認知症で食事を吐き出してしまう…食事拒否の原因と対処法

認知症の方の介護をしていると、なかなか食事を食べてくれないそんな困難にぶつかる方もいらっしゃるのではないでしょうか。前回は食事に手を付けてくれない·開始できない事例について解説しましたが、今回は、食事に手を付けてくれたけれど、吐き出してしまう場合の原因と対応策について解説します。

認知症で食事を食べてくれない!食事拒否の原因と対処法

2020年11月17日

食事を吐き出してしまう原因とは

認知症の方が食べ物を吐き出してしまう場合、要因として以下の点が考えられますが、複数の要因が重なっている可能性があるため、様子を注意深く観察し、対処する必要があります。
それぞれ詳しく見ていきましょう。

1)口腔内にトラブル(痛み、味覚・嗅覚障害、加齢による味覚の減退、食形態があわないなど)がある

2)幻覚・妄想により、食べ物を受け付けない

3)食べ物を飲み込む力(嚥下機能)が弱まっている<原因①>口腔内にトラブルがある

まずは口腔内に問題がある場合ですが、ひとくちに問題といっても様々なケースがみられます。

①虫歯や歯周病、口内炎などによる痛みがある場合

虫歯によって歯が折れたり、欠けたりしたことによる痛みや、義歯が当たってついた傷、口内炎などにより痛みがある場合があります。
また、痛みだけでなく、歯周病によって歯がぐらついている場合は、動くことが気になってしまい、食事が摂れないこともあります。

②義歯が合っていない場合

入れ歯を支える骨や粘膜が加齢によって痩せて小さくなり、義歯が合わなくなり、入れ歯が落ちてくるなど、食べづらくなっている可能性があります。
また、手入れが不十分で汚れが残っていたり、入れ歯を使い続けることで摩耗したりすることにより、変形してしまうケースもあります。
新たに作り直さずとも、修理や調整で対応できる可能性もあるため、義歯に問題があると疑われる場合は歯科医や歯科衛生士に相談しましょう。

③加齢により、味覚などの感覚が衰えている場合

味覚は舌の表面や口腔内の粘膜にある味蕾(みらい)という部位で感知しますが、加齢とともに味蕾の数は減少していき、高齢者では新生児の3分の1程度になるといわれています。
これに加えて、加齢によって唾液の分泌量が減ることから、味を感じにくくなる(特に塩味)といわれています。
甘味·塩見をはっきりした味付けにするなど、風味や味の工夫が必要ですが、同時に塩分、糖分の摂取量に注意する必要があります。

④味覚・嗅覚障害があると疑われる場合

加齢による味覚の衰えや、唾液分泌量の低下だけでなく、口腔ケアが不十分で舌苔(ぜったい)が付いてる、カンジダ症などの感染症がみられるなど、衛生状態が良くないことによって味が感じづらくなる場合もあります。

栄養の偏りによって、味蕾を作り出すために必要な亜鉛が欠乏し、味覚障害となることもあるため、偏食がみられる場合は、必要に応じて血中亜鉛濃度を測定し、亜鉛が欠乏していないかの確認が必要です。

そして、高齢者の味覚障害で最も頻度が高いのが薬剤性のもので、血圧降下剤、利尿剤、肝治療剤、消化性潰瘍治療剤など、250種類以上の薬剤で引き起こされる可能性があるといわれています。
亜鉛が体外に排出されるのを促す作用がある薬もあり、注意が必要です。

また、味覚だけでなく嗅覚も、食事において大切な感覚となります。
嗅覚に障害がある場合は、だしなど香り立つ食材を使うことで、食事の摂取量が改善することがあります。

口腔ケアの注意点

口腔内にトラブルがある場合、口の中の状態を確認する必要が在りますが、口腔内は極めてプライベートかつデリケートな領域です。
いきなり口を開けてもらうのではなく、まずは本人に口腔ケアについて説明し、意思疎通を図ることが大切です。
そして、目を見てあいさつをしたり、声掛けをしながら口に触れたりと、配慮しながらケアを行うようにすることが大切です。
また、認知症の方の場合、痛みを自分で訴えることができない場合も多いため、異常を見落とさないよう、よく観察しましょう。

<原因②>幻覚・妄想により、食べ物を受け付けない

レビー小体型認知症やアルツハイマー型認知症の場合、幻覚が現れることがあります。
特にレビー小体型認知症の場合、視覚野がある後頭葉の血流が低下するため、リアルな幻視や錯視がみられるケースが多く、ご飯にかかったごまや、トーストのかすなどが、虫がたかっているように見えてしまい、気持ち悪くて食事を拒否する事例があります。

このような場合、幻視を否定するのではなく、まずは受け入れて、配膳した食事をいったん下げ、別の皿に盛り付けなおしてから再度提供することで、落ち着いて食べられる場合があります。
原因となる可能性のある、ごまやふりかけを使用しない、錯視を防ぐために明るい部屋で食事をとるようにすることなども効果的です。

また、食事にたんぱく質や中鎖脂肪酸(MCT)の粉末を混ぜて提供する場合、毒を盛ったなど妄想につながる恐れがあることから、本人が見ていないところで入れるようにします。
同様の理由で、食事に内服薬を混ぜることは、なるべく避けましょう。

<原因③>飲み込む力(嚥下機能)が弱まっている

認知症のうち、特に脳血管性認知症、レビー小体型認知症などの場合、摂食·嚥下障害を併発する事例が多いことがわかっています。
口に食べ物を入れた後、咀嚼し続けて飲み込まず、最終的に吐き出してしまう場合は、嚥下障害による可能性があり、注意が必要です。

この場合、飲み込む力と食事の形態が合っているのかを確認することが大切です。
まずは歯や噛み合わせの状態を確認し、きちんと食塊形成ができるか、口腔内の状態をチェックします。
そして、料理のとろみや食材のやわらかさ、サイズ、温度など、まとまりやすく食塊形成がしやすいものになっているかを、食事の形態を確認しましょう。

まとめ

今回は認知症の方が食事を吐き出してしまう場合の原因と対策について解説しました。認知症の症状だけでなく、口腔内のトラブル、摂食·嚥下障害、また加齢による生理現象など、様々な要因が背景に隠されていることがわかります。認知症の方も食事を楽しんでもらえるよう、また、お困りの読者さまのお手伝いができるよう、少しでもお役に立てれば幸いです。

<参考文献など>

吉田貞夫編著(2014)『認知症の人の摂食障害 最短トラブルシューティング 食べられる環境,食べられる食事がわかる』医歯薬出版

公益財団法人長寿科学振興財団:健康長寿ネット「味覚障害」https://www.tyojyu.or.jp/net/byouki/jibikashikkan/mikakushogai.html

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