加齢性難聴の治療や予防のために知っておくべきこと|加齢性難聴の基礎知識(第2回/全3回)

加齢性難聴の基礎知識(第1回)では、加齢性難聴の原因や診断方法についてお伝えしましたが、加齢性難聴と診断されたらどんな治療が可能でしょうか?加齢性難聴は難聴だけでなく、耳鳴りを伴うことが多く、耳鳴りもQOL低下の原因となります。

第2回では、加齢性難聴治療や予防のための考え方についてお伝えします。

 

「加齢性難聴の基礎知識(全3回)」
第1回:加齢性難聴の基本的な症状と原因、診断方法
第2回:加齢性難聴の治療や予防のために知っておくべきこと
第3回:加齢性難聴患者さんとのコミュニケーションのコツ

加齢性難聴に伴う耳鳴りはすぐに薬に頼らないことが大事

加齢性難聴は内耳性であり、内耳性難聴の場合は耳鳴りを伴うことが多いという特徴があります。これは、聴力が低下して周りの音が聞こえなくなるので、耳鳴りが一層大きく聞こえるからです。
そのため、加齢性難聴の方は、耳鳴りが気になるという訴えでよく外来を訪れます。

ところが、第1回でもお伝えしたように加齢性難聴は加齢により内耳の細胞が減少することが原因です。これは、皮膚や筋肉などの細胞が年とともに衰えることと同じであり、現在の医療技術では薬で内耳細胞を復活させることはできません。
加齢性難聴の効果的な薬物治療法が無いのが現状なのです。

近年、難聴の分野でも再生医療が注目を浴びていますが、臨床への応用はまだまだ先のことであり、一般の人が手に届く医療になるにはさらに時間がかかるでしょう。

一方で、耳鳴りに関しては薬を処方されることがあります。日本では薬への信仰心が強い方が多いため、循環改善薬や漢方薬、時には抗不安薬などを「お守り」や「安定剤」のような意味合いで出すことも少なくありません。
特に、耳鳴りが気になって不眠に陥る人は繊細で細かいことが気になる性質の方が多く、何も治療されないと不安になるからです。

しかし、数ヶ月試しても薬の効果を認めない場合は、薬の中止を考えるべきです。介護が必要な高齢者は多剤併用されていることも多く、薬の相互作用や副作用の増強が心配だからです。また、薬剤が増えることで介護者の負担も増加します。

難聴外来での対応とは

そこで、難聴外来では以下のようにお話ししています。

耳鳴りは耳をすますと若い健康な人でも聞こえるものであり、大なり小なり耳鳴りを聴いたことがある人がほとんどです。
しかし、人間の脳は賢いもので、自分に必要のない音は拾わないように学習します。

例えば、電車で居眠りしている人をよく見かけますが、その時、電車走行音は上手に遮断されているのです。耳鳴りも同様で、脳が「必要ない音」と認識すれば、徐々に遮断されて気にならなくなります。

しかし、神経質な人は耳鳴りに集中してしまうため、脳がいつまでたっても「必要ない音」だと学習できず、逆に必要以上に気になり大きく聞こえてしまいます。

このような時の対応としては、一番耳鳴りが大きく聞こえてしまう、就寝前の静かな時間に好きな音楽やラジオをかけることです。そうすると、耳鳴りに集中することがなくなり入眠しやすくなります。

耳鳴りでは不眠の重症度が治療に大きく影響します。
基本的に、加齢性難聴に伴う耳鳴りに対して、重度の不眠症患者以外に薬の処方はせず、上記のような耳鳴りの理由や対応方法を丁寧に説明しています。そうすると、ほとんどの方が上手に耳鳴りと付き合っていけるようになります。

加齢性難聴の予防は可能?

難聴には、遺伝的要因に加えて環境要因も加わるため、一概に親の難聴の発症年齢が若いからといって子供も早く難聴になるというわけではありません。
しかし、若年性難聴が代々続いている家系では、希望に応じて難聴遺伝子が無いかどうかを調べるサービスを、いくつかの遺伝子検査会社が提供しています。

加齢性難聴を含む内耳障害では、糖尿病や高血圧などの生活習慣病により、血管が硬くなり内耳が循環不全に陥ると進行が早まるとされており、生活習慣病の予防は難聴対策にも効果があるといえそうです。

工夫次第で上手に耳鳴りと付き合っていくことが大切

今回は、難聴の治療および予防にお伝えしましたがいかがでしたか?

もし、患者さんに耳鳴りや難聴関連で出されている薬があれば減量や中止ができないかを耳鼻科医に相談してみるとよいかもしれません。往診医が耳鼻科専門でない場合、前医や耳鼻科で出されていた薬が漫然と続けられている可能性があるからです。

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