総合診療医とは。言葉の定義と論点を整理|在宅医療の基礎知識

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医師不足が問題となる際に必ず出てくるのが「総合診療医を育成しよう」という提言です。しかし、総合診療医という言葉は、実はいろいろな意味を含んでいます。
今回はそのような総合診療医についてお話致します。

総合診療医とは~在宅医療においても注目のキーワード~

総合診療医とは、1つの臓器や疾患にとらわれず総合的な診療能力を有する医師のことです。
領域別専門医は、診療の深さを特徴としているのに対して、総合診療専門医は、診療の広さと多様性が特徴です。そうした総合診療医の育成が求められている背景には、下記のようなニーズが存在します。

・特定の臓器や疾患に限定することなく、幅広い視野と見識で患者を診る必要性がある

・多臓器に疾患を抱える患者にとっては、複数の領域別専門医による診療よりも、時として総合的な診療能力を有する医師による診療の方が適切である場合があること

・慢性疾患や、心理的・社会的な問題に対して、1人の医師が継続的にケアを行うべき患者がいること

つまり、高齢化が進む社会において、いろいろな疾患を同時に治療・管理していかなければならないケースが増えたため、領域別専門医による縦割り医療だけでは対処が困難な事例が増えてきました。

そこで、手術や特殊な内視鏡、厳密な管理が必要な抗がん剤治療などの高度な専門医療までは行えないものの、頻度の高い疾患については一通り診られる、という医師が求められているのです。

玉石混交の総合診療外来

これまでも総合診療という言葉自体は存在し、いろいろな医療機関で多様な目的・位置付けで総合診療科・総合診療外来というものが開かれています。

総合診療医=かかりつけ医(家庭医)として用いられる場合

かかりつけ医とは、多くはいわゆる近所の開業医であり、風邪や下痢のときに気軽に相談できる身近なお医者さんのことです。プライマリ・ケアといって、どんな症状であってもひとまず診てくれることから、総合診療医と称されることがあります。

総合診療医=一般内科として用いられる場合

大きな病院において、総合診療科というものが標榜されることが近年増えてきました。この場合の診療対象は、「症状からだけでは各領域別専門医に振り分けづらい患者」です。
たとえば、「最近下痢気味だと思っていたら急に手足の力が入りづらくなった」といった場合に、下痢について消化器内科に行ったらよいのか、それとも力が入りづらいことについて整形外科や神経内科に行ったらよいのか、判断に迷うことがあります。そのようないろいろな臓器にまたがって症状が出る疾患を担当し、専門医につなぐ役割を果たしていることがあります。

総合診療医=救急医として用いられる場合

救急の現場ではいろいろな疾患をもった患者がやってきます。お腹が痛かったり、胸が苦しかったり、異物が取れなくなった、などと千差万別です。それらの初期対応を行うのが救急医の役割ですが、臓器にとらわれず診療を行う必要があるため、総合診療科と称していることがあります。

総合診療医=他科で診断がつかない疾患の診断をつける医師として用いられる場合

症状があり、該当しそうな領域別専門医で診察や検査を受けたものの診断まで至らない場合、非常に稀な疾患である可能性も考えなければなりません。場合によっては日本では通常診られないような感染症(珍しいウイルス、寄生虫)まで鑑別に上げる必要があります。
そうした、一般の医師では診断することが困難な、診断学のエキスパートとして総合診療科が設けられていることがあります。多くは大学病院の総合診療科がこれにあたります。

専門医制度

現在、専門医制度は大きく様変わりしようとしています。これまでは各学会が独自に認定基準を定めて専門医を認定していました。

しかし、認定基準が一定でなく、質が担保されているとは言い難いことから、日本全体で統一された認定機構として、2014年5月に日本専門医機構が設立されました。外科、内科、病理など、19の基本領域の専門医があり、その上にサブスペシャリティとして、消化器内科、呼吸器内科、循環器内科のように各専門分野に分かれていく形になります。

総合診療専門医も、その1階部分にあたる19の基本領域の1つとして認定されることになっています。専門医になるための詳しい認定基準については現在議論中(2017年03月時点)であり、まだ定まっておりませんが、総合診療専門医について、求められる基準として下記のように示されています。

  1. 人間中心の医療・ケア
  2. 包括的統合アプローチ
  3. 連携重視のマネジメント
  4. 地域志向アプローチ
  5. 公益に資する職業規範
  6. 診療の場の多様性
(一般社団法人日本専門医機構「総合診療専門医 専門研修カリキュラム」より抜粋)

 

また、専門医になりたい医師を指導する立場である、指導医については下記のように基準が示されています。

  1. 日本プライマリ・ケア連合学会認定のプライマリ・ケア認定医、および家庭医療専門医
  2. 全国自治体病院協議会・全国国民健康保険診療施設協議会認定の地域包括医療・ケア認定医
  3. 日本病院総合診療医学会認定医
  4. 大学病院または初期臨床研修病院にて総合診療部門に所属し総合診療を行う医師(卒後の臨床経験7年以上)
  5. 都道府県医師会ないし郡市区医師会から≪総合診療専門医研修カリキュラムに示される「到達目標:総合診療専門医の6つのコアコンピテンシー」について地域で実践してきた医師≫として推薦された医師
(一般社団法人日本専門医機構「総合診療専門研修指導マニュアル」より抜粋)

<まとめ>超高齢社会において不可欠な存在=総合診療医

このように、総合診療という概念は以前からありつつも、定義や認定要件がまだ定まっていないのが現状です。ただ、社会的なニーズとして専門分野を問わず一定のレベルで診療を行う医師というのは今後の高齢化社会においては必要な存在です。今後制度がどうなるか、注目されるところです。

 

writer
しゅうぴん先生

普段は急性期病院で医師として勤務しながら、定期的に訪問診療も行い、最後まで患者さんに寄りそう医療を行っています。
また、正しい医療情報の普及を行う活動をライフワークとし、昼夜問わず精力的に活動しています。

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