“病気を診る”だけでなく“人を診る”在宅医療でありたい―医療法人浩英会 もりもと泌尿器科クリニック 理事長・院長 森本 康裕―

大阪・泉北地域に位置する堺市南区は、交通の利便性もありながら自然豊かな街。この4月に新しい総合病院を迎えたほか、街なかにも大小さまざまなクリニックが多いエリアです。一方で住民の高齢化が進み在宅患者も増えており、在宅医療や介護システムの充実が急がれています。駅前に開院して12年が経つ、もりもと泌尿器科クリニックでは、外来にくわえ、神経内科医の先生たちと連携を密にして在宅医療にも取り組んでいます。専門科医師としての在宅医療への取り組み方、在宅医療への想いを語っていただきました。

 

▲森本康裕(もりもと・やすひろ)さん

もりもと泌尿器科クリニック 理事長・院長

(プロフィール)

平成7年近畿大学医学部を卒業後、同大附属病院泌尿器科に入局。その後、民間病院や、大阪府立母子保健総合医療センターなどに勤務、医長なども勤めた。平成18年8月に、もりもと泌尿器科クリニックを開院。日本泌尿器科学会専門医・指導医、日本医師会認定産業医。現在は外来診療のほか、連携在宅医から要請のあった患者への往診も積極的に行っている。また地域包括ケアへの取り組みなどにも意欲的に参加されています。

 

連携医からの要請で飛び込んだ、地域のニーズに応える在宅医療の世界

――在宅医療に関わるようになったきっかけを教えてください。

開業した時、在宅医療は考えてなかったんです。

ただ当初から、神経内科の先生から往診依頼のご相談があり、「そうした地域のニーズがあるなら、お手伝いしましょう!」から最初から往診を少しずつ行っていました。

実は勤務医時代にも、私が診ている患者さんが動けなくなってら自宅まで訪問することもあったので、在宅医療自体に抵抗はなかったんですね。

 

ただ私の場合は、どちらかと言えば、泌尿器科独特の関わり方。

メインに内科の先生がおられて、泌尿器科の疾患で困った時のオファーが来てから、初めて動くという感じす。

なので、私の患者さんというのは、他の先生方と一緒に診ている方が、大多数。

私が主になって診ている患者さんは、外来で長年診ていたけど通えなくなって「それなら家で診てあげましょうか?」っていう方が、数人いる程度ですね。

 

――先生が泌尿器科の専門家として在宅で行う処置とは、どのようなものですか?

神経内科の疾患、ALSや脳梗塞の後遺症であるとかで、身動き取れない、人工呼吸…そういう方の排尿障害を診ています。

バルーンの入れ替えがほとんどで、あとは自己導尿の指導であるとか、排尿に関わる管理ですね。

 

あとは、家族さんの介護負担も照らし合わせて、バルーン管理がいいのか?自己導尿併用したほうがいいのか?その辺りの判断をしたりもします。

もちろん自排尿可能であったら、そっちに持っていくのが当然なんですが、そこはご家族の介護的な部分も見据えて、相談したりしていますね。

 

たとえば患者さんが自己導尿できても、ご家族の介護負担が増えるのはよろしくないですよね。

それだったらバルーン管理の方が、周りはハッピーになれますから、それはそれでいいんじゃないの?って話をするんです。

このような選択は、患者さん、ご家族さん、介護に関わるスタッフすべて含めて相談して決めていきます。

 

もちろん医師目線でいえば、症状の改善が第一なんですけど、病気診ても、人を診てなかったら、あかんでしょ?

在宅の場合、その人が置かれてる環境となるご家族の生活とか、ものの考え方であるとか、その辺も患者さんそれぞれだから。

そこも考えたうえで、病気との折り合い付けてあげるのが、在宅医だと思うんですよね

 

▲現在は、4人の神経内科医、一件の在宅専門クリニックと連携を密にし、前立腺癌末期など約25人ほどの患者さんを往診している。クリニックには非常勤医師が2名、看護師が8名在籍。

 

他科の疾患に繋がるサインを早期発見することが、専門医の役割

――在宅専門で診られている先生との連携は、難しくないですか?

たとえば、こういう開業医での外来の場合だと、うちみたいな泌尿器科専門クリニックで、わからない内科症状があれば、専門の内科クリニックを紹介するじゃないですか?それと同じような感覚で在宅でも連携すれば、お互いwin‐winな関係になれると思うんですよね。

 

うまく連携しているところは、先生方が「お互い様」のスタンスでやってますよ。

在宅医療をひとりで全部抱えてやるとなると、やっぱりしんどいこと多いと思いますね。

そういう意味でも、我々みたいな専門医がいれば、在宅をする先生方の負担も減らせると思うんです。

 

地域全体で協力し合うというスタンス。それは結論、患者さんにとっては、プラスになるはずですからね。

 

――先生の専門的な所見は現場でどのような価値を生んでいますか?

僕の専門分野である排尿というものは、脳や脊髄に関係しているんです。

排尿に出る症状を根本的に突き詰めて紐解いていくと、その人の神経難病や他の病気が見つかることがありますね。

例えば多系統萎縮症や、ALS、パーキンソン…そういった症状を疑って、在宅主治医の神経内科の先生へ連絡したら、「おっしゃる通りでした!」って返事がきたり。

 

そういったところを、早くピックアップして、専門科で治療に取り掛かってあげることが、結論その人のADLとかQOLを上げることになるんです。その流れをつくることは、僕の専門家としての、ひとつの役割ですよね。

 

▲在宅支援が進めば進むほど多彩なサービスが用意され、患者本人はOKな反面、介護家族のサービスを受けるための負担が心配、と話す森本先生。「毎日毎日、医者や看護師を待つ時間も長いですよね。自分の時間がどんどん無くなって介護離職の問題にも繋がると思う。だからせめて『ここからこの時間の間に絶対行きますよ』とかぐらいは、必ず前もって伝えるようにしています」

 

医療・介護関係者だけでなく、今後は地域の人たちとの連携が目標

――この地域の在宅医療に関わってみられていかがですか?

この堺市南区の辺りは、高齢者率が30%を超えてきている超高齢者エリアです。

でも、医療機関と、他業種・異業種の連携が、他の区より、比較的うまい事いっているという特徴があって。訪看さんやケアマネージャーさんの連携する会合が頻繁にあって、僕らもそこに顔を出したり。だから風通しは良いですよ。

 

医療機関同士の連携も盛んで、開業医同士もすごく繋がりがある。

もともと、泉北地区というのは大きな病院がなくて、ぽつぽつとある医療センターでやってきたから、その名残があるんだと思うんです。

例えば内科でも、神経内科、消化器内科、循環器内科と、いろいろな先生がいますけど、その内科同士も常に横連携できているんですよね。

 

僕は泌尿器科ですけど、循環器や神経内科の先生、あと糖尿病を診てる先生とかから、泌尿器疾患の相談も来る。

そんな医療機関内での診診連携が、もともと基盤にあるから、在宅というフィールドに変わっても、そういう連携が比較的スムーズなのかもしれません。

 

――在宅に関わる人達の連携が確立しているのは、患者さんにはありがたいですね!

そうですね。ただ、今はまだ、そこに地元の人たちがついてこれてないと思うんです

地域の人たちも巻き込むのが、次のステップとして必要かな。自治会とかも巻き込んで、地域みんなで診るというスタンス。

それこそ、もっと大きい地域包括ケアまで持っていかないと!と思います。

 

患者さん自身が住み慣れた場所で、医療はもちろん、行政や自治体も全体で協力してフォローする。

本当の意味で、みんなで仲良く暮らせる、いつまでも住める地域っていうのが、理想ですよね。

▲森本先生は「「動けないから」という判断でバルーンを入れてる在宅患者さんも多いけど、治せるものは治してあげるべき。可能なら手術もして復帰させたいというのが、僕の考え。患者のQOLをあげるのも我々の仕事だと思ってます」と話す。

 

みんなで協力し合える在宅医療を目指して、気軽に飛び込んできてほしい

――最後にこれから在宅に取り組む医師にメッセージを。

うちの地域だけじゃなく、高齢化が進んで在宅患者さんって増えているじゃないですか。

でも在宅医って、どこも足りてるようで足りてないでしょ?だから、医師ひとりあたりの負担が増えて大変っていうことになる。

ならば単純な話、取り組む医師が増えれば増えるほど、ひとり当たりの負担が軽くなりますよね。

だからこそ、在宅医療へどんどん関わって来ていただきたいなと思います。

 

在宅医療の本質っていうのは、自分が診てた患者さんが通えなくなった場合に、診に行ってあげるというのが、スタートライン。

でも「何かあったら相談のってね」で問題ない患者さんたちっていっぱいいると思うんですよ。

そういう無理のないところから取り組み始めていくのもいい。

しっかり診ないといけない患者さんには、在宅特化型の24時間体制の先生もいらっしゃるし、開業医もいろいろなタイプがいるから在宅医療にも棲み分けはありじゃないかな。

 

在宅医療は肩に力入れない方が良いですよ

“ちょっと在宅”、“気軽に在宅”って言い方は変かもしれないですけど、いろんなタイプのドクターがいてもいいかなって思う。

もっと気軽に在宅を始めて、みんなで協力しながら仲良くやりませんか?ぐらいのスタンスで、在宅の世界に入って来ていただきたいですね。

 

取材後記

テレビに出演されたこともある森本先生は、とてもお話し上手。取材は和やかな雰囲気のなか、とても楽しく進みました。連携されている神経内科などの先生から泌尿器科疾患の相談を受けての往診がメインとしながらも、在宅医療へ熱い想いをお持ちの先生。先生が考えておられる、医師がひとりで気負い過ぎることなく、仲間と助け合いながら取り組む「お互い様」精神での医療連携が進めば、在宅医療の未来も明るいと感じました。

 

取材先紹介

もりもと泌尿器科クリニック

大阪府堺市南区鴨谷台2丁目1-3 アクトビル2F

072-268-2000

(取材・文/梶 里佳子、撮影/前川 聡)

 

 

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