お正月のお餅に注意!高齢者の誤嚥による窒息の予防と対策

今年も残り1か月寒さが厳しくなり、インフルエンザの流行も本格化しています。冬といえば感染症対策!と思いがちですが、忘れてはいけないのが高齢者の「不慮の事故」。特に、1月は高齢者が餅をのどに詰まらせる、窒息事故が増える時期です。今回は、高齢者の誤嚥による窒息について、原因や応急処置、予防策を解説します。

高齢者の不慮の事故、最多は「誤嚥による窒息」

厚生労働省によると、65歳以上の高齢者のうち、「不慮の事故」で亡くなる方は年間約3万人
「不慮の事故」というと、交通事故をイメージされる方もいらっしゃるかもしれませんが、実は交通事故以外の事故で亡くなる方のほうが多いことがわかっています。

2016年の「人口動態調査」によると、高齢者の不慮の事故による死者(31,692人)のうち、最多は「誤嚥等の不慮の窒息(8,493人)」で、「転倒・転落(7,116人)」、「不慮の溺死及び溺水(6,759人)」がそれに続く結果となっています。一方、「交通事故」による死亡者数は3,061人で、「誤嚥等の不慮の窒息」とは2.7倍程の差があります。

最多となった「誤嚥等の不慮の窒息」ですが、事故の約半数が食物による誤嚥で、特に1月は餅をのどに詰まらせる事故が多発します。
さらに、年代別の
10万人当たりの死者数は、50代後半(5559歳)が1.4人なのに対し、60代後半(6569歳)が3.2人、80歳後半(8589)歳では32.4人と、年代が上がるにつれ死亡者が増える傾向にあります。
もうすぐお正月
の今こそ、気を付ける必要があるのです。

高齢者の誤嚥の原因は

食べ物を認識し、口に入れ、飲み込み、胃に送り込むまでの一連の動作を「嚥下」といい、これらの動作がうまくできない状態を「摂食・嚥下障害」と呼びます。
摂食・嚥下障害が起こると、食べ物が飲み込みづらくなり、誤嚥や窒息が発生しやすくなります。

高齢者の場合、加齢による身体の機能が低下することに加え、脳卒中やALS(筋萎縮性側索硬化症)、パーキンソン病などの摂食・嚥下障害につながる基礎疾患を抱えていることが多いほか、服薬する薬の影響などで摂食・嚥下障害が起きやすく、窒息発生のリスクが高くなります。

摂食・嚥下障害を引き起こす原因についてもう少し詳しくみてみましょう。
大きく分けると次の
3つが要因として考えられます。

①器質的障害:舌やのどの構造上の問題がある場合。舌がんや咽頭がんなどの腫瘍による場合や術後の障害が原因となる場合が多い。

②機能的障害:のどや口腔内の構造は正常だが、神経、筋肉などに問題がある場合。脳卒中やパーキンソン病の神経変性疾患によって引き起こされることが多い。

③加齢の影響:加齢によって摂食・嚥下に必要な様々な機能が低下する。

③について、具体的には次のような機能の低下がみられます。

歯の数が減るなどで歯の機能が衰え、口の中で食べ物をかみ砕いて小さくすることが難しくなる。

唾液の分泌量が減り、飲み込む力も弱くなるので、食べ物をスムーズに喉の奥に送って飲み込むことが難しくなる。

異物が気道に入りそうになった時にむせて吐き出す「咳反射」が弱まる。

これらに加えて、持病があり薬を飲んでいる場合、唾液の分泌が少なくなったり(抗ヒスタミン薬、抗コリン薬など)、嚥下機能を抑制されたり(抗てんかん薬、抗精神薬など)といった影響が現れることもあります。

 

窒息が発生したときの応急処置

窒息事故が起きた場合、多くの人は両手で喉をつかむ「チョークサイン」を出すといわれています。

また、チョークサインが出なくても、急にうなだれる、声を出せない、顔色が真っ青になる(チアノーゼの場合、紫色になる)といった異変が現れたときには、窒息が疑われます。
直ちに救急への通報(
119番通報)と、応急処置を行います。

 

異物除去の応急処置

まず呼びかけをして反応するかを確認します。反応があった場合はできる限り咳をさせて、食べ物を取り除きます。

咳をしても食べ物が出てこない場合や、咳が出ない場合は、「腹部突き上げ法」、「背部叩打法」のいずれかで異物除去を行います。

可能であれば「腹部突き上げ法」を優先して行い、一方で効果が無ければ、もう一方を試みます。異物が取れるか、意識が亡くなるまで続けます。

妊婦や乳児の場合、腹部突き上げ法は行わず、背面叩打法だけを行います。

 

【腹部突き上げ法】

窒息している人(以下、「傷病者」といいます。)の後ろに回り、ウエスト付近に手を回します。

一方の手で「へそ」の位置を確認します。

もう一方の手で握りこぶしを作って、親指側を傷病者のへその上方で、みぞおちより十分下方に当てます。

「へそ」を確認した手で握りこぶしを握り、すばやく手前上方に向かって圧迫するように突き上げます。

腹部突き上げ法を実施した場合は、傷病者の内臓を傷めている可能性があるので、救急隊にその旨を伝えるか、速やかに医師の診察を受けさせてください。

 

【背面叩打法】

傷病者の後ろから、手のひらで、左右の肩甲骨の中間辺りを、力強く何度も叩きます。

公益社団法人日本医師会「救急蘇生法 気道異物除去の手順」より

https://www.med.or.jp/99/kido.html

呼びかけに反応しない場合や、反応がなくなった場合、心肺蘇生を直ちに開始します。
AEDが近くにある場合は、AEDを使った心肺蘇生を行います。

誤嚥による窒息を防ぐ!予防策

高齢者がのどに詰まらせやすい食品にはどのようなものがあるのでしょうか。
東京消防庁の統計によると、「おかゆ類」、「餅」、「御飯」などの主食類のほか、「肉」が原因となるケースが多いことがわかっていますが、別の研究では「野菜」、「果物」、「魚」などが原因となるケースもあり、日常的に食べている多くの食品に注意を払う必要があります

具体的にどのような対策が有効なのでしょうか。
まず、食材をあらかじめ小さく切るなど、調理の段階で工夫をすること
粘り気がある餅や、硬い肉などは、食べる方の噛む力に合わせて、口の中でかみやすい大きさにまで切っておくことが大切です。硬い野菜などは柔らかくゆでましょう。

また、最初にお茶や汁物などで、喉を潤してから食事を開始することも、唾液が少ない高齢者にとって有効です。
一口の量は無理なく食べられる量にして、ゆっくりよく噛んでから飲み込むみましょう。

そして、家族などの周りの方が食事中も注意して見守ること、あらかじめ応急処置の方法を把握しておくことが大切です。餅以外にも、日常的に食べている多くの食品が窒息につながる危険性があることを理解し、見守りをきちんと行いましょう。

まとめ

1月になると増加する高齢者の窒息事故。東京消防庁によると、201418年の5年間で餅などによる窒息事故で救急搬送されたのは482人で、このうち、1月に搬送されたのは184人と年間の約4割を占めていることが明らかになっています。そして、救急搬送された482人のうち、9割以上が65歳以上の高齢者です。

窒息の予防に大切なことといえば、食べ物を細かく刻む、ゆっくりよく噛んで食べる、水分をとることなどが挙げられますが、周囲の見守りも重要です。対策をきちんと行い、お正月を皆で元気に過ごしましょう。

 

<参考文献など>

消費者庁:みんなで知ろう、防ごう、高齢者の事故

https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_safety/caution/caution_009/

東京消防庁:201912月広報テーマ「年末年始の救急事故をなくそう」

https://www.tfd.metro.tokyo.lg.jp/camp/2019/201912/camp1.html?fbclid=IwAR372upxDrxhZlc6GFWlnlOjAqnZmq1vuuWUICTwYSYxBFo_ChoBVltHyCc#title_02

菊谷 武「食品による窒息の要因分析-ヒト側の要因と食品のリスク度-介護老人福祉施設における窒息事故とその要因」平成 20 年度統括・分担研究報告書

https://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/iyaku/syoku-anzen/chissoku/dl/04.pdf

慶応義塾大学病院 医療・健康情報サイト:摂食嚥下障害のリハビリテーション

http://kompas.hosp.keio.ac.jp/sp/contents/000270.html

NHK:年末年始は特に注意!こんなに多い窒息事故 予防と応急処置

https://www.nhk.or.jp/kenko/atc_862.html

 

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