「老老介護」と「認認介護」とは。これからの日本を悩ませる介護の大問題

老老介護

「老老介護」と「認認介護」というキーワードをご存知でしょうか。テレビや新聞もしばしば見かけるようになっている言葉ですね。今回は老老介護と認認介護の言葉の定義と、まだ知られていないことも多い実態について解説いたします。

定義と現状老老介護編

老老介護」とは65歳以上の高齢者を、同じ65歳以上の高齢者が介護している状態のことを指します。

高齢の配偶者を介護する、というケースをイメージしやすいですが、高齢化が進む日本では、65歳を過ぎた子が90歳近い両親を介護するという状況も多くみられます。

厚生労働省が行っている国民生活基礎調査では、2016年時点で、介護者と要介護者のどちらも65歳以上となる割合が54.7%であると報告されており、2001年(40.6%)からの15年間で、老老介護を行う世帯の割合が急増していることがわかります(※1)。

 

定義と現状認認介護編

つづいて、「認認介護」とは、認知症を発症した方が、同じ認知症を患っている方を介護することを指します。

この場合も妻と夫だけではなく、若くして認知症を発症した子が、認知症の親を介護するケースも考えられます。

認認介護に関しての統計調査はまだそれほど多くありませんが、2010年に発表された山口県が行った「在宅介護における認認介護の出現率」に関する調査では、高齢者世帯で介護認定を受けた13,042人のうち1,356人(10.4%)が認認介護と推計されています(※2)。

これらの結果に加えて、65歳以上の高齢者が介護が必要になった要因の第一位が認知症(18.7%)であったことや、65歳以上の高齢者の約7人に1人(462万人。2012年時点)が認知症と推計されていることなどから、数字に表れてはいないものの、認認介護の件数はかなり多いものではないかと予想されています。(※3,4

 

老老介護と認認介護の問題点

こうした老老介護や認認介護の世帯ではどのような問題がでてくるのでしょうか。

1 体力・健康面での問題

介護を行うには普段の生活以上に体力が必要です。

食事や入浴の介助はもちろんのこと、要介護の状態によっては体を立たせる、座らせる、位置を変えるなど細かな介助が必要になります。

プロとして介助を行っている介護士でさえ、腰痛や体調不良を訴えるほどの重労働であることから、体が衰えている高齢者にとっては、より大きな負担になると考えられます。

また、体力的な問題と関連して、健康上の問題も考慮する必要があります。

全年代での調査結果になってしまいますが、同居する介護者が感じている悩みやストレスとして「自分の病気や介護」を挙げたのは、男女とも3割程度となっており(※1)、持病を抱えながら介護する介護者が多くいることがうかがえます。

認認介護の場合、要介護者だけでなく、介護者についても認知症の症状の進行について注視する必要があります。

2 精神面の問題

つづいては精神面での負担です。

同居する介護者が抱えるストレスについて、厚生労働省が行った調査によると、約7割がストレスがあると回答しており、そのうちの約7割はストレスの原因を「家族の病気や介護」と回答しています(※1)。

介護者の精神的な負担の大きさがわかります。

また、老老介護や認認介護の世帯では、周囲との接点があまりないことも少なくありません。

介護に専念するあまりに、地域や周囲とのつながりが薄れ孤立してしまうのです。

その結果、いつまでこの状態が続くのか、これからどうすればよいのか、といった将来の不安を抱えていても、誰にも相談できない。そんなストレスによって介護者も体調を崩してしまう可能性もあります。

さらに、介護している家族から疎まれることや、暴力を受けることなどによるモチベーションの低下、介護うつといった問題を引き起こすこともあります。

精神的な問題は、要介護者への虐待や、介護を苦にしての自殺や無理心中などといった最悪の事態につながってしまうこともあるため、特に注意が必要です。

 

3 認知症介護独特の問題

そして認認介護においては、認知症の方が介護を行うがゆえの問題点があります。

それは「行動を忘れてしまうこと」です。

介護者が、食事や服薬、排せつなどの世話をしたかどうかを忘れてしまい、栄養状態や病気が悪くなる、健康状態が適切に管理できなくなるほか、熱中症の対策や体調不良・緊急事態への対応などがきちんとできなくなる可能性もあります。

また、健康面だけでなく、金銭の管理ができずにトラブルに発展するケースもあります。

本人には自覚はなくても、体調の悪化を招くことや、最悪の場合、命に関わる可能性もあることを想定する必要があるといえます。

 

老老介護と認認介護世帯のサポート方法

このように、介護者にとって大きな負担となる、老老介護と認認介護。

そして、精神的、肉体的に限界を迎えた介護者も体調を崩し「共倒れ」状態になってしまう可能性があるのです。

そのような事態を防ぐために、周囲はどのようにサポートする必要があるのでしょうか。

家族のサポート

日本では核家族化が進んでおり、要介護者がいる世帯でも全体の約4割が核家族世帯となっています(※1)。

同居が難しい場合でも、こまめに連絡を取る、帰省の頻度を増やすことなどで、離れた家族もできる限り様子を把握することが大切になります。

また、離れているからこそ変化に気づくこともできます。

例えば、「以前は几帳面にゴミ出しをしていたのにゴミがたまっている」、「カレンダーが何カ月も同じ月のまま」、「家の中が雑然としている」、「表情や話し方に以前よりも元気がなくなった」など、以前と比べて変化している点を注意深く観察することで、家族の異変に気づくことができます。

これら以外にもIT機器を利用した見守りや、近隣の住民に様子を聞くことも有効です。

異変や心配を少しでも感じたら、ケアマネージャーや地域包括支援センターに相談するようにしましょう。

そして介護者についても、金銭面や、精神的・体力的な負担を感じたら、自分だけで抱え込まずに、家族や親族に頼れる方に相談することが大切です。

他人に介護の現状を明かしたくないと思う場合でも、介護うつや虐待など事態が深刻化する前に相談しましょう。

地域・行政・事業者のサポート

家族以外には、地域や行政のサポートがあります。

例えば、島根県出雲市など、自治体によっては、老老介護や認認介護を行う世帯の経済的な負担を軽減し、サポートする制度を設けている場合もあります(5)

また、介護保険によるサービスを受けている場合はケアマネージャーに、またそうでない場合も地域包括支援センターに相談することができます。

介護者だけでなく、その家族や親族からの相談も受け付けているので、介護についての不安や、これらの制度について疑問などがあれば、積極的に利用することが大切です。

また、事業者によるサービスを利用することも一つの手です。家族が介護から解放されて休息できるように、介護事業者などが介護を一時的に代行する「レスパイトケア」が一例として挙げられます。

老老介護・認認介護の世帯をサポートする方法として参考になるのが、厚生労働省がまとめた、全国の自治体の孤独死防止対策事例です。一例をご紹介します。

  • 近隣の見守り専門スタッフの派遣

ご近所福祉スタッフ、見守り支援員などを近隣に住む住民の方から募集し、定期的に訪問する。

  • 事業者との提携による身回り

新聞やガス、電気、水道、宅配業者など、個人宅に訪問する事業者と自治体が提携し、異変があった場合、連絡・支援体制を構築する。

  • サポートが必要な世帯の把握

日頃からサポートが必要な世帯の台帳やマップの作成し、必要であれば関係者で情報共有する。 ※個人情報の保護には細心の注意を払う必要があります。

  • IT機器などの補助的活用

テレビ電話やタブレット端末、センサーなどを利用した見守りシステムや介護を行っている世帯からの通報を受けるシステムを設置し、見守りに活用する。

参考:厚生労働省 孤独死防止対策

http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000034189.html

 

老老介護・認認介護の今後

2017年時点では、全国5000万世帯の内65歳以上の世帯は1300万世帯以上、実に26%の世帯が高齢者世帯となっています。

今後2070年には総人口の約40%が65歳以上になると予想されており、高齢者世帯での介護や認知症同士での介護という状況も増えていくと思われます。

老老介護・認認介護の世帯を支える取り組みとして、家族や行政のサポートをご紹介しましたが、それらだけでなく「ご近所との結びつき」も大切だと考えられます。

小さな異変にも素早く気づき、お互いに助け合うことができるような地域のコミュニティを、そして地域包括ケアシステムを実現する必要があるのではないでしょうか。

遠くで暮らしている肉親だけでなく、地域の住民や働く人々、そして自治体などが協力してサポートすることが求められています。

 

 

参考

1 厚生労働省 国民生活基礎調査

http://www.mhlw.go.jp/toukei/list/20-21kekka.html

2 山口県 在宅介護における認認介護の出現率

http://www.jichiro.gr.jp/jichiken_kako/report/rep_aichi33/05/0519_ron/index.htm

3 内閣府 平成30年版高齢社会白書(全体版)

http://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2018/html/zenbun/index.html

4 内閣府 平成29年版高齢社会白書(概要版)

http://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2017/html/gaiyou/s1_2_3.html

5 策l島根県出雲市:老老介護生活支援サービスについて

http://www.city.izumo.shimane.jp/www/contents/1454373267423/index.html

writer
石井 けん
子育てをしながら父母の介護を行う1児のパパ。子育てや働き方の記事を書くかたわら、医師へのインタビューを行うライターとしても活動中。

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