感染症予防の基本「感染経路別予防策」|新型コロナウイルスの感染経路とは

日本の医療施設では「標準予防策」に基づいて感染症予防が実施されています。標準予防策がすべての患者に対して適用されるのに対して、特定の感染経路による疾患の患者に対して適用されるのが「感染経路別予防策」。感染症を予防するためには、標準予防策だけでなく、感染経路予防策も実施することが重要です。そこで今回は、感染経路別予防策について解説します。

感染経路別予防策とは

医療機関で感染症の拡大を予防するためには、すべての患者に対して標準予防策を実施することが必要です。
しかし、標準予防策の実施だけでは感染経路の遮断が十分でない疾患については、感染が疑われる疾患に応じて、感染経路別予防策をあわせて実施する必要があります。

感染経路別予防策は、感染経路によって次の3種に分けられますが、複数の感染経路がある疾患については、それぞれ組み合わせて実施します。
また、診断が確定する前であっても、感染していると予測される疾患に合わせて、適切な予防策を実施することが重要です。

  1. 空気感染予防策
  2. 飛沫感染予防策
  3. 接触感染予防策

それでは、それぞれの感染経路の特徴と、予防策の具体的な内容をみてみましょう。

 

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空気感染予防策

(1)空気感染

咳、くしゃみ、会話などによって飛び散った飛沫が空気中で乾燥し、水分が蒸発すると、飛沫核(5μm未満)となります。
この飛沫核を吸い込むことで感染が成立するのが空気感染です。
飛沫核は、長距離、長時間浮遊することができ、空気が流れることで広範囲で拡散します。

空気感染により感染が成立するのは、結核、麻疹、水痘で、これらの疾患が疑われる場合には空気感染予防策を実施します。

(2)具体的な実施内容

①病室

原則、特殊な空調設備を持つ空気感染隔離室に収容し、病室の扉は常時閉鎖します。
空調については、陰圧管理、1時間に6回以上の換気を確保しなければなりません。
室内の空気は、直接病院外に排気するか、HEPAフィルターでろ過してから排気します。
隔離室がない場合は、個室に隔離します。

患者の病室外の移動は必要最小限にし、やむを得ず移動する場合は患者にサージカルマスクを着用してもらい、咳エチケットを守るように指導します。

 

②個人防護具

病室に入室する際には、N95マスクか、それより高性能なレスピレーターを着用します。
N95マスクを着用する場合、事前にフィットテストを、装着時にシールチェックを行います。
そのほかに、標準予防策に基づいて必要な防護具を着用します。

飛沫感染予防策

(1)飛沫感染

飛沫感染は、患者の咳、くしゃみ、会話などによって飛び散った飛沫(5μm以上)を他者が吸い込み、飛沫に含まれる病原菌が鼻粘膜、口腔粘膜、結膜などの粘膜に接触することで成立します。
飛沫の場合、空気感染を引き起こす飛沫核とは異なり、浮遊することのできる距離は1m以内といわれており、長距離、長時間を浮遊することはできません。

飛沫感染によって感染する代表的な疾患は、インフルエンザ、風疹、流行性耳下腺炎(おたふくかぜ)、マイコプラズマ肺炎などが挙げられます。

 

(2)具体的な実施内容

①病室

可能な限り個室隔離することが望ましいですが、同じ感染症の患者で集団隔離することも認められます。
個室や集団での隔離が難しい場合は、非感染者のベッドの間に必ず1m以上の間隔を空け、カーテンを引くことで感染しないようにします。
なお、飛沫は空気中を長時間、長距離浮遊することができないため、空気感染予防策のような特殊な空調設備を設置する必要はありません。

患者の病室外への移動は必要最小限に控えるべきですが、やむを得ず移動する場合は患者にサージカルマスクを着用してもらい、咳エチケットを守るように指導します。

 

②個人防護具

病室に入るときはサージカルマスクを着用します。
そのほかに、標準予防策に基づいて、必要な個人防護具を着用します。

 

接触感染予防策

(1)接触感染

患者に直接接触したことによる直接接触感染と、汚染された器具、ドアノブやテーブルなどの周辺環境などを介して感染する間接接触感染の2形態があります。
発生頻度が最も高く、医療従事者から感染が拡大しないよう、特に注意しなければなりません。

接触感染によって感染する代表的な疾患は、ノロウイルス・ロタウイルスによる感染性胃腸炎、O-157、疥癬、薬剤耐性菌(MRSAなど)などが該当します。

 

(2)具体的な実施内容

①病室

可能な限り個室隔離することが望ましいですが、同じ感染症の患者で集団隔離することも認められます。
個室や集団での隔離が難しい場合は、非感染者のベッドの間に必ず1m以上の間隔を空け、カーテンを引くことで感染しないようにします。
病室外の移動は必要最小限に制限すべきですが、やむを得ず移動する場合は感染部位や保菌部分を覆います。

 

②個人防護具

ケアの際には常時手袋を着用し、汚染物や部位に触れたときにはその都度交換します。
個室に入室する際に手袋とガウンを必ず着用し、退出時には室内で外して破棄し、すみやかに手指衛生を行います。
そのほかに、標準予防策に基づいて必要な防護具を着用します。

 

③使用した器具、周辺環境について

血圧計、聴診器、パルスオキシメーターなどの医療器具は、可能な限りその患者専用として使用します。
他の患者も使用する場合は、洗浄、消毒、滅菌処理を行ってから使用します。
患者が頻繁に触れるベッド柵、ベッドテーブルなどの周辺環境については、1日1回以上清拭掃除します。

 

新型コロナウイルス感染症の感染経路

現在世界的に流行が拡大している新型コロナウイルスは、接触感染、飛沫感染によって伝播すると考えられています。
国立感染症研究所が5月20日に公開した「新型コロナウイルス感染症に対する感染管理(2020年5月20日改訂版)」では、感染予防にあたっては、標準予防策の徹底と、感染が確定、または疑われる患者への接触感染予防策と飛沫感染予防策の実施が推奨されています。

 

まとめ

今回は、感染経路別予防策について解説しました。標準予防策とあわせて感染経路別予防策を実施することで、徹底した感染症予防を行うことができます。医療施設内での感染そのものをなくすことはできませんが、拡大を最小限にとどめるために、標準予防策、感染経路別予防策をしっかり実施しましょう。

 

<参考文献など>

大友陽子・一木薫編(2009)『標準予防策と感染経路別予防策 職業感染対策 第2版』廣瀬千也子監修, 中山書店.

高橋 孝(2009)「医療現場における感染予防のガイドライン 2007」, 『日本内科学会雑誌』 98(1), pp.174-178
https://www.jstage.jst.go.jp/article/naika/98/1/98_174/_pdf

一般社団法人日本環境感染学会:日本環境感染学会教育ツールVer.3(感染対策の基本項目改訂版)http://www.kankyokansen.org/modules/education/index.php?content_id=5

国立感染症研究所:新型コロナウイルス感染症に対する感染管理(2020年5月20日改訂版)
https://www.niid.go.jp/niid/ja/diseases/ka/corona-virus/2019-ncov/2484-idsc/9310-2019-ncov-01.html

 

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