孤独死ゼロを目指して!福岡発の高齢者見守りサービス 『まごころ電話』 −株式会社あんしんサポート 古賀功一・奈良利治−

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高齢者や障害者をはじめ、周囲の配慮を要する人々に対する賃貸住宅の“貸し渋り”が問題視されている現状を改善するため、2017年2月「住宅セーフティネット法」の改正案が閣議決定し、年内に施行される見通しです。今後、高齢者向けの見守りサービス事業が活発化し、賃貸住宅への配慮・対応が求められる時代がやってくるでしょう。

福岡に本社を置く「株式会社 あんしんサポート」は高齢者見守りサービスの重要性に着眼し、コールセンター事業や在宅医療支援事業などを展開している企業です。今年5月スタートした新サービス『まごころ電話』は、空き部屋問題に悩む不動産業者と提携し、見守りサービスが行き届いた賃貸住宅を高齢者に提供できる体制を確立。画期的なサービスとして注目を集めています。

今回は株式会社あんしんサポートの古賀功一さん・奈良利治さんに高齢者を取り巻く課題や医療・介護との理想的な連携について、お話を伺いました。

 

<プロフィール>

▲【写真左】奈良 利治(なら・としはる)株式会社 あんしんサポート 

介護施設で従事後、全国の病院、クリニック、自治体などを飛び回り、見守りサービスの専用端末『愛ことば』と新サービス『まごころ電話』の普及活動に務めている。

 

▲【写真右】古賀 功一(こが・こういち)株式会社 あんしんサポート 代表取締役

前職では、全国7000人が利用する安否確認サービスのコールセンター長として、スタッフの採用・教育・利用者の支援など、多岐にわたる業務をこなし、今回高齢者見守りサービスに特化した会社「株式会社あんしんサポート」を起業

 

携帯電話やスマートフォンを活用した新スタイルの見守りサービス

—5月にスタートした『まごころ電話』とは、どのようなサービスですか?

古賀氏: 弊社は、2008年5月に設立したNPO法人(特定非営利活動法人)「在宅医療サポート協会」の活動が主軸となっています。

具体的には、高齢者見守り・緊急通報・安否確認サービスなどのサポート活動で、安否確認のための専用端末(据え置き型・携帯型など)を開発し、利用者さん宅へ配置。

福岡と大分にある直営コールセンターで、24時間・365日体制で見守りサービスを行ってきました。

 

奈良氏:今まで約10年間で全国の自治体21カ所、医療機関131件、のべ7000人の一般市民の方にご利用いただいています。

その集大成が、新サービス『まごころ電話』です。

最大の特徴は専用端末ではなく、お手持ちの携帯電話・スマートフォン・固定電話を利用できること(PHSとアナログ電話機の場合は従来型の専用端末での対応)。

設置取付けや撤去などの工事が不要で、初期・解約費用も一切かかりません。

手頃な毎月の利用料(月額2000円弱)だけで、日々の安否確認を行える仕組みを整えました。

 

—使い慣れた電話機を使えるなら、高齢者も簡単に操作できそうです。

古賀氏:ご希望の曜日・時間帯に弊社から定期的に安否確認コールを行い、音声ガイダンスに沿って、ご利用者がその日の体調に応じて、電話機の「1」(いつもと変わりがない場合)または「9」(緊急対応を頼みたい場合)を押せばOKです。

「9」の緊急通報時はオペレーター対応に切り替え、キーパソンとなる方(家族・近隣支援者・地域のケアマネージャー・成人後見人など)へ連絡し、ご利用者の安否確認が取れるまでやりとりが続きます。

また、お変わりがない「1」の場合も、安否確認の結果を必ずキーパソンにメールで報告します。

 

—どれくらいの頻度で安否確認を行うのですか?

古賀氏:設定は毎日でも可能ですが、操作に慣れてくると「毎日はちょっと・・・」と煩わしさを感じるようになりやすいものです。

この10年間、7000人の方の見守りサービスをさせていただき、理想的といえる頻度は月曜と木曜など、週2回ですね。

時間帯については、朝6時からお昼12時まで1時間刻みで任意で設定を変えられます。

 

—ご利用者は、持病を抱えているなど、体調面で不安を抱えている方が多いのでしょうか?

奈良氏:従来型の専用端末は、ご利用者の約9割が疾病をお持ちの65歳以上でした。

今回の『まごころ電話』を携帯やスマホでも利用できるようにしたのは、まだまだお元気で外出される機会も多い“アクティブシニア”を意識したからです。

今はお元気でも年齢を重ねれば、いつ突然の体調不良に見舞われるか分かりません。

ですが、アクティブシニア世代の多くは、限界まで我慢してしまいがちで、離れて暮らす子どもに迷惑をかけたくないというお気持ちが強い。

だからこそ、早い段階から安否確認コールを習慣づけることが、いざという時の早期対応につながると考えています。

 

古賀氏:持病を抱えておられるなど、より手厚い見守りが必要な方には、看護師経験がある専門オペレーターが定期的に安否確認コールを行い、健康状態の確認や病院へ通うためのタクシーの手配、緊急時の救急車の要請など対応するサービスプランがあります。

 

▲高齢者でも操作しやすい従来型の専用端末。これらの機能を集約し、手持ちの携帯端末や固定電話で操作できるよう進化したのが新サービス『まごころ電話』だ。

 

端末システム+見守る“人”のヒューマンスキルが「孤独死」を予防する

—今から10年も前に高齢者見守りサービスの重要性に気づかれた。そのきっかけは何だったのでしょう?

奈良氏:そもそもの出発点は、創設者である理事長(古賀弘司氏)が暮らす地域で、一人暮らしをされていた高齢者の「孤独死」があったことだと聞いています。

少子高齢化と核家族化が進む中、独居高齢者は今後ますます増加するに違いない。

孤独死を防ぐために何か新しい仕組みを創り出せないだろうか?という想いが事業の根底にはあります。

私にも離れて暮らす高齢の親がいますし、20年後には私自身が見守りサービスの対象年齢です。

誰にとっても他人事ではない問題なのです。

 

—それほど身近な社会問題でもあるのですね・・・。

奈良氏:ここ数年で、都心部のサ高住(サービス付き高齢者向け住宅)で起きた孤独死のニュースも度々耳にするようになりました。

定期的な安否確認が義務付けられている施設でも、孤独死が起こり得る。

普段から、声がけをしても反応がないなど、さまざまな要因があるのでしょうけれど、あってはならないことだと危機感を募らせています。

 

古賀氏:見守りサービスの要は、誰でも操作しやすい安否確認端末と、見守りを実際に行うスタッフのヒューマンスキルにかかっています。

いかに良質な端末を開発しても、見守りサービスを打ち出しても、きちんと機能し、連携ができなければ全く意味がありません。

 

—こちらのコールセンターでは、どのような体制で対応されているのですか?

古賀氏:約20名が3交代制で24時間・365日対応を行なっています。

スタッフの多くは看護・介護の有資格者で、経験に基づいた、きめ細やかな対応が可能です。

ご利用者からの相談の中には、緊急性の低いものや体調とは無関係に思える内容もあるのですが、そうした場合もご利用者さんが安心して電話をお切りになるまでスタッフは聞き役に徹します。

 

奈良氏:日常的に安否確認コールに慣れることが、実は大切なんです。

そういった意味でも、『まごころ電話』は普段から使い慣れている携帯電話や固定電話を利用するので、操作性も高く使いやすい。

 

▲高齢者見守りサービス事業をスタートして10年。利用者の「孤独死0人」を目標として掲げ、細やかなオペレーション体制と関連機関との連携を実現できている。

 

利用者の要介護度や認知レベルの変化に応じて医療・介護と連携

—ご利用者のかかりつけ医など、医療や介護との連携も?

古賀氏:もちろん対応できます。

サービス開始当初から、特に在宅医療の支援事業として全国の診療クリニックとの連携には力を注いできました。

在宅医療のドクターにとって、24時間・365日の緊急対応が体力的にも精神的にも大きな負担になります。

夜間などの緊急連絡を弊社のコールセンターが担うことで、ドクターの負担を少しでも軽減できたらという思いもあります。

 

奈良氏:在宅医療や訪問看護・訪問介護を受けておられるご利用者の場合、定期訪問日ではない合間の見守りが見守りサービスを使うことで可能になります。

ご高齢になるほど、1カ月単位で状態や病状が変化しやすいものです。

今は比較的お元気でも、1年後に要介護認定が上がるほど状態が悪くなられたり、認知症が出始めたりすることもあります。

そうした変化にも気付きやすくなります。

 

—見守る人の目や会話を増やすことが、大切なんですね。

奈良氏:「お食事ちゃんとできていますか?」「お風呂は入れていますか?」「お家の中でつまずくことはありませんか?」。

そうした、ちょっとした会話から気づける変化って意外と多いんですよね。

安否確認コールで悩み事などの相談に応じるなかで、家事代行サービスの必要性も感じて連携するようになりました。

 

古賀氏:日々の変化は離れて暮らすご家族にも情報共有し、必要に応じて地域の介護施設やケアマネージャーを紹介するなどの助言をさせていただくこともあります。

家族・地域を超えた広いネットワークで、高齢者を見守る時代になっているのだと思います。

 

高齢者が入居しやすい「見守りサービス付き賃貸住宅」の仕組みを提案

—「孤独死ゼロ」社会を実現するため課題に感じていることはありますか?

古賀氏:実は、孤独死と関連する見過ごせない重要な社会問題があります。

高齢者に対する賃貸住宅の入居拒否です。

孤独死に至ってしまった場合、発見時の状況にもよりますが“事故物件”となるケースも多く、亡くなった後の対応や手続きも大変なので、高齢者にお部屋を貸すことをリスクに感じる賃貸オーナーが結構いらっしゃいます。

 

—終の住処として、高齢者の賃貸住宅への住み替えニーズは結構ありそうなのに・・・。

奈良氏:「郊外の広い一軒家よりも、こぢんまりとした駅近のマンションの方が動きやすい」など、単身高齢者の賃貸住宅に対するニーズは確実に高まっています。

でも、なかなか貸してもらえないのが現状。

一方、賃貸オーナーも人口が減少しているなか、学生や若いファミリー層だけを相手にしていたら空き部屋対策が今後ますます深刻化する一方です。

 

—「孤独死」を水際で防げれば、借りたい・貸したいという両者の思いがマッチングする?

奈良氏:そうです。弊社の見守りサービスが介在することで、ご高齢者の住宅事情の改善につながれば、これほど嬉しいことはありません。

現在、『まごころ電話』について、ありがたいことに全国の不動産業者から加盟店契約のお問い合わせをいただいています。

高齢者の安全な住環境と仕組みを創ることが目的なので、加盟店登録料や維持費用は一切いただきません。

ご利用者お手持ちの携帯端末や固定電話を利用し、必要になるのは毎月の利用料金のみ。

不動産業者が、管理費の一部としてご利用者から徴収されるケースが一般的です。

 

古賀氏:賃貸住宅の契約手続き時点で、持病の有無・かかりつけ医の情報、ご家族・緊急時のキーパソンの連絡先などの情報共有ができていれば、いざという時の多職種との連携がスムーズになります。

入居時はお元気な方が、お家の中や外出先で体調不良などに見舞われた場合も、緊急時を知らせる「9」を押すだけでスピーディに対応することが可能です。

 

▲賃貸住宅と一体型の見守りサービスには、不動産業者のリスクヘッジのための保険も含まれている。「万が一の孤独死に備え、家賃保証や原状回復費用を補償しています。ですが、孤独死に至らないよう必ず防ぎます」と声を揃える古賀さん・奈良さん。

 

見守りサービスが当たり前になれば、孤独死ゼロに近づける

—今後の展望や目標をお聞かせください

 奈良氏:まずは福岡市内をモデル地区に、不動産業者との連携を深めて、賃貸住宅×見守りサービスが一体となった事業を定着させたいですね。

さらに現在、東京・神奈川などの都心部でも不動産業者との業務提携が進んでいますので、都市型のモデルケースへと発展させてゆけたらと考えています。

 

古賀氏:「見守りサービスがあるから高齢者に貸しやすい」「空き部屋がなくなって良かった」という事例を地道に一つずつ積み重ねてゆくことが大事だと考えています。

この『まごころ電話』の普及活動を通じて、「孤独死ゼロ」プロジェクトの輪を全国へと拡げたいですね。

 

—九州といえば、熊本地震が記憶にまだ新しいのですが、『まごころ電話』は仮設住宅などの避難先でも使えますか?

 奈良氏:ご利用者が携帯電話やスマートフォンで電話ができる環境・状況であれば可能です。

今後、そうした災害時でも継続して見守りサービスが行える、安定的な仕組みづくりが大切になってくるかも知れませんね。

 

取材後記

安否確認・見守りサービスが、少子高齢化に伴う賃貸住宅の空き部屋問題、高齢者に対する住宅の貸し渋り問題の改善にも貢献する、画期的な『まごころ電話』サービス。裏を返せば、「孤独死」の社会問題には、高齢者を取り巻く住環境の変化、深刻な核家族化や無縁社会といった、さまざまな事情が複雑に絡み合って起こるのだということを改めて感じました。古賀さん・奈良さんのお話しを通じて、見守りサービスは認知症や要介護状態になってから必要なのではなく、「元気な時から習慣づけることが予防につながる」という言葉が印象に残りました。「孤独死ゼロ」の記録をこれからも更新し続けてください!

 

◎取材先紹介

株式会社 あんしんサポート 

福岡県福岡市城南区飯倉1−6−25

電話:092-843-1881

http://anshin-senior.com/

 

(取材・文/野村ゆき、撮影・中本マナブ)

 

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