ひとり暮らしの高齢者―現状と課題

日本社会の高齢化が近年急速に進んでいます。2018年の統計では、65歳以上の高齢者人口は3,558万人で、全人口に対する高齢者の割合は28.1%を占める結果となりました。それに伴い増加しているのが、ひとり暮らしの高齢者。今回は、ひとり暮らしの高齢者の現状と、社会からの孤立、孤立死といった課題について解説します。

ひとり暮らし高齢者の現状―3人に1人は独居

近年、65歳以上のひとり暮らしの高齢者は、男女ともに増加傾向にあります。

厚生労働省の「高齢社会白書(2019年版)」によると、2015年時点で、65歳以上のひとり暮らしの高齢者は、男性約192万人、女性約400万人。65歳以上人口に占める割合は男性13.3%、女性21.1%で、高齢者の3人に1人がひとり暮らしであることが分かっています。
1980年時点では、ひとり暮らしの65歳以上の高齢者は男性約19万人、女性約69万人で、65歳以上人口に占める割合は男性4.3%、女性11.2%だったことから、この25年間で大幅に増加していることがわかります。

 

ひとり暮らしの高齢者の実態について、もう少し詳しく見てみましょう。
性別で比較した場合、女性が7割と、男性と比較して多くを占めていることがわかっています。

年齢については、厚労省の平成30年の国民生活基礎調査によると、男性は「65~69歳」が33.8%、女性は「75~79歳」が22.3%で、それぞれ最多となっています。

ひとり暮らしの高齢者世帯は引き続き増える見込みで、高齢社会白書では、2030年には、高齢者世帯の40%が独居世帯となると推計されています。
そして、2040年には男性約356万人、女性540万人、65歳以上人口に占める割合は男性20.8%、女性24.5%にまで増えると予測されています。

 

ひとり暮らしの高齢者の満足度は高い-暮らしの実態

続いて、ひとり暮らしの高齢者が、どのように生活しているのか、生活に満足しているのか、暮らしの実態をみてみましょう。

内閣府の「一人暮らし高齢者に関する意識調査結果(2014年度)」によると、現在の幸福度を10点満点で評価した場合、回答の平均値は「6.59」となりました。

また、「この1週間のことを考えて、自分の生活に満足していますか」という問いに対して、「はい」と答えた人の割合は78.7%を占め、現状に満足している高齢者が多いことがわかりました。

一方、「いいえ」と答えた人の割合は21.3%で、収入が低い方や、会話の頻度が少ない方が選択する傾向がみられます。

 

普段の生活の中で楽しみにしていることは、最多が「テレビ、ラジオ」(78.8%)で、「仲間と集まったり、おしゃべりをすることや親しい友人、同じ趣味の人との交際」(53.1%)、「新聞、雑誌」(44.0%)、「食事、飲食」(42.2%)がそれに続く形となっており、日常生活の中で楽しみを見出している方が多いようです。

一方、不安に感じていることについては、「健康や病気のこと」が最多の58.9%で、これに続いて「寝たきりや身体が不自由になり介護が必要な状態になるこ と」(42.6%)、「自然災害(地震・洪水など)」(29.1%)、「生活のための収入のこと」(18.2%) の順となっています。また、「不安に感じることはない」と答えた人の割合は19.8%となっています。

 

そして、今後誰かと一緒に暮らしたいかという問いに対しては「今のまま一人暮らしでよい」と答えた人の割合が76.3%と多数を占めることがわかりました。

 

高齢者のひとり暮らしというと、少し寂しいイメージがあるかもしれませんが、必ずしもそうではなく、不安を抱えながらも充実した毎日を送っている方も多い、というのが実態のようです。

 

高齢者のひとり暮らしが生む問題―社会からの孤立、孤立死

現在、高齢者の3人に1人がひとり暮らしをしており、多くの方が満足感を感じながら暮らしていることがわかりました。

とはいえ、高齢者がひとり暮らしをする場合、社会からの孤立や孤立死といった問題につながりやすい点に注意しなければなりません。

 

問題点1:社会からの孤立

内閣府の「高齢者の経済生活に関する意識調査結果(2011年度)」によると、ひとり暮らしの高齢者の会話の頻度は、「毎日」が75.8%で、夫婦二人世帯など他の世帯区分と比較して低い一方、「2〜3日に1回」(14.8%)、「1週間に1回」(3.7%)の割合が高くなっており、「1週間に1回未満/ほとんど話をしない」については5.7%が当てはまります。

また、内閣府の「高齢者の住宅と生活環境に関する調査結果(2018年度)」では、近所の人との付き合いの程度について、ひとり暮らしの場合、「つきあいはほとんどない」(10.2%)、「あいさつをする程度」(37.9%)が他の世帯区分と比較して高く、ほぼ半数は地域住民との付き合いがほとんどないと考えられます。

この結果、身内や地域の人との付き合いがなく、いざという時に頼ることができない、という状況に陥りやすくなってしまします。
先程紹介した「高齢者の経済生活に関する意識調査結果(2011年度)」によると、病気のときなどに頼れる人の有無について、一人暮らしの高齢者で「いない」と回答した人は12.3%で、こちらについても他の世帯区分と比較して高くなっています。

 

問題点2:孤立死

そして、近所付き合いや他者との交流がなく、孤立している場合、自宅などで体調を崩してもなかなか気付かれず、孤立死してしまうケースも多く見られます。

東京都が2017年に公表した、23区内の65歳以上の高齢者の孤立死者数は3,867人(男性:2,518人、女性:1,349人)で、統計を開始した2003年から2倍以上に増えています。

なお、厚労省の「高齢社会白書(2019年版)」では、60歳以上の人に、「孤立死」を身近に感じるかについて、「身近に感じる」とした人が34.1%と約3分の1を占める一方、「あまり感じない」、「まったく感じない」は合計で64.0%となっています。

 

高齢者の孤立を防ぐには

高齢者の孤立が、孤立死につながる。
そのような事態を防ぐためには、家族や地域の見守りが大切になります。

2012年の介護保険法改正によって、「見守り」などの生活支援に取り組むことが国や地方公共団体の責務として規定された結果、現在、多くの地方自治体が独居高齢者の見守りに取り組んでいます。

具体的には安否確認を食事の宅配サービスと並行して行う取り組みのほか、最近では、愛知県長久手市が、通信機能のある電力計(スマートメーター)を利用した見守りサービスの実証実験を開始するなど、様々な取り組みが行われるようになりました。
取り組みの内容は地域によって異なるため、住んでいる地域の情報を確認することが必要です。

 

また、孤立を防ぐ取り組みとしては、国と企業が高齢者の雇用を進める取り組みを、積極的に進めています。
厚労省が発表した2019年の高齢者の雇用状況によると、定年制を廃止した企業は4,297社で、うち中小企業(31~300人規模)は4,209社、大企業(301人以上規模)は88社となっています。
また、66歳以上が働ける制度のある企業は49,638社、70歳以上働ける制度のある企業は46,658社で、就労を通して高齢者が社会に関わり続ける体制が整いつつあります。

 

まとめ

今回は、ひとり暮らしの高齢者の現状と問題を解説しました。高齢者の孤立死を防ぐために、国や地域、企業が積極的に取り組んでいる現状をご紹介しましたが、社会の高齢化が進むことに伴い、今後も独居の高齢者は増え続けていくと見込まれています。高齢者を支え、見守る仕組みを今後も充実させていく必要があるでしょう。

 

<参考文献など>

内閣府:令和元年版高齢社会白書(全体版)

https://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2019/html/zenbun/index.html

内閣府:平成26年度 一人暮らし高齢者に関する意識調査結果(全体版)

https://www8.cao.go.jp/kourei/ishiki/h26/kenkyu/zentai/index.html

内閣府:平成30年度 高齢者の住宅と生活環境に関する調査結果(全体版)

https://www8.cao.go.jp/kourei/ishiki/h30/zentai/index.html

東京都福祉保健局:東京都監察医務院で取り扱った自宅住居で亡くなった単身世帯の者の統計(平成30年):

https://www.fukushihoken.metro.tokyo.lg.jp/kansatsu/kodokushitoukei/kodokushitoukei30.html

厚生労働省:令和元年「高年齢者の雇用状況」集計結果

https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000182200_00003.html

プレスリリース:ユビキタスAIコーポレーション、 長久手市の高齢者見守りシステムの運用実験に参画(2019年12月25日)

https://www.atpress.ne.jp/news/200325

 

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