訪問診療についてもっと詳しく学びたくなったら|はじめての訪問診療入門(7)

第七回のテーマは「もっと訪問診療について学びたくなったら」です。これまでのシリーズで、訪問診療とはどのようなものか、どういった面白さがあるかについてお話してきましたが、今回は「もっと訪問診療について学びたい」と思った方に向けて、お勧めの本と勉強法をご紹介いたします。

本シリーズでは、在宅医療の現場に飛び込んだ若手医師が感じた、在宅医療の難しさ、おもしろさ、コツについて紹介しています。

★前回までの記事はこちら

在宅医療とは|はじめての訪問診療入門(1)

初回訪問で気を付けること(居宅編)|はじめての訪問診療入門(2)

訪問診療の情報をスムーズに連携するポイント|はじめての訪問診療入門(3 

夜間訪問で気をつけることと医師の負担軽減のための工夫|はじめての訪問診療入門(4

初回訪問で気を付けること(施設編)|はじめての訪問診療入門(5

医師にとっての訪問診療の魅力・やりがいとは|はじめての訪問診療入門(6

 

まずは教科書の紹介

在宅医療バイブル―家庭医療学、老年医学、緩和医療学の3領域からアプローチする
著者:川越正平
出版社:日本医事新報社

 

まずは訪問診療に関するまさにバイブル的な本の紹介です。600ページにも及ぶ分厚い本ですので、手元においておき、気になることがあったときに紐解く用途として最適です。

著者は、あおぞら診療所という千葉県松戸市にある訪問診療クリニックの川越正平先生です。元々は血液内科が専門で、卒後8年という若さであおぞら診療所を開設しています。

川越先生は、訪問診療を日々行うことに加えて、その地域の訪問診療に関わる専門職に対する教育や、地域連携に関する厚労省主導のプロジェクトにも参加されており、多角的な視点で訪問診療に携わっている先生です。

 

本の中をみると、まず「包括的なケアとは何か」といった、在宅医療に関する総論が述べられ、さらに老年医学について(高齢者に起こりやすい病態についてそれぞれ解説)、緩和医療学について概説し、さらに各種のカテーテル管理法、人工呼吸管理法、在宅医療に関する診療報酬などについても述べられています。

この本が1冊あれば、訪問診療を始めるにあたって必要な知識は網羅できますので、医師のみならず、訪問看護師・訪問介護士・ソーシャルワーカー・ケアマネージャーなど訪問診療に関わる全ての人にお勧めできる1冊です。

 

2時間で通読したい方向けの本

在宅医療の技とこころシリーズ
在宅医療臨床入門
著者:和田忠志
出版社:南山堂

分厚い本を読んでいる時間は無いけど、ちょっと訪問診療について学んでみたいという方向けの本がこちらです。

先にご紹介した川越正平先生の友人である和田忠志先生の著書です。訪問診療に関わる雑誌でも多数連載を持たれています。

 

ページ数は120ページ程度で、文体も読みやすいため2時間程度で通読できます。

私自身も、学生時代の実習先で訪問診療に携わる医師から、「とりあえずこの本を明日までに読んできなさい」といただいた本です。(発行年は2009年と少し前ですが、内容的には普遍的に大切なことが書かれているので問題ありません。)

 

内容としては、まさに訪問診療のエッセンスがつまっており、先に紹介した本が比較的中立の立場で書かれているのに対して、「~した方がよい」という筆者の主観的な意見が多く盛り込まれているので、講演を聞いているような読後感があります。

24時間対応が基本の訪問診療において実際にどのような工夫をするとよいかといった実用的な内容や、実際にその世界に飛び込んでみないと実態がわからない高齢者虐待について、学生指導に関しての小言など、臨床家の生の声が詰まっているのでとても参考になります。

 

緩和ケアについての本

在宅医療の技とこころシリーズ
チャレンジ!在宅がん緩和ケア
著者:平原佐斗司、茅根義和
出版社:南山堂

2番目に挙げた在宅医療臨床入門と同シリーズの、緩和ケアに関する本です。緩和ケアについてはいろいろな本が発売されており、腰を据えて勉強しようと思えば教材には困りませんが、そこまで時間がとれない人にとっては、要点を的確にまとめてある本は貴重です。

3時間あれば通読可能ですし、まだ訪問診療に慣れていなければ、診療の前に5分で当該箇所を読み返してもいいような構成になっています。

最近は、がん拠点病院等に勤めていれば日本緩和医療学会が開催する緩和ケア研修会(2日間)に参加するよう求められますので、研修会で学ばれた経験のある方も多くいらっしゃると思いますが、その内容を手っ取り早く思い出したいというような方にはお勧めの1冊です。

 

書籍で学んだら現場へ

以上、3冊を紹介致しました。

まだ訪問診療をやったことのない方も是非、本を読んだら実践してみてはいかがでしょうか。

訪問診療を行ってみるための具体的な手順としては、

・在宅医療を提供しているクリニックに見学を申し込む
・実際に非常勤医として働いてみる
・在宅医学会へ参加してみる
・地域の医師会や有志が開催している在宅医療の勉強会に参加する

などといった方法があります。

いきなり常勤採用で飛び込むのがためらわれる場合には、まず上記のような手段を試してみるのもいいかもしれません。

 

まとめ

今回は、訪問診療について独学する際にお勧めの3冊を紹介しました。

まずはどの1冊でもいいので手にとって、時間のあるときに眺めてみるだけでもよいでしょう。

「訪問診療という自分しかいない環境で、対処法がわからない症状に出くわしたらどうしよう」という不安を持っている方も、知識がつけば、きっとそれを試してみたくなるはずです。

ここまで全7回、訪問診療の世界に飛び込んだ体験についてお伝えしてきました。

きれいな診察室で行うスマートな医療とは異なり、訪問診療はある意味で泥臭い面がありますが、だからこそ医療の原点に近く、医師としてのやりがいを感じやすいのがいいところだと思います。

是非一度、訪問診療の世界を垣間見てはいかがでしょうか。

 

writer
しゅうぴん先生

普段は急性期病院で医師として勤務しながら、定期的に訪問診療も行い、最後まで患者さんに寄りそう医療を行っています。
また、正しい医療情報の普及を行う活動をライフワークとし、昼夜問わず精力的に活動しています。

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