利用者の望みを汲み、寄り添う。医療は究極の「サービス業」 -福島吉野スマイル内科・循環器内科 院長 坂口 海雲-

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大阪・福島区に平成28年10月に新しく開業した「福島吉野スマイル内科・循環器内科」。愛らしいシンボルマークが出迎えてくれるクリニックは外来診療も行っていて、「ここはカフェ?」と思うほど明るくてオープンな雰囲気が特徴です。

院長の坂口先生は、日曜の外来診療をはじめ、コンシェルジュ・スタッフの導入、スマホやパソコンからインターネットで順番予約ができるシステム、クレッジットカード決済など、患者視点に立った「サービス」を次々と打ち出しています。元々は大病院で循環器内科の専門医だった先生が、なぜ開業医として独立・開業し、訪問診療にも携わるようになったのか。目標としているビジョンなどのお話を伺いました。

<プロフィール>

▲坂口 海雲(さかぐち・みくも)院長

福島吉野スマイル内科・循環器内科 院長

2009年、大阪市立大学医学部卒業。大阪市立大学循環器内科、ベルランド総合病院、川崎病院 臨床助教の勤務医を経て、2016年10月「福島吉野スマイル内科・循環器内科」を開設。

 

外来の「日曜診療」から見えた、訪問診療の潜在ニーズ

-おしゃれなクリニックですね! 

病院って、出掛けるだけでも気が滅入りやすいじゃないですか。まずは、誰でも気軽に「ちょっと調子悪いから念のために診てもらおうかな」と足を運んでもらえるオープンな雰囲気のクリニックにしたかったんです。カフェのようにリラックスして待ち時間を過ごしていただきたいという想いから、本格的なコーヒーマシンも置いています。結構、美味しいんですよ(笑)

 

-外来で「日曜診療」も!?利用者として、非常にありがたいです。

やっぱり、そうですよね。私も幼い子どもの親だから分かるのですが、子どもって日曜に限って熱を出したり、体調を崩しやすいんですよね。なぜ日曜に診てくれるクリニックがないのか、ずっと不思議でした。「日曜=病気になりにくい曜日」だったらいいけれど、そうじゃないですからね。まだ開業から半年ほどですが、日曜の外来数は予想をはるかに上回る平均60〜70人。兵庫県や奈良県からお越しになる患者さんもいらっしゃいます。これほどのニーズがあったのか!と反響の大きさに驚いています。

開業当初から「訪問診療」にも力を入れていますが、日曜診療がきっかけで、ご高齢の訪問患者さんが少しずつ増えているんですよ。

 

-日曜診療が訪問診療に?なぜでしょうか?

救急車を呼ぶほどではないけれど、自分の足で病院へ行くことができない。そもそも“かかりつけ医”と呼べるドクターとの付き合いがない。そんな“プレ訪問診療”とでも言うべき状態の患者さんが結構いらして、その多くは、ご家族が付き添い、車で連れて来てくれることで受診が可能になります。共働きが当たり前の現代社会では、平日は無理だけど日曜なら動ける、というご家族の方が圧倒的に多いですよね。だから日曜診療では家族に付き添われた高齢者の患者さんが多いんです。

訪問診療の潜在的な患者ニーズが、それだけ多いことを物語っているのではないでしょうか。

 

-訪問診療と外来診療の中間層のニーズは確かに多そうですね。

そう思います。在宅医療を受けるほどではないけれど、外来に通えるほどの体力もなくなってきている。いわゆる、要介護の前段階にあたる「フレイル(虚弱)」や「サルコペニア(筋力低下)」状態です。そうした早めの段階から、かかりつけ医としてお付き合いを始めることが予防にも繋がるのではないかと考えています。ゆくゆくは「送迎サービス」もスタートしたいと思っているんです。ご家族が動けない日曜以外も電話一本で患者さん宅へお迎えに行けますから。

 

-内科クリニックで送迎サービスですか!? それ、利用したいです!

特に都心部ではマイカーを持っていない世帯も多いですし、ニーズはあるはずです。クリニックの往診車にシンボルロゴと連絡先、「無料送迎します」と書いて街中を走り回っているだけで、目にも留まりやすい。自分が動けない時に家族の体調が崩れたら「電話してみようかな」と思い出してもらえるかも知れませんし、処置が早いほど大事に至る水際で食い止められる可能性も高い。患者さんもご家族も医者である私も、みんなが“笑顔”になれますよね。

 

▲「外来診療」「訪問診療」「自費診療(ダイエット外来等)」がクリニックの3本柱。日曜診療は坂口先生と非常勤医で対応しているが、目が回る忙しさだそう。

 

「患者さんが本当に望む医療とは?」を追求して、開業を決意

-開業医を志すようになったのは、何かきっかけが? 

病院勤務時代に、ある患者さんと出会い、病気を治すことだけが医者の使命ではないことに気づかされたんです。重症大動脈弁狭窄症という心臓疾患がある78歳の男性患者さんで、病院側の判断としては「手術しか治療方法はない」。でも、成功しても寝たきりになる可能性もあるなど、リスクと危険を伴う手術でもありました。悩んだ末に私は、主治医として患者さん自身に正直にそのことを伝えました。患者さんの望みは「手術は嫌です。来年の春に桜の下でお花見ができれば、それで十分幸せです」でした。その言葉を聞き、私も最期までお付き合いさせていただこう!と覚悟を持つことができました。

それから約半年。患者さんの症状を見ながら薬物調整を行う、綱渡りのような日々が続きましたが、望みだったお花見を叶えてあげることができました。さらに、その翌年のお花見もと一緒に頑張ったのですが、それは叶いませんでした・・・。でも、患者さんの幸せそうな笑顔と接して、「医者こそ究極のサービス業だ」と実感したんです。

 

-そのサービスを追求したくて、ご自身でクリニックを?

もちろん、病気を治せるのが一番いいに決まっていますが、残念ながらそれが難しい場合もあります。例えば、末期がんの患者さんの中には、あらゆる抗がん剤治療を試して治療に望みをかける人もいらっしゃれば、「痛みだけ何とかしてほしい」「家に帰って普段通り過ごして最期を迎えたい」など治療以外の望みをお持ちの人もいらっしゃる。病院は前者のニーズには応えられますが、後者のニーズには不完全です。私は、医者として後者の患者さんの望みに寄り添いたい!と思ったんです。29歳で決心し、2年間の準備期間を経て開業しました。

 

▲病院勤務でキャリアを磨く選択肢ではなく、開業医としての未来を選んだ坂口先生。「あの患者さんと出会っていなければ、今の私はいないかも知れません。感謝の一言です」

 

開業準備中に得た人脈とリアリティーの高い情報が財産に

-開業医を志すドクターのためにも、準備期間について具体的に教えてください。 

大病院は「病気を治す」教育を受ける機関で、私が専門にしていた循環器内科は、症状別にロジカルな治療の法則があり、正解が分かりやすく、効果も見えやすい分野です。例えば、不整脈にはこの薬というのが決まっていて、セオリー通りに処置すれば30秒ほどで症状が落ち着くんです。

でも、開業医には病歴や生活習慣なども総合的に俯瞰して診断を下せる視点が必要で、治療の正解と効果も分かりにくい。イチから学び直すために、病院以外の医療・介護の現場を知っている人たちのリアルな声を聞ける場に積極的に参加しました。

まず、介護のケアマネージャーさんやヘルパーさんが一堂に会する、数百人規模の勉強会に参加しました。そういう集まりに医者が顔を出すこと自体が珍しいらしく、良い意味で目立ったみたいです(笑)。そこで声をかけてもらい、開業医を目指すドクターを対象にした大阪在宅塾の存在を知り、私が求めていたサービス業としての視点や経営理論など、病院では学ぶことのできない知識を吸収することができました。

 

-それだけの準備があれば、万全と言えるのではありませんか?

いいえ、開業当初は戸惑いの連続でしたよ。訪問診療で、マーゲンチューブ(胃管カテーテル)を交換した場合の診療報酬は、具体的にどう算定したらいいのか、とか。毎日のように保険医協会に問い合わせをしていましたし、そういうサポート機関があることも、勤務医だった頃は知りませんでしたから。

 

-やはり頼りになるのは、人脈ですか。

在宅医療に関する書籍は世の中にたくさんあり、ちょっとした疑問点はネット検索でも知ることができます。ですが、特にネットで拾える情報は広いけれど、薄くて浅い。本当に知りたいことは、どこにも書いてありませんでした。保険算定の方法とか、初期投資と損益分岐点のバランスの取り方とか。リアリティーのある本当に役に立つ知識は、やはり“人”を通してしか得られないと痛感しました。

 

「大阪在宅塾」の同期とは今でも連絡を取り合っていますし、主宰者である高井先生は在宅医療における私のメンターといえる存在でもあります。そうした貴重な人脈を開業前から築けたことが何よりも財産になっていると思います。

 

「大阪在宅塾」については、

 医療法人慶春会 福永記念診療所 理事長 高井 俊輔先生の記事を参考に

 

患者との情報格差を埋め、より良い医療サービスを提供したい

-外来・訪問診療を通じて感じる、気づきや課題はありますか?

患者さんとご家族が持っている情報量が、圧倒的に少ないことです。病院について、ケアプランセンターについて、何が分からないのかも、よく分かっていらっしゃらない。例えば、介護施設へ入所する場合、具体的にどんな手続きと段取りが必要なのか。利用者さんにとってベストな施設をどう探せばいいのか。

ご家族は、その時に出会ったケアマネージャーさんしか頼る術がありませんが、医者である私は様々なケアプランセンターの情報やネットワークを持っています。特に要介護認定については、主治医意見書があるか・ないかで、その後のケアプランが変わってくる可能性もあります。

 

-そうした情報格差を埋めれば、より良い医療・介護サービスが提供できる?

そう思います。「介護で困っていることがあるなら、ここに電話してみたらいいよ」と名刺のコピーを1枚渡してあげたり、ちょっとした情報アナウンスをしてあげられたりすることも大切な医療サービスの一環だと私は思うんです。医者が持っているリソース(情報資源)の方が圧倒的に多いわけですから。

 

-まるでコンシェルジュですね。

うちのクリニック、本当に専属コンシェルジュがいるんですよ。単に受付をして問診票に記入してもらう役割のスタッフではなく、もっと前へ出て積極的に患者さんとコミュニケーションを取ってもらう専門職です。

診察中に患者さんへ私からも「何か困っていることはないですか?」と訊ねるのですが、白衣を着た医者の前だと、人はなぜか無意識に強がってしまうみたいで(苦笑)。どんな困りごとも気軽に相談できる距離の近いクリニックでありたいとの想いから、コンシェルジュを導入しました。インターネットで順番予約ができても、少なからず待ち時間は発生します。その時間を有効活用できるメリットもあります。コンシェルジュが聞き出してくれた小さなオーダーにこそ、感動が芽生えるニーズの種があると私は確信しています。

 

▲「患者さんが何をしてほしいか?が分かれば、手伝うことができます。そして、そうした積み重ねが医者やクリニックに対する満足度につながると私は思うんです」と坂口先生。

 

10年後に10施設のグループネットワークを完成させたい

-坂口先生やクリニックの今後のビジョンを、ぜひ聞かせてください。

将来的には、複数のグループクリニック展開をしたいと考えています。「中崎スマイル整形外科」「本町スマイル耳鼻科」など、「(地域名)スマイル(診療科目)」のブランド名称で、10年後に10施設のグループネットワークを構築したい。そのために、まずは5年以内に3クリニック展開が目標です。

 

-かなり具体的ですね! 

「外来診療」「訪問診療」「自費診療」の3柱が、集患や経営の安定性を考慮した上でもベストバランスだと思っているんですが、「訪問診療」では365日・24時間対応が不可避です。私も今は若さと体力で乗り切れますが、10年後・20年後は分かりません。困っている人を助けることが本分なのに、助ける側が疲弊してしまっては本末転倒です。だから複数の開業医でネットワークを組んで互いの専門性を活かし、診療を助け合えれば、医療の質も向上し、息の長いサービスを持続することができます。10人いれば、1人ずつ長期休暇を取ることも可能になります。

患者さんの“笑顔”が何よりも大切。患者さんを支える家族の“笑顔”も大切。それと同じくらい、私たち自身と従業員、さらにその家族の“笑顔”も大切にしたい。それがクリニック名である“スマイル”に込めた私の願いでもあるんです。

 

-ネットワーク構築のための働きかけも?

実は「大阪クリニック経営勉強会」と銘打ち、開業前から勉強会を定期的に開催しています。もとは私自身が足りない知識を吸収し、ネットワークを拡げられたらという思惑から立ち上げたんですけど(笑)。

現在も、このクリニックで外来診療が終わってから円卓を囲んで勉強会を続けています。「内科の自費診療サービス」「スタッフの人事考課」など、毎回テーマを2つ決めて10名程度の参加者が、膝を突き合わせディスカッションします。私はアジテーターであり、ファシリテーターの役割です。医療・介護関係者だけでなく、保険のプロ、集客コンサルティング、WEBマーケティングなど、多職種の方が参加してくれる刺激的な場になっていますよ。

 

-これから在宅医療を目指すドクターに伝えたいことはありますか?

自分の知識に頼りすぎず、自分自身の限界を決めず、いろんな“人”と出会い、柔軟に視野を広げることが大切です。サービス精神旺盛なドクターを目指してほしいですね。何度でも繰り返しますが、医療は究極のサービス業ですから! 

 

取材後記

ドクターであり、アイデアマンでもある坂口先生。患者さんや家族のどんな小さな声も聞き漏らさず、実現できる方法を模索し続ける。「どうして、そこまでして声を拾うんですか?」という愚問に対して「サービス業って、そういうものでしょ?」と迷わず即答してくださった、真っ直ぐな姿勢に感銘を受けました。先生の夢であるクリニックのシンボルマーク“スマイル”が描かれた往診車が、大阪の街のあちこちを走り回っている光景を目にする日も、そう遠くなさそうです。

 

◎取材先紹介

福島吉野スマイル内科・循環器内科 

大阪府大阪市福島区吉野5-11-22
電話:06−6147−4400
http://sakaguchi-smile-clinic.com

 

(取材・文/野村ゆき、撮影・前川聡)

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