在宅医療とは|はじめての訪問診療入門(1)

本シリーズでは、在宅医療の現場に飛び込んだ若手医師が感じた、在宅医療の難しさ、おもしろさ、コツについて紹介します。

第一回のテーマは、「在宅医療とは」です。

昨今、在宅医療の重要性が認識されてきており、在宅医療にシフトする医療機関が急速に増えてきました。

以前であれば、在宅医療は入院や外来のオプション的な存在であり、たまたま住んでいる地域の近くに、熱心に在宅医療を行っている医師がいれば、病状によっては利用できる場合がある、という程度でした。

しかし、最近は在宅医療を行う医療機関も増え、さまざまな病状の患者さんが利用できるサービスになってきており、終末期の医療においても主要な選択肢のひとつにもなってきています。

(2017年8月時点)

 

訪問診療と往診について

在宅医療とは、病院などの医療機関ではなく患者さんが住んでいるところで診察や治療を受けることができる医療サービスを指します。

在宅医療は、介護が必要な高齢の患者さんや移動が大変な重病患者さんなど、通院したり入院したりすることが難しい患者さんでも、住み慣れたところを可能な限り離れることなく診察や治療を受けることができるというメリットがあります。

在宅医療は「訪問診療」と「往診」の2つに大きく分けることができます。訪問診療も往診も、病院などといった医療施設以外の場所で医師の診察や治療を受けることができるという点は同じですので、区別がつきにくいと感じるかもしれません。

しかし、訪問診療と往診は実は異なる診療スタイルです。

訪問診療は、月に24回程度、決められた日の決められた時間に、医師が患者さんの自宅など訪問し、診察や治療はもちろん、薬を処方したり、病気に関する相談にのったり、病気と付き合っていくための指導を行ったりということを計画的に行う医療サービスです。

一方、往診は、突然病状が急変するなどして病院へ向かうことができない場合に、医師が患者さんの自宅などに行って診察や治療を行うという医療サービスのことです。

時代劇に出てくる医師のイメージは、往診というスタイルだということです。

 

医療機関における医療と在宅での医療はここが違う

在宅医療は、患者さんの自宅などの居住空間で行われる医療です。医学的知識や医療技術は、他の医療現場で利用されるものと大きく変わりはありません。

しかし、「医療機関ではない空間」ということに起因するさまざまな制約があります。いったいどのような制約があるか、想像できますか。

・医療器具と検査機器

パッと思いつく制約としては、医療器具と検査機器でしょう。最近では技術の進歩によりエコーなども小型化し持ち歩けるものも増えましたし、レントゲンも導入できるようになりました。

しかし、持ち運べるものの量には限界がありますし、購入できる数にも限りがあるでしょう。

・情報

次に思い当たるのは情報です。ただ、これに関しては最近クラウド型の電子カルテが導入されるようになってきましたので、スマートフォン片手に情報収集もできるようになってきました。

必要な情報は電子端末に入れておけばいいので、きちんと体制を作り上げれば、情報収集がしやすくはなりました。

しかし、在宅診療においては情報共有の隙間ができやすいという側面があります。

そもそも、訪問診療をひとりですべてをこなすのは難しく、多くは少人数でチームを組んで診療を行っています。

クリニックであれば、受付であったり、看護師であったり、毎回多くの人の目に触れることになりますので、患者さんの体調が悪いときには「あれ、今日は少し様子が違うな」と誰かが気づき、情報を共有することが可能です。

一方、在宅診療においては「最近全然行ってないけど、今日はたまたま診療を担当することになった」というような場合に、医師も同行事務も同様であれば、直近のリアルな情報が無い状況で診療に当たらなければならないといったことがしばしば起こるのです。(「今日は体調悪そうだけど、ここのところずっとこうなのか、特別に体調が悪いのか、判断がつかない」といったことです。)

・診察スペース

その他、意外と診察スペース/空間がいつもと異なることが診察の制約となることがあります。

慣れた医療機関であれば、血圧計がここにあって、ベッドがあそこにあって、ちょっと大きな処置をするときは処置室に行って、といったことが可能ですが、在宅医療の現場では、例えばちょっとした診察をするにもベッドの向きがいつもと逆でやりづらいことや、処置灯がないため手技の難易度が上がるといったこともあります。

このように、ちょっとした違いが積み重なると、思うように診療が運ばないことがよくあります。

サッカーや野球でもアウェー戦で本領発揮ができないのはよく見られることですが、医療においても同じです。

ただ反対に、実は在宅医療のメリットもあります。それは、何よりも患者さんの生活が見えることです。

普段病院やクリニックで診療をしているだけでは、その患者さんがどのような生活をしているか、どのような家に住んでいるか詳しく知ることはできません。

しかし、居住空間での診療においては、家のどのあたりに段差があって、どのような衛生状態で、どういった日常生活を送っているのか一目瞭然にわかります。

在宅医療を受ける患者さんは、たとえば悪性腫瘍などのADLが徐々に低下してくるような疾患を抱えていることも多く、そのような場合においてきめ細やかな対応をするには、実は在宅医療の方が優れている面もあるのです。

 

在宅医療と診療報酬

在宅での診療は、1992年の医療法改正で定められた「医療は,国民自らの健康の保持のための努力を基礎として、病院、診療所、介護老人保健施設その他の医療を提供する施設(以下「医療提供施設」という)、医療を受ける者の居宅等において、医療提供施設の機能に応じ効率的に提供されなければならない。」という規定によって、法律的に認められるようになりました。

2014年に改定された在宅医療の診療報酬では、在宅患者訪問診療料として、同じ建物内に訪問診療を受けている患者さんが1人しかいないという「同一建物居住者以外」では830点を、同じ建物内に複数の訪問診療を受けている患者さんがいるという「同一建物居住者」のうち特定施設などの場合では400点、特定施設など以外の場合では200点を、患者さん1人あたり週3回を限度として算定できることになっています。

また、在宅診療を行う医師が所属する病院や診療所が機能強化型在宅療養支援病院(または機能強化型在宅療養支援診療所)なのか、通常の在宅療養支援病院(または在宅療養支援診療所)なのかそれ以外なのかといった点や、患者さんが訪問診療を受ける場所が自宅か特定施設などかといった点でも診療報酬が異なるものもあります。

たとえば、機能強化型の在宅療養支援病院に所属する医師が、処方せんありの在宅医療を行ったとすると、自宅などの場合では「在宅時医学総合管理料」として5,000点が、特定施設などの場合では「特定施設入居時等医学総合管理料」として3,600点が加算されます。

一方、通常の在宅療養支援病院に所属する医師が、処方せんありの在宅医療を行ったとすると、自宅などの場合では「在宅時医学総合管理料」として4,200点が、特定施設などの場合では「特定施設入居時等医学総合管理料」として3,000点が加算されます。

このように、病院や診療所が在宅療養支援病院や在宅療養支援診療所の要件を満たしているか、患者さんがどこに住んでいるかによって、在宅医療の診療報酬は異なります。

 

まとめ

今回は在宅医療の概略について説明致しました。

今後ますます需要も供給も増えていく在宅医療について、ぜひ一緒に学んでいきましょう。

〈参考URL〉

日本訪問診療機構「訪問診療について」

http://jvmm.jp/houmon-oushin.php

厚生労働省「在宅医療の推進について」

http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000061944.html

全国在宅療養支援診療所連絡会「Geriatric Medicine 高齢者の在宅医療 実践ガイド

http://www.zaitakuiryo.or.jp/zaitaku/files/kaisetsu/006.html

厚生労働省保険局医療課「平成26年度診療報酬改定の概要」【在宅医療】

http://www.ncgg.go.jp/zaitakusuishin/zaitaku/documents/08_2-2.pdf

writer
しゅうぴん先生

普段は急性期病院で医師として勤務しながら、定期的に訪問診療も行い、最後まで患者さんに寄りそう医療を行っています。
また、正しい医療情報の普及を行う活動をライフワークとし、昼夜問わず精力的に活動しています。

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