かかりつけ医とは。事例から考えるかかりつけ医を持つメリット|在宅医療の基礎知識

風邪や腹痛などの日常的な診療や、高血圧の管理や健康診断などの健康管理等を包括的に行ってくれる、患者に一番身近な存在の医師を「かかりつけ医」といい、近年その重要性が話題になるようになってきました。
今回はそのような「かかりつけ医」に焦点をあててみましょう。

なぜ、かかりつけ医が必要なのか|在宅医療の基礎知識

皆さんも経験したことがあるように、大きい病院に受診するとなると待ち時間が長く、「2時間待って3分診療」といったことがしばしばあります。気になる症状が出てきて予約をとろうと思っても「次予約がとれるのが3週間後」なんてこともありますね。
さらに、運よくいい医師に巡り合えて安心して通っていたら、4月の人事異動で急に主治医が交代してしまった、といったことも。

では、かかりつけ医をもつメリットとはどのようなものでしょうか。

1. 困ったときにすぐ相談できる

かかりつけの医師は、クリニックがあいている時間であればすぐ相談することができます。往診の場合であれば、多くは24時間対応してくれる医療機関がほとんどです。
「最近胸にしこりがある」と気付いた時に「明日の朝一で診ますので来てください」と言われるのと、「3週間後の予約のときに相談してください」と言われるのでは、安心感が全く違いますよね。

2. いろいろな症状に対応してくれる

大きい病院では、「消化器科」「呼吸器科」「循環器科」などのように専門臓器ごとに科が分かれており、それぞれは別の部門として稼働しています。ここで病院が企業と異なる点は、部門同士の連携が弱いことがしばしばあるところです。

たとえば、ある病院の消化器科と呼吸器科は、もともと別の医局(医師を派遣する機能をもった組織)からきていることがよくあります。すると、たとえ同じ病院内であっても、横同士のつながりが無く、縦割りで動いているために医師同士も気軽に相談することができない、といったこともあるのです。
肺気腫で呼吸器科に通院していて、「最近おなかの調子も悪くて…」と相談しても「じゃあ近くの内科で紹介状書いてもらって消化器科の予約をとってくださいね」と言われて、おしまいになってしまうこともあるのです。

その点、かかりつけ医は基本的な症状であれば、どんな症状でもまず一度診てくれます。そして適切な科・適切な病院に振り分けてくれるので、結果的に専門医に受診するのが早くなることも多いのです。

3. ひとりの医師が継続して診てくれる

年齢を重ねれば重ねるほど、病気にかかるリスクが増え、いろいろな病気を同時に抱え、より多くの薬を飲まなければならなくなります。そうした場合、ひとつの病気だけをみて治療をしていると、その影響で他が悪くなってしまうことがあります。
専門医に受診をすると、その専門分野についてはきっちりと診てくれますが、専門外の疾患については基本的に関心がありません。専門だけに特化することで、より品質の高い医療を提供するのが、専門医療であるからです。

かかりつけ医であれば、ひとつの病気に対してではなく、ひとりの人に対してどのようにアプローチをするか、といった視点で考えてくれます。「確かにこの人の心臓は手術をした方がいいけれど、大腸がんもあるからそんなに長く余命があるわけではないし、どうにか手術以外の方法で対処できないか」といった具合に考えるわけです。
そうした、ひとりひとりにあった細やかな医療を行ってくれるのが、かかりつけ医の大きなメリットのひとつです。

4. どの科にかかったらよいかわからない疾患もみてくれる

「なんとなくみぞおちのところが苦しくなることがある」といった症状がある場合、果たしてどんな病気が考えられるでしょうか。狭心症かもしれないし、胃潰瘍かもしれません。または膵臓に問題があるかもしれません。

このように、ひとつの症状であってもそれが何に由来する症状なのか、そういったことを患者自身で適切に判断することは難しいでしょう。かかりつけ医がいれば、そうした際にも必要な診察を行い、適切な指示を出してくれます。

臨床症例

【65歳男性】
 健診でPSAが高いといわれ、精密検査を受けたところ前立腺癌の診断となった。

転移があるかどうかを調べるため、CTと骨シンチ検査を受け、幸いにも転移は無かった。主治医からは、「CTと骨シンチの結果は大丈夫でした。手術か放射線を行うことで治すことを目指しましょう」と言われたため、前立腺全摘術を受けた。術後の病理結果も問題無く、腫瘍マーカーも低下し、経過良好な旨が主治医から告げられた。
しかし3か月後、便に血が混じったため気になって消化器科を受診したところ、進行した大腸癌が見つかった。「あのときCTで大丈夫って言われたのに…」

症例の解説

このようなケースは時折見かけます。しかし、ここに実は医師と患者の捉え方の違いがあるのです。

前立腺癌を診療した医師からすれば、「確かにCTでは問題はなかった。前立腺癌の転移を調べるために撮影し、事実として転移は無かった。大腸癌は大腸カメラを受けないと分からないのは当然」と主張するでしょう。医学的には確かにそうなのです。CTというのはいわば影絵であって、形態学的に診断するものですが、消化管のようなしわがあって中が空洞で、かつ動きもあるような臓器の診断にはあまり向いていないのです。

ただ、患者側からすれば、医師から「大丈夫」と言われれば、「病気の全く無い健康体」だと言われているように解釈してしまうことはある意味当然と言えるかもしれません。腹部のCTを撮影していて、大腸癌が見つからないことがあるとは、思いもよらないかもしれません。

こういったケースも、たとえばかかりつけ医がいれば、「前立腺癌が見つかったことだし、そろそろ年齢的にも一度、胃カメラと便潜血検査もしておきましょうか」と勧めるなどして、より早期に発見できた可能性があるのです。

かかりつけ医=主治医を持つことの意味

以上のように、医療が急速に専門分化している時代だからこそ、かかりつけ医の重要性が認識されてきているのです。まだ日本では大病院志向が根強く残っています。確かに、大きい病院の方が最先端の検査機器があり、医師の数も多く、より高度な医療を受けられる面はあります。

しかし、より多様な選択肢があるからこそ、どのように医療を受けるかを適切にアドバイスしてくれる、かかりつけ医=主治医をもつ必要が生じるのです。

 

writer
しゅうぴん先生

普段は急性期病院で医師として勤務しながら、定期的に訪問診療も行い、最後まで患者さんに寄りそう医療を行っています。
また、正しい医療情報の普及を行う活動をライフワークとし、昼夜問わず精力的に活動しています。

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