全世界で流行が拡大している新型コロナウイルス。今回は、世界での流行状況や、症状、医療機関で実施すべき予防策などをご紹介します。なお、記事の内容は2020年3月6日時点の情報となります。
コロナウイルスとは
ヒトや動物に感染し、感染症を引き起こすウイルス。
ヒトに感染するのは、風邪の原因となる4種(HCoV-229E、HCoV-OC43、HCoV-NL63、HCoV-HKU1)のほか、重篤な肺炎を引き起こす、動物由来の2種(重症急性呼吸器症候群コロナウイルス(SARS-CoV)、中東呼吸器症候群コロナウイルス(MERS-CoV))、そして昨年末から感染が確認されている新型コロナウイルス(SARS-CoV-2、2019-nCoV)の計7種となっています。
このうち、日常的に世界中で感染が認められている4種については、風邪の10~15%(流行期は35%)がこれらのウイルスが原因といわれており、ほとんどの人が6歳までに感染を経験し、多くは軽症で済みます。
一方、残りの2種については、2002年に中国広東省で発生したSARS、2012年にサウジアラビアで確認されたMERSを引き起こす種です。
そのほかに家畜が感染するウイルスも存在しますが、種を超えて他の動物に感染するケースはまれです。
新型コロナウイルス(SARS-CoV-2、2019-nCoV)の特徴
これまでヒトに感染するコロナウイルスは6種とされていましたが、昨年末から中国湖北省で確認されているウイルスはこれらと異なる種となっています。
SARSを引き起こすウイルス(SARS-CoV)と同じベータコロナウイルス属に分類され、SARSコロナウイルスと同じ受容体 (ACE2)を使ってヒトの細胞に吸着・侵入することが最近の研究で報告されています。
SARS、MARSの原因となるウイルスと比較して病原性は低いと考えられており、致死率は中国湖北省内で2%超と報告されています。
一見高く感じられるかもしれませんが、湖北省外、国外での致死率はもっと低いと報告されているほか、SARS(致死率:9.6%)、MARS(致死率:34.4%)と比較しても低くなっています。
感染経路は、飛沫、接触感染によってヒト-ヒト感染すると考えられており、空気感染の可能性は低いとされています。
感染力については患者一人から2~3人に感染させると報告されています。
世界の流行状況
世界各国での流行状況は以下の通りとなります(2020年3月6日時点)。
患者数(死者数) |
|
中国 |
80,711(3,045) |
韓国 |
6,284(42) |
イタリア |
3,858(148) |
イラン |
3513(107) |
日本 |
349(6) |
総数 |
98,192(3,380) |
<引用>WHO: Coronavirus disease 2019 (COVID-19) Situation Report – 46
症状、病態の特徴
感染から発症までの潜伏期間は約5日で、1~14日程度と考えられています。
その後、主に発熱や呼吸器症状が1週間程度持続するケースが多く見られますが、8日目以降に呼吸不全が進行し、重症化する症例が一部報告されています。
患者の8割は軽症で済むと報告されていますが、高齢者や、糖尿病、心不全、呼吸器疾患(COPDなど)などの基礎疾患がある方、透析を受けている方、免疫抑制剤や抗がん剤等による治療を受けている方の場合、重篤化しやすいため注意が必要です。
主な症状は、発熱、咳、疲労感、関節痛などで、そのほかに頭痛、腹痛、下痢などの症状が報告されていますが、無症状の場合もあります。
治療法
現段階では、新型コロナウイルスに有効性のある治療法はなく、対症療法が基本となっています。
解熱などのほか、肺炎症状がみられる場合は、輸液、酸素投与、昇圧剤などによる全身管理が行われます。
治療薬については現段階では有効性が確認されたものはありませんが、日本感染症学会の指針では、治療薬の候補として、ロピナビル・リトナビル(抗HIV薬)と、ファビピラビル(抗インフルエンザ薬)の2種が示されています。
そのほかにエボラ出血熱の治療薬として開発されたレムデジビルなども候補と考えられています。
また、ワクチンについても現段階では存在しません。
治療薬、ワクチンともいまだ開発段階とのことです。
<参考>
日本感染症学会:COVID-19に対する抗ウイルス薬による治療の考え方 第1版 http://www.kansensho.or.jp/uploads/files/topics/2019ncov/covid19_antiviral_drug_200227.pdf
感染予防策
新型コロナウイルスの感染経路は、現段階では飛沫・接触感染です。
まずは、呼吸器衛生/咳エチケットを含む標準予防策(スタンダード・プリコーション)を徹底して行い、これらに加えて飛沫、接触感染の防止策を実施する必要があります。
具体的には、手洗いなどにより手指の衛生を徹底することのほか、呼吸器症状のある患者を診察する時にはサージカルマスクの着用が求められます。
気道吸引などのエアロゾルが発生する手技を実施する場合は、N95マスク、目の防護具(ゴーグル、フェイスシールドなど)、長袖ガウン、手袋を着用することが必要です。
手指の清浄にあたっては、コロナウイルスはエンベロープを持つウイルスであるため、アルコール消毒が有効です。
また、ウイルスの汚染を防ぐためには、個人防護服(PPE)を正しく着脱することが大切です。
正しい着脱方法については、長崎大学病院が動画で解説しています。
医療機関においての注意事項については、国立感染症研究所が指針を示しているほか、日本感染症学会が対応ガイドを示しています。
<参考>
国立感染症研究所:新型コロナウイルスによる感染症に対する感染管理(2020年3月5日)
https://www.niid.go.jp/niid/ja/diseases/ka/corona-virus/2019-ncov/2484-idsc/9310-2019-ncov-01.html
一般社団法人日本環境感染学会:「医療機関における新型コロナウイルス感染症への対応ガイド(第2版)」の公開について
http://www.kankyokansen.org/modules/news/index.php?content_id=341
長崎大学病院:[医療者向け動画配信]新型コロナウイルス感染症に対する個人防護具の適切な着脱方法
http://www.mh.nagasaki-u.ac.jp/kouhou/topics/2020/3/1/index.html
まとめ
今回は、新型コロナウイルスについての最新動向をご紹介しました。新型のウイルスということで知見が十分でない面もありますが、新たな研究結果も日々報告されています。今後新たな動向が明らかになった場合には、改めてご紹介したいと思います。