在宅医療に向いている医師・向かない医師とは?-医療法人社団壮仁会 三鷹あゆみクリニック 院長 高橋壮芳先生-

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東京23区に隣接しながらも自然豊かなエリアとして人気の三鷹市。
医療法人社団壮仁会三鷹あゆみクリニックは2011年にこの土地に開業しました。
現在は本院・分院合わせて460名ほどの在宅患者を担当されています。
院長の高橋先生は、複数の病院や在支診での勤務経験を経て独立開業。
医師と多職種スタッフが同じ目線から患者ありきの医療を提供するクリニックを作り上げています。
今回は、高橋先生の視点から、在宅医療に携わる医師に求められる資質や心構えのお話を伺いました。
 

<プロフィール>

▲高橋壮芳(たかはし・たけよし)先生

医療法人社団壮仁会 三鷹あゆみクリニック 院長

2002年名古屋大学医学部卒業後、北区にある王子生協病院で家庭医療に従事。
その後、中野区のさくらクリニックでの勤務を経て、2011年に三鷹あゆみクリニックを開業し今に至る。

 

 

在宅医療は自分でやるまで最悪のイメージ

在宅医療を始めたきっかけを教えてください。

実は、私にとって在宅医療はものすごく悪いイメージでした。

 

研修医時代に在宅診療所と提携している病院に勤めていましたが、その当時の地域の在宅医療の印象があまり良くなくて…。

今では在宅医療はルールや制度も整ってしっかりした医療になりましたが、昔は昼間の患者が落ち着いている時に血圧を図って薬を出すだけで、夜は連絡がつかない。

やっと連絡がついたと思ったら、救急なら救急車で病院に行ってください、としか指示を出さないような医師が本当にいたんですよ。

それは良くない話ですね…

そういう私自身も、病院勤務医だった頃は、自分がやりたい医療は本当にこういうことなのか?と悶々とする日々を送っていました。

当時の病院は同じ病気や症状であれば全員に対してある意味“杓子定規”な対応をとることが当たり前。

肺炎ならレントゲンとCTで検査をして、結果を確認したら、はい薬、のような…。

今振り返って言語化してみると、当時から患者に対してオーダーメイドで一人一人に合わせた医療を提供したいという気持ちがあったのだと思います。

 

在宅医療はまさにオーダーメイドな治療ができますよね。

最初の印象が良くなくて在宅医療とは距離を置いていたんですが、その後、機会があって自分が在宅医療に携わるようになった際、同じ症状、同じ病気でも、患者さん一人一人に合わせて点滴をするかどうか、薬を服用するかどうかさえも多様性を求められる医療なんだと気づきました。

医師が患者さんのために個別性の高い治療を提案することができ、患者さんに喜んでもらえると分かった時、私のやりたかった医療はこれだったんだな、って思ったんです。

クリニック経営の3つのこだわり

クリニックを開業する際に目指したことはありますか。

大学時代や勤務医時代に持っていた違和感を解決できる医療を実現しようと思って3つの目標をもっています。

 

一つ目は、「医師が偉そうにしないこと」(笑)。

特に連携する業者さんや多職種の方々に対する態度に気をつけ、医師やスタッフがお互いに言いたいことを言える組織を目指しました。

 

二つ目は、患者や家族中心の診療を行うこと

患者が家にいたいというなら極力それを支えるようにしようと。

 

そして三つ目は、頑張っているスタッフをきちんと評価すること

どうせ自分でクリニックをやるなら、この3つを軸にして立ち上げようと決意しました。

 

三鷹で開業されたことには何か理由があるのですか?

一番思い入れがある、生まれ故郷だったからです。地元に何か残せるって幸せ者だと思いませんか?

実は開業に当たってマーケティングも何もしていなくて。

利益だけで言うと、隣町のほうが良かったのかもしれないですが、地元である三鷹に開業し、今ではこんな自分でも地元の役に立てる立場にいることに幸せを感じています。

 

▲「地元に自分が何か残せるものがあるって幸せ者だと思っていますし、今の私の原動力になっています。」と地元への愛を語る。現在は三鷹市医師会の活動も積極的に取り組んでおられるとのこと。

現在のクリニックの組織構成を教えてください。

医師は常勤医が私ともう1名、非常勤が9名です。

看護師は常勤1名、非常勤的4名の5名、そして内勤スタッフが3名とクラークと呼んでいる外勤事務が6名います。

当院のクラークの役割は、訪問診療を効率的にするためのドライバーと診療サポートと事務を担うポジションですね。

 

スタッフが自主的に言いたいことを言える環境に

クラーク(外勤事務スタッフ)の方は医療職出身者ではないそうですね。

そうです。医療とは全く別の経験をされてきた方を採用しています。

個人的な主観かもしれませんが、医療の世界に浸ってしまうと感覚が特殊になっていくと思うんです。

私も既になっているのかもしれないですが(笑)。

だからできるだけフレッシュな方を迎え入れて、新しい感覚を大切にしたい。

 

業界慣れしていない、新鮮な感覚を大切にしたいと。

そうです。患者さんが直接医師には話しにくいことも、スタッフが間に入ることで本音を引き出してもらったり、往診の際に私が読み取れなかった患者の一瞬の不安そうな顔に気づいてフォローをしたり、とかを期待しています。

まだまだ全然できてはいないですが、フレッシュで感受性豊かな組織を作り上げたいと考えています。

スタッフには、患者と医師をつなぐ役回りになってほしいなと。

一人ひとりが自主性をもって、そしてアイデアを出しあいながら運営していければと考えています。

 

医師だけではなくスタッフ全員でクリニックを作っていくということでしょうか。

そう。だからうちでは医師からの指示待ちスタッフは要りません。

スタッフに限らずケアマネや介護施設担当者なども含めて、在宅医療にかかわるスタッフは全員がそうあるべきだと考えています。

 

お付き合いの深いケアマネさんなどは、うちの非常勤の医師も一刀両断ですよ。

「あの医者は患者さんの話を聞いてない、在宅医向きじゃない!」とズバッと言ってきます(笑)。

 

結構ズバリと言われるのですね!

こういう風土はむしろありがたいですよ。

常に外部のスタッフさんにも伝えていますが、いい話は聞きたくないから、私を含めて悪い話を教えてほしいと。

いい話なんて聞いたってしょうがないので。悪い話を聞いて、医師も含めて改善をしていかないと。

▲「事務スタッフを採用する時には“医師を使えるように、指導できるくらい、そのぐらいになってほしい”と伝えています。」と、医療畑出身ではない事務スタッフに期待を寄せる高橋先生。

 

在宅医療に向く医師・向かない医師とは

非常勤医師は現在9名。どんな先生がおられるのですか?

現在は内科、皮膚科、精神科など様々な先生が非常勤に来ていただいており、昨年3月より心臓外科の先生も勤務しています。

 

心臓外科から在宅医療とは珍しいのでは!?

珍しいですよね(笑)。

最初は大丈夫かなと少し不安だったのですが、実際に往診してもらったら患者やスタッフの評判がとても良かったですね。

 

その方のどんな点が在宅医療に向いていたのでしょうか?高橋先生は在宅医に向いている医師とはどんな医師だと思いますか?

家族やスタッフへ対する姿勢や人柄が、在宅医療に求められるものだったのでしょう。

非常勤の医師を探す際には、基本的に診療科や経験年数は重視しておらず、とにかく「患者さんやご家族と真摯に向き合えるか」という一点に集中して面接で話をしています。

 

結局、医師と患者の関係といっても人と人の繋がりじゃないですか。

医師がどれだけ知識があっても、肩書きが優秀であっても、患者さんと真摯に向き合っていけるかどうかという点がなにより大事だと思っています。

そういう人であれば、もし診療中にすぐに答えられないことやできないことがあっても、次回までに調べてくるとかしっかり対応していれば、誰も文句を言う人はいないんですよ。

先ほどの心臓外科の非常勤医はそういうことができる医師だったわけですね。

 

 

なかなか面接で見極めること難しい部分ですよね。

私もかなりたくさんの医師と面談して、やっと最近分りかけている感じはしますが、正直まだまだ見極めは難しいですね。

ですので、採用後、初回の訪問の前に「まず患者や家族とおしゃべりをするように」と伝えています。

訪問診療の場合、医師が受け身でいたら何もすることがないんです。

診察もやろうと思えば数分で終わりますからね。

だけど、在宅医療で大事なことはそうではないじゃないから。

 

前回の往診から2週間の期間に起きたことをそれぞれの立場から確認し合うことで、患者・家族、そして医師・スタッフの価値観や想いが次第に融合してくるんですよね。

こういった関係性を往診の際に何度も何度も作りあげることで、病状が急変した際などでも、言葉で確認しなくてもどう考えているかが何となく分かるようになって、自然とその形で看取りを行うようになります。

日々の関係性があるからこそ、大事の時の阿吽の呼吸というか、やりとりができるのだと思うのです。

 

医者が一番えらいわけじゃないことを意識して。

とことん患者さんと向き合うことを求められているのですね。

それともうひとつ。非常勤医にお願いする時も、「うちのクリニックでは医師が一番偉いわけではないので、スタッフに対して必要以上の意見や文句を言わないように」と言っています。

当院では事務スタッフが電話を受けて患者さんが臨時往診に来てほしいと言うのなら、医師は必ず往診に行くようにしています。

 

というのも医療も本質はサービス業です。

医師が行きたい、行きたくないとか医学的に行く必要があるか判断するのではなく、患者さんが来てほしいと言っていて、事務スタッフが行くべきだと判断したのであれば必ず行ってもらいます。

そういう点は採用する際に話をして、「こういう診療所のスタイルですが耐えられますか?」と確認しています。

 

こういう考えは、別に在宅医療に限りませんけどね。

患者ときちんと寄り添う気持ちがある医師は、たぶん在宅診療に限らず病院でもきちんと患者と向き合っているので評判のいい医師なんだと思います。

 

ただ私の場合は、勤務医時代にあまりこういった想いを持った先生に巡り合うことができず、外来診療中心の病院を出て、在宅医療を目指したという経緯があります。

今は在宅医療の現場で、ずっと理想としていた患者と向き合う診療を実現しようとしています。

 

とにかく医師である前に人間として、人と人との繋がりを大切にした対応ができる方が、今後の在宅医療では求められるはずですよ。

 

取材後記

生まれ故郷である三鷹市に開業することで地元に何かを残したいとおっしゃる高橋先生。

将来的には、自然のより多い三鷹市西部に移転して自然の中で診療を行いたいとお話をされる高橋先生は、本当に地元を愛されていると感じました。

非常にフランクでお話し好きで、取材も盛り上がって自然と長時間になってしまいました。

高橋先生のフランクなお人柄が多くの魅力的な人材を引きつけているのだと感じることができた取材でした。

 

◎取材先紹介

医療法人社団壮仁会 三鷹あゆみクリニック

TEL:0422-45-2922

              <取材・文 ココメディカマガジン編集部 /撮影 菅沢健治>

 

 

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