高齢者の低栄養―低栄養対策でフレイルを予防しよう!

暑い日々が続いていますが、皆さまはご飯をしっかり食べていますか。夏バテ気味で食欲がないそんな方もいらっしゃるかもしれませんね。高齢者は加齢とともに自然と食が細くなり、低栄養に陥りがちですが、低栄養はフレイルや寝たきりに深く関与していることが明らかになっています。今回は高齢者の低栄養の現状や要因、対策について解説します。

低栄養とは定義と現状

低栄養とは、体を健康に保つために必要な量の栄養素がとれていない状態のことを指します。

一般的に、年を取ると食事の量が減ったり、食事の内容が偏ったりするようになり、エネルギー、たんぱく質など、体を動かし、健康的な生活を送るために必要な栄養素が不足しがちになります。
また、エネルギー、たんぱく質に限らず、果物や生野菜、肉類などを食べずに、よく煮た野菜類ばかり食べている場合にはビタミンやミネラルが、固いものや繊維質が多いものを避けている場合、食物繊維が不足することもあります。

2017年の国民健康・栄養調査によると、低栄養傾向(BMI20以下)の65歳以上の高齢者の割合は16.4%(男性12.5%、女性19.6%)にのぼり、80歳以上の場合、男女とも2割が低栄養傾向であることが報告されています。

さらに、サルコペニアの評価にも用いる骨格筋指数(筋肉量の指標)を見てみると、65歳以上の高齢者全体の平均値は、男性 7.7 kg/m2、女性 6.5 kg/m2であるのに対し、低栄養傾向の人の平均値は男性 6.7 kg/m2、女性 6.1 kg/m2で、後者の方が低いことが明らかに。
栄養不足が筋肉の衰えに関連していることが伺える結果となりました。

低栄養の評価方法

具体的に、どの程度栄養が足りていない状態を「低栄養」とみなすのでしょうか。
低栄養の評価方法は様々なものがありますが、BMI、体重減少率、血清アルブミン値などが良く用いられます。

低栄養の指標の一例

BMI20以下(*1

〇体重減少率(*2

低リスク

中リスク

高リスク

1か月

変化なし

3%未満)

35%未満

5%以上

3か月

37.5%未満

7.5%以上

6か月

310%未満

10%以上

〇血清アルブミン値:3.5g/dl以下(*2

【出典】
*1)健康日本21(第2次)での目標値。
*2)厚生労働省「栄養スクリーニング・アセスメント・モニタリング」より抜粋。

これらに加えて、高齢者の栄養評価において有用なのがMNAで、ネスレヘルスサイエンスが医療・介護従事者向けの評価ツールとして、ホームページ上で公表しています。
18項目の質問で構成されており、栄養状況を点数で見える化することができます。

ネスレヘルスサイエンス 栄養評価ツール(MNA):https://www.nestlehealthscience.jp/inform/tool

低栄養の要因

高齢者の場合、次の要因が低栄養を引き起こすと考えられます。

高齢者の代表的な低栄養の要因(*3

1.社会的要因

・ 独居

・ 介護力不足・ネグレクト

・ 孤独感

・ 貧困

2.精神的心理的要因

・ 認知機能障害

・ うつ

・ 誤嚥、窒息の恐怖

3.加齢の関与

・嗅覚、味覚障害

・ 食欲低下

4.疾病要因

・ 臓器不全

・ 炎症・悪性腫瘍

・ 疼痛

・ 義歯など口腔内の問題

・ 薬物副作用

・ 咀嚼・嚥下障害

・ 日常生活動作障害

・ 消化管の問題(下痢・便秘)

5.その他

・ 不適切な食形態の問題

・栄養に関する誤認識

・ 医療者の誤った指導

*3)厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2015年版)策定検討会」報告書より引用

低栄養の症状

低栄養に陥ると、次のような症状が現れます。
また、高齢者の場合、食事量が減ることで、食べ物から接種する水分量が低下するため、低栄養と同時に脱水が進行しやすくなります。
両方の症状を把握し、対策することが大切です。

低栄養の症状

・ 体重の減少

・ 筋肉量や筋力の低下

・ 免疫力が低下し、風邪などの感染症にかかりやすくなる

・ 骨がもろくなる

・ 認知機能が低下する

・ 気力がなくなる

・ 傷や褥瘡が治りにくい

・ 下半身や腹部がむくみやすい

脱水と低栄養の両方でみられる症状

・ 食欲がない

・ 口の中が乾いている

・ 皮膚が乾燥し、弾力がない

・ 唾液に粘り(べたべたした感じ)がある

フレイル、サルコペニアとの関係

フレイルは、加齢によって心身の機能が衰えた状態を指し、健康な状態と要介護の中間に位置付けられています。
体重の減少や疲れやすくなる、歩く速度が遅くなるなどの症状がみられ、フレイルがこのまま進行すると要介護や寝たきり状態に移行します。

そして、フレイルや、加齢によって筋肉量が減少するサルコペニアは、低栄養が深くかかわっていることが明らかになっています。

食欲が低下し食べる量が減ると、低栄養状態に陥りますが、それによって筋肉量が減り(サルコペニア)、基礎代謝が低下する、筋力が減って活動量が減る、といった変化が現れます。
その結果、エネルギーの消費量が減り、食欲がなくなってしまい、さらに低栄養が悪化する「フレイルティ・サイクル」が構築されます。
低栄養が引き金となり、フレイルが悪化し寝たきりに陥るそんな悪循環へとつながるのです。
心身の健康維持のためにも、低栄養の予防が大切になるわけですね。

低栄養の対策と改善

最近食べる量が減った、食欲がないといった変化が現れた場合は、根本となる原因から改善することが必要になります。

例えば、入れ歯が合わず、痛みを感じるために食べられない場合、歯科医師と相談し、入れ歯を調整することで改善できる可能性があります。
睡眠薬を飲んでいる場合、食事の時間にきちんと覚醒した状態でいられるように、服薬時間を調整することも有効です。
一度にたくさん食べられない場合は、少量の食事を回数を分けて食べる、間食で栄養補助食品を用いることで、たんぱく質やカロリーを補うといったことも可能です。

気になることがある場合には、かかりつけ医など専門家に相談してみましょう。

また、高齢者の低栄養を防ぎ、元気で長生きするための食生活指針として、次の15箇条が提示されています。
毎日の食事に気を配り、低栄養に陥らないよう、意識して過ごしましょう。

低栄養を予防し老化を遅らせるための食生活指針

1. 3食のバランスをよくとり、欠食は絶対さける

2. 動物性たんぱく質を十分に摂取する

3. 魚と肉の摂取は11程度の割合にする

4. 肉は、さまざまな種類を摂取し、偏らないようにする

5. 油脂類の摂取が不足にならないように注意する

6. 牛乳は、毎日200ml以上飲むようにする

7. 野菜は、緑黄色野菜、根野菜など豊富な種類を毎日食べ、火を通して摂取量を確保する

8. 食欲がないときはとくにおかずを先に食べごはんを残す

9. 食材の調理法や保存法を習熟する

10. 酢、香辛料、香り野菜を十分に取り入れる

11. 味見してから調味料を使う

12. 和風、中華、洋風とさまざまな料理を取り入れる

13. 会食の機会を豊富につくる

14. かむ力を維持するため義歯は定期的に点検を受ける

15. 健康情報を積極的に取り入れる

*4)公益財団法人長寿科学振興財団 健康長寿ネット(https://www.tyojyu.or.jp/net/kenkou-tyoju/koureisha-shokuji/shokuji-katsudou.html)より引用

まとめ

今回は低栄養について解説しました。年をとったから、若いころのようには食べられないという方でも、きちんと食べて健康に過ごせるように、周囲がサポートすることが大切です。低栄養がサルコペニアやフレイルの引き金となることを理解したうえで、低栄養に早期介入できるように努めましょう。

<参考文献など>

厚生労働省:平成29年 国民健康・栄養調査結果の概要
https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/000351576.pdf

厚生労働省:健康日本21(第二次)
http://www.kenkounippon21.gr.jp/kenkounippon21/about/index.html

厚生労働省:栄養スクリーニング・アセスメント・モニタリング
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12300000-Roukenkyoku/0000199126.pdf

厚生労働省:「日本人の食事摂取基準(2015年版)策定検討会」報告書https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/0000041824.html

公益財団法人長寿科学振興財団 健康長寿ネット:低栄養
https://www.tyojyu.or.jp/net/byouki/rounensei/tei-eiyou.html

 

 

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