ポリファーマシーとかかりつけ薬局|在宅医療の基礎知識

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ポリファーマシー(polypharmacy)という言葉、皆さんは耳にしたことがありますか?
Poly=多くの、Pharmacy=調剤であり、1人の利用者さんが一度に多くの薬を服用している状況を指す言葉です。利用者さんの中でも1日に10種類以上服薬している方は大勢いて、在宅医療の現場においては、服薬管理に工夫を凝らすことはもはや日常業務の1つと言えるほどではないでしょうか。

今回はポリファーマシーによって起こる問題点と、それを解決するかかりつけ薬局の機能についてお話したいと思います。

ポリファーマシーによる問題とは|在宅医療の基礎知識

在宅医療の利用者さんは高齢の方が多く、罹患している疾患数も多いため、きちんと管理をしなければ、ポリファーマシーによる問題が容易に発生しやすい状況にあります。

どうしても必要性があって多種類の薬を服薬するのは致し方ないところですが、中には服薬内容を把握・理解していないために、複数の医療機関で全く効果の同じ薬をもらっている、といったケースもしばしばみられます。
同効薬を複数飲んでいるがために、過剰投与による副作用が出てしまっているものの、「年のせいだから」と軽く考えて見過ごされていることもあるのです。

ポリファーマシーによって、主に下記に上げるような問題が起こり得ます。

・同じ薬効の薬を複数服薬することで、過剰投与となってしまうこと

・薬の飲み合わせが悪く、どちらかの薬の効果が落ちてしまったり、過剰に効いてしまったりすること

・医師が正しく治療効果の判定をすることができず、診断や治療に支障をきたす可能性があること

・服薬アドヒアランス・コンプライアンス(正しい服用量・回数で飲めること)が低下すること

・ムダな薬剤費がかかること

ポリファーマシーを防ぐには

やってみるとわかりますが、薬の管理は想像以上に大変です。とくに高齢者は認知機能が低下していることも多く、曜日ごと・食事ごとにあらかじめ分けておいても、きっちり正しく飲める人ばかりではありません。在宅介護の利用者さんの多くは、配偶者も高齢であり、自分の服薬管理もあることなどから、夫婦だけで両方の管理をきちんとできることは滅多にないのです。

同居の息子さんや娘さんがしっかりと管理をしてくれればいいものの、そういうわけにもいかないご家庭も多く、家族間だけで管理をしようとすることにはそもそもムリがあると言わざるを得ません。

では、そうした問題を解決するためにはどうしたらよいのでしょうか。
まず基本的なところとしては、

・お薬手帳を常に持参する
・服薬管理グッズを利用する(ピルケースやカレンダーなど)

ということですが、これらは在宅医療を導入されている利用者さんではすでに実行されていることでしょう。それでも1か月経ってみるといつのまにか薬が余ってしまう、または足りなくなってしまうのが現実です。

また、たとえ服薬管理によって「正しく服薬する」ということは可能であっても、薬同士の飲み合わせについてはチェックが甘くなりがちです。

そこで、最近注目されているのが、かかりつけ薬局を作るということです。

かかりつけ薬局

薬局は全国に5万5000件あります。以前は医療機関の近くの薬局で薬をもらうことが多かったものの、医療機関ごとに違う薬局で薬をもらっていると、お薬手帳があっても毎回担当する薬剤師も異なり、場当たり的な服薬指導しか受けられません。

昔のように院内処方(病院の中で薬をもらうこと)が主流の時代では、医療情報の共有がしやすい状況でしたが、医薬分業の流れが推し進められた結果、最近はそういうわけにもいきません。

そうした背景を元に、薬歴も患者ごとに集約し、より包括的・継続的な管理をすることを目指し、かかりつけ薬局をもつことが推奨されてきています。

かかりつけ薬局をもつことのメリットとしては

・同じような薬が重複していないかをチェックできる
・飲み合わせの悪い薬が出されていないかチェックできる
・飲み忘れや飲み残しを防ぐことができる
・飲みにくい薬剤の剤形を変えてもらったり、服薬方法について個人に合わせて提案してもらったりすることができる
・在宅医療の現場に薬剤師が入ることで、通院できなくなっても服薬管理をしてもらえる

といったように、多数のメリットがあります。

症例1

佐藤さん(仮名)、75歳女性。
5年前に心筋梗塞を起こし、冠動脈ステントが入っている。

現在、通院している市民病院の循環器内科でバイアスピリン、ランソプラゾールの合剤など、計7種類の薬を処方され服用している。ある日、外出中に腰が痛くなって近くの整形外科にかかったところ、圧迫骨折だと診断され、ロキソプロフェンを処方された。同時に、痛み止めで胃が悪くなるといけないからとの理由で、一緒にエメプラゾールも処方された。同居の息子が熱心に世話をしており、服薬についてもきちんと服薬カレンダーを利用し管理を行い、いつも残薬無く服用できている。

しばらくして、循環器内科と整形外科の次回受診日がちょうど同じになり、いつも通り処方され、2枚の処方箋をもって薬局に行ったところ、胃薬がだぶって処方されていることが判明した。

 

症例1の解説

複数の病院にかかる際に、お薬手帳を持っていればいいのですが、急病でかかると持っていないこともあります。薬をたくさん飲んでいると、すべての薬を思い出すことは難しく、今回の例のようにだぶって処方されてしまうことがあります。

また、医師も初診の時点ではなるべく服薬を確認するようにはするものの、2回目以降だと症状の経過に気をとられて再度チェックしなおすことを忘れてしまうことも多々あるのです。このようなことを防ぐために、薬局を1つに絞っておくことがいいと思われます。

 

症例2

田中さん(仮名)、85歳男性。
脳梗塞による麻痺があり、車いす生活を送っている。基本的には在宅で過ごし、病院の受診時には妻と一緒に来院する。

最近排尿障害がひどく、ある日A市民病院の泌尿器科を受診した。妻は非常に熱心に介護を行っており、当然お薬手帳も持参していた。診察の結果、前立腺肥大症による排尿障害と診断され、α1ブロッカーであるシロドシンという薬が処方された。受診後、いつも行っている薬局で下記のような提案があった。

薬剤師「田中さん、新しい薬が出たんですね。前立腺肥大の薬ですね。効果が高くていい薬ですが、田中さんは脳梗塞をされていて少し飲み込む力が弱いと聞いていますので、同じ薬でも口の中で溶けるタイプの薬にしてはいかがでしょうか」

実際、薬の飲み合わせ自体は問題なかったものの、確かに田中さんは脳梗塞を起こしてから飲み込む力が弱く、誤嚥性肺炎を起こしたこともある。そのため、薬局から病院に一言断りを入れてから、シロドシンをOD錠(口の中で溶けるタイプ)に変更してもらうことになった。

症例2の解説

このように、医師側が脳梗塞の既往があることを知ってはいても、忙しい外来の中では服薬のしやすさ、方法についてまで気がまわらないということは少なくありません。内科的疾患においては、結局薬が治療の主軸になりますので、きちんと薬を飲めるようにすることは非常に大切なテーマです。脳梗塞とひとくちにいっても症状は様々であり、初めてあった時点で嚥下機能まで踏み込んで情報を得ることは難しいのです。そのため、きちんと病状や個性を把握してくれるかかりつけの薬剤師・薬局をもっていることは意義があるのです。

まとめ

ポリファーマシーの問題を考える中で、解決の主軸になるのがかかりつけ薬局です。

かかりつけ医をもつことが重要であることと同じで、高齢化して複数の疾患と同時に付き合っていく必要がある中で、是非利用者さんにかかりつけ薬局を持ってもらうことを考えてもらいましょう。

writer
しゅうぴん先生

普段は急性期病院で医師として勤務しながら、定期的に訪問診療も行い、最後まで患者さんに寄りそう医療を行っています。
また、正しい医療情報の普及を行う活動をライフワークとし、昼夜問わず精力的に活動しています。

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