死者数は交通事故の3倍。高齢者の「転倒・転落」事故の予防と対策

高齢者の「不慮の事故」の中で、死亡者数、救急搬送者数とも多くを占める「転倒・転落」。
厚労省の最新の統計では、「転倒・転落」事故による死亡者数は
8,803人で、「誤嚥による窒息」を超えて最多となりました。
今回は、高齢者の「転倒・転落」事故について、現状、対策などを解説します。

高齢者の「転倒・転落」の現状

厚生労働省の2018年の人口動態統計によると、高齢者の「不慮の事故」による死亡者のうち、最多の死因は「転倒・転落」。
死亡者数は
8,803人で、交通事故の約3にのぼることが明らかになりました。

また、転倒によって死に至らずとも、救急搬送される高齢者が多いこともわかっています。
東京消防庁によると、
2014年からの5年間で事故により救急搬送された高齢者は約36万人で、事故発生時の動作が「その他」、「不明」を除くと、全体の8割が「ころぶ」事故によって搬送されていることがわかっています。
2018年単独で見ても、「ころぶ」事故による年間の救急搬送者数は58,368人で、高齢者の事故の中で最多となっています。

なお、「ころぶ」事故によって救急搬送された高齢者のけがの程度については、「軽症」が最も多かったものの、入院が必要となる「中等症」以上は4割以上を占めており、65歳から年代が上がるにつれ、中等症以上の割合が高くなる傾向があります。

高齢者の転倒・転落の危険性

若い人であれば、軽いけがで済む「転倒」も、高齢者の場合は大きなけがや、寝たきり状態につながる可能性があります。

内閣府の高齢社会白書によると、高齢者が「要介護」となった要因のうち、「骨折・転倒(12.5%)」は、「認知症(18.7%)」、「脳血管疾患(脳卒中)(15.1%)」、「高齢による衰弱(13.8%)」に続く、4番目の多さとなっています。

また、高齢者は骨粗しょう症により骨の強度が弱くなっており、骨折しやすくなっています。
寝たきりや要介護状態になりやすい大腿骨(太ももの骨)の骨折については、転倒がきっかけのものが
8割ともいわれています。
骨折以外にも頭部外傷などの深刻なけがにつながることもあります。

転倒が発生しやすい場所

東京消防庁の統計によると、「ころぶ」事故の発生場所は、最多は「住宅等居住場所(32,793人、56.2%)」で、「道路・交通施設(20,129人、34.5%)」がそれに続きます。
家での事故が過半数を占めることがわかります。

では、家のどこで事故が多発しているのでしょうか。
最も多かった「居室・寝室」が
7割を占める結果となり、次いで「玄関・勝手口」、「廊下・縁側」、「トイレ・洗面所」と続きます。
「住宅等居住場所」のうち、
9割以上が屋内の事故であり、一見安全と思われる家の中でも注意を払う必要があります。

高齢者はなぜ転倒しやすい?

高齢者の転倒頻度については、地域在住高齢者の場合、5人に1人が年間1回以上転倒しているとの研究結果が報告されています。
高齢者はなぜこれほどまでに転倒しやすいのでしょうか。

背景に様々な要因がありますが、大きく分けると、身体の状況による「内的要因」と、生活環境による「外的要因」があり、内的要因と外的要因が重なることで転倒が発生安くなるといわれています。それぞれの一例をご紹介します。

<内的要因>

平衡感覚が低下している

筋力が低下している

視力が低下し、足元が見えにくい

病気の影響(脳卒中の後遺症、認知症、パーキンソン病など)

服用する薬剤の副作用(ふらつき、めまい、眠くなるなど)

精神・心理面(焦り、不安、緊張など)

<外的要因>

不適切な靴(脱ぎやすい、滑りやすい)

床の状態(滑りやすい、でこぼこ、段差など)

暗い/明るすぎる照明

床の障害物 

また、これら以外に、「過去1年間での転倒経験」も大きく影響を与えることがわかっています。

高齢者の転倒を予防するために

(1)高齢者の生活環境を確認する

先ほどご紹介した通り、高齢者の転倒事故の多くは家の中、特にリビングや廊下などで多く起きています。
家の中の段差には段差解消用のスロープを設置する、階段に手すりをつけるなど、転倒の危険がある箇所を減らすようにしましょう。
そのほかに、暗い場所には明るい照明をつける、動線を確保するために余計な物を置かない、歩きづらいスリッパではなく、かかとが固定された履物に変える、といった対策も有効です。

外出時については、通り慣れた道や店舗内でも、わずかな段差につまずいたり、雨の日に濡れたマンホールや白線の上で滑ったりして、転倒するケースがみられます。
よく通る道にも危険な場所がないかしっかり確認しましょう。
雨の日には滑りにくい靴に変えるといった工夫も大切です。

(2)高齢者の身体の状態を確認する

高齢者は様々な内的要因、外的要因によって転倒しやすくなっています。
特に加齢によって筋力やバランス機能が低下していることから、筋肉や骨の機能の維持のために、バランスの良い食事や運動を心掛けることが大切です。

そして、高齢者の多くは複数の薬を服用していますが、薬の影響で、ふらつきやめまい、眠気といった、転倒につながる副作用が現れる場合もあります。
疑われる症状がみられた場合には、副作用が起きにくい薬に変えたり、減薬したりすることが可能か、主治医に相談してみましょう。

まとめ

交通事故の約3倍の方が亡くなっている「転倒・転落」事故。
死に至らずとも、寝たきりや介護が必要な状態を引き起こす可能性があり、きちんと対策を行うことが必要です。
若い読者さまでしたら、転ぶだけで大げさな
と思われるかもしれませんが、問題は私たちの想像よりもずっと深刻です。
環境に危険がないか常に目を配ることに加え、高齢者の服薬状況や健康状態について、周囲の方もきちんと把握することが大切です。

 

<参考文献など>

消費者庁:御注意ください!日常生活での高齢者の転倒・転落!-みんなで知ろう、防ごう、高齢者の事故 ①-

https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_safety/caution/caution_009/pdf/caution_009_180912_0001.pdf

消費者庁:みんなで防ごう高齢者の事故!-冬はお餅の窒息事故、入浴中の溺水事故が起きやすい季節です-

https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_safety/caution/caution_009/pdf/consumer_safety_cms204_191218_01.pdf

東京消防庁:201912月広報テーマ「年末年始の救急事故をなくそう」

https://www.tfd.metro.tokyo.lg.jp/camp/2019/201912/camp1.html?fbclid=IwAR372upxDrxhZlc6GFWlnlOjAqnZmq1vuuWUICTwYSYxBFo_ChoBVltHyCc#title_02

内閣府:平成30年版高齢社会白書(全体版)

https://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2018/html/zenbun/index.html

鈴木 隆雄「高齢者の事故予防」日本セーフティプロモーション学会誌 Vol.112

http://plaza.umin.ac.jp/~safeprom/pdf/JSSP11(2)-SuzukiPaper.pdf

大高 洋平「高齢者の転倒予防の現状と課題」日本転倒予防学会誌 Vol.111-20

https://www.jstage.jst.go.jp/article/tentouyobou/1/3/1_11/_pdf

荒井 秀典「介護予防ガイド」

https://www.ncgg.go.jp/cgss/news/documents/yobo_guide.pdf

 

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