訪問診療の情報をスムーズに連携するポイント|はじめての訪問診療入門(3)

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第三回のテーマは「訪問診療の情報をスムーズに連携するポイント」です。

チーム医療の重要性が求められる訪問診療ならではの、職種間の情報伝達において気を付けることについてお話いたします。

本シリーズでは、在宅医療の現場に飛び込んだ若手医師が感じた、在宅医療の難しさ、おもしろさ、コツについて紹介しています。

★前回までの記事はこちら

在宅医療とは|はじめての訪問診療入門(1)

初回訪問で気を付けること(居宅編)|はじめての訪問診療入門(2)

訪問診療における情報伝達

訪問診療における情報伝達では、医療機関での診療とは異なる側面が多々あります。

医療機関であれば、同じ施設内に医師がいて、看護師や薬剤師がいて、ソーシャルワーカーなどの事務職員もいます。

そのような環境であれば、PHSで電話を1本かければ、情報共有が可能です。

しかし、訪問診療においては、それぞれが顔を合わせてやり取りすることは少なく、情報をいかに共有するかということが大切になります。

まず、訪問診療において医師が連携すべきパートナーとしては、どのような対象が挙げられるでしょうか。

  1. 訪問看護師との連携
  2. 薬局との連携
  3. 歯科医との連携

などがあります。

他にも、ケアマネージャーや、後方支援病院との連携も挙げられますが、今回はまずこの3項目について、順にみていきましょう。

 

訪問看護師との連携で気をつけるべきポイント

「医療の質は看護で決まる」というのは、医療機関で働いたことのある人にとっては概ね納得の行く言葉であると思います。

事実、患者さんにとって最も身近な医療者というのは多くの場合、看護師です。(※もちろん、時間的な連続性で言えば、場合によって医師は何十年という単位でひとりの患者さんと付き合うことがありますので、そういった意味では、医師の方が、心理的距離が近い場合も当然あります)

治せない患者さんは多くいますが、看護が受けられない患者さんはいません。

そうした点からしても、訪問診療を行う上で、訪問看護師といかに密な連携をとるかということは非常に大切なことだと言えるでしょう。

 

そもそも訪問看護ステーション制度は、1992年に発足しました。

当初は高齢者のみに利用可能な制度でしたが、1994年には全年齢に対象が広がりました。

訪問看護は医療機関で働く場合よりも看護師の裁量が大きく、より自立的な仕事の仕方をする看護師が好んで訪問看護の世界に飛び込んでくるようになりました。

そのような背景から、訪問看護師との連携においては、いかに訪問看護師から有益な情報を得られるかに注力することが、医師にとって自らの診療の質を高めるために有用です。

そのためには、臨時訪問があった際に直接電話で話すこと、定期的に連携のためのカンファレンスを行うようにすることなどが必要です。

 

さらに、電話やカンファレンス等の際に、気を付けるべきこととして、「まず看護師の意見を述べてもらう」ということです。

看護師の方が当然、医師よりも訪問回数が多く、密に患者さんを観察してくれています。

また、独立性をもった看護を行っていますので、多くの場合、その看護師なりのアセスメントをしています。まずその意見を聞いてから、そこに医師がコメントするような形の方が上手くいくことが多いでしょう。

 

その他、最近では医療情報の共有のため、クラウド型の電子カルテを使用する例も増えてきました。

特に訪問診療においては、医療機関から物理的に離れたところで情報を得ることができるため、非常に相性がよいのです。

共有範囲を広げ過ぎると情報が漏洩する危険が高まるという懸念はありますが、今後は訪問看護師ともクラウド型のツール活用での情報共有が進んでいくことは間違いないでしょう。

 

薬局との連携で気をつけるべきポイント

現在、院内処方から院外処方への切り替えが進んできたことと同様に、訪問診療においても、特に経口薬に関しては医師から患者への直接的な投薬を行うことは少なくなり、薬局で薬をもらうように指示することが多くなりました。

薬局側も、医薬分業の流れに乗ってかかりつけ薬局の推進をはかっています。

訪問診療においても、在宅患者訪問薬剤管理指導が認められるようになり、薬剤師が在宅患者を訪問する活動が広まってきています。

 

しかし、訪問診療において「正確に処方内容を薬局側に伝えること」は、実は意外と難しいのです。

家族が処方箋を薬局に直接持っていける場合はいいのですが、必ずしもそれが可能とは限りません。

患者宅からFAXしてもらうか、電話で読み上げて伝えてもらうか、といった手法をとらない限り、薬剤師が自宅に訪問した際にその場で処方箋を初めて確認し、調剤・説明を行うことになります。

FAXが無い場合は設置してもらうか、携行できるFAX機を持っていくか、または電子ファイルで共有できるようになど、事前に診療エリアの薬局と打ち合わせておく必要があるでしょう。

また当然、どの薬局でも置いてある薬剤、置いていない薬剤というものはあります。

特に事前に確認が必要なのが、「麻薬」と「経管栄養・中心静脈栄養」です。

一般的な処方薬については、「後発薬品可」とさえしておけば、そこまで連携時に問題となることはないでしょう。

 

しかし、麻薬は高価であり、かつ必ずしも定期的に出続けるとは限らない薬であるため、在庫管理に苦慮していることがあります。

薬局側ときちんと情報を共有して、患者さんにもかかりつけ薬局を決めて薬をもらうように指示することが有用でしょう。

 

また、経管栄養・中心静脈栄養などによる管理を必要とするような患者さんに対しては、輸液に注射剤を混注するよう依頼することもありますが、薬局によってはクリーンベンチを有していないところもありますので、そうした対応が可能かどうかも事前に情報を得ておくとよいでしょう。

 

歯科との連携で気をつけるべきポイント

訪問診療において、歯科との連携ができていないところはまだまだ多いのではないでしょうか。

病院では容易に点滴が行いやすく、人工的に栄養を補助することへのハードルは低いのですが、訪問診療においては、「経口で食べられるかどうか」が、その患者さんの栄養状態を大きく左右します。

にもかかわらず、訪問診療を必要とする患者さんは寝たきりであることなどをはじめとして、自分で口腔ケアができない方が非常に多いのです。

そのため、かなり多くの方に齲歯があり、さらにそれが見過ごされていることがあります。

 

また、訪問診療の患者さんは、老衰や病状などにより、次第に痩せていくことがあります。そのような場合、よくあるのが、歯肉が萎縮することによる義歯の不具合です。外から見えるわけではないので、患者さん本人がきちんと訴えられない場合には、気づかれないことも多々あります。

 

歯科医と連携をとる際に提供する情報としては、

・何の診断で訪問診療を行っているか(病状)

・免疫不全をきたすような病歴があるか

・処方薬の情報(特に抗血栓薬の有無)

・感染症の有無

などです。

 

訪問歯科医療の入り口の多くは、訪問診療や訪問看護です。

食べることは生きることにダイレクトにつながりますので、定期的にチェックしてみることが必要です。

 

<まとめ>

訪問診療は、多様な職種が入れ代わり立ち代わり、患者さんのご自宅を訪れます。医療機関で行う診療とは異なり、「効率のよい情報共有」が医療の質を上げるキーワードです。

システムを作ってしまえば、後々楽になりますので、もしまだ不十分だとお感じであれば、ぜひ一度本腰を入れて情報共有の方法について考えてみてください。

 

writer
しゅうぴん先生

普段は急性期病院で医師として勤務しながら、定期的に訪問診療も行い、最後まで患者さんに寄りそう医療を行っています。
また、正しい医療情報の普及を行う活動をライフワークとし、昼夜問わず精力的に活動しています。

 

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