医師にとっての訪問診療の魅力・やりがいとは|はじめての訪問診療入門(6)

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第六回のテーマは「在宅診療のおもしろさとは」です。これまでのシリーズで、訪問診療とはどのようなものかについてお話してきましたが、今回は実際に訪問診療をはじめてみて私が実際に感じた魅力ややりがいについてお話したいと思います。

本シリーズでは、在宅医療の現場に飛び込んだ若手医師が感じた、在宅医療の難しさ、おもしろさ、コツについて紹介しています。

★前回までの記事はこちら→

在宅医療とは|はじめての訪問診療入門(1)

初回訪問で気を付けること(居宅編)|はじめての訪問診療入門(2)

訪問診療の情報をスムーズに連携するポイント|はじめての訪問診療入門(3 

夜間訪問で気をつけることと医師の負担軽減のための工夫|はじめての訪問診療入門(4

初回訪問で気を付けること(施設編)|はじめての訪問診療入門(5

 

往診は「今困っている人」に対する医療

訪問診療の面白さの1つとして、(特に臨時往診においては)今まさに困っている人に対して手を差し伸べる医療であるということだと思います。

病院で、たとえばCT検査で肺がんが見つかったから手術をする、という医療行為は当然大きな意義があります。

しかし、多くの場合、局所の肺がんでは症状が出ませんので、患者さんにとっては「がんと言われたからとにかく手術しなきゃ」という状態ではあるものの、「苦しいから手術をしてくれ!」という状態ではありません。

一方、訪問診療では、(特に臨時往診の場合には)痛みがあったり熱があったり、症状は何であれ基本的には何らかの苦しい症状が患者さんに起こっている状況です。

もちろん、たとえば病院で救急科を担当していれば、「今困っている人」が多く来るのは確か。

しかし、救急の現場では多数押し寄せてくる患者さんをいかに死なないようにするかという側面が重要と考えられ、、少々苦痛があっても命に関わらないなら家で様子をみてもらうということになることが一般的。

救急の現場では、訪問診療のように居宅で一人ひとりの患者さんに向き合うような時間は全く無いのです。

訪問診療(特に緊急往診)で困っている患者さんのところに駆けつけ、その場にある医療資源と自身の経験・スキルを最大限に活用して患者さんを助ける、そういうところは医師としてのやりがいを感じる部分だと思います。

 

訪問診療は友人からの健康相談と似ている

私が実際に訪問診療を始める前に、他の医師に話を聞いたり本を読んだりする中で知っていた訪問診療の魅力ややりがいとは、「患者さんに寄り添った医療ができる」「全人的医療ができる」ということでした。

しかし、これらの言葉は、訪問診療を始めるまでは「情報として知ってはいるけど実感としてはいまひとつピンとこない」ものでした。実際にやっている医師がそのように言っているのだからきっとそうなのだろう、と思っていたものの、病院における医療と同じ次元で考えていました。。

実際に訪問診療を始めた際に

訪問診療は友人に対する医療と似ている

という点に気づきました。

 

医師をはじめ医療に従事している方は誰しも経験があると思いますが、友人や知人、時には親や親戚から、ちょっとした健康相談をされることがあると思います。

友人
「私の友人のお父さんがこの間の検査で前立腺がんが見つかったみたいなんだけど、どうしたらいいかな?」

と聞かれたことがあったとします。

これが総合病院の泌尿器科外来であれば、

ドクター
「んー、前立腺がんでしたら、まずはCTと骨シンチを行って転移が無ければ手術か放射線ですね。」

という、いつもの診療の流れに乗るだけです。

しかし、これが友人からの相談であった場合は、また違います。

 


ドクター
「え、どんな前立腺がん?PSAは?もう転移検索はした?何歳だっけ?手術も放射線も同じくらいの成績だけど、最近はロボット手術なら合併症も少ないし近くの●●病院は経験豊富な先生がいるからお勧めだよ!どうしても放射線がいいなら先進医療特約に入ってたら重粒子線か、小線源療法が希望なら□□病院がいいと思う!」

と、主観や個人的お勧めも織り交ぜながら、より具体的なアドバイスをすることでしょう。

 

もちろん、病院の外来で懇切丁寧な説明をしないというわけではありません。

ただ、病院ではあくまで患者と医師の関係であって、初めから主観を踏まえた提示をするのではなく、まず客観的・一般的な話をすることを心がけます。たとえ個人的なお勧めがあったとしても、

ドクター
「AとBという方法がありまして、どちらもありだと思います。」

ドクター
「私の意見?んー、どちらも一長一短の治療法ですが、個人的なお勧めとしてはA≧Bですかね」

 

など、最後に意見を提示する程度です。病院に勤めていると立場上も偏りが無いようにすべきであることがありますし、「あの先生にはこっちの治療がいいって言われたからやったけど、合併症がひどかった」などと言われかねないこともあり、そうした控えめなコメントにならざるを得ないのです。

 

 

では訪問診療においてはどうでしょうか。

 

これまで述べてきたように訪問診療では、より患者さんの普段の姿を知ることができます。

家での過ごし方、家族構成や家族との関係性、家族の性格まで分かります。

そうした深い関係が構築されていると、ちょっとした体の不調や心配事に対しても、あたかも友人から相談されたときのように自然とより深いコミットメントができるのです。

 

病院でも長年同じ外来に通院されている患者さんとはそのような関係性を築くこともできますが、訪問診療においてはそうした深い関係性が基本になっています。

 

このような観点からあらためて「患者さんに寄り添った医療」「全人的医療」という言葉を反芻すると、言葉の本来の意味が腑に落ちるような気がしますし、きっとそうした点が訪問診療の本質なのだろうと思います。

 

 

<まとめ>医師の本来の面白さを思い出させてくれる訪問診療

訪問診療の面白さとは、「今困っている人」に対して、より深い関係性を持って医療を提供することにあると思います。

身体の中のごくわずかながん細胞を検出して、早々と根こそぎやっつけることを追求している現代医療において、より古典的な医師像に近いのが訪問診療であって、医師という仕事の本来の面白さを思い出させてくれるような気がします。

是非機会があれば訪問診療に触れてみてはいかがでしょうか。

 

writer

しゅうぴん先生

普段は急性期病院で医師として勤務しながら、定期的に訪問診療も行い、最後まで患者さんに寄りそう医療を行っています。
また、正しい医療情報の普及を行う活動をライフワークとし、昼夜問わず精力的に活動しています。

 

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