ユマニチュードとは?ー認知症ケアの新常識|在宅医療の基礎知識

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医療の進歩とともに、人口の高齢化は日本のみならず世界中で急速に進んでいます。

同時に、加齢にともない認知機能の低下した方に対するケアのあり方も様々な研究が進められてきました。

今回はそんな時代の流れのなか、遠くフランスで生み出された認知症に対するケアの技法「ユマニチュード」についてご紹介します。

 

ユマニチュード普及の背景ー間違いだらけだった「認知症ケア」

とある高齢の入院患者さん。

自宅で転倒して大腿骨を骨折。手術後1ヶ月の入院と安静を指示されました。

 

しかし、急な環境の変化にせん妄状態に陥ってしまった患者さん。

夜の巡視に訪れた看護師が目にしたのは、点滴を自己抜針して血まみれになった床やシーツ、足を折って手術したばかりだというのに看護師の制止を振り切り「家に帰る!」と大暴れする患者さんの姿

 

治療に差し支える上に本人の身も危険だと、ご家族の同意を得て両手足にミトンをはめられ、抑制帯でベッドに固定された患者さん。

興奮を抑える薬を投与し、そっと刺激しないように部屋を出るスタッフ。

 

翌朝になってもぼーっとした患者さんは、安静中のため動くことも許されず、短時間のリハビリ以外にやることもありません。

スタッフも他の業務で忙しいため、反応のない患者さんに特に話しかけることもなく1日は過ぎ

 

こうして、刺激のない日々を過ごすうち、一時的なせん妄から認知症に至ってしまった患者さんは、足が治っても入院前と同じ生活には戻ることはできず

 

 

と、ちょっと前まではこんな光景が日本の大病院でもごく当たり前に見られていました。

「抑制」=「患者さんのため」と本気で考えられていたのです。

今でももしかしたら、人手の少ない病院では見られる光景かもしれません。

 

しかし、これはユマニチュードの考え方からすると、『間違いだらけ』でケアとは呼べない対応だったのです。

 

ユマニチュードの概要ー基本的な考え方


ユマニチュードはイヴ・ジネスト、ロゼット・マレスコッティの2人によってつくり出された、知覚・感情・言語による包括的コミュニケーションにもとづいたケアの技法です。

その特徴はなんといっても、これまで当たり前とされていた認知症ケアのやり方を覆した「人とは何か」「ケアする人とは何か」を説く哲学。

「あなたのことを、わたしは大切に思っています」というメッセージを常に発信する
ーーつまりその人の人間らしさを尊重し続ける状況こそが「ユマニチュード(人間らしさを取り戻す)」の状態であると定義されています。

そのため、ユマニチュードの実践的な技術は、高齢者や認知症の方だけでなくすべての人を対象として活用できる汎用性の高さを持っているのです。

 

ユマニチュードの技術とは?

ジネストらは実に細やかな点までその技術を伝えていますが、それらは全て「対象に害を与えないケア」であることを前提としています。
そして、それらは大きく4つの技術に分かれています。

 

< ユマニチュードの基本となる「4つの柱」>

①「見る」
「相手を見ない」=「あなたは存在しません」というメッセージを発しているということ。相手の方のレベルに合わせ、たとえベッドを動かしてでも相手が向いている先にいき、その視線をつかみにいくことが必要です。

②「話す」
見ることと同様に「あなたはここにいますよ」ということを相手に伝え、その方の社会性を取り戻すため、たとえ反応のない人にも常に話しかけ続けます。

この際、『オートフィードバック』の技法を使い、「温かいタオルで体を拭きますね」「左足を曲げますよ」など、自分の動作を実況中継するようにすると、反応の乏しい方にでも自然に言葉かけができます。

また「気持ちいいですね」「手を伸ばします。ありがとう。」など、前向きな言葉を用います。

③「触れる」
いきなりつかむことは絶対にNG!「どこかに連れて行かれる!」と恐怖を伴うようなネガティブなメッセージを与えます。

触れるときは「広い面積で(手のひら全体で)、ゆっくり、優しく」触れ、相手に優しさや信頼を伝えます。


④「立つ」
人間としての尊厳は「立つ」ことでもたらされる側面が強く、「立つ」ことは骨や呼吸器など生理的にも多くのメリットを持ちます。
少しずつでも立位でのケアを組み込み、立って歩ける自信を取り戻してもらうことで寝たきりを防ぎましょう。

 

まとめ

いかがですか?知っていれば簡単に、誰にでもできそうなことばかりですよね。
まるで「魔法」とまで言われたユマニチュードも、そうして今では認知症患者に関わる人にとっては常識になりつつあります。

ユマニチュードが伝えるのは、医療技術が進む一方でいつの間にか二の次にされてきてしまったケアの本質です。

認知症患者だけでなく、ケアを必要とする全ての人に有効なこの技法。
まだよく知らないなという方!ぜひ一度学んでみてくださいね。


(参考・引用)
「ユマニチュード入門」:本田美和子、イヴ・ジネスト、ロゼット・マレスコッティ/医学書院

 

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writer
chocola

現在看護師8年目。大学病院の内科病棟に配属され、うち2年間は夜勤専従看護師として勤務。結婚と同時に退職し、現在は訪問看護師として勤務。

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