在宅医療での尿道カテーテルの管理と注意すべきポイント|在宅医療の基礎知識

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尿を排泄することは、人間にとって生きていく上で無くてはならない大切な機能です。老廃物を尿として出すだけではなく、体の水分バランスを調整するという重要な役割もあります。

在宅医療のご利用者さんには何らかの理由により排尿が自力でできない場合に、尿道カテーテルを留置されている方がいます。そのような利用者さんをケアする際に注意すべき点について考えてみましょう。

尿道カテーテルとは?種類と太さ|在宅医療の基礎知識

尿道カテーテルとは、カテーテル(チューブ状の医療器具)を、尿道口から尿道を経て膀胱に通し、自力で排尿できない方の尿を体外へ排出させる目的で使用されるものです。

尿道カテーテルはラテックス製もしくはシリコン製であり、通常2-4週間ごとに交換が必要です。

抗菌作用を謳って、銀化合物でコーティングをしたカテーテルも発売されていますが、あまり効果に差は無いとの報告もあります。太さとしては、成人:12~22 Fr、小児:6~10 Fr(Fr:フレンチ:12Frで約4mm)程度を使用します。太いほど膿や血液で閉塞するリスクは減りますが、違和感や合併症が増加する可能性がありますので、適切な太さを選択することが大切です。

成人男性であれば、16Fr前後を使用することが一般的です。また、カテーテルの先端付近にはバルーン(風船)がついており、これを膨らませておくことでカテーテルが抜けないようになっています。バルーンの大きさは、通常5-10mlですが、泌尿器科の術後などは状態に応じて75ml程度のバルーンを用いることもあります。

尿道カテーテルを入れなければならない理由とは?

尿道カテーテルを入れるべき状況とは、どのような状態でしょうか。

1.尿閉または残尿過多

最も多いのは、尿閉または残尿過多の場合です。尿閉や残尿過多になる原因は、前立腺の病気、膀胱の病気、末梢神経の病気、脊髄の病気、脳神経の病気、大きな手術後、などさまざまな場合があります。

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2017.03.22

2.尿量の正確な測定を必要とする場合(周術期や急性期)

心不全、腎不全、敗血症など正確な尿量測定を要する場合には尿道カテーテルを入れます。

3.安静を要する場合

骨折など、体を動かすことができないような場合には尿道カテーテルを入れることになります。

4.失禁管理目的

失禁がひどい場合に、尿道カテーテルを入れる場合があります。特に、尿の汚染に伴って周囲の褥瘡が悪化することが懸念されるような場合は留置することがあります。しかし、一般的には失禁よりも尿道カテーテルの方が合併症のリスクが高いため、できる限り避けるべきでしょう。

5.その他

膀胱に対して手術をした後には膀胱の伸展を防ぐために尿道カテーテルを留置することがあります。また、萎縮膀胱などで膀胱尿管逆流症がある場合や、前立腺や膀胱から出血が起きている場合に安静を保つために留置することもあります。
在宅の現場においては、これらのうち①尿閉または残尿過多か、④失禁管理目的が多いでしょう。

尿道カテーテルの合併症

尿路感染は、米国の急性期病院において最も頻繁に発生する医療関連感染であり、全病院感染の40%を占めています。その中の 約66%が尿道留置カテーテル関連尿路感染という報告があります。

尿道留置カテーテル関連尿路感染を予防するためには、「必要な人に必要な期間だけカテーテルを使用すること」「清潔にカテーテルを挿入すること」「他の人と交差感染を起こさないこと」が大切です。

◎尿道カテーテル管理と感染予防

  1. カテーテルとチューブの接続は必要時以外、外さない
  2. チューブ、集尿バッグは床に接触させないようにする
  3. 集尿バッグの位置は、挿入位置(膀胱)より低位置に置く(逆流防止)
  4. カテーテルの屈曲・ねじれに注意
  5. 尿の流出状況を観察し、閉塞の有無を確認
  6. カテ-テルは2 週間から4週間ごとに交換

 

以上のように、尿道カテーテルが入っている間は尿路感染のリスクは避けられません。最も大事なことは、「不要なカテーテルを入れないこと」です。特に、失禁管理目的で安易に長期的に留置するのはデメリットが多く、なるべく避けましょう。コンドーム型集尿器などもありますので、失禁予防の場合などには代替可能なことも多いので、積極的に活用してもよいでしょう。

また、感染症以外の重大な合併症として、長期留置に伴う持続的な圧で陰茎が裂けてしまうことがあります。予防するためには、尿道カテーテルを腹側に軽く固定し、また固定の部位も適宜変えることが必要です。

在宅の現場における、排尿とカテーテル管理

ここで、例を挙げて考えてみましょう。

症例

70歳男性。20年来の糖尿病あり。2年前に脳梗塞を起こし、在宅介護を導入した。会話は可能だが、右手と右下肢に麻痺があり、歩行はできない。5歳下の妻が介護を行っている。入院中に尿閉(尿が自力で出せなくなること)になったため、尿道カテーテルが留置されており、在宅で3週間ごとに交換している。最近、陰茎の先端が裂けてきてしまっている。

症例の解説

この症例のように、尿道カテーテルを留置されているものの、カテーテルトラブルが起こってしまっています。このような場合、改善する手立てはあるでしょうか。

尿が出ない状況がある場合、最も衛生的といえる管理は、自己導尿(自分自身でカテーテルを使用し排尿すること)です。しかし、この場合のように脳梗塞で麻痺がある場合や、認知機能が低下している場合には自己導尿を習得することは困難です。

そういう時には尿道カテーテルを定期的に交換していく他、無いのでしょうか。実は、この症例においては膀胱瘻がよい適応となります。恥骨の上から膀胱に直接針を刺して、カテーテルを入れる、というものです。非生理的な管が体につくことにはなりますが、尿道カテーテルよりも陰茎周囲の合併症は少なく、また尿道にある精液の出口を塞いでしまうことも無いため精巣上体炎のリスクを減らすこともできます。

施設や在宅医療において、尿道カテーテルが入っている利用者さんは大勢いますが、「本当は膀胱瘻にした方が違和感や引っ張って抜けてしまった場合の合併症も少なくていいけれど、面倒だからそのままにしている」というケースは多々あります。

もちろんそれで問題ないケースもありますが、膀胱瘻造設するだけであれば局所麻酔のみでできるので、一度提案してみてもよいでしょう。ただし、女性の場合は男性と異なり尿道カテーテルのトラブルは比較的少ないため、無理して膀胱瘻を造設するメリットは少ないことが多いことも覚えておきましょう。

紫バッグ尿症候群(Purple Urine Bag Syndrome)とは

尿道カテーテルを留置している利用者さんやその御家族がびっくりして相談されることのひとつに、「尿の色が紫になった」という症状があります。

尿中にある細菌が存在していると、尿中のインジカンという物質が細菌によってインジゴブルー(青色)とインジルビン(赤色)に分解されます。これらの色素は水には溶けないものの、プラスチックやポリマーには溶ける性質があるため、尿バッグやカテーテルに沈着し、紫色を呈するのです。見た目にもはっきりとした紫色になりますので、驚かれる方が多いのですが、紫尿バッグ症候群だけでは、即座に対処が必要なわけではありませんので、そうした利用者さんにはまず「問題ありませんから安心してください」と伝えます。

ただ、便秘で水分摂取の少ない寝たきりの高齢者に多いとも言われており、適切な排便コントロールや水分コントロールを心がける必要はあるでしょう。

まとめ

すべてのカテーテルは「異物」 であり、挿入されている限り「感染」は生じます。どんなにケアに気を付けても、尿路感染をゼロにすることはできませんが、元気な利用者さんに比べて熱が出たり管のトラブルが起こったりするリスクは高く、より注意深い観察が必要です。

writer
しゅうぴん先生

普段は急性期病院で医師として勤務しながら、定期的に訪問診療も行い、最後まで患者さんに寄りそう医療を行っています。
また、正しい医療情報の普及を行う活動をライフワークとし、昼夜問わず精力的に活動しています。

膀胱瘻とは。尿道カテーテルと膀胱瘻の違い|在宅医療の基礎知識

2017.02.27

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