感染症予防の基本「標準予防策」とは<手洗い>|在宅医療の基礎知識

新型コロナウイルスの感染拡大が日々報じられる中、「標準予防策(スタンダード・プリコーション)」の重要性が増しています。今回は、標準予防策のうち、手洗いのポイントについて、アメリカの疾病管理予防センター(CDC)のガイドラインを振り返りながら解説します。

 

感染とは

感染症は、①病原体(感染源)②感染経路 ③宿主3つの要因が揃うことで感染します。

感染症の対策には、これ3要素のいずれかを取り除くことが重要で、

①感染症のもととなる病原体(感染源)を排除する
②感染経路を遮断する
③感染を起こしやすい状態になっている宿主の抵抗力の向上させること

が有効です。

これらのうち、特に重要と考えられているのが、②感染経路の遮断です。そこでポイントとなるのが、「標準予防策(スタンダード・プリコーション)」。

既にご存知の概念かもしれませんが、正確な定義はどのようなものか、改めて復習しましょう。

標準予防策(スタンダード・プリコーション)とは

医療、介護の現場で適用される感染予防策で、1996年にアメリカ合衆国の国立疾病予防センター(CDC)が提唱しました。

「すべての患者の血液、体液、分泌物、嘔吐物、排泄物、創傷皮膚、粘膜等は、感染する危険があるものとして取り扱わなければならない」という考え方を基本としており、感染の有無に関わらず全ての患者に対して行われる予防策です。

感染源となる可能性のあるもの

  • 嘔吐物、排泄物(便・尿等)、創傷皮膚、粘膜等
  • 血液、体液、分泌物(喀痰・膿等)
  • 使用した器具・器材(注射針、ガーゼ等)
  • 上記に触れた手指等

感染症の感染経路

接触感染

(経口感染含む)

手指・食品・器具を介して伝播する 頻度の高い伝播経路である。

ノロウイルス※ 

腸管出血性大腸菌 

メチシリン耐性黄色ブドウ 球菌(MRSA

飛沫感染

咳、くしゃみ、会話等で、飛沫粒子 5μm以上)により伝播する。

1m以内に床に落下し、空中を浮遊し続けることはない。

インフルエンザウイルス

ムンプスウイルス

風しんウイルス

空気感染

咳、くしゃみ等で飛沫核 5μm未満)として伝播し、 空中に浮遊し、空気の流れにより 飛散する。

結核菌

麻しんウイルス 

水痘ウイルス

血液媒介感染

病原体に汚染された血液や体液、 分泌物が、針刺し等により体内に 入ることにより感染する。

B型肝炎ウイルス 

C型肝炎ウイルス

インフルエンザウイルスは、接触感染により感染する場合がある 

ノロウイルス、インフルエンザウイルスは、空気感染の可能性が報告されている

(出典)高齢者介護施設における 感染対策マニュアル 改訂版

 

標準予防策の具体的な内容としては、手洗い、手袋の着用のほか、マスク・ゴーグル、エプロン・ガウンなどの個人防護具の着用についてや、ケアに使用した器具の洗浄・消毒、環境対策、リネンの消毒等があります。

感染症の予防にあたっては、全ての患者に適用される「標準予防策」と、標準予防策以上の対策が必要と考えられる場合には、特定の感染経路を遮断するための「感染経路別予防策」を加えて実施することが必要となります。

今回は、標準予防策における手洗い(手指衛生)について解説します。

手指衛生(手洗い)の基本

感染対策の基本かつ最も大切な手段といえば手洗い。ケアの前後に、手洗いを行うことが大切です。

具体的には、次のタイミングで手洗いが必要になります。

手洗いのタイミング

<ケアの前>

  • 病室への入室前
  • 患者に直接接触する前
  • 同一患者ケア中に、汚染された部位から、清潔な部位へ移る前
  • 中心静脈カテーテルを挿入するとき、滅菌手袋をつける前
  • 尿路留置カテーテル、末梢血管カテーテルの挿入、その他の侵襲的処置を行う場合  など

<ケアの後>

  • 患者に直接触れる処置をした後(脈拍、血圧の計測、体位変換など)
  • 患者のすぐ近くにある機器に触れた後
  • 患者の血液、体液や排泄物、損傷部位や創傷被覆材に触れた後
  • 手袋を外した後 など

 

(出典)Guideline for Hand Hygiene in Health-Care Settings. MMWR, 2002 https://www.cdc.gov/mmwr/PDF/rr/rr5116.pdf

 

手洗いのポイント

CDCのガイドラインでは、目に見える汚れが付いていない場合は、エタノール含有消毒薬液による消毒、目に見える汚れがある場合は、液体せっけんと流水による手洗いが推奨されています。

それぞれのポイントを見てみましょう。

①<目に見える汚れが付いていない場合>エタノール含有消毒薬液による消毒

  • 片方の手のひらに消毒液を取り、手が渇くまで、手指表面全体に擦りこむ
  • 使用量については、メーカーの推奨量を用いる

②<目に見える汚れが付いている場合>液体せっけんと流水による手洗い

  • 水で手を濡らしてから、石けんを手に取る(使用量は、メーカーの推奨量を用いる)。
  • 15秒間以上、両手、指の全体をしっかりともみ洗いする
  • 水ですすぎ、ペーパータオルを用いて完全に乾かす
  • 使用したペーパータオルで蛇口を締める

(出典)Guideline for Hand Hygiene in Health-Care Settings. MMWR, 2002 https://www.cdc.gov/mmwr/PDF/rr/rr5116.pdf

液体せっけんと流水による手洗いの際には、次の点に注意します。

〇液体せっけんと流水による手洗いの注意点

  • 手を洗うときは、時計や指輪をはずす。
  • 爪は短く切っておく。
  • まず手を流水で軽く洗う。
  • 液体石けんを使用して洗う
  • 手洗いが雑になりやすい部位は、注意して洗う。
  • 石けん成分をよく洗い流す
  • 使い捨てのペーパータオルを使用する(共有の布タオルは使用しない)。
  • 水道栓は、自動水栓か手首、肘等で簡単に操作できるものが望ましい。
  • やむを得ず、水道栓を手で操作する場合は、水道栓は洗った手で止めるのではなく、手を拭いたペーパータオルを用いて止める。
  • 手を完全に乾燥させる。
  • 日頃からの手のスキンケアを行う(個人のハンドクリームを使用)。
  • 手荒れがひどい場合は、皮膚科医等の専門家に相談する。

液体石けんの継ぎ足し使用はやめます。液体石けんの容器を再利用する場 合は、残りの石けん液を廃棄し、容器をブラッシング、流水洗浄し、乾燥させてから新しい石けん液を詰め替えます。

(出典)高齢者介護施設における 感染対策マニュアル 改訂版

手洗いの手順については、以下のページで詳しく解説されています。

厚生労働省:正しい手指消毒
https://www.mhlw.go.jp/content/000501122.pdf

まとめ

今回は標準予防策の基本情報と、手洗いのポイントについて解説しました。CDCのガイドラインでは、手洗いは最も大切な予防策と位置付けられています。医療や介護従事者を介して感染症が拡がることがないよう、現場での標準予防策の徹底を心掛けましょう。

<参考文献など>

厚生労働省:高齢者介護施設における 感染対策マニュアル 改訂版
https://www.mhlw.go.jp/content/000500646.pdf

Centers for Disease Control and PreventionGuideline for Hand Hygiene in Health-Care Settings
https://www.cdc.gov/mmwr/PDF/rr/rr5116.pdf

 

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