フレイル・サルコペニアとは。正しい理解と予防法|在宅医療の基礎知識

フレイル、サルコペニアという言葉について耳にしたことはありますか?

人間、歳をとると筋力や活動性が低下してきます。看護・介護の仕事は体力勝負ですが、20歳ごろと比べて体力がなくなってきていることを実感しますよね。高齢者になって在宅医療を利用するような状態の方は、健康でハツラツとした人に比べて、そうした虚弱化が進行しています。そのような弱った状態をあらわす言葉として、「フレイル」「サルコペニア」といった概念が最近注目されるようになってきました。

フレイルとは

フレイルとは、英語で書くと“Frail”ですが、日本語では「虚弱な」という意味を持っています。他に訳されるとすれば、「老衰した」「衰弱した」「脆弱な」などです。つまり、加齢に伴って次第に体力的・精神的・社会的に弱っていく中で、ひとつ踏み外すと容易に要介護状態等に陥ってしまうような危うい状態のことをフレイルといいます。

フレイルなどと横文字を使わずに日本語で「虚弱」と言ってもいいのですが、正確なニュアンスとしては、すでに弱り切ってしまった状態ではなく“弱りつつある危うい状態”のことを指すものであるため、表現としてはフレイルという言葉を用いることが日本老年医学会では推奨されています。

ここで注目したいポイントとして、フレイルとはすなわち「可逆的な状態」、つまりまだ「元に戻ることができる状態」であることです。すでに寝たきりになって虚弱な状態になってしまっているわけではなく、介入することで未然に要介護状態になることを防ぐことが可能な状態も含む概念です。

フレイルの基準について明確に定まったものはありませんが、下記の項目などについて評価をします。

 

フレイルの基準

・体重減少

・歩くのが遅い

・握力低下

・疲れやすい

・活動レベルの低下

・その他 認知機能低下など

それぞれの項目において、さまざまな程度がありうると思います。普段よく行く利用者さんにおいてはいかがでしょうか。早期に気づくことで介護度の上昇を未然に防げるかもしれません。

サルコペニアとは

サルコペニアも、加齢に伴って機能が低下するという意味では同じですが、主に筋肉量の減少による身体機能の低下を指しています。フレイルが移動する能力、筋肉量、姿勢保持能力などに加え、認知機能、栄養、日常の活動性なども含むのと異なる点です。どちらも、明確な定義があるわけではなく、厳密な違いについては定まっていません。

サルコペニアの有病率は、60-70歳で5-13%、80歳で11-50%に及ぶという報告があります。(Morley JE: Sarcopenia: diagnosis and treatment. J Nutr Health Aging 2008; 12: 452-456)

有病率は意外に高く、とくに在宅医療を受けている利用者さんではほとんどの方が当てはまるでしょう。

サルコペニアを分類すると、まず一次性と二次性に分けることができます。

一次性サルコペニアとは、加齢性サルコペニアともよばれ、加齢以外に明らかな原因がないものをいいます。

二次性サルコペニアとは、

・活動に関連するサルコペニア(寝たきりであったり、あまり動かないような生活を送っている場合に起こるもの)

・疾患に関連するサルコペニア(心不全、呼吸障害などの臓器不全があったり、炎症性疾患や悪性腫瘍などによって起こるもの)

・栄養に関連するサルコペニア(消化管疾患、吸収障害等による、エネルギーおよびタンパク質の不足)

に分けられます。

また、サルコペニアに対しては欧州のEWGSOP(European Working Group on Sarcopenia in Older People)というグループがさまざまな角度から検証を行っています。その中で、サルコペニアだと判断するためのフローチャートを作成していますが、評価項目としては、歩行速度(カットオフ値:0.8 m/s)、握力、筋肉量を挙げています。この中で、筋肉量については在宅医療の現場で正確に測定するのは難しいところがありますが、歩行速度と握力については評価できます。
具体的に言えば、0.8m/s以下の歩行速度(横断歩道を渡り切るのが難しいスピード)であったり、握力が男性25㎏、女性20㎏を下回ったりするような場合にはサルコペニアが疑われる、と覚えておくとよいでしょう。

筋力低下を予防する方法(1) 運動

在宅医療を受けている利用者さんが、フレイル・サルコペニアを予防し、いつまでも元気でいるためにはどのようにしたらよいでしょうか。

一番大切なことは、“廃用症候群”を避けること。つまり、体の機能は使わないと衰えるため、持続的に使っていくことが大切です。とくにサルコペニアに関する研究の中でわかってきたこととしては、いろいろな種類の運動の中でも、漸増負荷筋力強化運動というタイプのトレーニングが有効だとされています。

理学療法の実践者によっては、サルコペニア予防のために高負荷のトレーニングを勧められる場合もあります。しかしスポーツジムに通って重いものを持ち上げるような過酷なトレーニングをしたり、毎日10㎞も走りこんでマラソン大会に出るような高負荷な運動したりしなくとも、「少し疲れるな」と感じる程度の運動でも持続的に行うことで、サルコペニア予防には効果があるとわかっています。

もっと簡単に言えば、まず大切なのは“歩くこと”です。たとえば周術期の回復や合併症の有無についての研究をみても、術前の歩行速度が重要だとする報告も多数あります。最近は手術の後にも、早期に回復を促すためにも、なるべく翌日から頑張って歩くように指導することが多くなってきました。当たり前のことかもしれませんが、高齢者が元気でいるためには意識して歩くように心がけることがやはり大切なのです。

筋力低下を予防する方法(2) 栄養

次に、筋力低下を予防するために食事において気をつけることは何でしょうか。筋肉とは主にタンパク質から作られています。筋肉が減少するには、筋タンパク質の「分解される量>合成される量」という状態が長い時間続くことが必要です。つまり、筋タンパク質の合成量が増えるか、分解量が減れば筋力低下を予防できる可能性があります。

人間には、体内で合成できないためどうしても食事などで摂取することが必要な必須アミノ酸が9種類あります。(※アミノ酸はタンパク質の原材料です。)この必須アミノ酸を摂取すること、とくにその中でもロイシンが配合されたものを摂取すると筋タンパク質の合成を促進できることが分かっています。サプリメントも千差万別、一長一短ありますが、アミノ酸製剤の摂取は筋力低下の懸念がある方にはお勧めできます。ただし、腎不全の方など、医師からタンパク質制限を指導されている方は摂り過ぎないようにしましょう。

他に効果のある成分としては、ビタミンD・成長ホルモン・テストステロン(男性ホルモン)などが有望視されています。

日常的に意識することでフレイル・サルコペニアは予防できる

今回はフレイル、サルコペニアという2つの概念についてお話致しました。在宅医療を受ける利用者さんにおいては、いろいろな原因が複雑に絡み合って、容易に廃用症候群が起きてしまいます。

病院で行われる医療では、患者さんの普段の生活状況までは見えません。その点は、日常生活がどのような状況であるかについて直接的な情報を得ることができる在宅医療に優位性があります。

とくに日常的なケアを担当する訪問看護師・訪問介護士の方の見立てが非常に大切です。ぜひ、利用者さんの健康長寿を維持するため、フレイル、サルコペニアについて意識してみましょう。

 

writer
しゅうぴん先生

普段は急性期病院で医師として勤務しながら、定期的に訪問診療も行い、最後まで患者さんに寄りそう医療を行っています。
また、正しい医療情報の普及を行う活動をライフワークとし、昼夜問わず精力的に活動しています。

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