介護うつとは。意外と身近な「介護うつ」にならないために必要なこと。

介護うつ

テレビや新聞などで、介護を苦にした自殺や心中などの報道を目にすることも少なくありません。厚生労働省の調査によると、身近な人への介護にストレスを感じることが増えており、介護の負担からうつ病を発症するケースも珍しくないのが現状です。

意外と身近な「介護うつ」についてご説明します。

介護うつとは

介護の疲れによって、介護者がうつ病なってしまう「介護うつ」。

厚生労働省が2005年に行ったアンケートでは介護者の4人に1人が介護うつであるとの報告もあり、深刻な状況にあるといえます。

 

そんな「介護うつ」ですが、正式な病名として認められているわけではありません。

しかし、心身への不調をきたす病気として、きちんと治療や対策を行う必要があります。

 

また、介護うつには、通常のうつ病とは異なる特徴があります。

たとえば、仕事が原因のうつ病であれば、配置転換や一時的な休職、転職など、病気の原因になるものから遠ざかることで、病気が改善したり、治癒したりすることがあります。

しかし、24時間の対応を求められることも少なくない介護の現場では、心身ともに休まらず、介護者の負担がどんどん大きくなってしまう点が問題点として挙げられます。

また、うつ病を発症することで十分な介護が行えない、といった影響が出るばかりでなく、被介護者に対して、暴言や暴力などをふるってしまうこともあります。

最悪のケースでは、うつの症状が進行し、自殺や介護殺人などに発展してしまう可能性すらあり、深刻化する前に対策することが大切になります。

 

介護者が抱える負担と現状

まずは、介護者がどれほどの負担やストレスを抱えているか。現状についてご紹介します。

厚生労働省が平成28年度に行った「国民生活基礎調査」では、介護者の68.9%が日常生活で悩みやストレスを抱えていると回答しており、その7割以上が家族の病気や介護が原因と回答しています。

主な介護者となっているのは、配偶者や子などの、要介護者と同居の家族が58.7%と最多で、2位の事業者(13.0%)を大きく引き離す結果となっています。

介護に必要な時間は要介護の段階がすすむに従って長くなっており、要介護3以上になると、ほとんど終日を介護に費やすケースが多くなってきます。

これらの結果から、介護者の多くは要介護者と同居する家族で、介護によって心身ともに大きな負担を抱えていることが読み取れます。

 

介護うつの症状

うつ病の症状には、単なる体調不良と感じるものから、明らかな不調まで、さまざまなものあります。よくみられる症状を一部ご紹介します。

身体面での症状

  • 疲労感や倦怠感

疲れるようなことをしていなくても疲れる、だるい感じがするといった症状がみられます。また、食事や身だしなみを整えるといった、日常生活のちょっとした動作についても、倦怠感から取り組むことが難しくなってしまうこともあります。

  • 食欲の低下・増加

食欲不振のほか、食べられる場合でも何を食べてもおいしくない、好物がおいしくなくなった、といった症状がみられます。逆に食べ過ぎてしまう場合もあります。

  • 不眠

夜なかなか寝付けない、というパターンのほかに、夜中に起きてしまう、朝早く目が覚めてしまう、といった不眠の症状がみられます。また、例外的に夜の睡眠が長くなり、日中も眠気がある過眠を訴える方もいます。

これらの症状以外にも、頭痛や吐き気、動悸、息切れ、口が渇くなど、さまざまな症状がみられます。

精神面での症状

  • 気分の落ち込み

悲しい気持ちになったり、気分が落ち込んだりする、将来に希望をもてないなどの憂うつな気持ちになります。

  • 意欲や興味の低下

何をしても楽しく感じない、楽しいと思えることがない、興味をもてないといった感情を抱くことが多くなります。また、趣味が楽しくなくなった、といった状態もあてはまります。

  • 思考力や集中力の低下

決断ができない、ものを読むことに支障がある、質問に答えることに時間がかかる、考えがまとまらない、集中できないなど精神活動が低下している状態を指します。

もちろん、上記の症状があったからといって、必ずしもうつ病というわけではありません。しかし、うつ病は、本人が無自覚のまま症状が進行しているケースもよくみられるので、第三者の目からみて元気がない、上記の様な症状がみられるといった場合には医療機関への相談を勧めるなどのアドバイスを行うのもいいかもしれません。

 

介護うつになる原因とは

うつ病は精神面・身体面でのストレスが原因で起こりますが、介護の現場では独特の環境下で大きなストレスが生まれます。

介護うつの主な原因をみていきましょう。

1 精神的負担

介護は専門の仕事としている人であっても大変なもの。知識や経験が少ない自宅などでの介護の際には、介護自体が大きなストレスになります。

要介護者本人との生活だけでなく、介護事業者や親族とのやりとり、常に緊張が解けない状態が続くなど、さまざまな要因が介護者の負担となる場合があります。

2 肉体的負担

車いすやベッドへの移動や入浴介助のほか、体を支えたり起こしたりと、介護は想像以上に体力が必要になります。

また、厚労省の調査では、介護者のストレスの原因として「自分の病気や介護」を挙げた人は、全体の3割を占めており、第2位となっています。持病や体力面での不安を抱えながら介護に取り組む方も多くいると推察されます。これらの疲れが、精神的な疲れと合わさり、うつ病発症のきっかけになることもあります。

3 経済的負担

介護費用のために、経済的な負担が大きくのしかかることも大きな負担となります。

平成29年の厚労省の統計によると、介護のために離職した人の数は9.9万人で、過去10年間で減少傾向にあることがわかっています。しかし、依然として多くの介護者が仕事を辞めており、そのほかにも休職や、時短勤務などに変えざるを得ないケースも多くみられます。それに伴う収入の減少も、介護者の負担のひとつといえるでしょう。

4 孤独

外部からなかなか分かりづらいのが介護者の感じる孤独です。特に同居の家族だけで介護を行う場合、外部とのつながりが希薄になり、一人で全ての介護を行うことにもなりかねません。また、話し相手や相談相手がいない場合、介護者本人が不調に気付かず、周囲も気づかないままうつ病が進行してしまうケースもみられます。

 

介護うつにならないために

介護うつにならないためには日頃からストレスをためないようにすることが重要です。そのためには「周囲への相談」「外部機関の活用」が大切になってきます。

  • 周囲への相談

まず、兄弟や子どもなどの近親者と良く話し合い、悩みごとの相談や、介護、経済面での負担を分担できるような環境を整えることが必要です。

そして、近隣住民や知人、市町村の相談窓口などとつながりをもつことも重要です。特に、地域包括支援センターでは、在宅介護の窓口として、介護・医療に関する問題から生活の全般的な事項まで、様々な相談を受け付けています。誰かに相談したいが頼れる人がいない、といった場合にも有効ですので、積極的に利用しましょう。

 

  • 外部機関の活用

介護を行う人の中には「子どもや嫁の役割だから」「人にお願いするのは申し訳なくてみっともない」などの理由から、全ての介護を自分ひとりで抱え込んでしまう場合も少なくありません。

しかし、訪問介護や通所介護など外部のサービスを利用することによって、心身の負担を和らげることができます。また、専門家のサービスを目にすることで、よりよい介護の方法を学ぶことができるというメリットもあります。保険適用外の有償のサービスを利用するのも良いかもしれません。他の人を頼ることも忘れずに、介護に取り組みましょう。

 

介護うつの治療

予防をこころがけていたのに、介護うつになってしまった・・・そのような場合には主に次の治療が行われます。

  • 休養

可能な限り休養することが大切です。

  • 薬物療法

抗うつ剤を用いた治療法。少量の服用からはじめ、どの薬が合っているか、見定めながら投与していきます。効果が出るまで34週間程度、適切な用法・用量で服用する必要がありますが、副作用が現れることがあるため、経過を注意深く観察する必要があります。

  • 精神療法

医師やカウンセラーによるカウンセリングなどによって、問題の解決方法を一緒に考える治療法。薬物療法をフォローする形で、認知療法、対人関係療法などを行います。

 

まとめ

日本では要介護者に対するサポートは介護保険法の改正により、各種のサービスを利用することができるようになっています。しかし、介護者に対するサポートは、未だ十分とはいえません。

介護うつを発症する人は責任感が強く、一人で全てを抱え込もうとする人も少なくありません。そのような介護者の負担を減らすためには、行政の支援や、地域でのサポート体制の整備が必要と考えられます。しかし、まずは地域や親族、医療・介護関係者など、周辺の方々とのつながりを構築することが大切です。周囲にもっと関心を持つ。そんな意識改革が必要かもしれませんね。

 

参考サイト

厚生労働省 国民生活基礎調査

http://www.mhlw.go.jp/toukei/list/20-21kekka.html

週刊医学界新聞2929号 認知症介護における介護者のうつを考える

https://www.igaku-shoin.co.jp/nwsppr/pdf/2929.pdf

総務省 平成29年就業構造基本調査の結果

http://www.stat.go.jp/data/shugyou/2017/index2.html

日本うつ病学会治療ガイドライン

http://www.secretariat.ne.jp/jsmd/mood_disorder/img/160731.pdf

厚生労働省 うつ病チェックリスト
http://www.mhlw.go.jp/bunya/shougaihoken/kokoro/dl/02.pdf
みんなのメンタルヘルス 厚生労働省
http://www.mhlw.go.jp/kokoro/speciality/detail_depressive.html
こころの耳 厚生労働省
http://kokoro.mhlw.go.jp/about-depression/ad001/

 

参考文献

介護で心がいきづまったときによむ本 自由国民社
介護殺人の予防 クレス出版
シングル介護 NHK出版
スーパー図解 うつ病:見ればわかる 心を元気にする知識と方法 法研

 

 

writer
石井 けん
子育てをしながら父母の介護を行う1児のパパ。子育てや働き方の記事を書くかたわら、医師へのインタビューを行うライターとしても活動中。

 

 

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