認知症で食事を食べてくれない!食事拒否の原因と対処法

私たちにとって食事は、健康維持のために欠かせないもの。何よりも生活の中の楽しみでもありますよね。しかし、認知症の方を介護している場合、なぜか食事を食べてくれないというケースもあるのではないでしょうか。栄養面や健康の面で心配になり、「栄養満点だから食べて!」と言いたくなるところですが、無理やり食べさせるのは禁物。では、どのように対応すべきなのでしょうか。今回は、認知症の方に食事拒否された場合の介助について、食事前の準備と対処法について解説します。

食べる前の準備-からだ編

まずは、食事前に体調に異変がないかを確認し、食事前のからだの準備をします。

1)排泄を促す

落ち着いて食事ができるよう、食べ始める前に排泄を促します。
食事を開始してからトイレのために席を立ってしまうと、集中力が途切れ、食事の再開が難しくなることがあります。
また、事前に排泄を済ませていない場合、「トイレに行きたいけど漏らしたらどうしよう」という不安感が強くなり、食事に集中できない場合もあります。
すっきりした気持ちで食事できるように、配慮しましょう。

2)しっかり覚醒した状態で食事を開始する

覚醒が不十分な状態で食事を始めてしまうと、嚥下反射が起きにくくなり、誤嚥のリスクが高まります。
認知症の人は睡眠や覚醒リズムが乱れやすくなっているため、覚醒のために食事前に散歩や興味のある活動に取り組んでもらうことのほか、「これからごはんを食べますよ」と説明する、手を洗う、場所を移動する、きちんと座るなどの準備が必要になります。

また、歯磨きなど、口の中の刺激を与える口腔ケアも覚醒のきっかけとなります。
義歯を装着し準備を整え、咀嚼と嚥下を促す発声練習やマッサージを行うのも良いでしょう。

3)発熱・痛みがないか、体調チェック

発熱や痛み、便秘などがないか、体調のチェックを行います。
認知症の程度によっては、本人が体調不良をうまく訴えることができないため、いつもと様子が違う場合は、他に見られる症状やバイタルサインを確認し、病気の早期発見・治療につなげるようにしましょう。
そのほかに、服用している薬の副作用がみられる場合や、歯周病や義歯が合わないなど、口腔内にトラブルがあるケースもあります。

食べる前の準備-環境編

からだの準備の後は、認知症の方が食事に集中できるよう、周辺環境を整えましょう。

1)音などの過剰な刺激を排除する

食事に集中できるよう、テレビの音や人の出入り、食器の模様など、食事以外の刺激を取り除くようにします。
花や洗濯もの、私物など、食べ物に関係ないものが置かれていると、そちらに気を取られてしまうため、余計なものは片づけるようにしましょう。

2)姿勢を整える

食べやすい姿勢が保てるよう、椅子の位置・高さの調整を行うことも大切です。
食べにくい姿勢のままだと、誤嚥のリスクも高まります。
クッションなどを活用し、楽な姿勢を保てるようにしましょう。

3)食べたいものが提供されているかを考える

食事とは生きるため、健康のためだけのものではなく、生活の中の楽しみでもあります。
本人が食べたいと思える食べ物を提供できるよう、味や食感に加え、こだわりや過去の食習慣などに沿って、柔軟に対応することも大切です。
食習慣(朝食にご飯を食べていたか、それともパンだったかなど)や好きな食べ物について、家族に話を聞いてみることも良いかもしれません。

食事を拒否するときの対処法

これらの事前準備を済ませて、それでも食事を食べてくれないときは、利き手に箸・スプーンなどの食具を、反対の手に食器を持たせ、「頑張って食べようね」などと声掛けをしたり、食器を指で指し示したり、食事を開始するきっかけを与えてみましょう。
これで食事を開始できることがあります。

ただし、食事開始後については、集中力が途切れないよう、必要以上の声掛けをしないように注意しましょう。
食材を飲み込んでいないタイミングで「おいしい?」などと声掛けをすると、食事の中断や誤嚥につながる恐れがあります。
利用者のペースに合わせて対応しましょう。

それでも食べ始めない場合、その背景にある理由を探りながら対処する必要があります。

1)食べ物と認識できていない

目の前に食べ物があっても食べはじめない場合、失認により食べ物と認識できていない可能性があります。
この場合、五感を活用して食べ物を認識できるよう支援することのほか、使い慣れた食器・食具(箸など)を使ってもらう、好物を提供することなども有効です。
また、「今日のおかずはおいしい〇〇ですよ」など、目の前でどんな料理かを口頭で説明することも効果的です。

<五感を活用した支援の例>

①味覚:ひと口だけ介助で味わってもらい、食べ物であることを認識してもらう。

②嗅覚:うどん、ダシなど香り立つ食材を提供する。

③視覚:彩りよい食材を使う。盛り付けで美味しそうに見えるように工夫する。食器と食材の色のコントラストをつける。

④聴覚:麺類をすする音、食材を炒める音などの活用。

2)食べ方がわからない

スプーンなどを持ったり、食器を触ったりするものの、食事を開始できない場合、失行により食具の使い方がわからない可能性があります。

この場合、先ほどご紹介したとおり、利き手に食具、反対の手に食器を持たせ、食べる構えを作ってあげると、食事を始められるようになることがあります。

また、食器や食具を工夫することで改善する場合もあります。
例えば、スプーンから慣れ親しんだ箸に持ち替えることで食べられるようになるケースや、視空間認識障害によって、皿の模様が気になってしまう場合、無地の食器に変更することで食べられるようになるケースもあります。
このように対処法も様々ですので、その人に合った改善策を模索していくことが大切です。

そのほかに、周りの人の様子を見ながら真似することができるため、職員が一緒に食べることも有効と考えられています。
おにぎりやサンドイッチなど、道具を使わずに食べられる食材を活用するのも良いでしょう。

3)品数が多く、混乱してしまう

食器を並べ替えるだけで、いつまでも食べようとしない場合、料理の品数が多いことにより、情報量が多くなり、混乱している可能性があります。
その場合、配膳方法を工夫することで改善することがあります。
コース料理のように一品ずつ料理を出す、丼もののようにワンプレートにまとめる、弁当箱を使うことなどで食べやすくなります。

無理矢理食べさせるのは絶対NG

食事を食べないからと言って無理に食べさせることは、誤嚥から肺炎を引き起こす可能性があり危険です。
また、食事そのものに嫌悪感を抱くようになり、余計に食事を拒否することにつながりかねません。
栄養があるからという理由で嫌いなものを無理やり食べさせる、無理に口の中に入れるといった行為を決して行わないようにしましょう。

まとめ

今回は、認知症の方が食事を拒否する場合の対処方法について解説しました。冒頭でも触れましたが、本来食事とは生命維持、健康のためだけでなく、人生の楽しみでもあります。認知症の方にも同じような気持ちで食事を楽しんでもらえるよう、そして生きる活力になるよう、適切な介助を行いましょう。

 

<参考文献など>

吉田貞夫編著(2014)『認知症の人の摂食障害 最短トラブルシューティング 食べられる環境,食べられる食事がわかる』医歯薬出版

東京都健康長寿医療センター研究所:認知症高齢者の食行動関連障害支援ガイドライン作成および検証に関する調査研究報告書(平成24年3月)
https://www.tmghig.jp/research/info/cms_upload/h23_report_hirano.pdf

認知症介護研究・研修センター(仙台センター):初めての認知症介護 『食事・入浴・排泄編』・解説集(認知症介護チェック表付)
https://www.dcnet.gr.jp/support/research/center/detail_35_center_3.php

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