加齢性難聴患者さんとのコミュニケーションのコツ|加齢性難聴の基礎知識(第3回/全3回)

加齢性難聴の基礎知識(第3回)では、加齢性難聴患者の聞こえ方の特徴および上手なコミュニケーションの取り方についてお伝えします。
患者本人および周囲の人が加齢性難聴の特徴をしっかり理解することで、双方がストレスなく良好なコミュニケーションをとることが可能になります。

「加齢性難聴の基礎知識(全3回)」
第1回:加齢性難聴の基本的な症状と原因、診断方法
第2回:加齢性難聴の治療や予防のために知っておくべきこと
第3回:加齢性難聴患者さんとのコミュニケーションのコツ

加齢性難聴患者と社会

外来では、難聴患者の悩みとして「聞こえなかったために何回も聞き返して嫌な顔をされた」というのをよく聞きます。
これを繰り返すうちに、周囲の人に気を使って、聞こえていないのに適当に話を合わせたり、人と関わることを避けるようになることがあります。また、避ける対象が家族のこともあり、家庭内で孤立してしまうこともあります。

社会から孤立し、コミュニケーションをとる機会がなくなると、QOLが低下するだけでなく、認知症が進行することが分かっています。そうならないよう、介護者は難聴を理解し、難聴患者と上手にコミュニケーションをとる必要があります。
さらに、難聴患者およびその家族にコミュニケーションの取り方を指導できるようになれば完璧です。

加齢性難聴の患者さんとのコミュニケーションの取り方

では、具体的に加齢性難聴の患者さんはどのような時に聞こえにくいと感じるのでしょうか。

前回のパートでもお伝えしたように、加齢性難聴では高音から聞こえなくなるため、男性よりも女性の高い声は聞こえにくくなります。そのため、女性の介護者の場合は、なるべくお腹から太い声を出してあげるとよいでしょう。

次に、内耳にある有毛細胞の減少により周波数分解能と時間分解能が徐々に落ちていきます。
周波数分解能が落ちると、

「さ行」「た行」「ぱ行」など周波数が似ている音の微妙な周波数の違いが分かりにくくなります
(例えば、「パンツ」が「たんす」と聞こえてしまいます)。

また、ざわざわとした中で音を拾うのも苦手になります。
さらに、有毛細胞が減少することで、脳に伝わる音の情報が減るため、時間分解能も落ちてしまいます。そのため、早口で話されると情報が処理しきれず、会話の内容を理解できないという状況が生まれます。

これらの対応方法ですが、周りの人が「ゆっくり」「一つ一つの音を丁寧に」発音すると、患者は似ている周波数の音でも違いがはっきりして聞き取りやすくなります。

加齢性難聴患者への指導

では、難聴患者本人にできることはあるでしょうか?

まず、補聴器を自分で装着できるのであれば、耳鼻咽喉科で本当に加齢性難聴なのかどうかを確認した上で、補聴器購入を検討しても良いと思います。自宅に出向いて補聴器の調整や販売を行っている店舗もあります。補聴器は高価なものなので、数週間程度のトライアルをしっかり行い、自分に合ったものを納得いくまでじっくり検討しましょう。

また、本人が難聴で聞こえにくいことを前向きに他人にアピールすることも有効です。例えば、新しいコミュニティに参加した時に、最初に「耳が悪いので、なるべく大きな声でゆっくり話してほしい」と自分から伝えることです。
そうすれば、相手が早口で小さな声で話す場面が少なくなり、双方の会話のストレスが少なくなります。

加齢性難聴を正しく理解し、上手に付き合う努力をしていきましょう

第3回は、難聴患者とのコミュニケーションの取り方を重点的にお話ししましたが、いかがでしたか?

この記事を、難聴患者および患者家族に対する病気への正しい知識やコミュニケーション方法の指導に役立てていただければと思います。

 

 

writer
めぐみ

日本で医師として働いていたものの、夫の仕事の関係で一時的にイギリスに滞在中。元医師の視点で医療事情、体験談をお伝えしていきます。

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