初回訪問で気を付けること(居宅編)|はじめての訪問診療入門(2)

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第二回のテーマは「初回訪問で気を付けること」。病院とは異なる環境にお邪魔して診察を行う訪問診療ならではの、特に初回訪問で気を付けることについてお話いたします。

本シリーズでは、在宅医療の現場に飛び込んだ若手医師が感じた、在宅医療の難しさ、おもしろさ、コツについて紹介しています。

★前回までの記事はこちら在宅医療とは|はじめての訪問診療入門(1)

 

在宅医療は患者さんの導入面談からスタート

通常、訪問診療を導入する際に特別に緊急性のある場合を除き、まず患者さんに対して面談を行います。

この面談の目的としては「治療関係を明確にすること」です。

病院やクリニックでの外来診療であれば、患者さんが医療機関に入ることで診療契約がなされていると考えることができます。

つまり、受診を希望していないのなら来ないわけで、受診しない権利が明確に担保されています。

一方、訪問診療は患者さんの居住空間にこちらから出向いていく医療であるため、ややもすると押しつけがましい医療になりやすい特性があります。

たとえば、本人や家族は特に望んでいないにも関わらず「ケアマネージャーから強く勧められて在宅医療を導入することになった」というケースもあります。

 

導入面談は貴重な情報収集の機会

きちんと導入面談の日程を設定することで、患者さんやご家族の状況など詳細な情報収集や情報共有が容易になります。

診察室と異なり、あらためて時間を設けないと落ち着いて話を聞くことができないまま定期訪問が開始されてしまい、基本的な情報が十分でないまま診療を行っていくことになってしまいます。

特に家族との情報共有不足は、信頼関係の構築に障害となりやすいので、初回の面談は非常に大切です。

きちんと「この日にこれまでの経過の話を聞きますので、可能ならかかりつけの医師の紹介状を用意しておいてください。また、経過をよくご存じのご家族の方も同席されてください」と話しておくことで、より効率的な情報収集が可能になります。

導入面談においては、「どこまで自宅で診療を行うこととするか」について話し合っておくことも大切です。

急変したときも含めて、在宅診療の範囲にとどめるのか、それともそういった場合に入院できるような後方支援病院を確保しておく必要があるのか、といったことも確認する必要があります。

その他、細かいこととして、処方に関して病院やクリニックから在宅医療側に明確に移行しておくことも必要となります。

また、訪問看護ステーションについては、在宅医療に移行する段階ですでに導入されているケースも多々ありますが、病院やクリニックと同様に得意分野・不得意分野があります(たとえば末期がんの方に対する経験が浅い、など)ので、チェックしておくことが必要です。

 

初回訪問時の留意点

初回に訪問した際の医師の言動というのは患者さんやその家族に強く印象付けられることになり、その後の信頼関係の構築において大きな影響があります。

初回訪問時に気を付けることとしては、下記のような事項が挙げられます。

1.好ましい服装

白衣を着るかどうかは、在宅医療の現場ではどちらでもよいでしょう。

実際、あえて白衣を着ないという医師もいますし、白衣を着た方が診察しやすいと考える医師もいます。

ただ、Tシャツ、短パン、サンダルといったラフすぎる服装はあまり好ましいとは言えません。

 

2.自宅に入る際

在宅医療においては、患者さんの自宅が診察スペースではありますが、あくまで患者さんのパーソナルスペースですので、常識的な最低限の礼儀をもってのぞむ必要があります。具体的には、たとえば玄関で靴をそろえること、ドアをノックすること、不必要に室内を見渡さないようにすることなどです。

ただし、中には話題作りとアイスブレークに役立つものが置いてあることもあります。

たとえば本人が描いた「絵」であったり、額に飾られた「表彰状」であったりです。診察室と比べて、より患者さんの個性が見えるのが在宅医療の強みでもあります。証券会社や保険会社の営業マンのようにはいきませんが、その後の信頼関係構築のための話題をひとつ、ふたつくらい見つけておくとその後の診療がやりやすくなるでしょう。

実際、在宅医療では1人の患者さんの診察にかける時間は医療機関に比べて長く、1015分程度から、中には30分以上かけるという医師もいます。

また、訪問時にバイタルを測定するので、ちょっとした無言の時間ができることも多々あります。

そうした、在宅医療ならではの「間」の使い方を考えておくことは大切です。

この時間で心の距離を縮めたりできますので実際に体験するとこの「間」の重要性に気づくことでしょう。

 

3.お菓子やお茶を勧められた場合

基本的に初回でお茶など勧められたら、無理に断るのも角が立つでしょう。

ただ、毎回お茶を飲んでいては後の診察スケジュールに影響が出てしまうこともあり、後々負担になってきます。

初回の段階で、「次回からはお気遣いは不要です」とはっきり伝えておくのが多くの場合はよいと思われます。

 

4.家族の関係性を見極めること

よく医療機関では、「キーパーソン」を設定します。

在宅医療においても、キーパーソンを設定することは大切ですが、医療機関での診療と異なり、在宅医療ではこちらから患者さん宅へ出向いているため、よりダイレクトに家族関係の情報が入ってきます。

患者さん本人が家庭内でこれまでどのような役割を担っていたか、その家庭でリーダーシップをとっていたのは誰かといったことを見極める必要があります。

表立って話をする人と裏で気をきかせて多方面に配慮している人が違うかもしれません。患者さん本人がそれまでリーダーシップをとっていた場合、それが喪失した状況におかれると、家族は一時的に機能不全に陥ります。その中で無理にキーパーソンを決めても、うまく機能しないこともあります。

初回訪問時には患者さんがまずどういった状況にあるか、とにかくよく話を聞き観察し、把握することにつとめましょう。

 

まとめ

初回訪問においては、まず前段階としての導入面談において、患者さん・家族・医療者の中で、在宅医療でどのようなことを行っていくかについて認識を共有しましょう。

また、初回訪問時には、家族もまだ在宅医療に不慣れですので、今後の診療が円滑に行えるような下準備をすることが大切です。

 

writer
しゅうぴん先生

普段は急性期病院で医師として勤務しながら、定期的に訪問診療も行い、最後まで患者さんに寄りそう医療を行っています。
また、正しい医療情報の普及を行う活動をライフワークとし、昼夜問わず精力的に活動しています。

 

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