高齢者に多い尿失禁。タイプ別の対処法を解説|在宅医療の基礎知識

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尿失禁とは自分の意志とは関係なく尿がもれてしまうことをいいます。加えて、これにより社会的・衛生的に支障を生ずるものと定義づけられています。

今回は高齢者に多い尿失禁の解説と対処法を紹介します。

 

排尿の基本的な仕組み|在宅医療の基礎知識

本来、腎臓で作られた尿というのは尿管を通って膀胱に貯められ、膀胱に尿がある程度貯まると脊髄が脳へ信号を伝えて尿意を感じます。尿意を感じると、膀胱が収縮すると同時に尿道括約筋という尿の出口の筋肉が弛緩することで、正しく排尿ができるのです。

神経の問題、筋肉の問題、尿路の構造的な問題などが複雑に絡み合って排尿ができるので、逆に言うとこのどこかが障害されると排尿障害や蓄尿障害が起きてしまいます。今回は、その中でも尿失禁(尿漏れ)について述べたいと思います。

尿失禁で困っている利用者さんは実はかなりいるものの、治療への恥ずかしさや単なる老化現象だろうという誤った認識により、治療を受けずに放置されている場合が多く見られます。

 

尿漏れは男性より女性の方が多い

尿もれは男性よりも女性に多く見られます。女性では若年層で5人に1人、高齢層では3人に1人が何らかの尿失禁を経験しています。

尿は腎臓でつくられ、尿管を通って、膀胱に蓄えられますが、腎臓、尿管、膀胱には男女間の構造的な差はあまりありません。違いは、尿道の長さと尿道まわりの構造にあります。女性の尿道は3~4cmと短く、かつ概ねまっすぐです。
一方、男性の尿道は17~20cmと長く、しかも途中で折れ曲がっています。また、尿道の開閉をつかさどる骨盤底の筋肉群も男性の方が強力な上、男性には前立腺という組織が尿道のまわりを取り囲んでいるため、より「尿が出しづらい」ということは起こりがちですが、「うっかり尿が出てしまう」ということは起こりづらいのです。

 

尿失禁の種類

尿失禁を大きく別けると次の4つに分類されます。

  1. 腹圧性尿失禁
  2. 切迫性尿失禁
  3. 溢流性(いつりゅうせい)尿失禁
  4. 機能性尿失禁

1.腹圧性尿失禁 (蓄尿障害)

咳やくしゃみ、急に立ち上がった時や重い荷物を持ち上げた時など、腹圧がかかると漏れてしまうのが、腹圧性尿失禁です。尿失禁の中では一番多く、全体の70%を占めるといわれています。

大きな原因は、骨盤底筋が弱って膀胱や尿道をしっかりと支えられなくなることにあります。加齢に伴い筋力が低下しやすいことや、妊娠・出産や肥満も骨盤のゆるみの原因になります。
また、肥満や便秘も腹圧が上昇しますので、腹圧性尿失禁を悪化させます。腹圧性尿失禁を改善するには、体重を落とすことも実はかなり効果的です。

2.切迫性尿失禁(蓄尿障害)

切迫性尿失禁とは、突然尿がしたくなり、トイレまで間に合わなくなって尿が出てしまう尿失禁のことです。これは最初に述べた、「膀胱が収縮する力」と「尿の出口の筋肉が弛緩する力」の協調が上手くいかなくなることによって起こります。
出口が閉じているのにも関わらず排尿するためのポンプである膀胱が収縮すると、膀胱には過大な圧力がかかります。そうしたポンプと出口の不協調によって、我慢する力が限界をこえると尿が漏れ出てしまうのです。

3.溢流性(いつりゅうせい)尿失禁(排尿障害)

尿が出しづらくなった状態のことを排尿障害といいます。排尿障害が進行すると尿閉といって尿が全く出せなくなります。しかし、尿が作られなければ不要な物質が体に蓄積してしまい、命に危険が及びますので、尿はたまっていきます。
すると、膀胱が破裂するか、もしくは尿を我慢する筋肉が耐えられなくなって尿が漏れます。そうして尿漏れが起きてしまうことを溢流性尿失禁といいます。

通常は、お腹が張って非常に苦しい状態になるためかなりの苦痛を伴いますが、慢性的な排尿障害がある場合は、膀胱の神経自体が傷んでしまっており、全く尿意を感じることができない人も中にはいます。

4.機能性尿失禁

歩行障害や認知症など、身体運動機能の低下が原因でおこる尿失禁です。尿路以外に問題がある場合で、介護や生活環境の見直しを含めて、取り組んでいく必要があります。

 

在宅でできる尿失禁の対処

では、在宅医療において、尿失禁に対してどのような対処が可能でしょうか。
まずは尿失禁のタイプを分類し、それに合わせた対処を考えることが重要です。

■「立ち上がった時や歩いている時に漏れる」とき

これは、腹圧性尿失禁を示唆します。こういう場合は、筋力的に排尿を我慢できるようにしなければなりません。

  1. 骨盤底筋体操をする
  2. 骨盤内の圧力を下げる(便秘解消、体重を落とす)

ということが大切です。

◎骨盤底筋体操
骨盤底筋群(尿道、腟、肛門のまわりの筋肉)の運動で、腟と肛門の収縮(3秒~10秒)と弛緩を1日に10回~20回毎日繰り返し行うことです。「おしっこを途中で止める感覚」や、「おしりの穴を閉める感覚」が大切です。

■「おしっこをしたいと思ったら間に合わない」とき

これは、切迫性尿失禁を示唆します。
膀胱に異常な収縮が起きてしまうのが原因ですので、それを抑える治療が必要になります。切迫性尿失禁については、薬物治療がよい適応ですので、早めにクリニックに相談するのがよいでしょう。

または、腹圧性尿失禁の要素や、機能性尿失禁の要素をあわせて持っている場合もありますので、骨盤底筋体操を行ったり、尿器を近くに置いたり、トイレまで歩きやすいようにするなどといった工夫も無駄ではありません。

■「いつの間にかおしっこが出てる」とき

こういった場合は、尿意すら感じないのか、感じていても訴えることができない(認知機能が低下している)のかについて考えることが必要です。

尿意を感じることすらできない場合は、残尿過多や尿閉によって、尿路感染、膀胱結石、膀胱破裂などを発症する危険が高いため速やかに医療機関を受診する必要があります。在宅で判別するには、一度導尿を行ってみて500mlをこえるような排尿があったり、下腹部がぽっこりと膨れていて押すと痛がったりするようなことが無いかをチェックします。
ただし、神経が傷んでしまっていて修復されない場合も多いので、たとえ薬を使用しても病状が進行しておりすっきりと改善することはあまり多くありません。結局、尿道カテーテルを入れたり、自己導尿を行ったりするようになることが多いです。

尿意を感じていても訴えることができず排尿してしまっている場合で、その原因を取り除くことも難しい場合には、「尿が出ないよりは出た方がよい」と考え、おむつに排尿することで管理をしていくこともあります。

◎在宅での管理のポイント

・腹圧性/切迫性/溢流性その他、の区別のため「どんなときに漏れますか?」と聞いてみましょう
・尿意があるのか聞いてみましょう
・下腹部をさわってみましょう(膨満していれば一度導尿をしてみましょう)
・調整できるところとして、便秘解消・減量・トイレまでの動線の確保(または尿器の用意)について考えてみましょう

 

我慢させずに必要な治療を

尿失禁で、実際に悩んでおられる利用者さんは実は非常に多いのですが、恥ずかしいので我慢していることが多々あります。「最近頻尿で困ってて…」と会話が出た際に、「漏れてしまうことはありますか?」とダイレクトに聞いてあげることで、「実は、たまに漏れるんです。」というようにおっしゃる方は意外といらっしゃるのです。

尿失禁の状態や原因に応じてきちんとした治療法がありますので、家でできる対処法を試し、必要あれば泌尿器科を受診するよう勧めてみましょう。

writer
しゅうぴん先生

普段は急性期病院で医師として勤務しながら、定期的に訪問診療も行い、最後まで患者さんに寄りそう医療を行っています。
また、正しい医療情報の普及を行う活動をライフワークとし、昼夜問わず精力的に活動しています。

知っておくべき高齢者の排尿に関する症状まとめ その1|在宅医療の基礎知識

2017.05.17

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