夜間訪問で気をつけることと医師の負担軽減のための工夫|はじめての訪問診療入門(4)

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第四回のテーマは「夜間の訪問で気を付けること」です。24時間365日対応が基本である訪問診療においては、特に夜間の対応では丁寧な対応が求められます。

今回は夜間に臨時往診をする際に気を付けるべきポイントについてお話したいと思います。

本シリーズでは、在宅医療の現場に飛び込んだ若手医師が感じた、在宅医療の難しさ、おもしろさ、コツについて紹介しています。

★前回までの記事はこちら

在宅医療とは|はじめての訪問診療入門(1)

初回訪問で気を付けること(居宅編)|はじめての訪問診療入門(2)

訪問診療の情報をスムーズに連携するポイント|はじめての訪問診療入門(3

 

臨時往診の負担を減らすには

病状の急な変化がある患者さんを担当することの多い訪問診療では、「きちんと24時間対応できること」が必要条件です。

24時間365日対応、というと何とも気が抜けない状況が一生続くようで、気が重くなる方もいるでしょう。

また、夜間に検査機器も限られた中で適切な診療が行えるのかと心配なさる方もいるでしょう。

では、どのような工夫をすることで、心理的・肉体的負担を減らすことが可能でしょうか。

 

負担を減らす方法(1)日中に夜間に備えた指示を行うこと

まず初めに理解すべきこととしては、夜間の臨時往診の負担は、日中の診療の質を反映している、ということです。

 

病院勤めをしていても、夜の当直時にcallがかかってくるかどうかを左右する要素を考えた際に、1番目に患者の状態、2番目に看護師のスキルであることに加えて、3番目としては事前指示が適切であるかといったことが挙がってくるでしょう。

 

訪問診療においては、この「事前指示が適切であること」の重要度が、病院での診療に比べて高い位置づけになります。

なぜなら、指示を受けるのが看護師ではなく家族だからです。

医療知識のない家族にとっては、ちょっとした変化にとまどい、心配になってしまうのは当然でしょう。

少し前の時代であれば病院に入院していたと思われる患者さんも、今の時代は在宅医療で診ているケースが増えてきていますから、より家族の負担も増えているのです。

 

そのような背景から、日中の診療において、夜間に起きうることを的確に予測し、適切な指示を出しておくことが、夜間のcallを減らす上ではもっとも重要です。

  • 「想定されうることの説明」
  • 「薬を使用するタイミングや回数」
  • 「こういう変化があったときは迷わずcallを」

といった、ケースごとに分けた事前説明が必要なのです。

さらに、「必要なときにはいつでも積極的に対応する」旨を伝えておくことで、家族に安心していただくことができます。

 

負担を減らす方法(2)クラウド型電子カルテの活用

次に、クラウド型の電子カルテの活用です。夜間のcallを受けた際に、クリニックに一度立ち寄って患者情報を確認して、そこから患者宅へ向かうのと、手元の電子端末でカルテを確認し、直接患者宅へ集合するのとでは、到着までにかかる手間も時間も大幅に変わります。

また、往診車に必要物品を積んでさえおけば、同行する事務スタッフも含めて自宅待機が可能になりますので、より心理的・肉体的負担を軽減することができます。

非常勤医師を探す際にも、クリニックでの当直を強いられる場合と、自宅待機が可能な場合とでは、応募数が大きく異なりますし、待機手当も比較的抑えることが可能でしょう。

 

負担を減らす方法(3)訪問看護ステーションとの連携

他には、夜間の相談はまず訪問看護ステーションにcallをかけてもらうように事前にルール作りをしておくことも一つの案でしょう。

看護師が対応できない場合にのみcallがかかってくるため、より必要性の高いcallのみに絞ることが可能になるはずです。ただし、この手法は患者さんに訪問看護が導入されていることが前提になります。

 

夜間の訪問で気を付けること

では、実際に夜間にcallがあった場合に、訪問時に留意すべきことはどのような点でしょうか。

 

限られた環境での対応が求められる

まず、日中の診療体制と異なり、夜間はいろいろな資源の利用が困難です。近隣の病院の外来も閉まっており、薬局も開いていないため使用できる薬にも制限があります。

また、独居の患者さんの場合は親族に連絡を取ってもすでに交通手段が無いといったこともあります。

 

初対面の患者に対していかにスムーズな診療をできるか

そして、このように普段に増して限られた環境で医療を行わなければならないということもありますが、最もリスクの高い要素としては、「必ずしも慣れて見知った医師が往診するわけではない」、ということです。

 

訪問診療は24時間365日対応を求められますから、1人の医師が全てを対応することは困難です。

そのため、複数の常勤医・非常勤医の協力が不可欠であり、医師によってはその患者さんのご自宅へ伺うのは全く初めてという状況も起こります。

事務スタッフも同様ですから、巡り合わせによっては情報源がカルテしかないということになります。

 

ご家族に「患者さんは普段はどのような状態の方ですか」と聞くのも、家族からすれば「カルテに書いてないの?」と思われる可能性が高いので、往診した医師としては何ともバツが悪い雰囲気になってしまいます。

 

急変時の認識ズレに注意

特に、急変時の対応については医療者の認識と家族の認識にずれが生じやすいところです。

普段診ている主治医であれば「DNR(蘇生処置拒否)なので、急変しても苦痛をとるのみでお看取りの方針で。」と考えていても、実際に急変した患者さんを目の前にした家族が「さっきまでずっと喋れていたんです。どうにか助けてください」とおっしゃる場合もあります。

医療者側からすれば、がんの末期で、いつ亡くなってもおかしくないと認識していても、家族はその場がイメージできておらず、いざとなったときに受け入れられないということもあるのです。

 

私自身もある日臨時往診で初めて訪問したご家庭で、家族に「急変した時の話はすでに決められていますか」と聞いたところ、「いえ、さっきまで歩いていたんです。今まで大きな病気もしたことなくて。ぜひ助けてください」と言われたため、積極的治療を試みたことがあります。

しかし、後から他の医師に確認したところ「あの患者さんはDNR(蘇生処置拒否)なんだよ」と言われ、カルテをしっかり振り返ったところ、2か月前に胃がんの末期のため、急変時に治療はしない、と明確に決まっていた、といったことがありました。

 

そのような状況を回避するために、カルテの一番上や目立つところに適宜サマリーや、「急変時にもご自宅でお看取りを」などの治療方針を残しておくことが有効です。

また、非医療者の事務スタッフでも簡単に大まかな患者情報が把握でき、非常勤医師に簡単に説明できるような仕組みを作っておくこともよいでしょう。

 

特に夜間の訪問においては、往診した医師が速やかに情報を得て、限られた資源を用いて正しく診療できるように、できる限り日中に環境を整えておくことが最も大切です。

 

<まとめ>

24時間365日対応が基本の訪問診療において、夜間の対応をどうするかは、スタッフの疲弊を予防する最大のポイントです。

精神論で乗り切ることを提案するより、ちょっとした工夫をすることで改善できることがたくさんありますので、一度じっくり考えてみてはいかがでしょうか。

 

writer

しゅうぴん先生

普段は急性期病院で医師として勤務しながら、定期的に訪問診療も行い、最後まで患者さんに寄りそう医療を行っています。
また、正しい医療情報の普及を行う活動をライフワークとし、昼夜問わず精力的に活動しています。

 

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