介護うつとは。意外と身近な「介護うつ」にならないために必要なこと。

介護うつ

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テレビや新聞などで、介護を苦にした自殺や心中などの報道を目にすることも少なくありません。厚生労働省の調査によると、身近な人への介護にストレスを感じることが増えているという結果がでています。

介護の負担からうつ病を発症するケースも珍しくない状況です。意外と身近な「介護うつ」についてみていきましょう。

介護うつとは

近年、少子高齢化や核家族化が進んだことで、介護は身近な家族や配偶者、子供など限られた人に負担がかかるようになっています。

高齢や病気の人を日々介護することは介護する側にとって心身に大きな負担がかかるもの。体だけでなく、心の不調につながることも少なくありません。介護の疲れなどにより、うつ状態になることを「介護うつ」と呼びます。

介護うつの問題

介護うつを発症することで十分な介護が行えない…といった影響が出るばかりでなく、被介護者に対して、暴言や暴力などを働いてしまう可能性もあります。

また、うつの症状が進行することで、自殺や介護殺人などに発展してしまうケースも発生しています。

通常のうつ病であれば、病気の原因になるものから遠ざかることで病気が改善したり治癒したりすることができます。

たとえば、仕事が原因で発生したうつ病であれば、配置転換や一時的な休職、転職などで環境を変えることを行います。

しかし、介護は休むわけにはいきません。24時間の対応を求められることも少なくありません。心身ともに休まることないという点も大きな問題です。

では、介護うつの現状はどうなっているのでしょうか。

 

調査結果からみる介護うつの現状

厚生労働省では毎年「国民生活基礎調査」(※1)を行っています。

平成28年度に行われた同調査の「介護者当のいる世帯の状況」という項目によると介護する人の68.9%の人が悩みやストレスを抱えていると回答しています。その7割以上が家族の病気や介護を理由にしたものです。

また、同じ調査の平成22年度の数字をみるとストレスがあると応えた数字は60.8%に過ぎません。

ここ6年の間に8.1%も上昇しているのです。介護に関わる人のストレスが年々大きくなっていることが分かります。

同居する介護者は配偶者(54.3%)、次いで子供(30.7%)、子供の配偶者(9.6%)となっており、配偶者にかかる負担が大きくなっています。

また介護者の内、71.5%は女性となっており、特定の人が圧倒的に負担を強いられている状況です。

また、介護に必要な時間は要介護の段階がすすむに従って長くなっており、もっとも重い要介護5の場合、ほとんど終日を介護に費やしてしまう場合もあります。

その割合は男性の介護従事者で3割、女性の介護者で7割にのぼります。

介護の必要性が上がれば上がるほど、介護を行う人の心身への負担が増大しているのがわかります。

また、別の調査では現在家庭で介護に携わる人の4人に一人が介護うつになっているという報告もあります。(※2)

介護うつになる原因とは

うつ病は精神的や身体的なストレスが原因で起こります。介護の現場では独特の状況によりさまざまなストレスが生まれます。

1 精神的負担

介護は専門の仕事としている人であっても大変なもの。知識や経験が少ない自宅などでの介護の際には、介護自体が大きなストレスになります。

要介護者本人との生活だけでなく介護サービスとのやりとり、兄弟親戚とのやりとり、昼夜逆転、気が休まらないなどさまざまな要因で生活が一変することも珍しくありません。

2 肉体的負担

車いすやベッドへの移動や入浴介助、日常体を支えたり起こしたり…と介護には体力も必要になります。精神的な疲れと相まって、こうした肉体への負担は介護者の負担になり、うつ病のきっかけの一つになることもあります。

3 経済的負担

介護のために休職したり、時短勤務などを行ったりすることによる収入の減少や、介護費用のために経済的な負担が大きくのしかかることも介護者にとり大きな負担となります。

また、介護に専念するために会社を辞めざるを得ない場合もあり、経済的なことも介護をする人にとり大きな負担になります。

4 孤独

外部からなかなか分かりづらいのが介護者の感じる孤独です。特に親一人子一人など外部とのつながりが希薄になりやすい状況では一人で介護を行うことにもなりかねません。

話し相手や相談相手がいない場合にはより孤独の度合いを深めることにもなります。

また、近年では上記の要因がいくつも重なった介護負担の例も増えています。

高齢者同士の介護により肉体的、精神的な負担が大きい「老老介護」、介護と育児介護と育児の時期が重なることで経済的、心身的な負担を負うことになる「ダブルケア」、さらに仕事の負担がプラスされた「トリプルケア」などのケースもあります。

では、実際に介護うつが疑われる症状にはどのようなものがあるのでしょうか。

 

介護うつの症状

うつ病は本人が気付かずに症状がすすむことも多く、友人や知人に勧められて心療内科を受診したらうつと診断された…というケースも少なくありません。うつ病の症状には単なる体調不良とみえるものから明らかにおかしいと思えるものまでさまざまです。

食欲の低下・増加

食欲がない、食べたいものがない、などの症状のほか、何を食べてもおいしくない、好物の食べ物がおいしいと感じなくなった…などのほか、逆に食べ過ぎてしまう場合もあります。

不眠

夜なかなか眠れない、夜中に何度も起きてしまう、朝早く目が覚めてしまう、眠りが浅いと感じる…などの状態です。

気分の落ち込み

悲しい気持ちになったり、気分が落ち込んだりする、将来に希望をもてないなどの状態です。

意欲や興味の低下

何をしても楽しく感じない、楽しいと思えることがない、興味をもてない、などのほか、趣味が楽しくなくなったなどの状態もあてはまります。

疲労感や倦怠感

休息をして疲れが取れない、だるい感じがするなどの状態です。

思考力や集中力の低下

決断ができない、ものを読むことに支障がある、質問に答えることに時間がかかる、考えがまとまらない、集中できないなど精神活動の低下を感じる状態です。

もちろん、上記の症状があったからといって、かならずしもうつ病というわけではありません。

第三者の目からみて元気がない、上記の様な症状がみられるといった場合には医療機関への相談をすすめるなどのアドバイスを行ってもよいでしょう。

では、介護うつにならないためにはどのようなことに気をつけるべきでしょうか。

介護うつにならないために

介護うつにならないためには日頃からストレスをためないようにすることが重要です。そのためには「周囲への相談」「外部機関の活用」が大切になってきます。

周囲への相談

まず、兄弟や子供など近親者と良く話し合いをもち、悩みの相談や介護負担を分担できるようにすることが第一に行うべきことです。

そして次に近隣住民や知人、市町村の相談窓口などとつながりをもっておくことが必要になります。

外部機関の活用

介護を行う人の中には「子供や嫁の役割だから」「人にお願いするのは申し訳なくてみっともない」などの理由から全てのお世話を自分で抱え込んでしまう場合も少なくありません。

しかし、訪問介護や通所介護など外部のサービスを利用することによって、心身の負担を和らげることができるので積極的に利用したいものです。

また、専門家のサービスを目にすることで、よりよい介護の方法を学ぶことができるというメリットもあります。

 

周囲からの働きかけが重要

ストレスの解消に関しては、介護者が元気な内は適度な休養や睡眠、食事などのほか、趣味や娯楽などでの気分転換を図ることで介護のストレスをリセットすることが可能です。

しかし、心身にストレスが蓄積されてしまった状態では、なかなか自分一人の力では健全な状態に戻すことは大変です。

日本では要介護者に対するサポートは介護保険法の改正により、各種のサービスを利用することができるようになっています。

介護する側へは介護・育児休業法により介護する側への時間の制約は改善されていますが、サポートはまだ十分とはいえません。

介護うつを発症する人は責任感が強く、一人で全てを抱え込もうとする人も少なくありません。周囲にも気丈にふるまうこともあるため、周囲からみてもうつ病だと判断できない場合も考えられます。

今後は法律の整備などで介護者にとってよりよい環境の整備が必要とされますが、現状は介護を行う人々に対しては、周囲の人々や医療関係者が積極的につながりを持っていく活動が必要だといえるでしょう。

 

※1 厚生労働省 国民生活基礎調査
http://www.mhlw.go.jp/toukei/list/20-21kekka.html

※2 週刊医学界新聞2929号 認知症介護における介護者のうつを考える
https://www.igaku-shoin.co.jp/nwsppr/pdf/2929.pdf

参考サイト
厚生労働省 うつ病チェックリスト
http://www.mhlw.go.jp/bunya/shougaihoken/kokoro/dl/02.pdf
みんなのメンタルヘルス 厚生労働省
http://www.mhlw.go.jp/kokoro/speciality/detail_depressive.html
こころの耳 厚生労働省
http://kokoro.mhlw.go.jp/about-depression/ad001/

参考文献
介護で心がいきづまったときによむ本 自由国民社
介護殺人の予防 クレス出版
シングル介護 NHK出版

ライター名 石井 けん
子育てをしながら父母の介護を行う1児のパパ。子育てや働き方の記事を書くかたわら、医師へのインタビューを行うライターとしても活動中。

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石井 けん
子育てをしながら父母の介護を行う1児のパパ。子育てや働き方の記事を書くかたわら、医師へのインタビューを行うライターとしても活動中。

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