医師が汲み取れない患者の不安を解決するメディカルコーディネーターとは -医療法人敬生会 さんクリニック 院長 中村 敬-

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名鉄瀬戸線「清水駅」から歩いてすぐの場所にある医療法人敬生会さんクリニック。昔からそこに住む人が多い地域なので、お年寄りの数も多い。最初は在宅医療専門のクリニックとして開設したが、外来を希望する地域の声が多く聞かれたため、午前中のみ外来を行い、午後は訪問診療をメインに行っている。今回は、さんクリニックの院長である中村先生に、より良い在宅医療を実現するためのメディカルコーディネーターとの連携などについてお話を伺いました。

<プロフィール>

▲中村 敬(なかむら・たかし)さん

医療法人敬生会 さんクリニック 院長 

藤田保健衛生大学医学部卒業後、大学院へ進み公衆衛生学を学ぶ。2003年に、日進おりど病院で初めて在宅医療に携わる。2004年に、さんクリニックに勤務。2013年、院長に就任。

 

在宅医療に感じた病院医療とは違うやりがい

-在宅医療をはじめられたきっかけを教えてください。

私はもともと産業医を目指していたんです。ですが、今から14年ほど前に内科の実習で勤務していた病院で「往診に行って来てほしい」と言われて、初めて在宅医療に携わったことがきっかけです。その時に、患者さんだけでなく、そのご家族との対話が在宅医療では非常に大切だということを知り、病院医療との違いを感じたんです。

 

-具体的にどんな違いを感じられたんですか。

病院で勤務している時は、病気の患者さんが目の前にいて、その病気を何とか改善しようと動いていました。しかし、在宅というのは、現状を最期まで維持しながら、いかに良い最期を迎えてもらえるかを患者さんやそのご家族と話し合いながら行う医療だと思うんです。そういう点で、病院とはちょっと違うタイプの医療だということを感じました。同時にこの在宅医療に対してやりがいを感じたので、自分に向いているんじゃないかと思い、この道に進みました。

 

▲個性的なヘアスタイルで飾らない人柄の中村医師。スタッフの方によると、患者さんやご家族からも「フワフワ頭の先生」と親しまれているのだそう。

 

納得できる“最期”を一緒に考える

-在宅医として先生が一番大切にされていることはなんですか。

患者さんやそのご家族は、病院に通院したり受診した際に、医師から「あなたはこういう病気で、こういう数値が悪いですから、こうですよ。」という説明を専門用語で一気にされても、何のことだか分からないし、何をどう聞いて良いか分かりません。結局、医師に対して何も聞けないまま家に帰っている方が多いんです。

だから私はできるだけ丁寧に説明を行い、患者さんとご家族に病状をしっかり把握していただいたうえで、どういう最期を迎えたいかなどを対等に話し合います。患者さんやご家族が納得されるカタチで、最期をきれいに迎えていただくことが大切だと思っています。

 

-患者さんやご家族に納得していただく在宅医療を実現するために、取り組まれていることは?

僕の場合は、患者さんやご家族との情報交換を密にしています。患者さんの所へ行って「調子はいかがですか?」と聞いて診療をスタートさせるのではなく、訪問する際に事前に施設や患者さんのご家族から情報をいただいておいて、予習をしてから診療に伺うようにしています。また、診療時に薬の種類など何か変更するようなことがあった場合、僕から直接ご家族にお電話してご報告していますね。

 

-先生が直接お電話されるんですね。

そうです。その方が、ご家族の不安も払拭しやすいですし、同時に信頼関係が築きやすいので。そして、最期の状態になられた時には、ご家族と話し合い今後どういう状態になっていくかなどを説明し、その内容を書面化し、確認していただいてます。

 

-書面というのは、病院でいう同意書のようなものですか。

いえ、もっとわかりやすい言葉で書かれた誰が読んでも分かるような見解書というものです。だから、患者さんによって一人ひとり書類の内容は全く違います。そして、患者さんの状態によっては内容も変化するので、その都度話し合ってまた新たな書類を作成します。書面を交わす時には、ご家族と医師だけでなく施設の方やメディカルコーディネーターも同席し、みんなで確認しながら同意を得ます。時には、コピーを施設にお渡しすることもあります。見解の相違を防ぐために、第三者を置くようにしているんです。

 

▲「メディカルコーディネーターの採用基準は、“人”です。」と語る中村医師。何より話を聞くことが大切な仕事なので、医療業界の経験よりも人の部分を何より重要視している。

 

“メディカルコーディネーター”を必要とする理由

-貴院では、メディカルコーディネーターという役割を設置しておられるのですね?

はい。開院当初は、在宅医療を広めるため施設や病院に対するネットワークづくりを目的としたポジションでした。しかし、患者数が増えてくると、患者さんと接する時間が長いメディカルコーディネーターに、患者さんが医師の僕たちに直接言えないことを相談するケースが増えてきたんです。今では、患者さんやそのご家族の相談に乗ることが、彼らの業務の半分を占めるようになっています。

 

-患者さんが先生に直接言えないなんてことがあるんですね。

そりゃありますよ。患者さんは医師に診てもらっているという意識があり、何となく納得できない点があっても医師には遠慮して言えなくなってることもあるんです。そんな声を医師と患者との中間にいるメディカルコーディネーターが拾い上げ、僕たち医師に伝えてくれることで、患者さんの不安や心配事を少しでも解消していきたいんですよね。そんな想いでメディカルコーディネーターを採用しています。今後は、医師がより診療に専念できるように、書類作成などの事務業務面などもサポートしていってもらえるようにしていきたいと考えています。在宅医療を広げていくためには、こうしたチームワークが必要なんです。

 

-中部エリアでのメディカルコーディネーターの認知度というのはいかがですか。

まだまだ低いですよ。メディカルコーディネーターというか、在宅医療自体の認知度がそもそも低いですね。在宅医療をやられている医師の数も関東や関西などと比べたら格段に少ないと思います。

 

-中部エリアに在宅医療をもっと広げていくためには、何が必要だと思われますか。

地域の病院との病診連携や地域の診療所との診診連携が大切だと思っています。同じ病院の医師とだけでなく同じエリアの他院の医師とも連携して、在宅医療を行っていけるようになれば、もっと多くの患者さんに在宅医療を提供することができるようになるんですが…それをしようと思うと診療報酬などで面倒な問題が出てきてしまうので、同じ病院に何名か在宅医を在籍させ在宅医療を行っていくのがベストだということになります。そのためにも、在宅医が在籍する病院がもっと増えてくれるといいなと思っています。

 

-中村先生は在宅医のやりがいは何だと思われますか。

通常の病院勤務ですと、内科や外科・耳鼻科というように専門が決まっていて、自分の専門分野だけを担当しますが、在宅医療では様々な疾患を抱える患者さんを診ていくので、自分の専門外の知識も勉強することになります。当院で働いている若い先生達も「勉強になる」とよくおっしゃっていますよ。

総合的に診るというチカラがつき医師としてのスキルアップを実感できるので、それがやりがいにも繋がります。また、患者さんやご家族とのやりとりでコミュニケーション力も高まるので、将来的に独立などを考えている医師にとっても、より良い経験を重ねることができる現場だと思います。

 

-患者さんやそのご家族から感謝されることも多いのでは。

医師として当たり前のことをやっているだけなので、感謝されるのは照れくさくて苦手なんです。在宅医療をやっていると患者さんやご家族との距離は自然と近くなりますから、感謝のお手紙などをいただくこともあって、本当に嬉しいんですけど、医師としてやるべきことをやってるだけの話なので、照れくさい方が上回りますね。

 

▲医師がより医師の仕事に専念できるように、医師とメディカルコーディネーターとの連携を築き、業務を分担していくことが、より良い在宅医療の提供に繋がるという。

 

不安なく在宅医療を選択してもらえるように

-今後、先生が在宅医療で取り組んでいきたいことは何ですか。

外来で来られていた患者さんが将来的に通院できなくなった時に、在宅に切り替えて診療するといった流れを作っていきたいと考えています。

 

-クリニックに外来を設けられているのもそれが理由ですか。

そうです。今は病院や施設から見ず知らずの在宅医を紹介されて、在宅に切り替えている患者さんが大半ですが、通っていた病院の外来から在宅に切り替えることができれば、患者さんやご家族としても不安が少ないですし、医師側も情報共有がスムーズで診療しやすい。そんな自然な流れで在宅医療に移行できるシステムづくりをしていきたいですね。外来に通っている時から信頼関係が築けていれば、より良い最期の迎え方を在宅医療でサポートできるようになるのではないでしょうか。

 


取材後記

「患者さんと薬のことなどで、喧嘩になることもあるんですよ。でも、その後すごく仲良くなりましたけどね。」という中村先生。真剣に患者さんと向き合っているからこそ、そういうことも時にはあるのでしょう。先生との会話の端々から「医師として患者を診る」ということだけでなく、「人対人」というメンタルの部分も非常に大切にされているという印象を受けました。今後もメディカルコーディネーターとの絶妙なチームワークで、中部エリアにおける在宅医療の認知度を高めていってくれるだろうと感じました。

 

◎取材先紹介

医療法人敬生会 さんクリニック

〒462-0844
名古屋市北区清水2-2-8 
TEL:052-935-8605 FAX:052-935-8618
http://www.zaitaku-cn.com/

 

(取材・文/田中真樹子、撮影/日置成剛)

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