プライマリ・ケアとは。高齢化で高まるプライマリ・ケアの重要性|在宅医療の基礎知識

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「急に熱が出た」「朝から腰が痛い」など、病気による症状は時として急に出てくることがあります。しかし、いきなり病院に行っても予約は数週間先、なんてことは多々ありますね。そんなときに、臓器や症状を問わずにすぐに診てくれる、それがプライマリ・ケアです。

今回はそのような、あらゆる医療の入り口である、プライマリ・ケアについてお話し致します。

プライマリ・ケアとは〜在宅医療において注目のキーワード〜

プライマリ・ケアとは、1996年の米国国立科学アカデミー(National Academy of Sciences, NAS)の定義によれば、下記のように説明されています。

『primary careとは、患者の抱える問題の大部分に対処でき、かつ継続的なパートナーシップを築き、家族及び地域という枠組みの中で責任を持って診療する臨床医によって提供される、総合性と受診のしやすさを特徴とするヘルスケアサービスである』

また、日本プライマリ・ケア連合学会によれば、プライマリ・ケアとは、国民のあらゆる健康上の問題、疾病に対し、総合的・継続的、そして全人的に対応する、地域の保健・医療・福祉の機能と考えられると説明されています。
同時に、プライマリ・ケアの5つの理念についても示されています。

プライマリ・ケアの五つの理念

  1. 近接性(Accessibility)
  2. 包括性(Comprehensiveness)
  3. 協調性(Coordination)
  4. 継続性(Continuity)
  5. 責任性(Accountability)

では、これら五つの理念について、より細かく見ていきましょう。

近接性(Accessibility)

ひとことで言えば、受診しやすい、ということです。

受診のしやすさにもいろいろな要素があり、
・距離的に近いかどうか(地理的
・診療費が払えるか(経済的
・時間を問わず診てくれるか(時間的
・気軽に受診できるか(精神的
といった各側面をバランスよく満たす必要があります。

包括性(Comprehensiveness)

包括性とは、要は「なんでも診てくれる」ということです。

大きい病院では、胃や腸の問題であれば消化器科、肺の問題であれば呼吸器科の医師が担当しますが、必ずしも専門の医師が常に身近にいるわけではありません。とりあえず診てほしい、そんなときに頼りになるのがプライマリ・ケア医(家庭医)です。もちろん、それぞれの専門家のような診断や治療ができるわけではないかもしれませんが、「ひとまずつらい症状を抑える」「とりあえず今やれることをやる」といった範囲で、症状を問わずに診てくれます。

協調性(Coordination)

次に、協調性です。現代の医療は1人では行うことができません。各専門医、看護師、検査技師、ソーシャルワーカーなど、いろいろな専門スタッフと連携して1人の患者さんに対応する、いわゆる「チーム医療」が不可欠です。そのためには、チームワークを大切に出来る協調性が必要とされます。

継続性(Continuity)

プライマリ・ケア医は、医療の入り口に立っており、医療が必要な人の案内役を担っています。病気に関して困ったことがあれば、とにかくまず相談する、そういった立ち位置にいるため、1人の患者について時系列的に把握することが可能です。

ひとつの病気だけを切り出してみれば、ガイドラインで治療方法が決まっていても、「その患者さんにおいてはどうするか」といったことはガイドラインには書いていません。
「胃癌が見つかったけど、もう85歳だしこの患者さんであれば無理して手術するのはよくないな」といった、1人1人に合わせた冷静な判断ができるといった強みがあります。

まさにゆりかごから墓場まで診てくれるのが、プライマリ・ケアです。

責任性(Accountability)

専門医は、その専門分野においては他科には真似のできない技術と知見を持っていますが、責任を持つのはその担当分野のみです。1人の患者について、どう生きて、どう死ぬか、そういった人生全体のバランスや終着点について責任をもって考えてくれるのが、プライマリ・ケアの考え方です。

プライマリケアは初期医療・全人的医療の専門家

これらをまとめてみると、プライマリ・ケア医とは、受診しやすく、何でも診てくれて、専門家と適切に連携をとってくれて、生まれてから死ぬまで責任を持って継続的に診てくれる、とても素晴らしい医師であることがわかります。

それらをきちんと実現するには、幅広い知識と、他人と協調するバランス感覚、常に自らのスキルを高めていくような勤勉さが求められます。1つの臓器については専門ではなくとも、初期医療・全人的医療については誰にも負けない専門家だと言えます。

<まとめ>プライマリ・ケア医の重要性は、今後さらに高まる

日本は世界各国と比べてずばぬけて、医療へのアクセスが良く経済負担が少ない医療制度をとっています。にも関わらず、未だに専門医志向、大病院志向が根強く残っています。
もちろん、すでに診断のついている1つの病気を治すためには専門医のたくさんいる大きな病院にかかることがよいかもしれません。

しかし、たとえば実際の症例においても、「糖尿病については一流の医師にずっと診てもらっていて、体重も減ったし血糖値もみるみる下がって体調もよくなったけど、実は胃癌の末期であることがわかりました。採血したら毎回、問題ないって言ってくれて喜んでたのに。」ということははしばしば起こります。

これも、プライマリ・ケア医(家庭医)と常に顔を合わせていれば、「何も見つからないかもしれないけど、そろそろ年齢的にも、胃カメラでも受けておいたら?」なんて言って勧められていたら、早期に見つかっていたかもしれません。

医療が高度化・専門化してきた現代であるがゆえに、それを患者側が適切なタイミングで正しい順序で選択して医療を受けることは難しくなってきました。そういった際の身近なアドバイザーとして、信頼のおけるプライマリ・ケア医を見つけておくことは非常に重要なことでしょう。

 

writer
しゅうぴん先生

普段は急性期病院で医師として勤務しながら、定期的に訪問診療も行い、最後まで患者さんに寄りそう医療を行っています。
また、正しい医療情報の普及を行う活動をライフワークとし、昼夜問わず精力的に活動しています。

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