感染症予防の基本「標準予防策」とは<個人防護具(PPE)>|在宅医療の基礎知識

日本の医療施設では、「標準予防策(スタンダード・プリコーション)」に基づいて、感染症予防が実施されています。政府は、新型コロナウイルス感染症の感染拡大予防においても、標準予防策の遵守が大切であることを明言していることから、その重要性が高まっています。

そんな標準予防策を実施する上で欠かせないのが「個人防護具(PPE」です。今回は、個人防護具ついて、主な防護具の特徴や着脱手順などを解説します。

標準予防策(スタンダード・プリコーション)とは

「すべての患者の血液、体液、分泌物、嘔吐物、排泄物、創傷皮膚、粘膜等は、感染する危険性があるものとして取り扱わなければならない」という考え方を基本とした予防策で、感染の疑いや確定に関係なく、全ての患者に適応されます。

米国疾病管理予防センター(CDC)が1996年に発表した「隔離予防策のためのガイドライン」によって提唱され、具体的には、手指衛生、個人防護具(PPE)の活用、咳エチケットなどを実施します。

今回は、標準予防策のうち、個人防護具(PPEについて解説します。

感染症予防の基本「標準予防策」とは<手洗い>|在宅医療の基礎知識

2020年3月24日

 

個人防護具(PPE)とは

標準予防策の一つとして、血液や体液との接触が予測されるときに使用することが推奨されています。
主な個人防護具は次の通りで、状況に応じて適切なものを選択します。

主な個人防護具

  • 手袋
  • マスク
  • エプロン
  • ガウン
  • ゴーグル
  • フェイスシールド
  • シューズカバー
  • キャップ  など

それぞれの特性と注意点をみてみましょう。

個人防護具の特性・注意点

(1)手袋

血液や体液、粘膜、傷のある皮膚、排泄物などに触れる際に装着します。

患者、着用者のそれぞれを守るためには、適切なタイミングで手袋を交換することが大切です。
二人以上の患者の処置を行うときや、手袋が破れたとき、同じ患者であっても、汚染の可能性がある部位から清潔な部位に移るときには手袋を交換する必要があります。

手袋だけでは、完全に汚染を防ぐことができないため、必ず手指衛生を併せて行わなければなりません。
手袋をはめる前だけでなく、手袋のピンホールや、使用中に生じた破損部位から病原菌が通り抜けるケースや、手袋を外す際に汚染物質に触れる可能性があるため、手袋を外した後にも手指衛生を実施します。

(2)マスク

咳やくしゃみ、痰の吸引によって生じる飛沫や血液が飛散し、着用者の鼻、口に入る恐れがある際に着用します。
また、着用者の飛沫を遮断し、保有する病原菌から患者を守るためにも必要です。

飛沫予防策としてはサージカルマスクが用いられますが、結核、麻疹、水痘の患者と接触する場合などは、空気感染対策として、サージカルマスクより密閉性の高いN95マスクを装着します。
これらの疾患以外でも、重症急性呼吸器症候群(
SARS)、新型インフルエンザ(H1N1)などの患者に対して、エアロゾルが発生するリスクのある処置(気管支内視鏡操作、気管挿管・抜管、気管内吸引など)を行う際には、N95マスクの着用が推奨されます。

※N95マスク:直径0.3μm以上の微粒子を95%以上カットでき、空気の漏れ率を10%以内に抑えることができるマスク。空気感染する微生物の飛沫核の吸入を防ぐために着用。

(3)エプロン、ガウン

血液、体液、分泌物、排泄物などが、医療従事者の衣服に接触するおそれのあるときに使用します。
医療従事者の皮膚、衣服の汚染を防止するほか、汚染された衣服によって、他の患者へ感染が拡大することを防ぐ目的もあります。
防水性があり、飛散した血液などが透過しないような材質である必要があります。

エプロンとガウンのどちらを選ぶべきかについては、感染性物質に接触する部位や量によって判断します。
それぞれの特徴は次の通りとなります。

エプロン

袖がなく、着脱が容易。感染性物質の曝露量が少ない、医療従事者の腕や襟、側胸部に汚染が及ばない場合に使用。

ガウン

長袖で袖口が締まったもので、手袋との隙間がないように着用。感染性物質の曝露量が多い、医療従事者の腕などが感染性物質に接触する可能性がある場合に使用。

(4)ゴーグル

飛沫や血液から目の粘膜を守るために装着します。
目は粘膜がむき出しになっていることから、感染リスクが高いことに注意しましょう。
ゴーグルのほか、マスクに目の覆いが付いたシールドマスク、顔全体を覆うことで、目、鼻、口を守るフェイスシールドなどもあり、感染性物質の曝露状況から、適切な形状のものを選択します。

なお、眼鏡は正面からの防御しかできないため、眼鏡着用時はその上からゴーグルをかける必要があります。

個人防護具の着脱手順

(1)着衣

①手指衛生:流水+石けん、または擦式アルコール消毒

②ガウン、エプロン

③マスク

④ゴーグル

⑤手袋

<着衣のポイント>

患者に触れる機会が最も多い手袋は、清潔を保つために最後に装着します。
ガウンを着用している場合は、ガウンの袖を手袋で覆うように装着し、手首が露出しないように隙間なく手袋をはめます。

(2)脱衣

①手袋

②手指衛生:流水+石けん、または擦式アルコール消毒

③ゴーグル:耳側か側頭部を手で持って外す。

④ガウン、エプロン:汚染された表面を反転し、裏面が出るように脱ぐ。

⑤マスク

⑥手指衛生:流水+石けん、または擦式アルコール消毒

<脱衣時のポイント>

処置が終了したら、処置を行った患者の病室を出る前に防護具を外し、汚染を病室外に持ち出さないようにします。

一番汚れていると考えられる手袋は最初に外します。
また、使用後の防護具は感染源となり得るため、防護具の汚染面に触れないように注意する必要があります。

特に汚染されていると考えられる場所→ゴーグル:目の周囲、ガウン:表面、マスク:鼻部分の表面

まとめ

今回は、標準予防策における個人防護具(PPE)について解説しました。個人防護具は、自分自身だけでなく、患者さんを守るためにも適切な使用が求められます。着脱手順など複雑かつ大変な点も多いですが、手指衛生と併せてしっかりと実施しましょう。

 

<参考文献など>

大友陽子・一木薫編(2009『標準予防策と感染経路別予防策 職業感染対策 第2版』廣瀬千也子監修, 中山書店.

一般社団法人日本環境感染学会:日本環境感染学会教育ツールVer.3(感染対策の基本項目改訂版)http://www.kankyokansen.org/modules/education/index.php?content_id=5

公益社団法人徳島県看護協会:感染予防対策マニュアル
https://tokushima-kangokyokai.or.jp/safety/infection/

 

感染症予防の基本「標準予防策」とは<手洗い>|在宅医療の基礎知識

2020年3月24日

 

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