって行くことを期待しています。

 

◎取材先紹介

医療法人社団 明世会 成城内科

〒157-0066 東京都世田谷区成城6-22-3
TEL 03-5490-9111 FAX 03-5490-9112
http://seijo-meiseikai.or.jp/

<取材・文 ココメディカマガジン編集部 /撮影 菅沢健治>

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