抜けると大変、腎瘻管理のポイント|在宅医療の基礎知識

腎臓で作られた尿は、腎盂(じんう)に集まり、尿管を通って膀胱にたまります。膀胱にたまった尿は尿道を通って体外に排出されます。腹部のがんが大きくなることやがんのリンパ節への転移、播種などで尿管が圧迫されると、尿の流れが悪くなり腎臓が腫れて水腎症という状態になることがあります。
水腎症のまま放置すると腎不全に陥ることがあり、このような腎不全のタイプを「腎後性腎不全」といいます。

腎後性腎不全を治療するためには、尿路の通過障害により排出できなくなった尿を体外へ排出する必要があります。そこで、(腎臓の出口にあり、尿管に繋がる)腎盂というところに皮膚から直接カテーテルを挿入し、体外へ尿を直接排泄できるようにすることがあります。これを「腎瘻」といいます。

腎瘻造設術とは

多くは局所麻酔下に行います。うつぶせの状態で超音波をみながら腎盂に長い針を刺します。次に、針から細いワイヤーを入れて、穴を確保します。その後に針を抜いて、残ったワイヤー越しに徐々に太い管を入れていき、最終的にある程度太い管を入れて終わります。

場合によっては1-3針程度、皮膚と腎瘻を固定することもあります。腎盂に入ったカテーテルから尿が出ますので、それを集尿袋につなぎ、その袋の中にたまった尿を適宜捨てることになります。
カテーテルはものによって1か月~3か月ごとに新しいものに交換する必要があります。

腎瘻に用いるカテーテルには種類がある

ピッグテール型

ピッグテールとは日本語で豚のしっぽという意味です。腎盂の中に入る部分が豚のしっぽのようにくるくると巻かれるようになっており、それが引っかかって抜けないようになっているタイプです。
径が細く、使い勝手がよいためよく使用されていますが、強い力で引っ張られるとすぐ抜けてしまいます。

傘型

内筒を抜くと先端の傘がひろがって、それがストッパーとなって抜けないようになっているタイプです。ピッグテール型より抜けづらいですが、強い力をかければ抜けてしまいます。
後述のバルーン型と比べると、ややコシがあるため穴が安定していなくても挿入することができます。抜くときには内筒を入れて傘を折りたたんでから抜く必要があります。

バルーン型

尿道カテーテルと同じように、先端に風船がついていて、水を注入して膨らませることで固定するものです。固定のための水の量は、通常2-3mlです。(尿道カテーテルでは5-10ml程度)
管もやわらかく、抜けるリスクが少ないため長期的に管理が必要な場合は腎盂バルーンカテーテルを使用することが多いですが、やわらかくコシがないので穴が安定しないと入らないことがあります。また、固定水は次第に自然と抜けてしまうということもあり、通常1か月に1回の交換が必要です。交換は容易なものの、他のタイプよりも交換頻度は多くなります。

腎瘻挿入後の観察ポイント

1. カテーテルが抜けていないか

カテーテルは細く柔らかい素材でできています。腎盂内でカテーテルの先が丸まっていたり、傘になっていたり、バルーンが膨らんでいたりして抜けにくいようにはなっていますが、体位変換の際や、転倒した際にカテーテルを不意に引っ張ってしまうと、カテーテルが抜けてしまうことがあります。

カテーテルが完全に抜けると、尿が体外に排泄できなくなり水腎症の状態に戻ってしまうため、腎不全や尿路感染症を起こす可能性があります。尿が出せない状態でも数時間以内にただちに命に関わることは少ないですが、腎臓が片方しか機能していないような人の場合は腎後性腎不全の状態が1週間も続けば致命的となることもあり得ます。

また、腎瘻の穴は比較的細いため、すぐに再挿入しないと穴がふさがってしまい、再度麻酔をかけて刺しなおさなければならないことがありますので、基本的にはすぐ医師に相談されるのがよいでしょう。抜けた時のためにネラトンカテーテルなどを渡されていることもあり、その場合はすぐに穴に入れておくことで再留置できる確率が上がります。

またカテーテルを皮膚に固定していても時間が経つと糸が切れて、カテーテルが抜けやすくなることがあります。基本的には固定方法がしっかりしていれば糸で固定していなくても管理は可能ですが、より注意が必要にはなります。
カテーテルが抜けないように、また、抜けたときにすぐに発見できるように、挿入部がカテーテル先端から何cmになっているかを毎回確認するようにしましょう。
長さのメモリが無い管の場合は、油性ペンで刺入部にマーキングしておくことも有用です。

2. 尿の状態の変化、血性または膿性になっていないか

腎瘻から排出される排液は「尿」です。その尿に血液が混じることがあります。カテーテルと粘膜がこすれたり、引っ張られて刺激が加わったりすることで出血します。

通常、薄めの赤ワインくらいの色であれば貧血になることも少なく、閉塞することもあまり無いのですが、トマトジュースのような色になった場合には、血液の塊が詰まってしまうことがあるため注意が必要です。その場合は腎盂洗浄という処置であったり、腎瘻交換という処置が必要になったりすることがあります。
また、異物が入っている以上ある程度は仕方ないことではありますが、膿性に変化した場合は尿路感染症による発熱をきたす可能性が高くなります。(膿尿がひどくなるとミルクセーキやチョコレートのような尿になります。)

血尿や膿尿の場合は、尿量を増やした方が閉塞リスクが下げられるので、(飲水を制限しなければならない場合を除けば)お水をよく飲むように利用者さんに促すこともよいでしょう。

3. 尿量が減少していないか

尿量が減少している場合、考えなければならないことがいくつかあります。一番大切なのは、閉塞していないかどうかです。カテーテル自体はさほど太くはないものもあるので、固定がきつすぎたり、ねじれていたりすると容易に内腔がつぶれて閉塞してしまいます。

尿が出づらい場合にはまずカテーテルの対外に出ている部分をよく観察して、ねじれなどが無いか確認しましょう。その他、脱水によって尿量自体が減少している可能性もあります。時には、尿管の閉塞が何らかの影響によって改善し、下の方に流れていることもあります。

4. 刺入部のトラブルは無いか

カテーテルなどの異物が体に入っていると、刺入部に感染を起こすことがあります。あまり皮膚がただれていたり、赤く腫れたりしている場合には軟膏処置を要することがありますので、急ぐ必要はありませんが医師に相談をしましょう。

まとめ

腎瘻管理のポイントをまとめると、注意すべきことは「抜けていないか」「閉塞していないか」の2点です。尿量や尿の色、固定方法、入っている長さをよく確認するようにしましょう。

腎瘻をはじめとして、管が入っている利用者さんは介護が大変です。しかし、施設や訪問介護において、「腎瘻が入っている方はうちではお引き受けできません」といって断られるケースも多々あり、行き先が無く困っていらっしゃる方も多々いらっしゃいます。
きちんと観察ポイントと対処方法を学べば恐れることはありませんので、これを機会に腎瘻についてよく覚えておきましょう。

 

writer
しゅうぴん先生

普段は急性期病院で医師として勤務しながら、定期的に訪問診療も行い、最後まで患者さんに寄りそう医療を行っています。
また、正しい医療情報の普及を行う活動をライフワークとし、昼夜問わず精力的に活動しています。

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