ダブルケアとは。介護と育児の二重負担の問題点とは?|在宅医療の基礎知識

ダブルケアという言葉をご存知でしょうか。

ダブルケアとは、親の介護と子育てという二つのケアを同時に担う状況のこと。女性の晩婚化と出産の高齢化が進んだ現代では、ダブルケアを行わなければならない世帯が増加しつつあります。

今回は、ダブルケアの現状と問題点、サポート制度についてご説明します。

ダブルケアとは

ダブルケアとは、親(義父母)や親族の介護と、子育てを同時にしなければならない状態のことを指します。

2012年に、横浜国立大学の相馬尚子教授が提唱した、比較的新しい概念です。

ソニー生命保険が2017年に行った調査によると、ダブルケアという言葉を耳にしたことがある人は17.5%と、認知度がまだ低いのが実情です。しかし、認知度については年々向上しており、徐々に知られつつあるようです(※1)。

平成24年の就業構造基本調査の結果をもとに、内閣府が行った調査によると、ダブルケアを行う人は25.3万人に上ると推計されています。

15歳以上の男女のうち、ダブルケアを行う人が占める割合は約0.2%と、数値だけみると少なく感じるかもしれません(※2)。

しかし、今回の調査は就学前の児童を持つ人々のみが対象となっているため、実際の人数はさらに多いと推測されています。

どのような人がダブルケアに取り組んでいるのか、詳細をみてみましょう。性別ごとの内訳は、男性が8.5万人、女性が16.8万人と、女性の方が男性より2倍ほど多くなっています。

平均年齢は39.7歳(男性41.2歳、女性:38.9歳)で、男女とも全体の8割は30歳~40歳代の人が占めていることが明らかになっています(※2)。

ダブルケアが注目されるようになったのには、女性の晩婚化と出産の高齢化が背景にあります。

これまでの時代では、若いうちに結婚・育児を完了させ、その後親の介護をはじめる、というパターンが多かったのに対し、晩婚化に合わせて出産時期が遅くなった現代では、育児と介護がバッティングするケースがみられるようになったのです。

そして、団塊の世代が75歳に達する2025年には、ダブルケアの担い手がさらに増えることが予想されています。

それでは、ダブルケアの問題点について、具体的にみていきましょう。

ダブルケアの問題点

ダブルケアの問題としては主に「経済的な負担、体力面での負担、精神面での負担」という3つの負担増があげられます。

経済的な負担

ダブルケアでは子どもの教育に関する費用のほかに、親の介護や通院にかかる費用の負担が必要になる場合がほとんどです。

ソニー生命保険の調査では、ダブルケアにかかる1か月当たりの平均負担額は75,518円に上ると報告されています(※1)。

仕事をしている場合には、労働時間の短縮や、場合によっては休職や退職が必要になるケースも多く、金銭面での負担がさらに厳しくなることも珍しくありません。

全国のダブルケア経験者に行われた調査では、ダブルケア経験者の10.0%(男性:8.4%、女性:11.6%)が、ダブルケアを理由に仕事を辞めた経験があると回答しており、仕事との両立が困難であることが伺えます(※1)。

体力面での負担

ダブルケアでは、介護や育児だけを行う場合に比べて、体力的な負担が大きくなりがちです。

日々のケアを行う際には、子どもの帰宅時間と介護の時間が重なる、親と子どもが同時に体調を崩すなどケアが重なることも少なくありません。

また、ダブルケア経験者が、ダブルケアにおいて不安に思っていたことについて、「自身の健康状況」を挙げた人は約3割にを占めており、体力的な懸念を抱えながらケアに取り組む人が多いことがわかります(※1)。

精神面での負担

ダブルケア経験者が感じる負担の中で、大きなポイントとなるのが精神的負担。調査では、「精神的にしんどい」と回答した人が46.8%と、体力的、経済的負担など、他の項目を抑えて最多となっています。

また、女性については、54.6%が「精神的にしんどい」と回答しています(※1)。

冒頭でご紹介しましたが、ダブルケアの当事者の多くは女性で、「子育てや介護の担い手は女性」という、昔からの考えが根付いていることから、女性に負担が集中しがちになると考えられます。

また、育児については相談できても、介護の悩みを相談する相手が同年代におらず、相談相手が見つからない。

行政のサポートも、介護、育児で担当窓口が異なるだけでなく、連携されていないため相談しづらい、という状況に陥り、社会から孤立してしまうケースも見られます。

ダブルケアの負担を軽減するには

ダブルケアに対する国や地方自治体の対策は残念ながらまだ十分とはいえません。しかし、既存の公的なサポートや民間企業のサービスを活用することで、ダブルケアの負担を軽減することができます。

公的な給付制度・企業の支援制度の利用

働きながらダブルケアを行う場合に利用したいのが、育児休業給付や介護休業給付などの公的な制度です。雇用保険の給付の一つで、育児や介護のために仕事を休む場合に手当が支給されます。企業によっては、福利厚生制度の一環として独自の給付制度などを設けている場合もありますので、一度相談してみましょう。

デイサービスや育児支援サービスなどの利用

子どもの行事への参加や、親の病院への付き添いなど、どうしても手が離せない場合もあるもの。

育児や介護の一時的な代行サービスを利用することで、一つのケアに集中して取り組むことができます。

宅配サービスや家事代行サービスの利用

日常的のケアの場面では、買い物や食事の支度、掃除など、家事の一部を手伝ってもらうだけでも心身の負担が軽くなります。

家事代行サービスや、食事の宅配サービスの利用も選択肢の一つになるでしょう。

介護や育児は長期間継続して取り組むことが必要となります。

無理をして心身の体調を崩す前に、公的なサービスや家事や育児の代行サービスなどを利用し、負担を減らす工夫をすることが大切です。

ダブルケアに対するサポート-地方自治体の事例より

現時点では、国による育児・介護の両立に向けた支援策は、残念ながら設けられておりません。しかし、こうした現状に対して、独自のサポートを行う自治体や団体が現れています。いくつか事例をご紹介します。

相談窓口設置、保育所入所への配慮も!大阪府堺市

市内の区役所内の基幹型包括支援センター(7か所)にダブルケア専用の相談窓口を設置。子育てや介護などの知識がある専門職員(保健師、看護師、主任ケアマネジャー、社会福祉士)が相談に応じます。

そのほかに、認定こども園・保育園入所時の優先順位への配慮、特別養護老人ホームの入所基準の緩和、ショートステイの利用日数を延長する、といったサポートを行っています。

ダブルケア経験者による相談員養成京都府

ダブルケアで悩んでいる人々の相談相手として、ダブルケア経験者がサポートする「ダブルケア相談員」の養成に取り組んでいます。また、ダブルケアについて啓蒙する冊子の配布なども行っています。

「ダブルケアカフェ」でケアラーを支援-一般社団法人ダブルケアサポート(横浜市)

ダブルケアの当事者が気軽に集まりおしゃべりする「ダブルケアカフェ」などのイベント開催のほか、ダブルケア啓発用冊子「ハッピーケアノート」の発行などを行っています。

また、ダブルケアラーのサポーター向け研修プログラムの開発にも取り組んでいます。

まとめ

親の介護と子育てという二つのケアを同時に行う「ダブルケア」。団塊世代が後期高齢者となる2025年には、さらに多くの人がダブルケアの担い手になると推測されています。現時点では、国によるダブルケアの支援策は特に設けられていませんが、地方自治体やNPOでは独自のサポートが行われており、今後拡大していくと思われます。

また、国の調査では、ダブルケアに関して拡充して欲しい支援策についての問いが設けられています。行政に対しては「育児・介護への費用負担の軽減」、「介護保険を利用できる各種介護サービスの量的拡充(利用枠の拡大を含む)」が、企業に対しては「子育て・介護のために一定期間休める仕組み」といった要望が上位に挙げられました。(※1

今後増加するであろうダブルケアラーをどのように支えるか。国、地方、企業と様々な面でのサポート策を考えるべきタイミングなのかもしれません。

1 ソニー生命保険株式会社:ニュースリリース「ダブルケアに関する調査2018

https://www.sonylife.co.jp/company/news/30/nr_180718.html

2 内閣府:育児と介護のダブルケアの実態に関する調査報告書http://www.gender.go.jp/research/kenkyu/wcare_research.html

writer

石井 けん

子育てをしながら父母の介護を行う1児のパパ。子育てや働き方の記事を書くかたわら、医師へのインタビューを行うライターとしても活動中。

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