膀胱瘻とは。尿道カテーテルと膀胱瘻の違い|在宅医療の基礎知識

尿を排泄することは、人間にとって生きていく上で無くてはならない大切な機能です。

老廃物を尿として出すことで、体の水分バランスを調整するという重要な役割があります。

何らかの理由により排尿が自力でできない場合に、尿を出すための管(尿道カテーテル)を膀胱まで入れます。
また、それが難しい場合には膀胱瘻(ぼうこうろう)として、尿を出すための管(膀胱瘻カテーテル)を下腹部の皮膚から直接膀胱まで挿入することがあります。

今回はそうした尿道カテーテルと膀胱瘻の違いについてお話します。

 

尿道カテーテルや膀胱瘻が必要になる6つのケース|在宅医療の基礎知識

まず、尿道カテーテルや膀胱瘻などといった管を膀胱に入れるべき状況とは、どのような状態でしょうか。

大きく分類すると6つのケースがあります。

 

 1. 尿閉または残尿過多

最も多いのは、尿閉または残尿過多の場合です。
尿閉とは、尿が自力で出せない状態のことです。また、残尿とは自力で排尿した後に膀胱内に残っている尿のことで、教科書的には50ml以下が正常です。これが300mlも400mlもたまっている状態を残尿過多といいます。

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2017.03.22

尿閉や残尿過多になる原因は、前立腺の病気、膀胱の病気、末梢神経の病気、脊髄の病気、脳神経の病気、骨盤内の手術後、などさまざまな場合があります。

2. 尿量の正確な測定を必要とする場合(周術期や急性期)

手術後、心不全、腎不全、敗血症など、正確な尿量測定を要する場合には尿道カテーテルを入れることがあります。

3. 安静を要する場合

骨折などで体を動かすことができないような場合には尿道カテーテルを入れることになります。

4. 失禁管理目的

失禁がひどい場合に、尿道カテーテルを入れる場合があります。特に、尿の汚染に伴って周囲の褥瘡が悪化することが懸念されるような場合は留置することがあります。
しかし、一般的には失禁よりも尿道カテーテル留置による合併症のリスクが高いため、できる限り避けるべきです。(おむつに排尿されるのならそれを適宜交換することで対応する方がいい場合もあります)

5. 尿路の術後

膀胱に対して手術をした後には膀胱の伸展を防ぐために尿道カテーテルを留置することがあります。

膀胱に傷があるときに尿がたまって膨らむと、傷が避けて膀胱破裂を起こしてしまいます。

また、前立腺から出血が起きている場合に圧迫止血効果と安静保持のために留置することもあります。その他、泌尿器系に構造的問題(尿道損傷など)がある場合に留置することがあります。

6. 萎縮膀胱の場合

萎縮膀胱といって、膀胱の変形が進み、壁が硬くなってほとんどためられない状態になることがあります。

こうした場合には管を留置することになります。

上記をまとめると、下記の場合には膀胱にしばらく管を入れることになります。

  • 自力で尿がきっちり出せない・ためられない(1・3・4・6)
  • 正確な尿量が知りたい・急性期(2)
  • 膀胱や前立腺の術後(5)

 

在宅医療の現場においては、多くは尿閉または残尿過多の場合です。

まれに、失禁管理目的であったり、血尿予防のために管を入れていることがあります。

尿道カテーテルと膀胱瘻のメリット・デメリット

尿道カテーテルを入れる場合と膀胱瘻を入れる場合の違いは何でしょうか?
簡単に言えば、「尿道カテーテルは通常挿入が容易であるが、合併症が起こりやすい」というところにつきます。

■ 尿道カテーテルの合併症

尿道カテーテルにはいくつかの合併症があります。
代表的なものは、尿路感染と、慢性的な刺激により尿道が物理的に避けてしまうことです。

尿路感染は、高齢者の感染症においては肺炎と並んで多い感染症です。

基本的に、体の外から穴が開いているところというのは病原体も侵入しやすいため、たとえば口からウイルスが入ると風邪になったり、肺炎を起こしたりしますし、同様に尿路も管が入ってそれを伝って菌が入ると尿路感染症を起こします。

 

膀胱瘻は「男性」の場合に大きなメリットがある

では、尿路感染症という観点で、尿道カテーテルと膀胱瘻は何が違うでしょうか?

実は、特に男性の場合において大きな違いがあります。

男女に共通して起こる尿路感染症とは、腎盂腎炎(腎盂炎)、膀胱炎ですが、男性にのみ起こる尿路感染としては前立腺炎と精巣上体炎があります。

男性は尿路と精液の通り道が、前立腺のところで合流します。

この際、尿道に管が入っていると、膀胱からの尿はしっかり出ていくものの、精液が出てくるところはむしろ管が邪魔をして出づらくなります。

つまり、排出が悪く、菌が侵入しやすい状況となれば精巣上体炎を起こしやすくなるのです。

この点において、膀胱瘻は尿道を通過しないため、感染症のリスクを下げることができます。

また、尿道への刺激が減るため前立腺炎にかかるリスクが減る可能性もあります。

また、尿道カテーテルを長期に留置すると、陰茎が次第に裂けてしまうことがあり、整容的によくありません。

尿道カテーテルを留置している場合は、男性なら腹側に軽めに固定(女性なら大腿に固定)することがよいですが、それでも長期留置すると少なからずそうした合併症が出てきます。


膀胱瘻の場合は、やはり尿道を通らないためこうした合併症を避けることができるのです。

つまり、膀胱瘻は男性においては特にメリットが大きいのです。

 

膀胱瘻造設術

ではなぜ、在宅医療の現場では尿道カテーテルを留置されている男性が多いのでしょうか?

それは、留置するためには膀胱瘻造設術という処置が必要なためです。

 

膀胱瘻とは恥骨上部の下腹部から腹壁を通して膀胱との瘻孔をつくり、膀胱内にカテーテルを挿入し、永久もしくは一定期間尿を体外に排出する方法のことです。

具体的には、局所麻酔をしてから、水の溜まった膀胱に対し、恥骨上2横指程度の高さに横向きの小切開を加えます。

次にペアンで剥離してから、針のついた膀胱瘻を膀胱の中に挿入し、針を抜きます。尿が出たことを確認し、先端付近のバルーンを膨らませて膀胱内に固定します。

その後は、3-4週間程度で瘻孔が安定しますので、抜いて入れるだけで交換することができるようになります。

 

合併症としては、腸や前立腺などを誤って刺してしまうリスクがあることです。

また、出血・感染・アレルギーなどの副作用もあります。安全に造設するためには、病状に応じてきちんとおなかを切って膀胱を視認して造設することもあり、その場合はしっかりとした麻酔が必要になります。

通常、膀胱瘻造設術は泌尿器科医が行いますので、こうした処置をうけることができる環境かといった点が問題になります。

 

膀胱瘻の臨床症例

◎症例

85歳男性。脳梗塞による右半身麻痺がある。

長年の糖尿病による神経因性膀胱によって3年前から尿閉となり、以降尿道カテーテルを留置され、1か月ごとに交換されている。

軽度の前立腺肥大症もある。かかりつけの泌尿器科で投薬を調整し、何度か抜いてみたものの尿閉は解除されなかった。
1年前から精巣上体炎や前立腺炎をたびたび起こしており、そのたびに入院加療を行っていたため、膀胱瘻を造設した。

症例の解説

糖尿病は神経障害を起こす代表的な疾患です。

この利用者さんは、長年の糖尿病罹患があり、回復の見込みはありません。

前立腺肥大があるので、ためしに前立腺肥大の手術をしてみることは悪くありませんが、年齢的にややリスクが高いと考えられます。

また、可能であれば自己導尿を指導したいところですが、麻痺があるためそれも困難です。

尿道カテーテル留置で感染症など問題ない場合はそのままでもいいですが、糖尿病がありただでさえ感染リスクが高い方でもあり、膀胱瘻にすることでそうしたリスクを下げられる可能性があります。

 

まとめ

現状、膀胱瘻が適応であっても尿道カテーテルが留置されている利用者さんは多々います。

理由としては、「本当は膀胱瘻の適応はあるけれど、受診も大変だし、何となくそのままになっている」「膀胱瘻だと施設で受け入れてくれない」といった社会的なものである場合も多々あります。

 

尿道カテーテルに比べ、より非生理的な管ではありますが、必要性を適切に理解し、臆さず介護にあたることは大切でしょう。

 

writer
しゅうぴん先生

普段は急性期病院で医師として勤務しながら、定期的に訪問診療も行い、最後まで患者さんに寄りそう医療を行っています。
また、正しい医療情報の普及を行う活動をライフワークとし、昼夜問わず精力的に活動しています。

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