心身の健康は「口」から!口腔機能の低下「オーラルフレイル」のリスクと対策

64日から10日は、歯と口の健康週間。最新の研究成果では、口腔機能の低下が全身の健康に悪影響を及ぼすことが明らかになっています。

そんな中、口腔の健康状態を示す指標として近年注目されているのが「オーラルフレイル」です。加齢による口腔機能の低下を示す「オーラルフレイル」ですが、具体的にどのようなものなのでしょうか。定義と危険性、そして神奈川県の改善プログラムについてご紹介します。

フレイルとは

加齢によって心身が衰えた状態のことを「フレイル」といいます。
2014年に誕生した比較的新しい概念で、英語で「虚弱」を意味する「Frailty(フレイルティ)」が語源となっています。高齢者の虚弱というと、筋力が衰えて転倒しやすくなる、といった身体的な衰えが思い浮かびますが、これらだけを指すのでなく、認知機能障害などの精神・心理的な問題、独居や経済的困窮による社会的な孤立など、様々な「衰え、虚弱」がフレイルに当てはまります。

フレイルは、健康な状態と要介護との中間の時期と位置付けられており、多くの人がフレイルを経て要介護段階に進むといわれています。
しかし、フレイルの段階で効果的な対策をすることで、要介護状態まで進まずに、健康な状態を保つことができる可能性もあることから、厚労省は
20204月から、フレイルの早期発見のために、75歳以上の後期高齢者を対象とした「フレイル検診」を全国で導入しています。

関連:https://cocomedica.jp/iryo29/

フレイル・サルコペニアとは。正しい理解と予防法|在宅医療の基礎知識

2017年5月10日

オーラルフレイルとは

口と歯には、食べる機能(噛む、飲み込むなど)だけでなく、話す機能や感情表現など精神的な機能があるほか、呼吸にも関わるなど、私たちの健康において、重要な役割を担っています。
これらの機能が「口腔機能」で、身体的なフレイルのうち、加齢により口腔機能が衰えた状態を「オーラルフレイル」と呼びます。

オーラルフレイルの初期段階では、滑舌が悪くなる、食べこぼしが出る、むせる、硬いものが食べづらい、口が乾くといった口腔機能の些細な低下が現れます。

それぞれ些細な衰えではありますが、気づかずに放置してしまうと、固いものが食べづらくなり、柔らかいものばかり食べるようになる、というように食習慣も変わってしまいます。
柔らかい食べ物ばかり食べた結果、噛む筋力が衰えて食欲がなくなり、自覚のないまま機能低下が更に進みます。
食べられるものばかり偏って食べることで、栄養状態が悪化する場合もあります。

その結果、低栄養やサルコペニアなど身体のフレイルにつながるほか、要介護に陥るリスクが高まります。
また、口腔機能が衰えることで、嚥下機能が低下し、誤嚥性肺炎を引き起こすことにもつながります。

オーラルフレイルの危険性-要介護認定リスクは2.35倍、死亡リスクは2.09倍も高い

具体的なオーラルフレイルの予防策はどのようなものがあるのでしょうか。
20183月にオーラルフレイルについての日本初の条例を定めるなど、オーラルフレイル予防に積極的に取り組む神奈川県では、「オーラルフレイル改善プログラム」として、5種のトレーニングが提案されています。

<オーラルフレイル改善プログラム>

  1. 準備体操(深呼吸、「グー・パー・ぐるぐる・ごっくん・べー」)
  2. 開口訓練:食道周りの筋肉を強化し、飲み込む力を高めます。
  3. 舌圧訓練(ペコぱんだ):器具を使って、舌の筋肉を鍛えます。
  4. 発音訓練(無意味音音節連鎖訓練):舌やその周りの筋肉(口輪筋・表情筋など)の衰えを改善し、発音や飲み込みをスムーズにします。呼吸をコントロールしたり、唾液の分泌を高めたりすることもできます。
  5. 咀嚼訓練(ガム訓練):ガムを噛むことで、食べ物を噛むために必要な筋肉を鍛えます。

準備体操のうち、顔面体操と舌体操を組み合わせた口の体操「グー・パー・ぐるぐる・ごっくん・べー」は、特別な器具も不要で、短時間でできる簡単なトレーニングとなっています。
オーラルフレイルの予防につながるだけでなく、飲み込む力の強化や唾液分泌を増やす、フェイスラインがすっきりするといった効果も期待できるとのことですので、気軽に試してみるのもいいかもしれませんね。

オーラルフレイル改善プログラムの詳細については、神奈川県が発行する「オーラルフレイルハンドブック」で公開されています。

参考:神奈川県・神奈川県医師会「オーラルフレイルハンドブック(歯科専門職向け)第2版」https://www.pref.kanagawa.jp/documents/6679/documents6679kanagawahandbook.pdf

「オーラルフレイル改善プログラム」の効果については、2018年、神奈川県海老名市在住の65歳以上の高齢者に対する調査が行われおり、スクリーニング検査の結果オーラルフレイルと判定された人のうち、172名に対して約4週間「オーラルフレイル改善プログラム」を実施したところ、滑舌や舌圧、嚥下機能、咀嚼機能などに改善がみられました。
最終的に、プログラムを利用した人のうち、
97名(56.4%)は口腔機能が改善し、オーラルフレイルから脱したことがわかりました。

まとめ

今回は、歯と口の健康を見直すべく、「オーラルフレイル」について解説しました。硬いものが噛みづらいでも年だし仕方ない、と軽い気持ちで捉えてしまいがちですが、早期発見・対策が、フレイル改善におけるカギとなります。オーラルフレイルについても、早めに機能低下に気づき、適切な予防策をきちんと実施することで、いつまでも心も体も元気に過ごしたいものです。

 

<参考文献など>

公益財団法人長寿科学振興財団 健康長寿ネット:フレイルとはhttps://www.tyojyu.or.jp/net/byouki/frailty/about.html

日本歯科医師会:歯科診療所における オーラルフレイル対応マニュアル2019年版https://www.jda.or.jp/dentist/oral_flail/

神奈川県・一般社団法人神奈川県医師会:オーラルフレイルハンドブック(歯科専門職向け)第2https://www.pref.kanagawa.jp/documents/6679/documents6679kanagawahandbook.pdf

一般社団法人神奈川県歯科医師会:平成30年度 神奈川県「口腔ケアによる健康寿命延伸事業」調査報告書https://www.pref.kanagawa.jp/documents/6679/h30tyousahoukokusyo.pdf

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