ダブルケアとは。介護と育児の二重負担の問題点とは?|在宅医療の基礎知識

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ダブルケアをいう言葉をご存知でしょうか。
育児と介護という二つのケアを同時に担う状況のことを指す言葉です。働く世代や子育て世代にとり、このダブルケアの負担が問題になりつつあるのです。
近い将来高齢化とともに、このダブルケアに関わる人口が増えることが予想されます。
では、ダブルケアの現状はどのようになっているのでしょうか。

ダブルケアの現状

平成28年に国が発表した調査によると、実に25.3万人もの人がダブルケアを体験しています。(※1)

しかし、この調査は就学前の児童を持つ人々を対象としているため、実際の人数はさらに多いと思われます。

ダブルケアの背景には、結婚や出産の時期が遅くなっていることがあげられます。

また、ほかにも少子化による介護の担い手が減っていることも要因の一つといわれています。

 

しかし、ダブルケアという言葉はまだまだ一般には浸透していません。

2015年に民間企業が行った調査によると、ダブルケアという言葉を耳にしたことがある人はあわずか8.1%に過ぎないという結果が出ています。(※2)

ダブルケアが増えている現実に対し、世の中の認識との間にはギャップがあるといえます。

 

第二次世界大戦後のベビーブームに生まれた団塊の世代は2025年には75歳前後に達し介護が必要とされる年代に差し掛かります。

世間の認識とはうらはらに、今後さらにダブルケアに拍車がかかることは明白といえるでしょう。

 

では具体的に、ダブルケアの問題点はどのようなことがあげられるのでしょうか。

 

ダブルケアの問題点

ダブルケアの問題としては主に「経済的な負担、体力面での負担、精神面での負担」という3つの負担増があげられます。

経済的な負担

ダブルケアでは子どもの教育に関する費用のほかに、親の介護や通院にかかる費用の負担が必要になる場合がほとんどです。

こうした経済的負担は家計に重くのしかかってきます。

また、仕事を持っている場合には労働時間の短縮や場合によっては求職や退職が必要になるなど、さらに負担が重くなります。

 

体力面での負担

日々のケアを行う際には、子供の帰宅時間と介護の時間が重なる、親と子供が同時に体調を崩す、などそれぞれのケアが重なることも少なくありません。

ダブルケアでは介護や育児をそれぞれ行う場合に比べて体力的な負担が大きくなります。

仕事を持ちながらケアを行う場合には、仕事・介護・育児でのトリプルケアになり、体力面での負担はさらに大きくなるでしょう。

 

精神面での負担

ダブルケアの現場では、精神面での負担も見逃せない問題です。

特に、周囲の協力が得られずに一人で二つのケアを任されている場合には、精神的な負担は相当なものになるでしょう。

 

また、国の統計では、25.3万人のダブルケア当事者の内16万人あまりが女性で占められています。

負担の多くが女性にかかっていることから、女性の働き方にも影響を与えているといえるでしょう。

 

しかし、こうしたダブルケアでの問題に対して、サポートをする制度は整備が進んでいません。

介護や育児それぞれに担当する窓口は存在しますが、連携がとられているわけではなく、それぞれの担当者の元に行き問題を一つ一つ解決する必要があるのです。

 

こうした現状に対して、サポートを行っていこうという団体や自治体も各地で出始めています。

 

ダブルケアに対するサポートの現状

大阪・堺市の取り組み

堺市ではダブルケアを行っている人数がおよそ1600人といわれています。

対策として、市内の区役所7箇所にダブルケア専用の相談窓口を設置したほか、セミナーなども開催するなど支援活動をスタートしています。

 

京都府の取り組み

京都府ではインターネットを用いたアンケートにより現状を把握したうえで、子育て世代包括支援センターと市町村設置の地域包括支援センターとの情報共有を強化しています。

両センターの職員が介護、育児、両方の相談に応じることができる体制づくりのほか、介護のケアプラン作成の際に子育てにも配慮した計画づくりを行っています。

また、平成29年には、ダブルケアの啓もう活動として「仕事と介護・子育て両立支援ガイドブック」の小冊子を作成・配布しています。

 

横浜市の取り組み

人口350万人を抱える横浜市では2025年には100万人近くの人口が75歳に以上になると予想されています。

ダブルケアの問題に対してはまず、官・民合同での横浜ダブルケア研究会を開催することから始めました。

 

ついで、一般社団法人 ダブルケアサポート横浜を立ち上げ、各地でセミナーやダブルケアカフェなどのイベント開催のサポート、啓もう活動など全国への発信を行っています。

こうした取り組みを行い、孤立しがちなダブルケアラーがほっとできるネットワークづくりを目指しています。

 

こうした各地でのダブルケアに対するサポートはまだまだ始まったばかりです。

では、実生活でダブルケアの必要が出てきた場合に、負担を軽減するためにはどのような対策ができるのでしょうか。

 

ダブルケアの負担を軽減するには

ダブルケアに対する国や自治体の対策はまだ十分とはいえませんが、現在行われている公的な制度や民間企業のサービスを活用することでダブルケアへの負担を軽減することができます。

 

公的な給付制度の利用

働きながらダブルケアを行う場合に利用したいのが、育児休業給付や介護休業給付などの公的な制度です。これは、雇用保険の給付の一つで育児や介護のために仕事を休む場合に手当が支給されます。各企業内では、独自の給付制度などを福利厚生制度の一環として設けている場合もあります。

デイサービスや育児支援サービスなどの利用

子供の行事への参加や介護している親の通院の付き添いなど、どうしても手が離せない場合もあるもの。一時的に育児や介護のサポートサービスを利用することで、一つのケアに集中して関わることができます。ただ、保育施設での待機児童問題など長期で利用するには、まだまだ解決すべき問題も残っています。

宅配サービスや家事代行サービスの利用

毎日のケアの場面では、買い物や食事の支度、掃除など家事の一部分を手伝ってもらうだけでも心身の負担が軽くなります。

家事代行サービスや、食事の宅配サービスの利用は負担軽減するための選択肢の一つになるでしょう。

 

介護や育児のケアは長期間継続して関わることが必要です。

無理をして心身の体調を崩す前に、公的なサービスや家事や育児の代行サービスなどを利用することで余裕をもって日常生活を送りたいものです。

 

ダブルケアを改善するために

かつて日本では兄弟や家族で育児や介護を助けあう光景が多くみられました。

しかし、核家族化や少子高齢化、晩婚・晩産化が進む中、そうしたモデルケースはもはや機能しなくなってきています。

子供が生まれて育児のサポートをお願いしようと考えていた肉親に介護が必要になることや、両親の介護のさなかで子供ができてしまうなど、思いがけずダブルケアに関わることも少なくありません。

そうしたダブルケアの現場では女性の負担が大きいのが現状です。

長期間のケアを乗り切るためにも周囲からのサポートや公的機関・民間企業のサービスを利用することも必要です。

 

しかし、社会の高齢化が進み、これからますますダブルケアの事例が全国的に増えていく中、根本的な改善を行うことが重要になってきます。

国が行った調査では、ダブルケアへの充実して欲しい支援策についての問いを行っています。

回答では行政に対して「育児・介護への費用負担の軽減」と「介護や育児サービスの量的な拡充」、企業に対しては「必要な休暇の取得や労働時間の短縮」といった要望が上位を占めています。(※1)

こうしたニーズにこたえるためには、横浜市や京都府の事例でもあるようにダブルケアの現状を把握したうえで、介護と育児サポートの拡充を進めること、啓蒙活動を進めて企業内でもダブルケアについての認識を深めることが必要になってくるでしょう。

 

※1 内閣府:平成27年 育児と介護のダブルケアの実態に関する調査
※2 ソニー生命保険:ダブルケアに関する調査2015

 

 

writer

石井 けん

子育てをしながら父母の介護を行う1児のパパ。子育てや働き方の記事を書くかたわら、医師へのインタビューを行うライターとしても活動中。

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