高齢者の9人に1人が搬送!救急車利用の実態

あす99日は「救急の日」。2018年の救急車による搬送件数は660万件で過去最多、なんと4.8秒に1回の割合で出動している計算になります。その背景には、軽傷者の利用や、タクシー代わりの救急要請など不適切な利用が目立つことが指摘されています。今回は救急の日に向けて、限りある医療資源である救急車について、利用の現状や課題をご紹介します。

救急搬送の現状

総務省消防庁の最新の統計によると、2018年の救急車による救急出動件数6605,213件で、搬送人員は596295人で、いずれも過去最多となっています。
1日平均1万8,096 件、4.8 秒に1回の割合で出動していることとなり、国民の21人に1人が搬送された計算になります。

搬送人員を年齢別にみてみると、最多となったのは65歳以上の高齢者で、全体の59.4%にあたる3539,063人が搬送されています。
高齢者の搬送数は高齢化が進むとともに年々増加しており、15年の国勢調査の高齢化率(26.6%)を基に計算すると、9人に1人が搬送されていることになります。

高齢者の特徴

高齢者が救急搬送される原因を事故の種類ごとにみると、最も多いのが急病2411,050人)で高齢者の7割が該当することが明らかに。
循環器系の疾患によるものが特に多く、「心疾患等」が262,237人、「脳疾患」が213,052人で高齢者の急病による搬送の2割を占める結果となりました。次いで多いのが「呼吸器系」で、276,468人が該当します。

傷病程度別では、「重症(3週間以上の長期入院が必要)」が234,532(9.7)、「中等症(入院が必要)」が119557(49.4)、「軽症(入院の必要がない)」が929,694人(38.6)となり、中等症が半数近くを占めています。一方、入院の必要がない「軽症」の場合でも、救急車が利用されるケースが4割程度にのぼることがわかります。

搬送者の半数は「軽症者」

冒頭でご紹介した救急車による救急出動件数と搬送人数ですが、09年以降、どちらも過去最高値を毎年更新し続けており、今後も増加し続ける見通しであるといわれています。

なぜ毎年増え続けているのでしょうか。
一因として挙げられるのが、本来救急車を呼ぶ必要のない、軽症者の利用が多くなっていることです。

総務省消防庁の統計では、全年齢の傷病程度別の救急搬送人数をみてみると、「重症」が487,413人(8.2%)、「中等症」が2482,018人(41.6%)、「軽症」が2909,546人(48.8%)と、軽症者が半数を占める結果となっています。

搬送者数全体では年々増加し続けているものの、救急搬送者数のうち、軽症者が占める割合については、1998年が50.4%2003年が51.3%、2008年が50.8%、2013年が49.9%、2018年が48.8%と半数近くで推移しています。

また、タクシー代がもったいないから、眠れなくて話し相手がほしい、どの病院に行ったらいいかわからなかったから、など不適切な理由で救急車を呼ぶケースも後を絶ちません。

救急出動の要請が過剰に増えると、現場への到着時間や病院収容時間が遅れることにつながる可能性があります。
総務省消防庁によると、18年の救急車の現場到着所要時間(入電から現場到着までにかかる時間)は全国平均で8.7分(対前年比0.1分増)、病院収容所要時間(入電から医師引継ぎまでにかかる時間)は、全国平均で39.5分(対前年比 0.2分増)で、わずかな増加にとどまっていますが、救急医療の現場ではたった一分の差が救命や後遺症の有無に影響を及ぼす可能性があります。

軽傷の人でも救急搬送が必要な場合や、搬送後の検査で実は中等症以上の症状だった、というケースもありますが、必要な人に医療資源が渡るように適切な利用を心がけましょう。

また、15年に国の財政制度等審議会が提言したことがきっかけで、救急車の一部有料化が検討されました。
不必要な救急車の利用が減るというメリットが考えられる一方で、経済的に厳しい状況下にある人の利用が難しくなる可能性があるほか、有料となる対象者の範囲や金額、徴収方法など様々な課題があることから、現時点では相談窓口「#7119」や、救急車の適正利用を啓発する方針となっています。

救急車を呼ぶべき症状とは迷ったら「#7119」に電話を

それでは、具体的にどのような症状が現れた場合、救急車を呼ぶべきなのでしょうか。
総務省消防庁のリーフレットのうち、高齢者の緊急性が高い症状として挙げられているものをご紹介します。

緊急性が高い症状-高齢者編

・ 顔:顔半分が動きにくい、しびれる/笑うと口や顔の片方がゆがむ/ろれつがまわりにくい/見える範囲が狭くなる/周りが二重に見える

・ 頭:突然の激しい頭痛/突然の高熱/急にふらつき、立っていられない

・ 胸や背中:突然の激痛/急な息切れ、呼吸困難/旅行などの後に痛み出した/痛む場所が移動する

・ 手・足:突然のしびれ/突然、片方の腕や足に力が入らなくなる

・ おなか:突然の激しい腹痛/血を吐く

・ 意識の障害:意識がない(返事がない)またはおかしい(もうろうとしている)

・ 吐き気:冷や汗を伴うような強い吐き気

・ けいれん:けいれんが止まらない

・ 飲み込み:物をのどにつまらせた

・ けが・やけど:大量の出血を伴うけが/広範囲のやけど

・ 事故:交通事故や転落、転倒で強い衝撃を受けた

・ その他、いつもと違う場合、様子がおかしい場合

高齢者は自覚症状が出にくい場合があるため注意しましょう

引用:消防庁 救急車利用リーフレット(高齢者版)
https://www.fdma.go.jp/publication/portal/post9.html

消防庁のリーフレットには、高齢者以外にも成人、小児の緊急性が高い症状がまとめられているほか、救急車が来るまでに用意すべきものや、救急救命士に伝えるべきことなどがわかりやすくまとめられています。

救急車を呼ぶべきか迷ったときには、救急車の適正利用のためにも、あらかじめ相談窓口に連絡しましょう。
電話相談窓口「#7119「#8000(小児用)」緊急性を判断するスマートフォン向けアプリ「Q助」がこれに該当しますが、啓発の観点からも、患者さん・利用者さんとそのご家族に、医療・介護従事者から使い方をお伝えすると良いでしょう。

まとめ

今回は救急車利用の実態について解説しました。高齢化が進むとともに、搬送件数がさらに増加することが見込まれており、救急車の適正利用の重要性がますます大きくなると考えられます。医療・介護従事者からも、適切な利用を啓発していくことが大切といえるでしょう。

<参考文献など>

総務省消防庁: 令和元年版 救急救助の現況 救助編
https://www.fdma.go.jp/publication/rescue/items/kkkg_r01_01_kyukyu.pdf

総務省消防庁: 救急車利用リーフレット
https://www.fdma.go.jp/publication/portal/post9.html

東京消防庁: 救急車の適正利用のお願い
https://www.tfd.metro.tokyo.lg.jp/lfe/kyuu-adv/tksei02.html

 

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