地域を巻き込む[在宅医療チーム]の作り方:チーム大津京の成功例(前編) −チーム大津京 リーダー/うさぎマネジメントケア 管理者・主任介護支援専門員 矢守 友樹−

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ココメディカマガジンで過去にもクローズアップしている、滋賀県大津市の医療・介護に携わる多職種が集まる「チーム大津京」。2012年の創設時より「在宅医療の多職種連携」をテーマに、勉強会などの活動を行なっています。

今回、インタビューさせていただいた矢守友樹さんは「チーム大津京」のリーダーとして創設時からチームを牽引。また、ケアマネージャーとして地域の介護・福祉を担ってきました。矢守さんに地域における在宅医療・介護のチーム作りの極意とケアマネージャーの役割、多職種連携を成功に導くためのポイントを伺います。

滋賀県大津市で見つけた!在宅医療の「多職種連携」が目指す姿 -チーム大津京【イベントレポート】

2016.11.15

 

<プロフィール>

▲矢守 友樹(やもり・ともき)
居宅介護支援事業所 うさぎマネジメントケア 管理者・主任介護支援専門員
チーム大津京 代表リーダー

主任介護支援専門員、社会福祉士。映像カメラマン、ディレクターを経て、34歳で福祉の世界へ。救護施設の生活相談員として、様々な疾病や障害を抱えるホームレスの方の生活支援・社会復帰支援を行う。その後、2006年から介護支援専門員として在宅介護へ携わるように。2012年に決起した「チーム大津京」創設メンバーの一人であり、現在も同チームのリーダーとして、地域の医療・介護の連携強化を呼びかけ続けている。

 

職種に関係なく、気さくに本音で語り合おう!が「チーム大津京」のモットー

改めて「チーム大津京」について教えてください。どんなメンバー構成なのでしょう?

東西に長い大津市では、現在7つの保健圏域エリアごとに医療・介護のサポートチームが存在し、それぞれが多職種連携の活動を行っていますが、それらは公的な色合いが強く、「チーム大津京」は、それらと一線を画しあくまでも私的な連携チームとして2012年10月より活動しています。

決起当初は10名程度の小さなチームでしたが、現在のメンバー数は約60名。

医療と介護を支える専門職が2カ月に一度結集し、在宅療養・介護に係る様々なテーマで定例会(勉強会)を行なっています。

ケアマネージャー、医師、歯科医師、薬剤師、看護師、栄養士、歯科衛生士、理学療法士、鍼灸師、メディカルソーシャルワーカー、ヘルパーなど、参加メンバーの職種領域は年々拡がっています。

 

創設5年目で60名突破、凄いですね。

「来る者は拒まない」がチームの方針ですから(笑)。

在宅療養患者さんのQOL(生活の質)向上を支援したい! 地域の見守りに貢献したい!という気持ちがあれば、どなたでも大歓迎です。

将来的には、医療・介護の職域さえ取り払って、地域を支える様々な人々が気軽に参加できるチームにしたいと思っています。

 

在宅ケアの現場でも「チーム大津京」のメンバー同士が連携を?

そういう現場もありますが、メンバー同士が実際の現場で顔を合わせる機会はむしろ少ないかも知れません。

お互いがチームの定例会で得た経験や知識を、それぞれの地域の在宅ケアチームの現場で生かしているんです。

そして、現場で感じた疑問や課題を持ち寄り、またチームの定例会で話し合う。

「チーム大津京」はメンバーそれぞれが立ち戻れる場所。

「連携のふるさと」のような存在ですね。

 

それだけの多職種が集まり情報共有できる場って、それまでは?

ごく小さな個人的な繋がり、逆に大きな医師会・ケアマネ協会・訪問看護協会といった組織・団体単位の繋がりはありましたが、程よい規模感でバラエティ豊かな専門職が集い、ざっくばらんに意見交換したり、参加者がお互いの職種と役割をきちんとアピールできるような場は、なかったように思います。

 

チームリーダーが医師ではなく、ケアマネージャーであることにも理由が?

在宅療養サポートで最も多職種と関わり、連携をコーディネートするのがケアマネージャーだからです。

現在は約20名のケアマネが「チーム大津京」に参加していますが、最初は私一人だけでした。

人数がなかなか増えなくて困りましたよ(苦笑)。

よく考えたら、仲間を誘おうと思っても、同じ地域の他の居宅介護支援事業所のことをあまり知らない。

他職種とは日常的に連携しているのに、ケアマネ同士の横の繋がりがほとんどなかったことに、気付かされたんです。

 

多職種連携の前に、「同職種連携」にも課題があったと?

ケアマネに限らず、どの職種にも共通する課題かも知れません。

「チーム大津京」の活動を通じて多職種を知ろうとすることで、見えていなかった足元の課題に気づくことができたのです。

実際ケアマネ同士が在宅介護で一緒に仕事をする機会はないのですが、「チーム大津京」に参加することで何か困ったことがあった時には互いに協力を惜しまない信頼関係と安心感で繋がっている感覚があります。

▲矢守さんが勤務する「うさぎマネジメントケア」は、今春開設した居宅介護支援事業所。ケアマネ3名・訪問看護師4名が在籍し、うち半数が「チーム大津京」に参加して仕事に生かしている。

 

映像制作のディレクターから福祉・介護へ。意外な共通点とは?

矢守さんご自身の経歴を聞かせてください。ケアマネになられたきっかけは?

34歳で福祉の世界へ飛び込んだのですが、それまでは全く違う仕事をしていました。

映像制作の小さなプロダクションで企業のPV(プロモーションビデオ)やCM(コマーシャル)を手がけたり、テレビの報道番組のカメラ記者として、滋賀県内を飛び回っていました。

 

え!ものすごい異業種だったんですね!?

様々なタイミングと偶然が重なり・・・今振り返ると、クリエーターとしての自分に限界を感じたのかな。

全く違う分野でイチから勉強したいと思い、たまたま見つけた求人募集が社会福祉法人でした。

未経験で年齢的にも若いとは言えない。

どうせ採用されないだろう、開き直ってチャレンジしてみよう!とダメ元で応募したら、何と受かったんです。

福祉のいろはもわからない私が…。

驚きましたが、おかげで吹っ切ることができました。

まさか、それから20年以上、介護・福祉の世界にどっぷりと浸ることになるとは、人生って面白いですね(笑)

 

やればやるほど、引き込まれていった感じですか?

映像制作ディレクターと社会福祉の相談員。

全く別世界の仕事だと思っていたら、意外な共通点が見えてきたんです。

大阪のあいりん地区でホームレスの方を保護し、救護施設に入ってもらい、自活できるまで支援する仕事だったのですが、多種多様な人生を送ってきた人々と接して、社会の縮図のような世界を目の当たりにしました。

それまで報道制作で、事故現場、社会問題、反社会勢力組織、大手企業、伝統産業、店舗、舞台といった現場に赴き、ありとあらゆる人々を取材してきた経験と知識が、そうした紆余曲折ある人々の支援の助けになったのです。そのことに気づいた頃から本当のやりがいというものを感じるようになりました。

 

そこに共通点を見出せてしまうのが凄いです・・・。

大げさに聞こえてしまうかも知れませんが、社会福祉の仕事を通じて、私の人生観が一変しました。

施設相談員として、身体、知的、精神の障害を持つ方から高齢の方まで幅広く支援をさせていただく機会を得て、もっと一人一人の思いに深く寄り添いたいと思うように。

その頃ちょうど、介護保険制度が始まったこともあり、介護支援専門員(ケアマネージャー)の資格を取りました。

そして、「社会福祉=その人らしい幸せを支援する」という原点を突き詰めて、在宅福祉・在宅介護のケアマネジメントをしたい!と今に至ったわけです。

 

ケアマネジメントってとても奥深いのですね。

実は、ケアマネも映像ディレクターとの共通点があるんです。

ディレクターだけでは良い映像は撮れません。

カメラマンさん、照明さん、音声さん、モデルさんといった様々な専門スタッフが関わって完成する、チームワークの成果物が映像作品です。

被写体がより魅力的に映るアングルはどこか、お店や企業の魅力が一番伝わる内容にするにはどうしたら良いか。

同じ目標に向かって関わりあう人たちが意見を出し合う。それらを調整して束ねるのが、ディレクターの仕事です。分野が違うだけで、ケアマネの仕事と似ていませんか?

 

どちらも、人と人を結ぶマネジメント!

そうなんです。

ご利用者一人一人にとっての「その人らしい小さな幸せ」を、どんなチームでどうやって演出するのか。

ケアマネがケアプランを考え、医師・看護師・薬剤師・栄養士といったチームの専門家の意見を聞きながら調整や変更を重ね、ベストプランを導き出す。一つの映像を完成させるアプローチと本当によく似ているんですよ。

ご利用者さんの人生最期の幸せな一場面を演出する台本のようなものが、ケアプランではないかと私は感じています。

▲福祉・介護は「様々な社会経験・人生経験が活かせる分野」と矢守さん。「人生の寄り道や回り道が多い人ほど、ケアマネに向いているかも知れません。私がそうですから(笑)」

 

人生最期の一場面を幸せなひと時を演出する、それがケアマネジメント

印象に残っているエピソードを教えてください。

がん末期の方で、退院の数日前に在宅ケアの依頼が病院からあり、残された命のリミットは1週間程度しかない男性患者さんがいらっしゃいました。

退院直前に病院へ患者さんの様子を見に伺った時には、既に自力でお話しすることができない状態でした。

ところが、退院後に初めて訪問させていただいた時、奥様がこう切り出されたんです。

「主人はお風呂が大好きな人でした。せめて最期にお風呂に入れてあげたい」と。

入浴後に血圧が下がって容態が急変するリスクは否定できません。

悩んでいると、私の訪問中に在宅ケアのために訪問看護師さん2名が訪ねていらしたんです。

看護師さんにも協力してもらえたら、ご自宅の浴室で入浴していただけるかも知れない・・・。

 

患者さんとご家族の望みを叶えてあげられるラストチャンスかも知れない・・・。

その場で在宅医の担当ドクターに電話で相談し、最終的に私はリスク回避よりも「望みを叶える」ことを優先しました。

本来は、訪問入浴の段取りを整えて仕切り直すのがベストな選択です。

でも、そんな悠長な時間も体力も患者さんには恐らく残っていらっしゃらない。

訪問看護師さんも「わかりました、やりましょう!」と、酸素吸入や点滴ポートの処置などのフォロー体制を素早く整えてくれて。

患者さんが寝てらしたベッドのシーツを担架の替わりにして、私と看護師さんの3人で力を合わせて浴室へ。

ゆっくりと温かい湯船に入れてさしあげたら、それまで喋ることもできなかったご主人が「極楽やぁ〜!」とびっくりするほど大きな声を出され、納得されたように大きく頷いておられた姿が今も目に浮かびます。

 

やばいです。今、取材班みんな泣きそうです・・・。

入浴後、一時血圧が下がりましたが訪問看護師さんの手厚いケアで大事には至らず、奥様が「来週またお願いしてもいい?」と茶目っ気たっぷりに笑って、その場が和んだほど。

「じゃあ、次は訪問入浴の段取りを整えて入ってもらいましょうね」と翌週にセッティングをしていたのですが、2度目の入浴は残念ながら叶いませんでした。

 

けれど、患者さんご自身もご家族も、嬉しかったでしょうね。

私ひとりでは、絶対に無理でした。

電話口でご家族へのフォローも含めて背中を押していただいたドクター、手を差し伸べ協力していただいた訪問看護師さんのおかげです。

ご主人が旅立たれてから1週間後くらいに、改めて奥様へご挨拶に伺ったのですが、「私の時も同じチームで看てね」と言ってくださって、感謝の気持ちでいっぱいになりました。

▲矢守さんは利用者が旅立った後、可能な限りご家族の元を訪ね、グリーフケアを行っている。「ケアマネジメントには正解がありません、だから人の声に耳を傾け続けるんです」

 

ケアマネージャーにしかできないこと、気づけない視点が必ずある

在宅医療・介護を“チーム”で支えるにあたり、ケアマネはどんな視点を大切にすべきでしょうか?

ちょっとしたことでいい。

患者さんとご家族の願い・思いに耳を傾けられるかどうかが大事だと思います。

自ら思いを喋ってくれる方ばかりだと助かりますが、心の片隅で悶々と抱えたまま旅立たれてしまう方もいらっしゃいます。

それを聞き出すのが私たちケアマネの重要な仕事の一つ。

だけど、終末期は医療的ケアが中心になるので、ケアマネは「口を挟んではいけないのではないか」と遠慮してしまうケースも多いんですよね。

私も「チーム大津京」に参加する前は、そういう時期がありました。

 

医療と介護の間に、見えない境界線みたいなものがある?

そうではないはずですが、医療に苦手意識を感じているケアマネは少なくないと思います。

でもね、ドクターと看護師は医療のプロフェッショナル。

当たり前のことですが、ケアマネとは職種が違うんです。

ケアマネは介護・福祉の専門家。

患者さんやご家族の「心」「生活」と、いかに向き合い、寄り添うべきかを考えるのが仕事です。

 

ケアマネが専門性を発揮してこそ、多職種連携がうまく繋がる?

そう思います。

もしも、ケアマネ自身が「自分の出る幕がない」と現場で引いてしまったら、チームの雰囲気は一気にしぼんでしまいます。

遠慮と配慮は違うんです。

患者さんとご家族が口に出せないでいる不安や困りごとがないか、聞き取る努力をするべきです。

そして、代弁者として担当医や看護師にきちんと橋渡しをして、患者さんのケアに反映してもらえるよう働きかけるのです。

特に在宅ケアは、ご本人の疾患そのものだけではなく、生きてこられた人生の背景、ご家族構成、住環境、経済問題がケアに大きく影響します。

医療的な知識や技術だけではフォローしきれない部分をカバーするために、ケアマネが必要なんです。

使命感と自信を持って取り組んでほしいですね。

 

多職種連携の成功法は、身近なチーム力を深掘りすれば自ずと見つかる

大津市は「チーム大津京」の活動もあり、連携が進んでいるエリアだと感じていますが、他の地域でも応用できる多職種連携のポイントがあれば、助言をお願いします。

実は、ものすごくシンプルで、多職種連携をやりたいなら、まずは自分自身の周りにいる医師・看護師・ケアマネ・ヘルパーとゆっくり喋る時間を持つのが一番早い。

さらに、それぞれが仲間を呼んできて「お互いに困っていること」をぶつけ合う。

身近なところから草の根的に繋げてゆかないと広がりが生まれないし、継続しませんよ。

 

今、繋がっている身近なチームとの関係性を深めることが、まずは大切?

医療・介護に携わっているなら、どんな人も大なり小なり関わっているチームが既にあるはずです。

例えば、担当者会議で利用者さんのためのケアプランについて話し合った後で、「今度、一緒にごはん行きませんか?」と声をかけ、そういう場をセッティングするだけで雰囲気はがらりと変わるはずです。

「こんなこと考えてるんだ」「深いところまで見てるんだなぁ」って、良い意味で知らなかった一面が見えてくる。

他の人はどう考えているのか、気になってくる。

知らなかった人と繋がるのが、どんどん楽しくなる。わくわくしてくる。

そうやって、自然に広がってゆく連携が地域に根ざした強いパイプになるのだと思います。

 

「チーム大津京」の今後の目標や理想の地域医療について、聞かせてください。

医療・介護の多職種連携は、「チーム大津京」のおかげで順調に進んでいる実感があります。

今後の課題と目標は、医療・介護の枠に留まらない地域連携ですね。

例えば、工務店、新聞配達、宅配便、酒店などを巻き込んだ地域の見守りチーム。

郵便受けに新聞が何日もたまったままになっている、昨日配達した牛乳がまだそのままになっている、といった「あれ?」という日常生活のちょっとした違和感を、垣根なく誰にでも気軽に相談できる地域の空気感を作ることが大事だと思っています。

 

古き良き「井戸端会議」のような?

理想は、地域の至る場所で「井戸端会議」のような小さなコミュニティーが自然発生的に始まり、住民同士がつながってゆくこと。

例えば、腰が悪くて困っているお年寄りがいる→酒屋さんや八百屋さんが配達がてら様子を伺うようになる→何かあったときに診療所まで送ってあげる→定期的な往診体制を整える。

そんな風に繋がってゆけば素敵ですね。

「地域包括ケアシステム」「在宅医療」なんていう言葉すらなかった時代、そうやって地域で暮らす人が自ら地域を見守りあってきたはずです。

その原点にもう一度立ち帰り、地域住民一体型の「チーム医療・介護」を実現できたら、と考えています。

「チーム大津京」がある大津市でなら、できると確信しています。


取材後記

「チーム大津京」の成功事例はクラウド型の電子カルテなどに代表される時代の一歩先ゆく連携ではなく、人間同士が顔と膝を付き合わせることで生まれる昔ながらのコミュニティーが原点。人と人が、ざっくばらんに本音で語り合うことから連携が深化し、医療と介護の可能性が広がるのだということを、矢守さんのお話しを通じて感じることができました。
「在宅医療の主人公である患者さんの幕引きの舞台を演出するのがケアマネージャー」という矢守さんならではの視点も興味深く、なるほど!と納得。主人公を支える医師・訪問看護師・薬剤師といった名脇役たちとともに、幸せな人生のワンシーンをこれからも演出し続けてください!

◎取材先紹介

うさぎマネジメントケア
滋賀県大津市松本2-8-10
電話:077-510-7471

(取材・文/野村ゆき、撮影/前川 聡)

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