医師じゃなくても医療行為ができる!フィジシャンアシスタント(PA)とは

医師の長時間労働が問題視される昨今、医師以外に医療行為を行うことができるフィジシャンアシスタント(PAに注目が集まっています。アメリカで1960年代に生まれ、プライマリ・ケアや外科領域など、様々な分野で活躍するPA。彼らがどのような業務を担当しているのか。医療現場への影響は?そんな気になるポイントを、アメリカのPA制度の仕組みとともにご紹介します。

フィジシャンアシスタント(PA)とは

フィジシャンアシスタント(Physician Assistant, PAは、医師の監督のもと、一部の医療行為を行うことを認められた医療従事者のこと。
1960年代のアメリカ合衆国で、ベトナム戦争から帰還した衛生兵を、医師の助手として雇用したことがきっかけで生まれた職種で、アメリカ国内のPA認定者数は2018年時点で約13万人、プライマリ・ケアや外科、救急医療など、様々な現場で診療を行っています。

また、現在は、アメリカ以外にも、カナダ、イギリスなど様々な地域で導入されています。

一部の診療行為を行うことができる医師以外の職種といえば、過去にご紹介した「ナースプラクティショナー(NP」もこれに該当します。
業務の内容や役割は似ていますが、
PAが医師の監督のもとで医療行為を行う助手のような存在なのに対し、NPは、特定の医療行為については、医師の指示がなくとも行うことができるほか、開業権があるなどの違いがあります。

PAになるためには、大学卒業後、23年間ほどのPA養成プログラムを修了し、国家試験に合格後、州での免許を取ることが必要となっています。
免許取得後も、資格維持のために、
2年ごとに100時間の研修を受けることが求められるほか、10年ごとに再認定試験を受けなければなりません。

ちなみに、PA養成プログラムについては、医学部ほど受験要件が厳しくないが、患者診療に直接かかわることができる、就学年数が少なく学費が低く抑えられる、給与レベルが高いといった要因から、アメリカでは人気が高い専攻のひとつといわれています。

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2019年10月27日

PAの業務内容

PAが担当する医療行為とはどのようなものがあるのでしょうか。
アメリカでは州法のほか、
PAの専門領域や経験、能力、現場でのニーズなどによって職務内容が異なりますが、一般的に以下の行為が挙げられ、医師の医療行為の多くをカバーしているといわれています。

病歴の聴取

診察

病気の診断、治療

検査のオーダー、実施

治療計画の作成

薬の処方

予防治療についてのカウンセリング

処置

手術の補助

病院や施設の回診

治験の実施

多岐に渡る業務を受け持っていることがわかりますね。

また、診療科によって業務内容は大きく異なり、プライマリ・ケアの場合は、医師と一緒に患者の診療を行うほか、外科の場合は手術による切創(手術創)の閉創や、術前術後管理、小児科では診療のほかに予防接種、健診などを行います。

さらに、病院や診療所の場所によっても内容が変化します。
例えば、へき地の診療所の場合、診断だけでなく、患者の教育や紹介、画像診断など、様々な業務を
PAが担当します。

ただし、いずれの場合においても、医師の監督のもと、医療行為を提供することが原則となっていますので、PAが医療行為を行うときには、医師がそばにいる、または電話連絡が取れるところにいることが必要です。

 

PAのおかげで医師の負担は軽減!

プライマリ・ケアの現場での人手不足を解消するために設けられたPAですが、医療現場にどのような影響を与えたのでしょうか。

まず、医師の業務負担が軽減されたことが報告されています。
2001年から2010年にアメリカ国内で実施された調査によると、全外来診療のうちPA5.3%、NP9.1%を担っており、特に地方でその傾向が顕著であることがわかりました。

また、長時間労働が問題視されていた研修医の労働時間が短縮されたほか、業務内容についてもPAが一部業務を受け持つことで、医師の負担が軽減される事例がみられます。
例えば、外科の場合、術後管理や書類作成などの業務を
PAが担当することで、医師が手術などの本来集中すべき業務に時間をあてられるようになったとのことです。

気になるケアの質についても、医師と比較して質が低下しないと報告されており、他職種や患者からも満足度が高い、信頼できる存在となっています。

日本でも注目されるPA-医師の働き方改革の観点より

アメリカでは医師の業務負担軽減に役立っているPAですが、日本でも医師や看護師の働き方改革の観点から現在注目が集まっています。

20174月に取りまとめられた「新たな医療の在り方を踏まえた医師・看護師等の働き方ビジョン検討会」の報告書では、「医師がその高度な医学的専門性を発揮し、本来担うべき業務に精注するためには、前述したタスク・シフティング/タスク・シェアリングを進めつつ、プライマリ・ケアと高度医療の両方の場面で医師を支える人材が必要である」とし、PAの資格創設を提言しています。
簡単な診断や処方、外科手術の助手、術後管理などを
PAが担当できるようにしてはどうか、との記述が盛り込まれました。

医師のタスク・シフティングについては、「医師の働き方改革を進めるためのタスク・シフト/シェアの推進に関する検討会」で、具体的な業務内容についての検討が進められていますが、看護師、診療放射線技師、臨床検査技師など、現行の医師以外の職種に対してタスク・シフトする方針が示されており、NPPAなどの新たな資格の創設については現時点では見送られました。

ただし、厚労省は、多くの医療専門職種それぞれが自らの能力を活かし、より能動的に対応できる仕組みを整えることは重要で、そのために今後議論を引き続き深めていく必要がある、との考えを示しています。
NPPAの制度創設について、今後議論が活発化するかもしれません。

まとめ

一部の医療行為を医師の監督のもと、担当することができるPA。医師の長時間労働改善に貢献するなど、医療現場で大きな役割を果たしていることがわかります。また、同様の課題が指摘される日本でも、タスク・シフトの観点で注目されていることから、今後NPPAの制度創設について動きがみられるかもしれませんね。今後、人手不足が加速するであろう日本の医療の切り札となるのでしょうか。

 

<参考文献など>

厚生労働省:諸外国のフィジシャン・アシスタント(PA)に関する研究 平成29年度総括研究報告書、分割研究報告書

森田 啓行, 永井 良三「米国におけるNurse PractitionerNP/Physician AssistantPA)の実態」, 『日本内科学会雑誌』, 99: 1349-1355, 2010

https://www.jstage.jst.go.jp/article/naika/99/6/99_1349/_article/-char/ja/

American Association of Physician Assistants (AAPA):

https://www.aapa.org/

厚生労働省:新たな医療の在り方を踏まえた医師・看護師等の働き方ビジョン検討会 報告書

https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000160954.html

厚生労働省:医師の働き方改革を進めるためのタスク・シフト/シェアの推進に関する検討会

https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_07275.html

 

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