マスクは適宜外して休憩も。コロナウイルス感染症と熱中症対策-日本救急医学会ら、緊急提言

全国的に梅雨シーズンが始まり、蒸し暑い日々が続いていますね。晴れの日が恋しくなりますが、暑さに体が慣れていない梅雨の晴れ間は、熱中症リスクが高まるタイミングです。実際に、全国では既に熱中症の発生が報告されており、202061日から7日までの1週間で1,194人が救急搬送されています。

さらに今年は、新型コロナウイルス感染症対策として、マスク着用による熱中症の増加も懸念されており、例年以上に注意しなければなりません。

今回は、熱中症のリスクが高まる今夏の熱中症対策について、日本救急医学会をはじめとした4学会が61日に公表した緊急提言をあわせてご紹介します。

高齢者は熱中症になりやすい-消防庁統計より

消防庁の統計によると、2019年の5月から9月の期間に熱中症で救急搬送されたのは、全国で71,317人。
記録的猛暑となった
18年の同じ期間(20185月~9月:95,137人)と比べると少ないものの、非常に多くの人が熱中症により搬送されています。
特に多かったのは、
65歳以上の高齢者で、全体の52にあたる37,091人を占めています。

また、熱中症による死者についても、記録的猛暑となった2010年以降、全体の8割を高齢者が占める結果となっており、直近では、2018年の熱中症による死者1,581人のうち、81.5%にあたる1,288人が65歳以上の高齢者でした。

高齢者に効果的な熱中症対策-高齢者はなぜ熱中症になりやすい?

高齢者はなぜ熱中症になりやすいのでしょうか。
高齢者は、老化によって暑さやのどの渇きを感じにくくなっており、水分を摂らない、適切に冷房を使っていない傾向がみられるほか、体液量が少なくなっているため、血流を増やすことによって体の熱を放出することができず、体に熱がこもりやすいことも原因と考えられています。

高齢者の熱中症を防ぐためには、喉が渇く前に水分補給を促すことのほか、温湿度計を活用し、一定の温度や湿度になったら積極的に冷房を使うことが有効です。
また、日常的に運動し、体力がある高齢者の場合、若年層に劣らないレベルの暑さに対する耐性を持っていることが明らかになっています。
11回、汗をかく運動をすることで、暑さに対する耐性をつけることも効果的です。

6月も要注意!熱中症-高齢者が注意すべきポイント|在宅医療の基礎知識

2019年6月18日

今年は例年以上に要注意!新型コロナウイルスと熱中症対策

そして、今年の夏は、新型コロナウイルス感染症対策としてのマスク着用、運動不足などの要因によって、例年よりも熱中症のリスクが高まっています。

人が暑さを感じ、体温が上昇した際には、汗や血流を増やしたり呼吸したりすることで、体の熱を放出し、体温を下げようとします。
しかし、マスクによって呼吸しにくくなり、体内に熱がこもりやすくなるため、熱中症のリスクが高くなるといわれています。

また、人間の体は、気候の変化に合わせて徐々に体が暑さに慣れ、強くなっていきます(暑熱順化〈しょねつじゅんか〉)が、この過程では、少し暑い環境下で軽い運動を継続することが有効であるといわれています。
しかし、春先から続く外出自粛により十分な運動ができおらず、暑熱順化が十分でないまま夏を迎えることも、熱中症が増加すると見込まれる要因の一つです。

マスクは適宜外して休憩しましょう-61日、日本救急医学会ら4団体の緊急提言より

このような現状を踏まえて、日本救急医学会、日本呼吸器学会、日本感染症学会、日本臨床救急医学会の4学会は、合同で『新型コロナウイルス感染症の流行を踏まえた熱中症診療に関するワーキンググループ』を設立し、次の緊急提言を発表しました。

【新型コロナウイルス感染症の流行を踏まえた熱中症予防に関する提言】

①屋内においては、室内換気に十分な配慮をしつつ、こまめにエアコン温度を調節し室内温度を確認しましょう。

②マスク着用により、身体に負担がかかりますので、適宜マスクをはずして休憩することも大切です。ただし感染対策上重要ですので、はずす際はフィジカルディスタンシングに配慮し、周囲環境等に十分に注意を払って下さい。また口渇感に依らず頻回に水分も摂取しましょう。

③体が暑さに慣れていない時期が危険です。フィジカルディスタンシングに注意しつつ、室内・室外での適度な運動で少しずつ暑さに体を慣れさせましょう。

④熱中症弱者(独居高齢者、日常生活動作に支障がある方など)の方には特に注意し、社会的孤立を防ぐべく、頻繁に連絡を取り合いましょう。

⑤日頃の体調管理を行い、観察記録をつけておきましょう。おかしいなと思ったら、地域の「帰国者・接触者相談センター」や最寄りの医療機関に連絡・相談をしましょう。

 

それぞれの提言についてみてみましょう。

 

①屋内においては、室内換気に十分な配慮をしつつ、こまめにエアコン温度を調節し室内温度を確認しましょう。

①は「換気」についての提言です。政府が5月に発表した「新しい生活様式」の実施にあたって、今後も自宅で過ごす時間が増えることが予想されますが、日本救急医学会の2015年データによると、熱中症が最も多く発生した場所は室内となっています。

熱中症対策として、エアコンによる室温の管理が重要となる一方、通常のエアコンは空気を循環させるだけで換気の機能はないため、新型コロナウイルス感染症の対策として、同時に窓を開け換気することも必要になります。

とはいえ窓を何度も明けると室内温度が上昇してしまうことも考えられるため、すだれやレースカーテンなどで直射日光の照射を避けることに加え、部屋の温度をこまめに確認することが、屋内で安全に過ごすために重要としています。

また、熱中症の危険性を予測するために有効なのが暑さ指数(WBGTです。気温、湿度、日射・輻射(ふくしゃ)など周辺の熱環境の 3 つを取り入れた指標で、環境省の熱中症予防サイトで公開されています。WBGT31℃以上(危険)あるいはWBGT2831℃(厳重警戒)の場合、屋内であってもエアコンや空調の無い部屋での活動は避けることが推奨されています。

環境省 熱中症予防サイト:https://www.wbgt.env.go.jp/wbgt_data.php

 

②マスク着用により、身体に負担がかかりますので、適宜マスクをはずして休憩することも大切です。ただし感染対策上重要ですので、はずす際はフィジカルディスタンシングに配慮し、周囲環境等に十分に注意を払って下さい。また口渇感に依らず頻回に水分も摂取しましょう。

②は、「マスク」についての提言です。先ほどご紹介しましたが、暑い環境下でのマスクは体に負担となると考えられています。日本救急医学会らは、「マスク着用による身体、特に体温に及ぼす影響を学術的に研究した報告はあまりない」としていますが、Robergeらが実施した次の研究について紹介しています。

この研究では、サージカルマスクを装着した人と、そうでない人を1時間、5㎞を室内のジョギングマシーンで運動負荷を与え、その前後でマスク内温度や体温などを比較しています。その結果、マスクを装着して運動した人は、有意に心拍数、呼吸数、二酸化炭素が増加したとのことです。

日本救急医学会らは、マスクによる身体への負担を考慮して、適宜マスクを外して休憩することも必要としていますが、フィジカルディスタンスを保ちながら、咳エチケットを徹底した上で行うことを求めています。

また、マスクをすることで口の渇きが感じにくくなるため、のどの渇きで判断するのではなく、こまめに水分補給することについても推奨しています。

 

③体が暑さに慣れていない時期が危険です。フィジカルディスタンシングに注意しつつ、室内・室外での適度な運動で少しずつ暑さに体を慣れさせましょう。

③は、先立ってご紹介した「暑熱順化」に関する提言です。外出自粛によって自宅待機する時間が長かったことから、暑さに体が慣れていない状態の人が多いと見込まれています。暑熱順化を得られるよう、気温が高くなる前の今の時期から、自宅の中で活動量・運動量を増やす、人込みを避けて屋外で散歩するといった取り組みを始めることが重要としています。

 

④熱中症弱者(独居高齢者、日常生活動作に支障がある方など)の方には特に注意し、社会的孤立を防ぐべく、頻繁に連絡を取り合いましょう。

④は、社会的孤立を防ぐため「見守り」についての提言です。高齢者は、日常生活の中で起こる「非労作性熱中症」が多いことがわかっていますが、フィジカルディスタンシングを守るために、見守りの頻度を減らしてしまうと、発見の遅れや重症化につながるおそれがあります。

日本救急医学会らは、高齢者への声掛けのほか、家族との電話やSNS、メールによる体調確認、緊急時の連絡先を伝えておくといった方法で、フィジカルディスタンスは保ちながらも、心のつながりを築き、社会的な孤立を防ぐことが重要であるとまとめています。

 

⑤日頃の体調管理を行い、観察記録をつけておきましょう。おかしいなと思ったら、地域の「帰国者・接触者相談センター」や最寄りの医療機関に連絡・相談をしましょう。

⑤は「日常の体調管理と記録」についての提言です。発熱や倦怠感など、熱中症の初期症状と新型コロナウイルス感染症の症状は似ており、判別が難しい可能性があります。発熱や呼吸困難の症状があらわれたら、毎日体温と症状、外出先の記録を行い、もしものときのために救急隊員がわかる場所に備えておくようにします。

医療機関を受診する場合も、このような観察記録を活用することで、熱中症か、新型コロナウイルス感染症の疑いか、医療現場での判断に役立ち、迅速な治療に移行できる可能性があると、日本救急医学会らは訴えています。

 

まとめ

今回は、熱中症と新型コロナウイルス感染症について解説しました。気象庁によると、今年の夏は例年並みか、例年よりも高い気温になると予想されています。今年も厳しい夏になるのかと思うと、筆者は恐怖を感じずにはいられません…。

熱中症による救急搬送が増加すると、救急医療現場の負担が大きくなり、医療崩壊につながる恐れがあります。熱中症は適切な対策を行うことで予防できます。個人がしっかり対策することで、夏を健康に過ごしましょう。

 

<参考文献など>

日本救急医学会:「新型コロナウイルス感染症の流行を踏まえた熱中症予防に関する提言」についてhttps://www.jaam.jp/info/2020/info-20200601.html

環境省:熱中症環境保健マニュアル2018
https://www.wbgt.env.go.jp/pdf/manual/heatillness_manual_full.pdf

環境省 熱中症予防サイト:https://www.wbgt.env.go.jp/wbgt_data.php

総務省消防庁:2019 年(5月から9月)の熱中症による救急搬送状況https://www.fdma.go.jp/disaster/heatstroke/items/heatstroke_geppou_2019.pdf

厚生労働省:熱中症による死亡数 人口動態統計(確定数)よりhttps://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/tokusyu/necchusho18/index.html

 

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