自己抜去を防止するには(在宅の現場でできること)|在宅医療の基礎知識

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看護師なら誰しも一度は遭遇するインシデント、点滴の自己抜去
高齢の方ほどリスクが高いとされていますが、高齢者の多い在宅領域では特に要注意が必要です。


では、実際に在宅の現場ではどのような対策を取っているのでしょうか?
今回はそんな看護師必見(!?)の自己抜去防止策についてお話しします。

 

在宅で行われる点滴(輸液)の特徴

そもそも、在宅での点滴というとどんなイメージを持たれるでしょうか?
少し前までは病院での入院・通院治療が当たり前で、「在宅で点滴するなんて、よっぽど特殊なケースなんじゃないの?」という意見もあったでしょう。

しかし今は『時々入院、ほぼ在宅。』の時代。
逆に、よほど特殊な治療を必要とされるようなケースや、在宅での管理が難しいケースを除けば、病院で入院しながら受けられる点滴のほとんどが在宅でも実施できるようになっています。

化学療法や輸血などについては主治医・事業所によって対応が限られます)

 

とはいえ、実際に訪問している中では

脱水等に対する水・電解質補正

感染症に対する抗生剤投与

がんの患者さんや経口摂取が難しくなった方への静脈栄養

といったところが多く見られます。(時期や事業所によっても異なります)

在宅での点滴の注意点ー病院との違い

在宅だからといっても、看護師が行う手技としては特に病院のそれと違いはありません。

では、何が違うのか最大の違いは患者さんが置かれたその「環境」にあります。

在宅ではもちろん、誰かが常にそばにいるわけでもモニターが付いているわけでもありません。

ナースコールもなく、電話で連絡しても数分で駆けつけられるともわかりません。もし点滴終了時に行くのが遅れた場合、他のスタッフが代わりに気を利かせて抜針・止血してくれているなんてこともまずありません。

また、在宅では治療のために自宅にいるわけではなく、日常生活の中に治療があります。したがって、訪問看護師は、その患者さんが点滴開始から終了・抜針するまでの間、入院中以上に普段の生活動作を妨げぬようより想像力を働かせて、安全かつ適切な速度で投与できるよう気を配る必要があるのです。

(段差を超えてお手洗いに行ったり、急な来客に対応しようと起き上がったり、腕を枕にしていたり)。

 

 

在宅看護の現場の実際 

そんな環境のなか、もし自己抜去が起こってしまったら…。

発見が遅れると、適切な薬剤の投与ができずに治療効果が得られないばかりか、点滴の刺入部から血液が逆流して失血を招いたり、血管壁を傷つけて血管外漏出を起こす可能性もあります。

 

かといって、点滴中ミトンなどで抑制をするのは利用者さんの不安や不快を強め、眠っている間に無意識に触ってしまったり不穏状態を招いたりして、かえって自己抜去のリスクを高めてしまう恐れがあります。

 

そこで、在宅で実際に行われる自己抜去防止の基本的な対策を紹介します。

 

自己抜去防止の基本的な対策

①投与中にそばを離れない


ケアをしたり話しかけながら点滴から気をそらします。

ご家族が可能な場合は代わりに側で看ていてもらうこともあります。

 

②固定方法の工夫

衣服の中に輸液ルートを隠したり、上からタオルを巻いたり、自力で外しにくい部位に固定(自力で歩行されない方なら下肢の血管などで)して目に触れないようにします。

 

また、どうしても肘や手首などの関節付近しか刺せるところがなく、屈曲しやすいところに輸液ルートを固定する場合には、小児用のシーネで覆って屈曲を防ぐ場合もあります。

 

ただし、かえってそれが刺入部の不快感を招いたり、利用者さんの注意をひいてしまいそうな場合にはあえて余計な保護はせず、できるだけ低刺激かつ剥がれにくいテープを選んで固定します。

(利用者さんの様子や状況に応じて判断が必要です)

 

③点滴以外の治療法の選択、もしくは点滴を必要とする前の予防的対処


点滴の実施は必ず医師の診察と指示のもと行われます。

 

しかし、場合によっては点滴以外の治療法の選択や投与方法の変更が可能な場合もあります。

利用者さんの状態をトータルで把握し、自己抜去のリスクが高い場合には必要に応じて医師に相談し投与方法等を一緒に再度検討することも選択肢のひとつです。

 

たとえば感染症の場合は内服薬、脱水の場合は経口補水液の服用など。薬剤の種類によっては投与時間の短縮がある程度可能な場合もあります。

 

できることなら点滴を必要とする状態とならないよう、日頃から細かな観察と早めのケアで点滴を回避できるようにするのが理想ですね。

 

まとめ

改めてまとめてみると『なんだ、あたりまえのことじゃないか!』と怒られそうですが…実際やっぱり大事なのは基本的なことなのです。

される側になってみると解りますが、点滴というのは針は刺されて痛い、自由にトイレも行けない…で、たとえ短時間でも大きなストレスになるものです。

 

私自身も、点滴途中でトイレに行きたくなって本気で自己抜去を考えた経験があります…。

止血用の絆創膏さえあればきっとやってましたね…笑

 

医療者としては本当に困る自己抜去ですが、点滴される側の気持ちや苦痛を想像し、どうすればストレスを最小限にして、安楽に治療に臨めるかを第一に考えていくことが大切なのではないでしょうか。

 

writer
chocola

現在看護師8年目。大学病院の内科病棟に配属され、うち2年間は夜勤専従看護師として勤務。結婚と同時に退職し、現在は訪問看護師として勤務。

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