在宅医療における高齢者栄養管理のポイント|在宅医療の基礎知識

日本では高齢化が進み、高齢者単独や高齢夫婦のみの世帯が増えています。買い物や料理に手間がかかる、加齢により食欲が湧かない、さらには経済面での問題など、様々な要因により高齢者世帯の栄養状態はあまりよくないことがわかっており、在宅療養中の高齢者の7割が低栄養状態にあるとの統計結果も出ています。

そして、最新の研究では低栄養がフレイルや寝たきり、認知機能の低下など多くの問題に深く関与していることが明らかになっています。今回は、在宅医療での高齢者栄養管理のポイントを解説します。

高齢者の低栄養―低栄養対策でフレイルを予防しよう!

2020年8月25日

なぜ在宅医療における栄養管理が重要になるのか?

低栄養とは体を健康に保つために必要な栄養素がとれていない状態のこと。
明確な定義はありませんが、後述のBMIや、血清アルブミン値などが低栄養の目安となります。

詳細なスクリーニングには、病歴と身体的所見(皮下脂肪、筋肉量の減少など)を組み合わせた評価方法で、幅広い年代に使用できる主観的包括的評価(SGA)のほか、高齢者の低栄養を評価するために開発されたMNAなどが用いられます。

2012年度に発表された「在宅療養患者の接触状況・栄養状態の把握に関する調査研究報告書」では、在宅療養をしている高齢者990人の栄養状態をMNAで評価した結果、約70%が「低栄養・もしくは低栄養のおそれあり」であることがわかりました。

低栄養が続くと、体重が減少するだけでなく、皮膚の異常、免疫力の低下、日和見感染など様々な問題が現れます。
また、筋肉量が減少したことによって、運動機能が低下し活動量が減ると、ますます食欲がなくなり、栄養状態がより一層悪化する、という悪循環に陥りやすくなります。そしてこれらが原因となり、認知症や骨粗しょう症、生活の質(QOL)の低下を引き起こす恐れがあるため、根源となる低栄養を防ぐことが大切になります。

では、高齢者の栄養管理においてポイントとなる指標にはどのようなものがあるのでしょうか。いくつかご紹介します。

在宅医療における高齢者栄養管理のポイント「BMI

BMIとは肥満度を表す指数のことで、BMI=体重÷(身長)2の計算式で求めることができます。
高齢者に限らず、栄養管理において重要な指標となります。

4月から適用されている2020年版の「日本人の食事摂取基準」では、フレイルと生活習慣病の両方を予防するために、65歳以上の高齢者のBMIの目標値が21.524.9で設定されています。
成人(1849歳)の場合の目標値は18.524.9で、高齢者のほうが下限値が高くなっていますのでご注意ください。

BMIが低いほど認知症や肺炎のリスクが上昇するほか、要支援・要介護度、意思の伝達、咀嚼力などが有意に低下することが明らかになっています。

高齢者の栄養管理に重要な栄養素「たんぱく質」

高齢者は食欲の低下、咀嚼力の低下、代謝機能の低下によりたんぱく質が不足しがちです。
たんぱく質は消化されたのち、アミノ酸として腸壁から吸収され、筋肉や皮膚となりますが、不足すると筋量や骨量の減少、皮膚の異常などが現れ、BMIが低下していきます。

高齢者においては、体重当たり1.0g程度のたんぱく質の摂取が必要です。
また、腎機能障害でたんぱく質の摂取量を制限している場合は0.60.8gに抑える必要がある一方で、リハビリでの活動量次第では増やすことも必要になります。
医師や管理栄養士などによる見極めが大切です。

たんぱく質の含有量について、栄養成分表示で確認することができる場合は問題ありませんが、自分で調理したものを食べる場合や表示がない場合などは少しわかりにくいかもしれません。
肉や魚の重量の1423%程度がたんぱく質で、たんぱく質を多く含む食品(肉、魚、卵、大豆製品(豆腐、納豆など))を1日で両手一杯分食べることで、大体の目安量となります。

在宅医療で高齢者が十分にたんぱく質を摂取するには

高齢者は咀嚼力が低下するため、あまり固いものを食べられない傾向にあります。
しっかりとたんぱく質を摂取するためには、なるべく柔らかいものをたんぱく補給源にするとよいでしょう。

まず挙げられるものは卵です。卵は1個あたり7g程度のたんぱく質が含まれています。
同時に脂質やビタミン、鉄やカルシウムなどのミネラルも豊富に含まれているため、高齢者の栄養源として優秀です。
ビタミンCは卵にはほとんど含有されていないため、他の食品で補うようにしましょう。

豆腐も柔らかく咀嚼しやすいうえに、100g57gのたんぱく質が含まれているため、高齢者のたんぱく源として適しています。アミノ酸スコアは肉や魚、卵と比べて低いですが白米と合わせて食べることで解決できます。

高齢者の栄養管理に重要な栄養素「ビタミンD

高齢者が積極的に摂取したい栄養素としてもう一つご紹介したいのが、ビタミンDです。
カルシウムに深く関わるビタミンで、骨代謝や血中カルシウムの濃度を調整する働きがありますが、近年、骨だけでなく筋肉に関わっていることも明らかになっています。
また、血中のビタミンD濃度が低いと転倒、骨折のリスクが高くなるという研究結果も報告されており、高齢者のフレイル予防に重要な役割を占めています。

「日本人の食事摂取基準」では、65歳以上の高齢者の一日あたりの摂取目安量は8.5㎍で、魚やきのこ類などの食品に多く含まれています。
焼き鮭を一切れ(80g)食べれば、26.4㎍のビタミンDが摂取できます。
また、紫外線を浴びることで体内でも作られるため、適度な日光浴も効果的です。

まとめー在宅医療における栄養管理の重要性

栄養状態と高齢者のQOLは比例する傾向にあります。しっかりとした栄養管理のもと日々生活を送っている高齢者は活動的ではつらつとしている一方、栄養管理ができていない場合は無気力な生活を送りがちです。在宅医療における栄養管理は高齢者の生活の質を向上させる非常に重要な役割を果たします。高齢者の生活は自分たちに掛かっていると思い仕事をしてみてください。

<参考文献など>

厚生労働省:「日本人の食事摂取基準(2020年版)」策定検討会報告書
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_08517.html

国立長寿医療研究センター:平成24年度老人保健健康増進等事業 在宅療養患者の摂食状況・栄養状態の把握に関する調査研究報告書
http://www.ncgg.go.jp/ncgg-kenkyu/documents/roken/rojinhokoku4_24.pdf

文部科学省:食品成分データベース
https://fooddb.mext.go.jp/index.pl

 

ライタープロフィール
大見 貴秀
麻酔標榜医、麻酔科認定医、日本抗加齢医学学会会員
フリーランス医師として就業する傍ら、医師としての資格を活用してヘルスケア・アンチエイジングに関する情報を発信している。

 

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